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【LoL 2018夏プロシーン】変わりゆく世界の中で、世界最強を目指す熱い夏が始まる【欧米韓】

いま世界でもっとも規模の大きいeSportsタイトルのひとつ『リーグ・オブ・レジェンド』(以下『LoL』)。『LoL』のプロシーンは、1~4月に開催される「Spring Split」と6~8月に開催される「Summer Split」の2シーズン制となっているのがどの地域でも通例だ。

春夏間には国際大会「Mid-Season Invitational(MSI)」、夏スプリットの折返しには小規模国際大会「Rift Rivals」、そして夏スプリット終了後には各地域リーグを制したチームがその年の世界最強を巡って争う国際大会「World Championship(Worlds)」が行われる。現在の2018シーズンはSpring SplitとMSIが終わり、折り返しに入ったところだ。

■LoL 2018春プロシーン開幕前特集
(前編)【LoL 2018春プロシーン特集】古きと新しきが混じり合う新生北米リーグ、NA LCS開幕
(後編)【LoL 2018春プロシーン特集】古きと新しきが混じり合う新生リーグ、NA LCS開幕
(前編)【LoL 2018春プロシーン特集】伝統と革新の発信地、EU LCS開幕
(後編)【LoL 2018春プロシーン特集】伝統と革新の発信地、EU LCS開幕

■LoL 2018春プロシーン振り返り特集
【LoL 2018春プロシーン】LCK Spring Split、MSIへと向かう完全無欠の王者【LCK】
【LoL 2018 春 海外プロシーン】嵐吹き荒れる欧米リーグ、MSIへ挑む王者は!?【NA LCS、EU LCS】

本稿では春スプリット後の国際大会であったMSIを振り返り、欧米韓リーグそれぞれの夏スプリットへの展望を述べていく。

堂々たる王者交替―MSI 2018

MSIおよびWorldsでは、2017年より小規模地域がメインステージに出るための段階として「プレイインステージ」が追加されている。グループステージにシード権を持たない地域は、プレイインステージを勝ち抜くことでグループステージへの切符を手にできるのだ。

奇しくも昨年のMSIとまったく同じグループ分けになった今年のプレイインステージ。ラウンド1の総当たり戦からはロシアのGambit EsportsとトルコのBAUSuperMassive eSportsが、圧倒的な実力差を見せつけて名乗りを上げた。

しかしプレイインステージのラウンド1は序の口も序の口だ。ラウンド2で彼らの前に立ちはだかったのは、五大リーグのひとつLMS代表Flash Wolves、そして今年より東南アジア地域から分離独立したベトナム代表EVOS Esportsという門番たちだ。実力ある韓国人選手を抱えるトルコSuperMassiveも、歴戦のベテランを擁するGambitも、この門番たちの強力なプレイの前にあっけなく敗れ去る。

かくしてプレイインステージからメインステージ進出を決めたのは、LMSおよびベトナム代表となった。

▲ベトナムからやって来たEVOS Esports。ベトナムでは現在、韓国のプレイヤー人口を追い越すほどまでに『LoL』人口が増えている

プレイイン勝ち抜きチームを加えて合計6チームとなったグループステージでは、さらなる格上チームを交えての総当たり戦(同じ組み合わせは2回)が繰り広げられた。

1日6試合が5日間にわたって行われた中で、まず頭角を現したのは春のLMS(台湾・香港・マカオリーグ)優勝チームである台湾のFlash Wolves(FW)だ。国際大会でのLMSチームは「韓国のクリプトナイト(無敵のスーパーマンが唯一弱点とする物質のこと)」と称されるほどに韓国チームに対する戦績が良好なことで知られており、さらには今大会の優勝候補である中国のRoyal Never Give Up(RNG)に対しても互角の戦いを繰り広げた。

その後を追うのは韓国代表のKING-ZONE DragonX(KZ)。そう、この大会は3年目の開催となったMSI史上初めて「SKTとFaker選手 がいない大会」になったのだ。国内の強豪チームたちを下して2回目の国際大会出場を果たしたKZだが、国外での大舞台での経験不足は否めないようで、上位4チームがノックアウトステージへと進出できるグループステージの最終成績は3位となった。

FWやKZとは対照的にグループステージ初日から戦績が低迷したのが、北米代表Team Liquidと開催地元ヨーロッパ代表のFnaticだ。sOAZ選手に代わって出場したトップレーナーBwipo選手の活躍もあって、Fnaticは2日目からなんとか調子を取り戻したものの、Liquidは3日目にようやく1勝を上げた。

