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eスポーツブームを経て大会運営はどう変わったのか? RIZeST 古澤明仁氏に聞く<前編>
ALIENWARE ZONE編集部として株式会社RIZeSTの代表取締役である古澤明仁氏にはじめてインタビューしたのは、ALIENWARE ZONEが立ち上がった数カ月後の2018年3月のことだった。大規模なeスポーツイベントを多数手がけ、国内の大会シーンを裏方として牽引してきたのがRIZeSTという会社だ。
RIZeST 古澤明仁社長インタビュー「大会運営だけではなく、スタッフの未来も見据える」<前編>ーeSportsを支える人々ー
当時はイベントなどが一気に増えた反面、まだまだ「eスポーツ」という言葉が社会的に認知されているとは言い難かった。しかしあれから2年間で、誰もが「eスポーツ」という言葉を知るまでになり、子どもの憧れの職業として「YouTuber」と並んで「プロゲーマー」や「eスポーツ選手」が挙がり、ゲームをポジティブにとらえる人が着実に増えている。
そんなところに、新型コロナウイルスが大きな影を落とした。あらゆるオフライン大会、世界規模の大会も軒並み休止や中止に追い込まれ、あるいは無観客での試合を余儀なくされた。当然、大会運営をメイン事業としているRIZeSTも大きな影響を受けたはず……。
いわば日本のオフラインeスポーツ大会運営に関する第一人者とも言えるRIZeSTが、いまどうなっているのかを聞くことで、国内のeスポーツの現状と展望がわかるかもしれない、というのが、今回2年ぶりに古澤氏にインタビューをお願いしたきっかけだ。
前編では、以前のインタビューから2年間でRIZeSTがどう進化し、変化してきたのか、そして後編ではアフターコロナの日本のeスポーツについて語っていただいた。
なお、新型コロナによる影響を鑑み、インタビューはオンラインにて実施した。
古澤:この2年間でRIZeSTが大きく変わったポイントとして、従来型のゲーム会社から販促やPR活動として大会運営を受託するビジネスから、「その他」の事業に軸足を移してきた2年間でした。サードパーティー主催のeスポーツイベントのサポート、自治体、教育機関のマーケティング、プロモーションサポート、教育事業、施設やイベントのコンサルティングなど幅広く事業拡大してきました。
私はeスポーツに関わっていく上で、「ゲームタイトルは生モノ」ととらえています。
あるゲームのイベントや大会を企画すると、どうしてもヒト・モノ・カネが必要になりますが、RIZeSTのような資本が小さい企業が生き残り、成長していくためには、リスクを分散していくという観点からも複数のゲームタイトルを継続的に扱っていく必要があるわけです。
つまり、特定のタイトルだけに頼らないビジネスモデルを確立していくことが、ゲーム/eスポーツ業界の宿命だと感じています。
実際にこの2年間で、受託イベントの運営・制作以外に、様々な新規事業を立ち上げてきました。それらは流行り廃りに影響されにくいもの、ということを強く意識しています。
――いまだに「eスポーツという存在自体が一時期の流行でしかないのではないか」という思いは我々もどこかに持っていますが、流行に左右されない新規事業というのはどんなものなのでしょうか?
