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ShiN選手のプロリーグ注目試合解説 <EU・US・Brasileirão Day9~10>【FAV Gaming・ShiN選手のR6S戦術論】
皆さん、お久しぶりです。また、初めまして。PC版『レインボーシックス シージ(Rainbow Six Siege)』(以下『R6S』)のチーム、FAV gaming(ファブゲーミング)でリーダーを務めているShiN(シン)です。
前回に引き続き、私が以前配信で行っていたプロリーグの解説を定期連載として始めさせていただけるとのことで、執筆していきます。毎日どこかの地域で試合が行われていて豪華な反面、多すぎて全部は見れないといった方におすすめの試合をいくつかご紹介し、試合を見る前のポイント、試合中のポイントを解説していこうと思います。
今回は、EU(欧州)、US(米国)、Brasileirão(ブラジル地域)から3試合ピックしました。今回でレギュラーシーズンは一区切りとなり、11月より各地域で「November Six Major」が始まります。(※コロナウィルスの影響から8月同様地域単位でオンラインで実施予定)
一方で、Stage1の首位Rogueは事情もあり最下位になり、「Six August 2020 Major」2位のG2 Esportsは7位と低迷しました。EUリーグは既にChaos Esports Clubの降格が確定しており、Rogueも降格戦に回りました。「November Six Major」には上位4チーム。BDS、Team Empire、Tempra Esports、Virtus.pro(以下、VP)が出場します。
さて、そんな中でも今回ピックアップマッチとして選んだのはBDSとVPの1戦。
マップは海岸線。戦術が飽和状況にあり、一般的には攻撃に圧倒的有利なマップとなります。そのため、攻撃は何種類も作戦があり見ていて楽しいですが、防衛は厳しく、クラッチに頼る場面も多くみられます。
作戦というよりは、細かなFPS的な要素も踏まえて解説できればと思います。海岸線以外にも応用できますよ。
第1ラウンド目は、EUリーグでも最も成績の良いアタッカーであるShaiiko選手がフッカーラウンジから早めのエントリー。画像のように丁寧なドローンによるピン位置報告も正確で、元々撃ち合いの強い選手は敵の位置がわかっている撃ち合いは難なく制していきます。
この時、屋上からRaFaLe選手、Shaiiko選手の後方にはElemzje選手と、カバーやロックの体制も盤石でした。R6Sは上下左右と立体的なマップ構造のうえ、他のFPSと違いドローンが画期的な情報源なので、このラウンドのように有効活用すれば試合を有利に進めることができます。
海岸線というマップの特徴もあり、BDSのような2Fから囲い込んで(もしくは一転突破して)くる相手に対しては、VPの取ったような劇場とペントハウスの間に2枚補強+ミラ窓を貼って上下カバーとして、下からミュートやミラのC4、ショットガンによる援護が効率的とされています。
しかし、L字のカメラ下の撃ち合い勝負もライブドローンやFPS要素の高いキャラコンによってShaiiko選手を落とすことができず、BDSの起点となり続けました。
小さなテクニックですが、例えば画像のp4sh4選手のように、フッカー階段上に盾とADSを置いて相手にフラッシュバンやグレネード等をあえて使わせる動きをさせ、投げる瞬間に頭1個分見えたところで撃ち合うというのも手です。
投げ物やガジェットを使うときは銃は撃てません。私もよく使っていますが、小さなテクニックが試合では生きることも大きいです。
緩急のつけ方という点では、先ほどまではライブドローンやキャラコンを使って早い段階でエリア制圧に行っていたShaiiko選手は、自分が走った瞬間に相手がピークしてくると考え、あえてロックして待つ選択肢も取っています。
相手の心理を読む動きは現状打開に焦る相手にとてもよく刺さります。
あまり見ない射線からの撃ち込みも初見狩りチックではありますが、面白いですね。
細かいところですが、設置状況で1vs3という人数有利の状況でも慢心せず、180度のクロスで詰めているというのも意外とできそうでできていないポイントです。
