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ShiN選手のプロリーグ注目試合解説<EU・US・APAC North Day2~8>【FAV Gaming・ShiN選手のR6S戦術論】
皆さん、お久しぶりです。また、初めまして。PC版『レインボーシックス シージ(Rainbow Six Siege)』(以下『R6S』)のチーム、FAV gaming(ファブゲーミング)でリーダーを務めているShiN(シン)です。
前回に引き続き、私が以前配信で行っていたプロリーグの解説を定期連載として始めさせていただけるとのことで、執筆していきます。毎日どこかの地域で試合が行われていて豪華な反面、多すぎて全部は見れないといった方におすすめの試合をいくつかご紹介し、試合を見る前のポイント、試合中のポイントを解説していこうと思います。
今回は、Brasileirão(ブラジル地域)を除く各メジャー地域(EU、US、APAC North)になります。
ピックアップ マッチはDay4に行われたSecret vs Team Vitality(以下、Vitality)の1戦です。
マップはテーマパーク。NAリーグでは頻繁にプレイされていますが、EUリーグでは某選手がどう攻略するかわからないと言っていたほど嫌っているイメージがあります。
まずは第1ラウンド。遊撃はPrano選手単独というそこまで珍しい防衛ではありませんでしたが、最後の攻防では画像のようにプラントしたい箇所が2つある中、SHA77E選手やDrvn選手が阻害しており、Vitality側がこの2人をどう排除するか注目されました。
Goga選手のアクアブリーチャーによって盾を破壊し、Drvn選手の詰めもカバーでプラント設置まで入りましたが、Secretの新IGL・pacbull選手がスモークのガスグレネードを巧妙に使い、設置中のGoga選手を倒すことでクラッチ。1ラウンド目から熱い戦いが見られます。
防衛有利とされているテーマパークでしたが、終始押しているのはVitalityでした。
第2ラウンド目のデイケア-宿舎側では、アーケード階段を主体に戦いが繰り広げられ、下から上がるrisze選手を囮として、上からHungry選手がカバーで入り、ポイントを奪取します。
この順番も下を囮として上がカバーなので、次にW廊下へのピークもカバーでき、理想の形をとっていました。単独進行していたBiBoo選手もかなり効いていたように見えました(相手がグレーゾーンを増やす結果につながったためです)。
しかし、Secretもpacbull選手の対応が光り、次々と防衛を取得していきました。第5ラウンドでは、カバーの応酬によって右上のキルログが埋め尽くされました。
攻守交替した第8ラウンド目では、先ほどVitality側が用意したエリア奪取の方法とは違い、Secretはインを用意して突破を試みますが、多方向からのカバーを入れられラウンドを落としました。
個人的にはグレネード等投げ物とスモークを投げて取るのがベストだと思うので、どちらも担当するインでは難しいと感じられました。
第9ラウンドでは、グレーゾーンをうまく利用したFabian選手が裏を取る動きを行いHife選手を倒しますが、カフェ側から詰めていたPrano選手のダブルキルによってラウンドはSecretが取得しました。
最終ラウンドでは、先ほどのメンテナンスからの玉座攻めから変更して、N階段下を割った武器庫攻めの選択肢を取ったSecret。
武器庫は上からの突き下げで射線をかなり制限させられるので効果的ですが、時間が足りなくなるケースが多いです。しかし、その少ない時間の中で切りたい射線、倒したい敵を着実と倒していったSecretがラウンドを取得し、7-4で勝利しました。
テーマパークでは基本的に防衛有利となるので、ラウンド間での緻密な作成や対応の再構築が求められますが、pacbull選手というIGLが加入したSecretの今期の戦いぶりを見ているとスムーズに指示が通っているように思えました。
そんな中、Day8で行われたTSMとSSGの一戦をピックアップしました。
お互いにこれ以上は負けられない戦いの中、領事館、カフェ、テーマパークが選ばれました。前回の戦いではSSGが勝利しましたが、この2チームはスタイルや守り方、攻め方も似ていて1つのミスが大きな命取りになるような試合になるかと思われました。
まずは第1マップの領事館。