古澤:主に2つの事業があります。まず、1つ目は「RIZeSTアカデミー」です。
RIZeSTアカデミー
https://www.rizestinc.com/rizest-info-academy/
弊社が持つノウハウをアカデミー形式で伝えることで、教育機関、自治体や企業でeスポーツの内製化の促進を目指すことを目的としています。
例えば、あるゲームタイトルを用いたイベント、大会を行う場合、何をどう準備すればいいかわからなかったり、低予算でライブ発信したいけどやり方がわからないという方は、法人・個人を問わず数多くいます。
そのようなイベント、大会を仕切れる人がひとりでも増えて、eスポーツという文化をひとりでも多くの人に感じてほしい──そのための種をまく役割を目指しています。
このアカデミーのために作ったノウハウが詰まったテキストや技能体験を、eスポーツを勉強する教育機関に提供する試みもすでに開始しています。さらに、ひとりでも多くの方にお届けするために、そして学びやすさを担保するためにeラーニング形式の「オンラインアカデミー」の準備も進めています。
2つ目は、eスポーツに関わるコンサルティング業務ですね。
これは本当に多岐にわたっていて、家電量販店の「コト」売り提案から、企業のSNS運用までかなりの業務のふり幅があります。
SNSでは、どんな言語を用いて、どんな映像を切り取るか次第で得られるエンゲージメントの数に大きな影響が出ます。弊社は長年ゲームコミュニティの方々と活動を共にしてきているので、プロモーションしたい製品、イベント、技術などをどんな言葉とアセットを組み合わせて顧客やゲーマーにお届けするべきか、最適な効果を生み出すためのお手伝いができます。
また、eスポーツ関連施設を作りたい時には、2011年から弊社が大事に育ててきたeスクというブランドを生かせます。ハコのデザインだけでなく、どんなイベントを運営していくか、機材の選定から企画立案、そしてアカデミーのノウハウを生かした人財育成までパッケージしてお手伝いさせていただいています。
e-sports SQUARE AKIHABARA
https://e-sports-square.com/
特に最近は、ゲームに直接的に関わりがなかった衣・食・住に関わる企業や自治体などからもeスポーツを活用したい、取り組みたいという声が急増しています。
eスポーツの市場規模自体はまだまだ小さな領域なので、大きな市場で様々な知見やノウハウを持った方々にeスポーツを盛り上げようと応援していただけるのは大変有難いですし、そして、そういった方々のお手伝いをさせていただくことがシーンの盛り上がりのブーストにも繋がり、プレイヤー、ファンが喜んでくれるきっかけに携わらせていただくこと自体が、やりがいでもあり、率直に嬉しいですね。
弊社の強みとして、私を含めてメーカー出身者が在籍しているという点も挙げられます。主にマーケティングの観点からメーカー側がeスポーツにお金を出す本質的な意味や、求められているアウトプットが実体験として理解できている(そちら側の立場にいたので)のは大きなアドバンテージだと感じています。現在進行形でeスポーツの制作の前線で活動してきていることと、メーカー側のマーケティングに理解があることの掛け合わせが、RIZeSTのコンサルの強みだと考えています。
――すでに自分が持っていたRIZeSTの事業のイメージがガラっと変わりました(笑)。新サービスといえば、「PLAYHERA」というサービスもスタートされましたよね。
古澤:はい、これは大会運営とSNSを連動させたプラットフォーム事業で、CyberZさんと共同で「PLAYHERA JAPAN」という会社をジョイントベンチャーで立ち上げました。
PLAYHERA
https://japan.playhera.com/ja/
eスポーツの大型大会というのは、年数回とか招待選手や時にはプロゲーマー限定などで決して間口が広くはありません。でも本来ゲームは、友達と気軽に対戦したり大会を開いたりできるものだと思うんですね。
例えば、異なる地域のゲームコミュニティが横でつながって、継続的に対戦会とかを行ったりして……参加者だけでなくそのコミュニティの人たちがその熱量の様々な面に触れることができ、それをSNS機能で自慢しあったり、賞賛したり、戦績ページを見て唸ってみたりと……。ゲーム、eスポーツで生まれる喜怒哀楽を「見える化」することで他のコミュニティにも伝染して……というのが「PLAYHERA」で実現しようとしている世界です。
元々は、2018年にサウジアラビアに訪問した際に、eスポーツ事業を中東地域で推進されているファイサル王子からPLAYHERAのアイデアを持った人=PLAYHERAの現CEOのナイフさんを紹介していただき、話を聞いて10分で惚れ込んじゃったんです。コレは素晴らしいと(笑)。
ただ、冷静になってみると我々だけで運用するにはもったいないなと。その時に真っ先に浮かんだ企業がCyberZで、青村(陽介)さん、大友(真吾)さんにご相談したところ、「やりましょう」とトントンと話が進んでいきました。
――もうひとつ、「Giken Access」というサービスもRIZeSTとして業務提携、代理店契約を結ばれたとうかがいました。こちらはどういったサービスなんでしょうか?