この試合はお互いが防衛を取り合うという昨今の海岸線にしては珍しい環境でしたが、こういった細かいFPS的な基礎ポイントで勝るBDSが勝利したというのも納得ではあります。
ここまで見てきて、EUリーグはBDSが少しレベル抜けしているという印象を受けました。しかし、BDSのスタイルに近いTeam Empireや奇抜なラッシュ等を織り交ぜて3位と躍進したTempra Esports、そしてVPと、レベルの高いEUリーグでは「November Six Major」がどのような結果になるのかは未だに想像できません。
他に、Team SoloMid(以下、TSM)とOxygen Esports(以下、Oxygen)も決めましたが、前回の「Six Invitational 2020」優勝者のSpacestation Gaming(以下、SSG)はやや低迷し、NAL Qualifierを勝ち進む必要が出てきました。
今回は、NAL Qualifierに出場したチームのうち、決勝BO5となったSSG vs Disrupt Gaming(以下、DG)の試合をピックアップマッチに選択しました。
全試合解説となると膨大になるのでその中から激戦となったオレゴンを見ていきます。
NAリーグは狙いがわかりやすく、なぜその選択肢を取ったのか、方程式のように理解することができます。
例えば画像の画面だとDG側は「大窓から入ってプラントしたい」という意図があります。それに対して、「子供からピークされている」「キッチン階段上からピークされている」という2つの斜線に対してスモークを焚いているのがわかります。結果、合わせるように防衛はC4を投げたり、射線をスモークガスグレネードで切ったりして詰める・詰めないの判断を行います。
2ラウンド目、SSG側の地下防衛ですがこれもわかりやすいですね。バンカーから扇風機のあたりを取って斜線を通します。この射線があれば冷蔵庫とスモークがいる位置あたりからの詰めを見ることができます。
プラント寄りであれば、ハッチから降りたり、柱のほうから詰めたりでプラントを狙えますし、カウンターとしてゴヨのあたりからC4やスモークガスグレネードを投げて阻止することができます。
後はカバーの繰り返しで人数を削りあう、というのが大まかなプランですね。細かく言えば、例えばC4を囮にしてその間に防衛が詰めたり、攻撃もあえて一人を犠牲にさせてC4を投げている防衛側を倒しに行ったりという選択肢もありますね。
3ラウンド目のキッチン・ダイニングの防衛では、大まかな攻撃側の狙いはシャワールームを取って、ダイニングの補強壁を割った場所か、廊下から入ったところの2択でプラントします。そのため、シャワールームの中にできるだけ相手の進行を阻害・迎撃できるマエストロを置いて、廊下側にはメルシーと展開型シールドを置いています。
これで攻撃側は少なくともフラッシュバンやグレネード等で壊す「前段階」を強いられます。
実際、DGはその狙いを半分は成功させましたが、Rampy選手のシャワー前廊下のプッシュに気づけず、人数を削られてしまいます。
この後1vs1までもっていったのは流石ですが、シャワーの攻防が肝ということはお互いわかっていたようですね。
第4ラウンドも1ラウンド目と同じ狙いでしたが、人数不利で少人数戦になると同じ狙いはなかなか通りません。NAには前目の戦いとそれに対する対応力というのが見どころなのかもしれません。
初めて試合を見る方は、NAのチームの意図を考察してみるとわかりやすく面白いです。ただ、例えば将棋でもいろんな戦術、局面によっての選択肢が増えるので、その部分での対応力という面では対応できた方が勝利するという流れになっています。
SSG側の攻撃に対しても、DG側はShuttle選手がウォーデンをピックして相手の煙戦術(前ラウンドではエースとジャッカル)にカウンターメタを敷こうとしますが、SSG側はジャッカルから6thピックでゾフィアにしたりとこのあたりで読みあいが行われています。
その前のラウンドは機材トラブルもあり全部は映っていませんが、おそらく印の部分にスモークを焚いてのプラントだったのかなと思います。
現環境ではエースがほぼ必須でピックされるので、カウンターとしてウォーデンはかなり強く、続く12ラウンド目もDG側はウォーデンをピックして獲得。このマップを制しています。