お互い似ているスタイル故、最初に仕掛けたのは防衛側のTSM。
Achieved選手が先制のラペリングに対するC4でBosco選手を落としていきました。
このC4に関しては、ラペリング音を聞いて投げる・起爆タイミングを調節するだけで1キルが簡単なので、練習必須です。
最終プランにかけての流れが綺麗すぎるが故に、少しの予想外や連携ミスによって大きな被害を被るのもこの2チームの特徴ですが、領事館ではSSG側にその傾向が見られました。
例えば、画像の円卓攻め。トイレ中には2Fからゾフィアのコンカッションなどを入れていますが、ピアノに対してはアッシュのFultz選手が1秒降りるのが遅れ、被害が広がりました。もちろん結果論でしかないですが、小さなところから大きな傷に広がりやすいのもまた特徴です。
第6ラウンドでは、円卓側からのMerc選手の飛び出しラペリングキルなど、アクションは常にTSMが起こし、防衛を次々と取得していきました。
攻守入れ替わってからそのままずるずる……かと思われましたが、Bosco選手やRampy選手を筆頭に、TSMへ果敢に前目の遊撃やリテイクを仕掛け、防衛を取得していました。
一般的に1-5の折り返しだと1本1本大事にいかなきゃと委縮してしまうチームが多いですが、実はこれは逆効果で、いつもよりも気持ち強めにもっていかないと普段通りのことすらできなくなります。この面はVCでも大事で、負けている時の落ち込んだり苛立ったりするVCをいくつか経験ありますが、それも自滅を誘ってしまいます。
この場の、この2人の動きは通常だったら行われなかったのかもしれませんが、この負けている場面だからこそ刺さり、チームに士気を取り戻していたのではないかと思います。
続くラウンドも前目に来ましたが、TSMの管理事務の取り方は冷静でした。
East側とSouth側にそれぞれラペリングを入れておき、グレネード(ここではブリーチング弾)でまずSouth側のヴィジルを排除しました。そうなると残るN側ですが、例えばSouthやEast側片方からラペリングエントリーした場合、もう片方のラペリングからピークしてくるイェーガーが見えます。
囮になるため、ひょっとしたらキルを取られるかもしれませんが、ここは必要な勝負のため、勝利したTSMが管理事務を奪取します。
これで冷静さを取り戻したTSMは続く第10ラウンドも取得し、スコア7-3で領事館を勝利しました。逆にSSGは10ラウンド目でも同じような防衛を展開し、同じようなやられ方をしていたので、そこでの対応はあまり見られませんでした。
続く第2マップはカフェ。どちらかといえばSSGの得意マップのような印象があります。
領事館から続けてTSMは防衛スタートで果敢にアタックを試みます。対するSSGもBosco選手のクラッチなどでポイントを重ねます。
しかし、TSMは1ラウンド目から読書室・暖炉室にて固い防衛を構築します。
1ラウンド目はGeometrics選手のクラッチもありましたが、例えば4ラウンド目では画像のような固い防衛に対し、SSGはガジェットを壊しロックも入れて丁寧に進めますが、時間を使わせるだけでよいと判断したTSMは残り1分を前に全員が3Fから2Fに下がります。
狙いは正確で、確かに人数有利も取れている状況で交戦が始まると人数イーブンか不利になる可能性もあるので、そのリスクをTSMが避けた形であり、かつ5人いれば、その後スレッジが上から突き下げする時間も考えると十分です。
時間を使わせる戦略で防衛を取得します。
SSGは1Fのみ組織的な攻撃を展開します。画像のようにカピタオのガスボルトを使用して相手の有利ポジから敵を排除してプラントに進めます。
攻守入れ替わってTSMの攻撃では、同じような防衛を展開するSSGに対して現地に下がるであろう時間帯にBeaulo選手がポイントに切り込んでいき、下がりをカットするなど、相手の動きが似てるが故に弱点も把握しているような立ち回りを披露していました。
攻撃に変わってからのTSMは自分たちが何をされたら嫌なのかを把握し、的確に弱点をついていく攻撃を展開し続け、SSGは逆にどう対応すべきなのか明白になっていないようでした。
結果カフェも7-3でTSMの勝利となり、スコア2-0でTSMの勝利に終わりました。
NAリーグも終盤を迎えますが、SSGは厳しくなった印象です。逆にTSMは1敗はしているものの、次につなげるような戦いを見せてくれました。相手がSSGだったからなのかもしれませんが。
次節も楽しみです。