古澤:「Giken Access」は、ゲームの配信者の影響力を、Twitch、OPENREC.tv、Mildom、YouTubeの4つのプラットフォームの中で定量的な数字で見比べることができる、マーケティングデータ分析ツールです。どのゲームタイトルがいま流行していて、今後流行するゲームタイトルは何か? 特定のゲームタイトルで誰が最も支持され、力を持っているのか? さらには特定の配信者はどんなゲームタイトルを用いてライブ配信を行い、それぞれのパフォーマンスはどうなのか? というのをプラットフォームをまたいで即座に分析が可能です。
例えば、同時接続平均1万人で配信は週に1回行うAさんと、同時接続平均3000人で配信は毎日欠かさず行っているBさんがいたとして、タイアップや協賛をオファーする企業にとってどちらが付加価値が高いのか? 惑わされやすいのですが、配信プラットフォーム毎に微妙に数字算出のロジックは異なっていて、YouTubeなのかTwitchなのかで、ユニークユーザー数などのカウントの仕方が若干違うんですね。
「Giken Access」で定義しているのは、同時接続数というY軸と、何時間見られたかというX軸を掛け合わせることによって導き出される「面積」で、これが広い方が企業にとって影響力のある、エンゲージ性のある配信である、という評価をしています。
こうした基準を作ることで、現在インフレ化している一部の有名配信者や配信チームだけが雪だるま式にギャラや知名度を上げていくのではなく、毎日配信している人たちがある程度ご飯を食べていける、日の目を見るきっかけを作りたい。そうすれば、クリエイターのモチベーションも上がって、エコサイクルがグっと広がるんじゃないかと考えています。
我々はイベント制作会社ですが、イベントに対するSNS等でのインフルエンサーの発信力ってすごいんですよね。特にゲームにおいては個人で売り込んでいる人も多い。「Giken Access」の数値を用いれば、そこに本当の意味での競争が生まれていくんじゃないかと。
――こうしたサービスなどを組み合わせていけることが、もともと持っていたイベント制作事業との相乗効果で、RIZeSTの強みになっているわけですね。
古澤:そうですね、労働集約型といいますか、ひとつの生モノに集約するという体質を変えて、はやり廃りではなくeスポーツやゲーム業界全体をもっとマクロな視点で見て、そこで我々が持っている能力やノウハウで貢献できるところで収益を上げておいて、カロリーのかかる生モノの部分にも十分な体力で挑める、というモデルへの移行は、継続的に行っていきたいと思っています。
後編では、「eスポーツ」が日本で定着した2019年以降と、新型コロナの問題が収束したあとの日本と世界のeスポーツについてうかがう。
株式会社RIZeST
https://www.rizestinc.com/
RIZeST 古澤明仁社長インタビュー「大会運営だけではなく、スタッフの未来も見据える」<前編>ーeSportsを支える人々ー
当時はイベントなどが一気に増えた反面、まだまだ「eスポーツ」という言葉が社会的に認知されているとは言い難かった。しかしあれから2年間で、誰もが「eスポーツ」という言葉を知るまでになり、子どもの憧れの職業として「YouTuber」と並んで「プロゲーマー」や「eスポーツ選手」が挙がり、ゲームをポジティブにとらえる人が着実に増えている。
そんなところに、新型コロナウイルスが大きな影を落とした。あらゆるオフライン大会、世界規模の大会も軒並み休止や中止に追い込まれ、あるいは無観客での試合を余儀なくされた。当然、大会運営をメイン事業としているRIZeSTも大きな影響を受けたはず……。
いわば日本のオフラインeスポーツ大会運営に関する第一人者とも言えるRIZeSTが、いまどうなっているのかを聞くことで、国内のeスポーツの現状と展望がわかるかもしれない、というのが、今回2年ぶりに古澤氏にインタビューをお願いしたきっかけだ。
前編では、以前のインタビューから2年間でRIZeSTがどう進化し、変化してきたのか、そして後編ではアフターコロナの日本のeスポーツについて語っていただいた。
なお、新型コロナによる影響を鑑み、インタビューはオンラインにて実施した。
ひとつのタイトルに依存しないビジネスモデルへの転換
――まず、2年前のインタビューから現在までのRIZeSTの変化と進化について聞かせてください。RIZeSTと聞いて多くの読者が思い浮かべるのは、e-sports SQUARE AKIHABARA(eスク)や、「PUBG JAPAN SERIES(DMM GAMES主催)」のような大規模大会の運営会社というイメージだと思いますが、どんな2年間でしたでしょうか?古澤:この2年間でRIZeSTが大きく変わったポイントとして、従来型のゲーム会社から販促やPR活動として大会運営を受託するビジネスから、「その他」の事業に軸足を移してきた2年間でした。サードパーティー主催のeスポーツイベントのサポート、自治体、教育機関のマーケティング、プロモーションサポート、教育事業、施設やイベントのコンサルティングなど幅広く事業拡大してきました。
私はeスポーツに関わっていく上で、「ゲームタイトルは生モノ」ととらえています。
あるゲームのイベントや大会を企画すると、どうしてもヒト・モノ・カネが必要になりますが、RIZeSTのような資本が小さい企業が生き残り、成長していくためには、リスクを分散していくという観点からも複数のゲームタイトルを継続的に扱っていく必要があるわけです。
つまり、特定のタイトルだけに頼らないビジネスモデルを確立していくことが、ゲーム/eスポーツ業界の宿命だと感じています。
実際にこの2年間で、受託イベントの運営・制作以外に、様々な新規事業を立ち上げてきました。それらは流行り廃りに影響されにくいもの、ということを強く意識しています。
――いまだに「eスポーツという存在自体が一時期の流行でしかないのではないか」という思いは我々もどこかに持っていますが、流行に左右されない新規事業というのはどんなものなのでしょうか?