最終的にはスコア2-3でDGは負けてしまうのですが、SSG側に1ポイント最初からあったことを考えると白熱した試合だったと思います。NAリーグは細かく解説しがいのあるスタイルのチームが多いので、皆さんも一度見てみてはいかがでしょうか。
他地域でも、NAチックと私が呼んでいるチームがあり、EUではBDS、Team Empire、APACではCloud9、GUTS Gaming、Xavier Esportsといったところだと思います。最近のトレンドでもあるので、一度分析して真似してみるのも面白いかもしれません。
さて、NAリーグも11月から「November Six Major」が始まりますが、正直今の段階だとDarkZeroの優位は揺るがないのかなと思います。基本的なNAチックのスタイルに、Skys選手の加入によって少しスパイスをかけることができるのが大きいです。続くTSMやEUチックなOxygenも楽しみです。
最後にブラジル地域を紹介します。
ブラジル地域では、Team oNe eSports(以下、T1)が躍進しました。過去には世界大会への出場経験もある良いチームでしたが、Ninjas in Pyjamas(以下、NiP)、Team Liquid(以下、Liquid)、MIBR、FaZe Clan(以下、FaZe)の4強を崩せず。しかし今回はFaZeが低迷したほかにもパワーアップした結果、堂々の首位となりました。
ブラジル地域は他より早く、「November Six Major」が開始されたのでその中からT1 vs NiPの試合をピックアップマッチとして選出しました。
この中からクラブハウスを解説します。
ブラジルでは、クラブハウス、領事館、海岸線が特に人気が高く、レギュラーシーズンでも最多のプレイ回数を誇っていました。T1、NiP共にクラブハウスを苦手としませんが、NiPは以前0-7で負けたこともあります。
第1ラウンド目からT1は仕掛けます。プロリーグではNA、EU、APACでピック回数が0だったバー・倉庫防衛から始まります。僕の所属するFAV gamingは以前好んでピックしており、勝率も高かった記憶がありますが、どちらかといえば初見狩り的な要素も多く含んでいます。
基本的には赤い矢印のように攻撃側は上下でエリアを確保し、倉庫設置を目指します。対する防衛側のピックを見るに、ミュートとモジ―によってドローンメタを敷き、かつヴァルキリーによって情報を得て防衛するといった感じです。
NiP側も慣れているのか、流石のエリア確保手順を踏んでおり、5vs3と人数有利をもぎ取りますが、reduct選手、Faallz選手のSMG-11コンビによって人数がまくられ、1vs1になり時間切れ。T1が1ラウンド目を勝利します。
2ラウンド目も序盤はNiPペースで人数有利を取りながら進めますが、画像のようなFelipoX選手のクラッチなどでラウンドを落としてしまいます。
3ラウンド目の金庫監視でもreduct選手のEastテラス、West窓を排除する撃ち合いの強さを見せつけ人数不利を覆します。
NiPがようやくポイントを取得したのは5ラウンド目。地下防衛でキッチン上下を主戦場とするT1に対して、上下の撃ち合いで人数有利を取り続けてラウンドを取得します。
キッチン攻めを行う場合は、下からのインパクトグレネードによる阻害や、C4によるキッチン排除に対して上からうち勝てるかが割と大事になってきます。撃ち合いの強いT1の選手に対しても臆することなく勝負して勝っていったpino選手の貢献度も高いと言えるでしょう。
攻守入れ替わった8ラウンド目では、T1のreduct選手のベッド中と監視側ピークの2枚抜きという驚くべき撃ち合い・読みあいによってNiP側は致命的なダメージを受けます。
一人でダブルカバーしているわけですから、NiP側の選択は悪くありません。欲を言えば同時にピークしたかったですが、コンマ数秒のずれをうち勝ったreduct選手を褒めるべきでしょう。
最終ラウンドでも、設置を止めれば勝ちのこのシーン。確かにjulio選手の詰めが少し早く後方2名がわずかに遅れましたが、Lukidera選手がjulio選手、Pino選手両方をカットする一人二役の活躍で勝負を決めました。