最終日には勝利数と直接戦績が等しいチームのあいだでタイブレーク戦が発生。1位をめぐってFWとRNGが激突した結果はRNGの勝利で、4位をめぐる欧米対決は地元代表Fnaticに軍配が上がることとなった。

なお、プレイイン・ラウンド2以降に全チームの中でも最も獰猛なプレイスタイルで観客を湧かせて見せたベトナムのEVOS ESPORTSは、全10試合中2回しか勝ち星を上げることができず最下位という戦績であり、五大リーグとの壁はまだまだ分厚いことを示した。

▲北米からやって来たLiquidファンの一団。グループステージが行われたベルリンでは、やはり地元Fnaticへの応援が多かったものの、最終的には「Let's Go Liquid!」コールも会場を満たしていった

ノックアウトステージは、グループステージの上位4チームの間で行われる勝ち抜きトーナメント(各対戦は3本先取)となっている。

1位抜けを決めたRNGは準決勝の相手にFnaticを指名し、慎重な試合運びながらも3勝0敗で快勝。もう一方の準決勝での組み合わせはFW vs KZと、グループステージではFWが2勝している対戦カードとなった。

しかし韓国はやはり3本先取形式に強く、2試合目では勝ちをFWに譲ったものの、トップ・ミッド・ADCの各ダメージディーラーがそれぞれ活躍を見せて勝利をもぎ取った。

そして迎えた決勝、多くの関係者が予想したであろうRNG vs KZのカードが実現することとなった。国際大会も終盤となると組み合わせとしては珍しくないカードだが、そこには多くの物語が織り込まれていた。

MSIは中国LPLチームが韓国LCKチームを下して過去に王座を獲得した唯一の大会であり、一方でRNGの看板ADCとして知られるUzi選手は「(なぜか決勝で敗れる)シルバーコレクター」と呼ばれる不本意な過去を持つプレイヤーでもあったのだ。

MSI史上初めてSKTがいない大会ながらも、ノックアウトステージではLCKチームの恐ろしさを見せつけてきたKZ。ジンクスをはねのけて国内リーグを制覇してきたUzi選手とRNG。どちらのチームが勝利するにせよ初優勝となる対戦を、全世界の視聴者が見守る中で世界最高の2チームが激突した。

ここでRNGは秘密兵器として温存してきたジャングルのKarsa選手を投入、MSIに帯同しながらも起用がなかったのは不調のためではなく、チーム戦略であったことを初戦の勝利によって示す。続く第二試合をKZが取り返すと第三試合のRNGはミッドレーンのXiaohu選手のピックをタンクからメイジへと切り替えて機先を制する。三本先取方式での韓国チームは相手の長所を4試合かけて潰し、最終的に5試合目で勝利するはず……というシナリオも想像されたが、このシリーズにおいて主導権を握っていたのはRNGの側だった。

KZがXiaohu選手への対策にバンの枠を充てたことでUzi選手からカイ=サを取り上げることができなかったのだ。もちろんKZ側も各選手が得意とするチャンピオンを選ぶ形でチームを構築し、激しい乱戦からRNGに対してリードすらしてみせた。

しかし「KZのADCであるPraY選手が持っている緊急回避用のアイテムがあと数秒使えない」ことを把握していたUzi選手は、チームに対して勝負を仕掛けることを指示。このわずかなチャンスを逃さず完璧なコンビネーションでKZの攻撃力を奪った。RNGはそのまま一気にゲームを、そして悲願のMSI優勝を勝ち取ることとなった。

LPLとしては2015年の第一回MSI以来の王座奪還であり、Uzi選手とRNGにとっては初の国際大会優勝である。2013年の世界大会決勝でSKTに敗れ、2014年の世界大会決勝でSSWが優勝する様を見届けさせられた「2位の男」がついに世界の頂点に立ったのだ。

▲優勝決定直後、チームメイトと共に喜びを爆発させるUzi選手。プロキャリア7年目にして手にした、初の国際タイトルだ

静かなる春夏間オフシーズン

韓国LCKと激変する世界


▲初めてSKT以外の韓国チームとしてMSIに出場したKZ。RNGに対して大きな力の差を見せつけられて敗北したが、Worldsでの再挑戦を狙っているのはまちがいない