古澤:主に2つの事業があります。まず、1つ目は「RIZeSTアカデミー」です。
RIZeSTアカデミー
https://www.rizestinc.com/rizest-info-academy/
弊社が持つノウハウをアカデミー形式で伝えることで、教育機関、自治体や企業でeスポーツの内製化の促進を目指すことを目的としています。
例えば、あるゲームタイトルを用いたイベント、大会を行う場合、何をどう準備すればいいかわからなかったり、低予算でライブ発信したいけどやり方がわからないという方は、法人・個人を問わず数多くいます。
そのようなイベント、大会を仕切れる人がひとりでも増えて、eスポーツという文化をひとりでも多くの人に感じてほしい──そのための種をまく役割を目指しています。
このアカデミーのために作ったノウハウが詰まったテキストや技能体験を、eスポーツを勉強する教育機関に提供する試みもすでに開始しています。さらに、ひとりでも多くの方にお届けするために、そして学びやすさを担保するためにeラーニング形式の「オンラインアカデミー」の準備も進めています。
2つ目は、eスポーツに関わるコンサルティング業務ですね。
これは本当に多岐にわたっていて、家電量販店の「コト」売り提案から、企業のSNS運用までかなりの業務のふり幅があります。
SNSでは、どんな言語を用いて、どんな映像を切り取るか次第で得られるエンゲージメントの数に大きな影響が出ます。弊社は長年ゲームコミュニティの方々と活動を共にしてきているので、プロモーションしたい製品、イベント、技術などをどんな言葉とアセットを組み合わせて顧客やゲーマーにお届けするべきか、最適な効果を生み出すためのお手伝いができます。
また、eスポーツ関連施設を作りたい時には、2011年から弊社が大事に育ててきたeスクというブランドを生かせます。ハコのデザインだけでなく、どんなイベントを運営していくか、機材の選定から企画立案、そしてアカデミーのノウハウを生かした人財育成までパッケージしてお手伝いさせていただいています。
e-sports SQUARE AKIHABARA
https://e-sports-square.com/
特に最近は、ゲームに直接的に関わりがなかった衣・食・住に関わる企業や自治体などからもeスポーツを活用したい、取り組みたいという声が急増しています。
eスポーツの市場規模自体はまだまだ小さな領域なので、大きな市場で様々な知見やノウハウを持った方々にeスポーツを盛り上げようと応援していただけるのは大変有難いですし、そして、そういった方々のお手伝いをさせていただくことがシーンの盛り上がりのブーストにも繋がり、プレイヤー、ファンが喜んでくれるきっかけに携わらせていただくこと自体が、やりがいでもあり、率直に嬉しいですね。
弊社の強みとして、私を含めてメーカー出身者が在籍しているという点も挙げられます。主にマーケティングの観点からメーカー側がeスポーツにお金を出す本質的な意味や、求められているアウトプットが実体験として理解できている(そちら側の立場にいたので)のは大きなアドバンテージだと感じています。現在進行形でeスポーツの制作の前線で活動してきていることと、メーカー側のマーケティングに理解があることの掛け合わせが、RIZeSTのコンサルの強みだと考えています。
――すでに自分が持っていたRIZeSTの事業のイメージがガラっと変わりました(笑)。新サービスといえば、「PLAYHERA」というサービスもスタートされましたよね。
古澤:はい、これは大会運営とSNSを連動させたプラットフォーム事業で、CyberZさんと共同で「PLAYHERA JAPAN」という会社をジョイントベンチャーで立ち上げました。
PLAYHERA
https://japan.playhera.com/ja/
eスポーツの大型大会というのは、年数回とか招待選手や時にはプロゲーマー限定などで決して間口が広くはありません。でも本来ゲームは、友達と気軽に対戦したり大会を開いたりできるものだと思うんですね。