試合を通して、NiPの選択は悪くなくプランも思い通り進んでいたように思えます。ただ、わずかばかりのずれとそのずれを有利に動かせたT1がラウンドを重ねたのではないかと思います。
ブラジルの試合はNAチックなのですが、より撃ち合いに寄っており、わずかなずれを許さない面白い試合が多いです。私もやりたいことの手札に悩んだらブラジルの試合をよく見ていますし、参考になることも多いと思います。
ブラジルはT1とLiquidが決勝に進んでいます。試合内容は次回の解説でお届けします。
これでレギュラーシーズンの解説は終わりますが、次回は「November Six Major」の決勝戦を中心に解説したいと思いますので、ご一読ください。地域ごとに特色のあるリーグですが、私の解説はそのごく一部になります。自分なりになぜ? を考えて消化して勉強して細かいところで言うと、ドローニングや立ち回りを考えてみると実はかなり意味のある動きだったりするのでそれを探しながら見直してみるのも楽しいと思います。
ではまた次回解説でお会いしましょう。
FAV gamingのTwitter
https://twitter.com/fav_gaming
ShiN選手のTwitter
https://twitter.com/shinreins09
レインボーシックス シージ
http://www.ubisoft.co.jp/r6s/
前回に引き続き、私が以前配信で行っていたプロリーグの解説を定期連載として始めさせていただけるとのことで、執筆していきます。毎日どこかの地域で試合が行われていて豪華な反面、多すぎて全部は見れないといった方におすすめの試合をいくつかご紹介し、試合を見る前のポイント、試合中のポイントを解説していこうと思います。
今回は、EU(欧州)、US(米国)、Brasileirão(ブラジル地域)から3試合ピックしました。今回でレギュラーシーズンは一区切りとなり、11月より各地域で「November Six Major」が始まります。(※コロナウィルスの影響から8月同様地域単位でオンラインで実施予定)
EU League
EU Leagueの最終節を終えた段階での順位表を見ていきましょう。「Six August 2020 Major」を優勝したBDS Esport(以下、BDS)は勢いそのままに首位をキープ。続いてStage1ではやや低調気味の古豪Team Empireが2位フィニッシュしました。3位、4位も前回と少し変わっています。一方で、Stage1の首位Rogueは事情もあり最下位になり、「Six August 2020 Major」2位のG2 Esportsは7位と低迷しました。EUリーグは既にChaos Esports Clubの降格が確定しており、Rogueも降格戦に回りました。「November Six Major」には上位4チーム。BDS、Team Empire、Tempra Esports、Virtus.pro(以下、VP)が出場します。
#R6EUL Stage 2 is done!
— Rainbow Six Esports EU (@R6esportsEU) October 19, 2020
Here are the standings after all playdays. Top 4 will take part in the November #SixMajor! pic.twitter.com/tjVDzRa6mP
さて、そんな中でも今回ピックアップマッチとして選んだのはBDSとVPの1戦。
マップは海岸線。戦術が飽和状況にあり、一般的には攻撃に圧倒的有利なマップとなります。そのため、攻撃は何種類も作戦があり見ていて楽しいですが、防衛は厳しく、クラッチに頼る場面も多くみられます。
作戦というよりは、細かなFPS的な要素も踏まえて解説できればと思います。海岸線以外にも応用できますよ。
第1ラウンド目は、EUリーグでも最も成績の良いアタッカーであるShaiiko選手がフッカーラウンジから早めのエントリー。画像のように丁寧なドローンによるピン位置報告も正確で、元々撃ち合いの強い選手は敵の位置がわかっている撃ち合いは難なく制していきます。