現在行われているのはStage2で、Stage1ではGiants Gaming(以下、Giants)が圧倒的な強さ(9勝1敗)をみせて優勝していますが、その後の「Six August 2020 Major」ではCloud9が決勝で3-1と優勝を飾りました。
Stage1の勝敗
Stage2の勝敗
そんな中行われた大一番は、Day2に行われたCloud9 vs Giantsの一戦。
Giants、Cloud9共にStage1からのメンバー変更はなく、共に後半戦に向けてどんどん調子が良くなっていったチームです。ピック マップはヴィラ。
Giantsが防衛、Cloud9が攻撃でスタート。一般的にヴィラは防衛有利とされているマップですが、前回の対戦ではCloud9が7-4(攻撃は3-2)で勝利しています。
第1ラウンドはGiantsが取得し、続く第2ラウンド。このラウンドも積極的にGiantsに勝負を仕掛けられ、Cloud9が3vs4と人数不利を背負いますが、Harp3rXD選手のHysteRiX選手への1vs1の勝利がきっかけとなり、Cloud9がラウンド勝利をもぎ取りました。
このケースでは攻めあぐねるチームが多い中、フォーカスを合わせて決めた場所(今回Cloud9が選択したのは最終的な石像側での設置)への攻めはCloud9の勢いがありました。
続く第3ラウンドもCloud9は攻撃を通し、リードを2-1に広げますが、Giants側も第3ラウンドでYsaera選手が単独でS階段を守り切る好プレイ。
S階段を守るのはタイミングよくピークすることと僅かな位置関係が大事になってくるが、どれも完ぺきにこなしていました。
第4ラウンドでは、Jrdn選手が厳しいリビングをHysteRiX選手、SpeakEasy選手のカバーを受けながらでありますが、単独で守り切りました。
第5ラウンドでは、細かな連携でGiants側の凄さが見られました。
このシーンは、3vs2でGiants側が不利なケース。ポイントにはLunarmetal選手しかおらず、HysteRiX選手は赤階段を上がるしかない場面ですが、そこにはアッシュのStatic選手がおり、簡単には上がれない場面。VCでどういう会話があったのかわかりませんが、Lunarmetal選手が現地を捨て赤階段に決め撃ちを行って注意を引き、HysteRiX選手が赤階段のアッシュを下から挟撃しました。
簡単なプレイに見えますが、これができているチームは意外と少ないです。リスクが頭に浮かぶからです。しかし、このケースではそのリスクも唯一の一手となり、2名生存で2vs2の状況になりました。
結果的にCloud9がラウンドを取得しますが、成す術なく負けた訳ではありません。最後まで気の抜けないラウンドにGiants側が持って行ったのです。
攻守が交代した第10ラウンドではGiantsの真骨頂が見られました。
画像のように、グレーゾーンを相手に多く作り出し、どこから来ているか、相手に焦点を絞らせない攻撃を展開していました。グレーゾーンをつくる(減らす)ことは『R6S』においてかなり重要なことで、セーフエリアかどうかわかっているわかっていないはその後の組み立てに大きく関わるのです。そして、それを意図的に作りやすいのがGiantsでした。
Cloud9も5-6と必死に粘りましたが、最終ラウンドもGiantsの囲い込み、グレーゾーンを作り出す動きに翻弄されて惜しくも敗戦を喫しました。
APAC Northの雌雄を決する戦い。今回はGiantsの勝利になりましたが、次回の対戦ではどうなるのでしょうか。
皆さんはいかがでしたでしょうか。今回の解説は一部になりますが、自分なりに細かいドローニングや立ち回りを考えてみると実はかなり意味のある動きだったりするので、それを探しながら見直してみるのも楽しいと思います。
ではまた次回の解説でお会いしましょう。
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レインボーシックス シージ
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前回に引き続き、私が以前配信で行っていたプロリーグの解説を定期連載として始めさせていただけるとのことで、執筆していきます。毎日どこかの地域で試合が行われていて豪華な反面、多すぎて全部は見れないといった方におすすめの試合をいくつかご紹介し、試合を見る前のポイント、試合中のポイントを解説していこうと思います。