例えば、異なる地域のゲームコミュニティが横でつながって、継続的に対戦会とかを行ったりして……参加者だけでなくそのコミュニティの人たちがその熱量の様々な面に触れることができ、それをSNS機能で自慢しあったり、賞賛したり、戦績ページを見て唸ってみたりと……。ゲーム、eスポーツで生まれる喜怒哀楽を「見える化」することで他のコミュニティにも伝染して……というのが「PLAYHERA」で実現しようとしている世界です。
元々は、2018年にサウジアラビアに訪問した際に、eスポーツ事業を中東地域で推進されているファイサル王子からPLAYHERAのアイデアを持った人=PLAYHERAの現CEOのナイフさんを紹介していただき、話を聞いて10分で惚れ込んじゃったんです。コレは素晴らしいと(笑)。
ただ、冷静になってみると我々だけで運用するにはもったいないなと。その時に真っ先に浮かんだ企業がCyberZで、青村(陽介)さん、大友(真吾)さんにご相談したところ、「やりましょう」とトントンと話が進んでいきました。
――もうひとつ、「Giken Access」というサービスもRIZeSTとして業務提携、代理店契約を結ばれたとうかがいました。こちらはどういったサービスなんでしょうか?
古澤:「Giken Access」は、ゲームの配信者の影響力を、Twitch、OPENREC.tv、Mildom、YouTubeの4つのプラットフォームの中で定量的な数字で見比べることができる、マーケティングデータ分析ツールです。どのゲームタイトルがいま流行していて、今後流行するゲームタイトルは何か? 特定のゲームタイトルで誰が最も支持され、力を持っているのか? さらには特定の配信者はどんなゲームタイトルを用いてライブ配信を行い、それぞれのパフォーマンスはどうなのか? というのをプラットフォームをまたいで即座に分析が可能です。
例えば、同時接続平均1万人で配信は週に1回行うAさんと、同時接続平均3000人で配信は毎日欠かさず行っているBさんがいたとして、タイアップや協賛をオファーする企業にとってどちらが付加価値が高いのか? 惑わされやすいのですが、配信プラットフォーム毎に微妙に数字算出のロジックは異なっていて、YouTubeなのかTwitchなのかで、ユニークユーザー数などのカウントの仕方が若干違うんですね。
「Giken Access」で定義しているのは、同時接続数というY軸と、何時間見られたかというX軸を掛け合わせることによって導き出される「面積」で、これが広い方が企業にとって影響力のある、エンゲージ性のある配信である、という評価をしています。
こうした基準を作ることで、現在インフレ化している一部の有名配信者や配信チームだけが雪だるま式にギャラや知名度を上げていくのではなく、毎日配信している人たちがある程度ご飯を食べていける、日の目を見るきっかけを作りたい。そうすれば、クリエイターのモチベーションも上がって、エコサイクルがグっと広がるんじゃないかと考えています。
我々はイベント制作会社ですが、イベントに対するSNS等でのインフルエンサーの発信力ってすごいんですよね。特にゲームにおいては個人で売り込んでいる人も多い。「Giken Access」の数値を用いれば、そこに本当の意味での競争が生まれていくんじゃないかと。
――こうしたサービスなどを組み合わせていけることが、もともと持っていたイベント制作事業との相乗効果で、RIZeSTの強みになっているわけですね。
古澤:そうですね、労働集約型といいますか、ひとつの生モノに集約するという体質を変えて、はやり廃りではなくeスポーツやゲーム業界全体をもっとマクロな視点で見て、そこで我々が持っている能力やノウハウで貢献できるところで収益を上げておいて、カロリーのかかる生モノの部分にも十分な体力で挑める、というモデルへの移行は、継続的に行っていきたいと思っています。
※ ※ ※
後編では、「eスポーツ」が日本で定着した2019年以降と、新型コロナの問題が収束したあとの日本と世界のeスポーツについてうかがう。
株式会社RIZeST
https://www.rizestinc.com/
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