この時、屋上からRaFaLe選手、Shaiiko選手の後方にはElemzje選手と、カバーやロックの体制も盤石でした。R6Sは上下左右と立体的なマップ構造のうえ、他のFPSと違いドローンが画期的な情報源なので、このラウンドのように有効活用すれば試合を有利に進めることができます。
海岸線というマップの特徴もあり、BDSのような2Fから囲い込んで(もしくは一転突破して)くる相手に対しては、VPの取ったような劇場とペントハウスの間に2枚補強+ミラ窓を貼って上下カバーとして、下からミュートやミラのC4、ショットガンによる援護が効率的とされています。
しかし、L字のカメラ下の撃ち合い勝負もライブドローンやFPS要素の高いキャラコンによってShaiiko選手を落とすことができず、BDSの起点となり続けました。
小さなテクニックですが、例えば画像のp4sh4選手のように、フッカー階段上に盾とADSを置いて相手にフラッシュバンやグレネード等をあえて使わせる動きをさせ、投げる瞬間に頭1個分見えたところで撃ち合うというのも手です。
投げ物やガジェットを使うときは銃は撃てません。私もよく使っていますが、小さなテクニックが試合では生きることも大きいです。
緩急のつけ方という点では、先ほどまではライブドローンやキャラコンを使って早い段階でエリア制圧に行っていたShaiiko選手は、自分が走った瞬間に相手がピークしてくると考え、あえてロックして待つ選択肢も取っています。
相手の心理を読む動きは現状打開に焦る相手にとてもよく刺さります。
あまり見ない射線からの撃ち込みも初見狩りチックではありますが、面白いですね。
細かいところですが、設置状況で1vs3という人数有利の状況でも慢心せず、180度のクロスで詰めているというのも意外とできそうでできていないポイントです。
この試合はお互いが防衛を取り合うという昨今の海岸線にしては珍しい環境でしたが、こういった細かいFPS的な基礎ポイントで勝るBDSが勝利したというのも納得ではあります。
ここまで見てきて、EUリーグはBDSが少しレベル抜けしているという印象を受けました。しかし、BDSのスタイルに近いTeam Empireや奇抜なラッシュ等を織り交ぜて3位と躍進したTempra Esports、そしてVPと、レベルの高いEUリーグでは「November Six Major」がどのような結果になるのかは未だに想像できません。
US Division
US Divisionでは、好調を維持するDarkZero Esports(以下、DarkZero)がPhase2の戦いでも勝利を収めて「November Six Major」出場を決めました。他に、Team SoloMid(以下、TSM)とOxygen Esports(以下、Oxygen)も決めましたが、前回の「Six Invitational 2020」優勝者のSpacestation Gaming(以下、SSG)はやや低迷し、NAL Qualifierを勝ち進む必要が出てきました。
Here's the final #R6NAL US Division Stage 2 standings.
— Rainbow Six Esports NA (@R6esportsNA) October 15, 2020
ICYMI:
✅ @DarkZeroGG @TSM & @OXG_Esports locked in their November #SixMajor spots.
✅ @SpacestationGG @SoniqsEsports & @DisruptGaming are heading to the NA Major Qualifier alongside @MirageSportE. pic.twitter.com/C68dJMBt6K
今回は、NAL Qualifierに出場したチームのうち、決勝BO5となったSSG vs Disrupt Gaming(以下、DG)の試合をピックアップマッチに選択しました。
全試合解説となると膨大になるのでその中から激戦となったオレゴンを見ていきます。
NAリーグは狙いがわかりやすく、なぜその選択肢を取ったのか、方程式のように理解することができます。
例えば画像の画面だとDG側は「大窓から入ってプラントしたい」という意図があります。それに対して、「子供からピークされている」「キッチン階段上からピークされている」という2つの斜線に対してスモークを焚いているのがわかります。結果、合わせるように防衛はC4を投げたり、射線をスモークガスグレネードで切ったりして詰める・詰めないの判断を行います。