この春夏間はどの地域でも大きなメンバーの入れ替わりは見られなかったが、各地域に傭兵として出向く韓国人選手については、さまざまな動きが見られた。

まずはベテランの引退で、Wraith選手(JAG・サポート)とLooper選手が春スプリット後に引退を表明した。Looper選手は2014年の世界大会でSamsung Whiteの一員として優勝カップを掲げたひとりで、誰もが名トップレーナーの引退を惜しんだ。国外から帰還した選手もおり、Fly選手(サブミッド、北米FlyQuest→Gen.G)やKaKAO選手(サブジャングル、トルコDark Passage→JAG)の2名が海外チームを遍歴したすえにLCKへと戻ってきた。

チーム名称の変更も2件あり、昨年の世界大会優勝チームであったSamsungは今年春に所属組織を改めKSVと名乗ったが、さらにGen.Gとチーム名が変更された。世界大会優勝に迫ること2回という歴史を持つROX Tigersも、韓国生命保険2位の「ハンファ生命」に『LoL』部門を買い取られて「Hanwha Life Esports」となっている。春スプリット後の入替戦では、降格したKongdoo Monsterに替わって二部リーグの実力派「Griffin」が昇格しており、新顔選手たちが見せる戦いも楽しみである。

夏の予想は正直困難だ。ミッドシーズンアップデートによりゲーム環境が激変する中、手堅い戦略戦術を重視する傾向のあるLCKのプレイが、世界中の耳目を集め続けるのはまちがいない。

その中で、革新的な戦略を追求しつつも着実に力を伸ばして春のプレイオフ決勝に上り詰めたAfreeca Freecsの試合には、とくに注目が集まるのではないだろうか。理解と適応を続けられないチームや選手に待ち受けているのは、無慈悲な淘汰だ。

今年のMSIでは中国チームに及ばなかったLCK。このまま沈んでいってしまうのか、それとも最強地域の底力を見せつけるのか。世界大会への出場枠は3チーム。中韓の力比べに向けて期待が高まる。

EU LCS、夜明け前


EU LCS Spring Finalで負傷したsOAZ選手の代理として決勝戦に出場したBwipo選手は、MSIという大舞台で大きくその才能を開花させた

度重なる北米リーグへの選手流出を経験しながらも、つねに新たなホープを見出してきたEU LCS。その姿はMSIでも健在だった。EU代表として参戦したRNGやKZとの戦いに苦しんではいたものの、Caps選手の活躍やまったく予想されていなかったBwipo選手の華々しい国際戦デビューによりグループステージを突破している。

春スプリットに大規模なメンバー変更を行ったチームも多かったことから、夏スプリットに向けたロースターチェンジは非常に少ない。話題になった移籍としては、かつてOrigen所属時に世界大会ベスト4の結果を残しているAmazing選手がFC Schalke 04に加入したくらいである。

夏スプリット前に移籍が少ない理由としては、ゲーム環境の激変に対応する多様な戦略を模索していかなければならないという点や、世界大会が迫る中で選手間のコミュニケーションや役割分担から作り直している余裕がない点が大きいはずだ。

また来年よりEU LCSはNA LCS同様にフランチャイズ制へ移行するという発表もあり、来年以降のリーグ参加が不透明なチームでは大きな投資が難しいという面もあるだろう。

今年の欧州は、各チームの秘めた実力は順位に現れているほど大きいものではなく、夏の結果がどのように転がるかの予想が困難だともいわれている。来年のリーグの行方を含めて、この夏はすべてのチームが様々な困難に立ち向かう、EU LCSはそんなリーグになりそうである。

NA LCS、プラスの変化を得られるのか


▲北米を代表するADCであるDoublelift選手。NAオールスターとも言えるメンバーで乗り込んだ初のMSIだったが、ノックアウトステージ進出はならなかった

Team Liquidによる悲願のシーズン制覇や新規参入チームの躍進など、地域内の話題には事欠かなかったものの、MSIではファンの溜息と共に「いつものNA」という結果に終わった北米リーグ。フランチャイズ化による降格の廃止もあり、チームの運営は半期単位の結果ではなく長期スパンを見越した体制へと変化しているようにも見える。

少なくとも「夏に入替戦を回避するためのテコ入れ(多くの場合はデンマーク人か韓国人の加入)」は不要になり、一部リーグデビューから間もない北米出身の若手選手をスターティングメンバーに加え育成を図ったチームも存在した。

例えばTeam Solio Mid(TSM)のMikeYeung選手は2017年の夏にPhoenix1からデビューした若手選手で北米出身のジャングルとして期待される選手の一人であるし、GGSのスターティングメンバーは過去の実績という点では原石といえるプレイヤーがほとんどを占めている。

もちろん春の結果が振るわず補強を行ったFlyQuestのようなチームも存在している。勝敗の結果に伴う降格というリスクはなくなったが、フランチャイズ化によって多額の投資を行っている以上はリーグで結果を残し、ファンやスポンサーの獲得によってマネタイズを行うことはリーグに参加し続ける上では欠かせない。