今回は、Brasileirão(ブラジル地域)を除く各メジャー地域(EU、US、APAC North)になります。
EU League Day2-Day6
EU LeagueはDay6を終えた時点でBDS Esportsが圧倒的な強さで首位になります。続いて前回記事で解説したTeam Secret(以下、Secret)が好調で2位。今シーズンは前シーズンよりは安定した強さを見せているTeam Empireが3位と続きます。ピックアップ マッチはDay4に行われたSecret vs Team Vitality(以下、Vitality)の1戦です。
マップはテーマパーク。NAリーグでは頻繁にプレイされていますが、EUリーグでは某選手がどう攻略するかわからないと言っていたほど嫌っているイメージがあります。
まずは第1ラウンド。遊撃はPrano選手単独というそこまで珍しい防衛ではありませんでしたが、最後の攻防では画像のようにプラントしたい箇所が2つある中、SHA77E選手やDrvn選手が阻害しており、Vitality側がこの2人をどう排除するか注目されました。
Goga選手のアクアブリーチャーによって盾を破壊し、Drvn選手の詰めもカバーでプラント設置まで入りましたが、Secretの新IGL・pacbull選手がスモークのガスグレネードを巧妙に使い、設置中のGoga選手を倒すことでクラッチ。1ラウンド目から熱い戦いが見られます。
防衛有利とされているテーマパークでしたが、終始押しているのはVitalityでした。
第2ラウンド目のデイケア-宿舎側では、アーケード階段を主体に戦いが繰り広げられ、下から上がるrisze選手を囮として、上からHungry選手がカバーで入り、ポイントを奪取します。
この順番も下を囮として上がカバーなので、次にW廊下へのピークもカバーでき、理想の形をとっていました。単独進行していたBiBoo選手もかなり効いていたように見えました(相手がグレーゾーンを増やす結果につながったためです)。
しかし、Secretもpacbull選手の対応が光り、次々と防衛を取得していきました。第5ラウンドでは、カバーの応酬によって右上のキルログが埋め尽くされました。
攻守交替した第8ラウンド目では、先ほどVitality側が用意したエリア奪取の方法とは違い、Secretはインを用意して突破を試みますが、多方向からのカバーを入れられラウンドを落としました。
個人的にはグレネード等投げ物とスモークを投げて取るのがベストだと思うので、どちらも担当するインでは難しいと感じられました。
第9ラウンドでは、グレーゾーンをうまく利用したFabian選手が裏を取る動きを行いHife選手を倒しますが、カフェ側から詰めていたPrano選手のダブルキルによってラウンドはSecretが取得しました。
最終ラウンドでは、先ほどのメンテナンスからの玉座攻めから変更して、N階段下を割った武器庫攻めの選択肢を取ったSecret。
武器庫は上からの突き下げで射線をかなり制限させられるので効果的ですが、時間が足りなくなるケースが多いです。しかし、その少ない時間の中で切りたい射線、倒したい敵を着実と倒していったSecretがラウンドを取得し、7-4で勝利しました。
テーマパークでは基本的に防衛有利となるので、ラウンド間での緻密な作成や対応の再構築が求められますが、pacbull選手というIGLが加入したSecretの今期の戦いぶりを見ているとスムーズに指示が通っているように思えました。
US Division Day4-Day8
US Divisionでは、好調を維持するDarkZero Esports(以下、DarkZero)とOxygen Esports(以下、Oxygen)と反対に、Team SoloMid(以下、TSM)とSpacestation Gaming(以下、SSG)の苦戦が目立ちます。そんな中、Day8で行われたTSMとSSGの一戦をピックアップしました。
お互いにこれ以上は負けられない戦いの中、領事館、カフェ、テーマパークが選ばれました。前回の戦いではSSGが勝利しましたが、この2チームはスタイルや守り方、攻め方も似ていて1つのミスが大きな命取りになるような試合になるかと思われました。
まずは第1マップの領事館。
お互い似ているスタイル故、最初に仕掛けたのは防衛側のTSM。
Achieved選手が先制のラペリングに対するC4でBosco選手を落としていきました。