2ラウンド目、SSG側の地下防衛ですがこれもわかりやすいですね。バンカーから扇風機のあたりを取って斜線を通します。この射線があれば冷蔵庫とスモークがいる位置あたりからの詰めを見ることができます。
プラント寄りであれば、ハッチから降りたり、柱のほうから詰めたりでプラントを狙えますし、カウンターとしてゴヨのあたりからC4やスモークガスグレネードを投げて阻止することができます。
後はカバーの繰り返しで人数を削りあう、というのが大まかなプランですね。細かく言えば、例えばC4を囮にしてその間に防衛が詰めたり、攻撃もあえて一人を犠牲にさせてC4を投げている防衛側を倒しに行ったりという選択肢もありますね。
3ラウンド目のキッチン・ダイニングの防衛では、大まかな攻撃側の狙いはシャワールームを取って、ダイニングの補強壁を割った場所か、廊下から入ったところの2択でプラントします。そのため、シャワールームの中にできるだけ相手の進行を阻害・迎撃できるマエストロを置いて、廊下側にはメルシーと展開型シールドを置いています。
これで攻撃側は少なくともフラッシュバンやグレネード等で壊す「前段階」を強いられます。
実際、DGはその狙いを半分は成功させましたが、Rampy選手のシャワー前廊下のプッシュに気づけず、人数を削られてしまいます。
この後1vs1までもっていったのは流石ですが、シャワーの攻防が肝ということはお互いわかっていたようですね。
第4ラウンドも1ラウンド目と同じ狙いでしたが、人数不利で少人数戦になると同じ狙いはなかなか通りません。NAには前目の戦いとそれに対する対応力というのが見どころなのかもしれません。
初めて試合を見る方は、NAのチームの意図を考察してみるとわかりやすく面白いです。ただ、例えば将棋でもいろんな戦術、局面によっての選択肢が増えるので、その部分での対応力という面では対応できた方が勝利するという流れになっています。
SSG側の攻撃に対しても、DG側はShuttle選手がウォーデンをピックして相手の煙戦術(前ラウンドではエースとジャッカル)にカウンターメタを敷こうとしますが、SSG側はジャッカルから6thピックでゾフィアにしたりとこのあたりで読みあいが行われています。
その前のラウンドは機材トラブルもあり全部は映っていませんが、おそらく印の部分にスモークを焚いてのプラントだったのかなと思います。
現環境ではエースがほぼ必須でピックされるので、カウンターとしてウォーデンはかなり強く、続く12ラウンド目もDG側はウォーデンをピックして獲得。このマップを制しています。
最終的にはスコア2-3でDGは負けてしまうのですが、SSG側に1ポイント最初からあったことを考えると白熱した試合だったと思います。NAリーグは細かく解説しがいのあるスタイルのチームが多いので、皆さんも一度見てみてはいかがでしょうか。
他地域でも、NAチックと私が呼んでいるチームがあり、EUではBDS、Team Empire、APACではCloud9、GUTS Gaming、Xavier Esportsといったところだと思います。最近のトレンドでもあるので、一度分析して真似してみるのも面白いかもしれません。
さて、NAリーグも11月から「November Six Major」が始まりますが、正直今の段階だとDarkZeroの優位は揺るがないのかなと思います。基本的なNAチックのスタイルに、Skys選手の加入によって少しスパイスをかけることができるのが大きいです。続くTSMやEUチックなOxygenも楽しみです。
Brasileirão
É O FIM DA ETAPA REGULAR!✅
— Rainbow Six Esports Brasil (@R6esportsBR) October 18, 2020
Com @MIBR6 e @SantosFCeSports mantendo suas posições, a tabela fica DEFINIDA no #BR6 2020 e agora é hora de se preparar para as finais e #SixMajor!????