夏スプリットの制覇はそのまま世界大会出場と直結している。TSMやCounter Logic Gaming(CLG)といった古参かつ春スプリットに苦戦したチームが前半期を準備期間と捉えて復権するのか、あるいはEcho Foxや100Thievesのような春から豪華なラインナップを揃えたチームの快進撃が続くのかが焦点となりそうである。

また、国際大会においてその投資規模に見合った結果をもぎ取れるのかという問題もしばらくは注目されることになるだろう。

ミッドシーズンを越えて

ミッドシーズンアップデートにより、パッチ8.11環境では従来のEUスタイルでの戦略をそのまま運用するだけでは戦えなくなっている。もともとこの配置はドラゴンがチーム全体に大量のゴールドを供給し、バロン出現までトップレーン側に重要なオブジェクトが存在しなかった時代に端を発している戦略だ。

中立モンスターの経験値やゴールド配分あるいはアイテムの価格変動によってポジション毎の強さは変動するし、定石が固定しないように環境に対して意図的な変更を加えてきたのがRiotの開発指針でもある。変化が生じるたびに、すべてのプレイヤーやチームは環境への適応速度という形でも競い合っているのだ。

さて、今シーズンも後半戦に突入するプロチームの選手たちはどうだろうか?

すでに何年も前から、ソロレーンやジャングルの選手は異なるタイプのチャンピオンを使い分け、必要に応じてアシストもキャリーもこなせるというのがリーグのトップチーム選手に要求される水準となっている。今回もっとも大きな影響を受けていると思われるボットレーンだが、ADCはマークスマン専業で試合中盤から終盤に大火力を叩き出すというパッチ8.10までの役割以上に、今後は多様なプレイパターンを求められるようだ。かつて「陸の孤島」と呼ばれたトップレーンがテレポートを絡めてゲーム全体に干渉するようになり、ADCの補佐役として「シッター(子守)」と呼ばれていたサポートがレーンを離れてジャングルや他のレーンからメイクプレイするようになっていったように、ADCも多様なチャンピオンで戦うようになるのだろう。

今回のパッチではいわゆるボットレーン向けとされてきたマークスマンが、アイテム価格や基本ステータスの面で非常に不利な状況に陥っているのは確かで、この点についてはフォローを行うとも告知されている。各ポジションとチャンピオンロールの組み合わせの可能性をさらに多様化していくべく調整が続くだろう。

7年間続いたEUスタイルの「ボットレーナー=ADC(マークスマン)」という定石が遂に「多様な選択肢の一つ」へと変わる日がやってきたのだ。

配信情報


▲今年のWorlds開催地は韓国。2014年の開催以来、4年ぶりに世界大会が韓国へと帰ってくる

9~11月にかけて開催されるであろう世界大会へ向けて加速していく『LoL』プロシーン。韓国LCKは6月12日17時より開幕、月曜日以外の週六日、午後に配信。EU LCSは6月16日1時より、毎週土日の深夜配信。NA LCSは6月17日6時開幕で、毎週日曜と月曜の早朝配信となっている(以上の日時はすべて日本時間)。生中継が終われば再配信もあり、試合動画アーカイブも公開されているので、世界のトッププロが繰り広げる試合をこの目で目撃するのは簡単だ。

2018年アジア競技大会の種目として採用されてもいる『LoL』。出場選手たちの選定基準となっているのは何よりも、各地域の一部リーグの戦績となる。新しいゲーム環境を制して世界王者の座につくのは一体どのチームなのか。手に汗握る逆転劇はあるのか。新たなスター選手は現れるのか。新時代の幕開けを見届けよう。
執筆:山口佐和子
執筆協力:ユラガワ
写真:LoL Esports Photos

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■関連リンク
リーグ・オブ・レジェンド
http://jp.leagueoflegends.com/
2018年 国際eSportsイベント
https://jp.leagueoflegends.com/ja/featured/2018-global-esports-event-announcement
LCK 2018 Summer Split スケジュール&試合結果
https://www.lolesports.com/en_US/lck/lck_2018_summer/schedule/regular_season/1
EU LCS 2018 Summer Split スケジュール&試合結果
https://www.lolesports.com/en_US/na-lcs/na_2018_summer/schedule/regular_season/1
NA LCS 2018 Summer Split スケジュール&試合結果
https://www.lolesports.com/en_US/lck/lck_2018_summer/schedule/regular_season/1
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