このC4に関しては、ラペリング音を聞いて投げる・起爆タイミングを調節するだけで1キルが簡単なので、練習必須です。
最終プランにかけての流れが綺麗すぎるが故に、少しの予想外や連携ミスによって大きな被害を被るのもこの2チームの特徴ですが、領事館ではSSG側にその傾向が見られました。
例えば、画像の円卓攻め。トイレ中には2Fからゾフィアのコンカッションなどを入れていますが、ピアノに対してはアッシュのFultz選手が1秒降りるのが遅れ、被害が広がりました。もちろん結果論でしかないですが、小さなところから大きな傷に広がりやすいのもまた特徴です。
第6ラウンドでは、円卓側からのMerc選手の飛び出しラペリングキルなど、アクションは常にTSMが起こし、防衛を次々と取得していきました。
攻守入れ替わってからそのままずるずる……かと思われましたが、Bosco選手やRampy選手を筆頭に、TSMへ果敢に前目の遊撃やリテイクを仕掛け、防衛を取得していました。
一般的に1-5の折り返しだと1本1本大事にいかなきゃと委縮してしまうチームが多いですが、実はこれは逆効果で、いつもよりも気持ち強めにもっていかないと普段通りのことすらできなくなります。この面はVCでも大事で、負けている時の落ち込んだり苛立ったりするVCをいくつか経験ありますが、それも自滅を誘ってしまいます。
この場の、この2人の動きは通常だったら行われなかったのかもしれませんが、この負けている場面だからこそ刺さり、チームに士気を取り戻していたのではないかと思います。
続くラウンドも前目に来ましたが、TSMの管理事務の取り方は冷静でした。
East側とSouth側にそれぞれラペリングを入れておき、グレネード(ここではブリーチング弾)でまずSouth側のヴィジルを排除しました。そうなると残るN側ですが、例えばSouthやEast側片方からラペリングエントリーした場合、もう片方のラペリングからピークしてくるイェーガーが見えます。
囮になるため、ひょっとしたらキルを取られるかもしれませんが、ここは必要な勝負のため、勝利したTSMが管理事務を奪取します。
これで冷静さを取り戻したTSMは続く第10ラウンドも取得し、スコア7-3で領事館を勝利しました。逆にSSGは10ラウンド目でも同じような防衛を展開し、同じようなやられ方をしていたので、そこでの対応はあまり見られませんでした。
続く第2マップはカフェ。どちらかといえばSSGの得意マップのような印象があります。
領事館から続けてTSMは防衛スタートで果敢にアタックを試みます。対するSSGもBosco選手のクラッチなどでポイントを重ねます。
しかし、TSMは1ラウンド目から読書室・暖炉室にて固い防衛を構築します。
1ラウンド目はGeometrics選手のクラッチもありましたが、例えば4ラウンド目では画像のような固い防衛に対し、SSGはガジェットを壊しロックも入れて丁寧に進めますが、時間を使わせるだけでよいと判断したTSMは残り1分を前に全員が3Fから2Fに下がります。
狙いは正確で、確かに人数有利も取れている状況で交戦が始まると人数イーブンか不利になる可能性もあるので、そのリスクをTSMが避けた形であり、かつ5人いれば、その後スレッジが上から突き下げする時間も考えると十分です。
時間を使わせる戦略で防衛を取得します。
SSGは1Fのみ組織的な攻撃を展開します。画像のようにカピタオのガスボルトを使用して相手の有利ポジから敵を排除してプラントに進めます。
攻守入れ替わってTSMの攻撃では、同じような防衛を展開するSSGに対して現地に下がるであろう時間帯にBeaulo選手がポイントに切り込んでいき、下がりをカットするなど、相手の動きが似てるが故に弱点も把握しているような立ち回りを披露していました。
攻撃に変わってからのTSMは自分たちが何をされたら嫌なのかを把握し、的確に弱点をついていく攻撃を展開し続け、SSGは逆にどう対応すべきなのか明白になっていないようでした。
結果カフェも7-3でTSMの勝利となり、スコア2-0でTSMの勝利に終わりました。
NAリーグも終盤を迎えますが、SSGは厳しくなった印象です。逆にTSMは1敗はしているものの、次につなげるような戦いを見せてくれました。相手がSSGだったからなのかもしれませんが。
次節も楽しみです。
APAC North Day1-Day6