Nesta temporada, ficamos assim: pic.twitter.com/3b2HhFvtlG
最後にブラジル地域を紹介します。
ブラジル地域では、Team oNe eSports(以下、T1)が躍進しました。過去には世界大会への出場経験もある良いチームでしたが、Ninjas in Pyjamas(以下、NiP)、Team Liquid(以下、Liquid)、MIBR、FaZe Clan(以下、FaZe)の4強を崩せず。しかし今回はFaZeが低迷したほかにもパワーアップした結果、堂々の首位となりました。
ブラジル地域は他より早く、「November Six Major」が開始されたのでその中からT1 vs NiPの試合をピックアップマッチとして選出しました。
この中からクラブハウスを解説します。
ブラジルでは、クラブハウス、領事館、海岸線が特に人気が高く、レギュラーシーズンでも最多のプレイ回数を誇っていました。T1、NiP共にクラブハウスを苦手としませんが、NiPは以前0-7で負けたこともあります。
第1ラウンド目からT1は仕掛けます。プロリーグではNA、EU、APACでピック回数が0だったバー・倉庫防衛から始まります。僕の所属するFAV gamingは以前好んでピックしており、勝率も高かった記憶がありますが、どちらかといえば初見狩り的な要素も多く含んでいます。
基本的には赤い矢印のように攻撃側は上下でエリアを確保し、倉庫設置を目指します。対する防衛側のピックを見るに、ミュートとモジ―によってドローンメタを敷き、かつヴァルキリーによって情報を得て防衛するといった感じです。
NiP側も慣れているのか、流石のエリア確保手順を踏んでおり、5vs3と人数有利をもぎ取りますが、reduct選手、Faallz選手のSMG-11コンビによって人数がまくられ、1vs1になり時間切れ。T1が1ラウンド目を勝利します。
2ラウンド目も序盤はNiPペースで人数有利を取りながら進めますが、画像のようなFelipoX選手のクラッチなどでラウンドを落としてしまいます。
3ラウンド目の金庫監視でもreduct選手のEastテラス、West窓を排除する撃ち合いの強さを見せつけ人数不利を覆します。
NiPがようやくポイントを取得したのは5ラウンド目。地下防衛でキッチン上下を主戦場とするT1に対して、上下の撃ち合いで人数有利を取り続けてラウンドを取得します。
キッチン攻めを行う場合は、下からのインパクトグレネードによる阻害や、C4によるキッチン排除に対して上からうち勝てるかが割と大事になってきます。撃ち合いの強いT1の選手に対しても臆することなく勝負して勝っていったpino選手の貢献度も高いと言えるでしょう。
攻守入れ替わった8ラウンド目では、T1のreduct選手のベッド中と監視側ピークの2枚抜きという驚くべき撃ち合い・読みあいによってNiP側は致命的なダメージを受けます。
一人でダブルカバーしているわけですから、NiP側の選択は悪くありません。欲を言えば同時にピークしたかったですが、コンマ数秒のずれをうち勝ったreduct選手を褒めるべきでしょう。
最終ラウンドでも、設置を止めれば勝ちのこのシーン。確かにjulio選手の詰めが少し早く後方2名がわずかに遅れましたが、Lukidera選手がjulio選手、Pino選手両方をカットする一人二役の活躍で勝負を決めました。
試合を通して、NiPの選択は悪くなくプランも思い通り進んでいたように思えます。ただ、わずかばかりのずれとそのずれを有利に動かせたT1がラウンドを重ねたのではないかと思います。
ブラジルの試合はNAチックなのですが、より撃ち合いに寄っており、わずかなずれを許さない面白い試合が多いです。私もやりたいことの手札に悩んだらブラジルの試合をよく見ていますし、参考になることも多いと思います。
ブラジルはT1とLiquidが決勝に進んでいます。試合内容は次回の解説でお届けします。
最後に
各地域いよいよ「November Six Major」が始まり、降格戦(入れ替え戦)やSix Invitational 2021に向けて負けられない戦いが続いています。私の所属するFAV gamingも「November Six Major」進出を決めていますので、11月24日から始まるAPAC地域もぜひ確認してください。これでレギュラーシーズンの解説は終わりますが、次回は「November Six Major」の決勝戦を中心に解説したいと思いますので、ご一読ください。地域ごとに特色のあるリーグですが、私の解説はそのごく一部になります。自分なりになぜ? を考えて消化して勉強して細かいところで言うと、ドローニングや立ち回りを考えてみると実はかなり意味のある動きだったりするのでそれを探しながら見直してみるのも楽しいと思います。
ではまた次回解説でお会いしましょう。
FAV gamingのTwitter
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ShiN選手のTwitter
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レインボーシックス シージ
http://www.ubisoft.co.jp/r6s/
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