APAC North地域では、スイスドロー形式のリーグ戦が10日間にわたって行われます。BO1形式で引き分けなしのため、1日1日、1試合1試合が重要になってきます。日本、韓国、東南アジアから集った12チームにより行われており、地域がバラバラなためチームによって特色が大きく違うのが特徴のリーグになります。現在行われているのはStage2で、Stage1ではGiants Gaming(以下、Giants)が圧倒的な強さ(9勝1敗)をみせて優勝していますが、その後の「Six August 2020 Major」ではCloud9が決勝で3-1と優勝を飾りました。
Stage1の勝敗
Stage2の勝敗
そんな中行われた大一番は、Day2に行われたCloud9 vs Giantsの一戦。
Giants、Cloud9共にStage1からのメンバー変更はなく、共に後半戦に向けてどんどん調子が良くなっていったチームです。ピック マップはヴィラ。
Giantsが防衛、Cloud9が攻撃でスタート。一般的にヴィラは防衛有利とされているマップですが、前回の対戦ではCloud9が7-4(攻撃は3-2)で勝利しています。
第1ラウンドはGiantsが取得し、続く第2ラウンド。このラウンドも積極的にGiantsに勝負を仕掛けられ、Cloud9が3vs4と人数不利を背負いますが、Harp3rXD選手のHysteRiX選手への1vs1の勝利がきっかけとなり、Cloud9がラウンド勝利をもぎ取りました。
このケースでは攻めあぐねるチームが多い中、フォーカスを合わせて決めた場所(今回Cloud9が選択したのは最終的な石像側での設置)への攻めはCloud9の勢いがありました。
続く第3ラウンドもCloud9は攻撃を通し、リードを2-1に広げますが、Giants側も第3ラウンドでYsaera選手が単独でS階段を守り切る好プレイ。
S階段を守るのはタイミングよくピークすることと僅かな位置関係が大事になってくるが、どれも完ぺきにこなしていました。
第4ラウンドでは、Jrdn選手が厳しいリビングをHysteRiX選手、SpeakEasy選手のカバーを受けながらでありますが、単独で守り切りました。
第5ラウンドでは、細かな連携でGiants側の凄さが見られました。
このシーンは、3vs2でGiants側が不利なケース。ポイントにはLunarmetal選手しかおらず、HysteRiX選手は赤階段を上がるしかない場面ですが、そこにはアッシュのStatic選手がおり、簡単には上がれない場面。VCでどういう会話があったのかわかりませんが、Lunarmetal選手が現地を捨て赤階段に決め撃ちを行って注意を引き、HysteRiX選手が赤階段のアッシュを下から挟撃しました。
簡単なプレイに見えますが、これができているチームは意外と少ないです。リスクが頭に浮かぶからです。しかし、このケースではそのリスクも唯一の一手となり、2名生存で2vs2の状況になりました。
結果的にCloud9がラウンドを取得しますが、成す術なく負けた訳ではありません。最後まで気の抜けないラウンドにGiants側が持って行ったのです。
攻守が交代した第10ラウンドではGiantsの真骨頂が見られました。
画像のように、グレーゾーンを相手に多く作り出し、どこから来ているか、相手に焦点を絞らせない攻撃を展開していました。グレーゾーンをつくる(減らす)ことは『R6S』においてかなり重要なことで、セーフエリアかどうかわかっているわかっていないはその後の組み立てに大きく関わるのです。そして、それを意図的に作りやすいのがGiantsでした。
Cloud9も5-6と必死に粘りましたが、最終ラウンドもGiantsの囲い込み、グレーゾーンを作り出す動きに翻弄されて惜しくも敗戦を喫しました。
APAC Northの雌雄を決する戦い。今回はGiantsの勝利になりましたが、次回の対戦ではどうなるのでしょうか。
最後に
各地域いよいよ後半戦に入り1戦1戦落とせない戦いが続く中、それぞれ意味がある戦いを繰り広げていて、見ていてとても楽しいです。皆さんはいかがでしたでしょうか。今回の解説は一部になりますが、自分なりに細かいドローニングや立ち回りを考えてみると実はかなり意味のある動きだったりするので、それを探しながら見直してみるのも楽しいと思います。
ではまた次回の解説でお会いしましょう。
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レインボーシックス シージ
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