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【びっくりソフトウェア 後編】1本でも売れたら勝ち! シューティングだけでなく3Dレースも作ってみたい【インディーゲームインタビュー】

「どんな人がどんなインディーゲームを作っているのか」に注目したインタビュー連載企画、1回目は同人サークル「びっくりソフトウェア」の代表「ねこび」さんを取り上げています。2017年にSteamでリリースした縦スクロールSTG『Graze Counter(グレイズカウンター)』に関するお金の話から、現在開発中の『Graze Counter GM Edition』まで、いろいろとお話していただきました。

●前編はコチラ!

※6月上旬、ビデオ会議ツールを用いて取材。
※『Graze Counter GM Edition』の画面は、すべて開発中のものです。

「お前はゲームで金を取れ」と言われ続けたので

──ちょっとゲスいですが、お金の話も聞かせてください。Steamでリリースした『Graze Counter』は、びっくりソフトウェアで初めての有料コンテンツです。なぜ有料でリリースしようと考えたのでしょうか。

ねこび:前々から、ニコニコ動画にアップロードしたゲームの動画(現在は非公開)に「お前はゲームで金を取れ」とコメントされ続けてたのが要因の一つですね(笑)。それもそうか、ならやってみようかなと。

▲『Graze Counter』のPV

──当時はSteamの「Greenlight」(※)が生きていました。Steamでリリースするにあたって苦労されたポイントなどあれば教えてください。

ねこび:普通は2~3週間くらい経たないとGreenlightを通過できないと言われていましたが、8日で通りました。あと、Valveの担当者によって異なる注文をされるみたいなんですが、そのあたりも含めてパブリッシャーのHenteko Doujinさんがなんとかしてくれました。なので、私としてはほとんど苦労することなくリリースできました。あえて挙げるなら、ローカライズデータをゲームに適用する作業がしんどかったかなぁと思うくらいです。

(※)Greenlight:開発者やパブリッシャーがリリースしたいゲームの情報を投稿し、Steamユーザーはその情報を元に投票したり、開発者たちと意見交換したりする。投票数や意見などを参考にして、正式にリリースするかどうかが決まるシステム。現在は廃止されている。

──『Graze Counter』はリリースからどのくらいで3万本の売上を達成したのでしょうか。

ねこび:だいたい2年半くらいです。セールやバンドルで売っている時期は、やはり売れ行きはよくなります。なお、セールなどに関する情報はHenteko Doujinさん経由で提案を受けています。Henteko Doujinさんはパブリッシャーの質を問題視して起ち上げたという成り立ちもありますし、仕事はきちんとしていますし、なにより人として信頼できる方なので、提案を受けたらそのまま快諾しちゃってますね(笑)。

──売れた要因をどう分析していますか。

ねこび:ううーん、わかんないです(笑)。触ってもらえば面白さは伝わる確信はありましたが、そこまでのハードルが高い。動画で見せてもなかなか魅力が伝わりづらいと思ってます。そこで、シューター初心者でも楽しく遊べるよう、ベースの難易度を抑えめにしたり、ゲーム開始時点で丁寧に操作・システム説明をしていたりと気を配っていました。こういったプレイヤーに寄り添う姿勢が口コミで広がったのかなぁ、と考えています。

──ねこびさんのTwitterのプロフィールには「平成の終わり際に男の娘が主人公の2D縦STGを開発・販売し120万円の借金を返済した宇宙最初の男。」と記載してあります。どこで発生した借金なのか、聞いてもよろしいでしょうか。

ねこび:ものっっすごくしょうもない話なんですが、私は大学を2回留年していまして(苦笑)。その分の学費は親に払ってもらったものの、留年していたときの生活費はちゃんと返せと言われ、その額が120万円ってことですね。実は『Graze Counter』は留年していた時期に作ったゲームで、なんだか複雑な思いではあります。

──まぁ開発費みたいなもの……と考えればいいんでしょうかね。そういえば、びっくりソフトウェアで作曲を担当しているもっちもっちもっちさんと、シナリオ担当の羽鴨 慧さんとは、売上をどうやって配分したのでしょう。

ねこび:もっちもっちもっちからは、「1曲1万円でいい」と前から言われていました。『Graze Counter』では19曲作ってもらったので、その分を支払っています。羽鴨 慧にはいらないと言われてしまったのですが、食い下がったところ「じゃあGameMaker Studio 2をくれ」と言われたのでプレゼントしました。その後、GameMaker Studio 2でプログラムの基礎を羽鴨 慧から教わったので、感謝の気持ちでいっぱいですね。本当、頭が上がりません。

あとは成果を共有するため、Henteko Doujinさんから入金報告をいただくたび、その額は皆に伝えています。

──お金の話から少々ずれますが、毎年インディーゲーム系イベントに出展されている理由を教えてください。

ねこび:ああいったお祭りみたいな雰囲気が好き、こうしたイベントでしか会えない方がいる、というのもありますが、一番の目的はフィードバックを得ることです。試遊していただくほとんどのお客さんは、開発中の私のゲームをプレイしたことがないのです。そんな方たちのプレイを目の前で見られるのは貴重な体験です。どこでつまづき、どこで楽しんでもらえているかなど観察し、ゲーム開発に反映させています。イベントで試遊していただくお客さんが、イベントで最も重要な存在ですね。

▲2018年に開催された「第2回 ぜんため(全国エンタメまつり)」での様子

──今年のインディーゲーム系イベントは新型コロナウイルスの影響により、中止やオンラインでの開催などに変更されています。どこかのイベントに出展される予定はありますか。

ねこび:毎年出展している「megabitconvention」は、今年も8月にオフライン開催するみたいなので、出るつもりです。

『Graze Counter GM Edition』の進捗は順調

──現在開発中の『Graze Counter GM Edition』の「GM」って何の略でしょうか。

ねこび:「GameMaker」の略です。ShootingGameBuilderで開発した『Graze Counter』をGameMaker Studio 2で作り直したアッパーバージョンだから、というストレートな理由ですね(笑)。それと、私が好きな作品『TETRIS THE GRAND MASTER 3 -Terror Instinct-』の「GRAND MASTER」ともかけています。語感もカッコいいですし! 『Graze Counter』よりも難しく、「GRAND MASTER」の名の通り、「極めるくらい遊びつくしてほしい」という思いも込めています。

▲『Graze Counter GM Edition』は、『Graze Counter』から機体・キャラを追加し、ステージはルート分岐するように。ビジュアル・BGMなどもパワーアップしている

──『Graze Counter GM Edition』をリリースしようと思った理由は?

ねこび:本当なら『Revolgear!』をNintendo Switchへ移植することも考えてリリースするつもりだったんですが、先ほども話した通り凍結中なので……。次善の策としてGameMaker Studio 2で作りつつ改修を加えた本作を出すことにしました。

──Nintendo Switchへの移植はスムーズに進みそうでしょうか。

ねこび:まだNintendo Switchの開発機が届いていないので、何とも言えません。今はデータだけ作っている状況です。あと、GameMaker Studio 2では、作ったデータをNintendo Switchに出力する機能が年額799ドルするんですよ。まぁまぁ高いですよね(笑)。手元に開発機がないのにその機能を購入するのはもったいないので、まずデータを先に作ろうと思って進めています。

▲GameMaker Studio 2で開発中

──開発の進捗はいかがでしょうか。

ねこび:私の担当部分でお話すると、新たに描くグラフィックが大変ですが、ゲームの核となる部分の開発は順調です。ほかのメンバーには、新曲とアレンジ曲、シナリオ制作を担ってもらっています。前作の『Graze Counter』では敵キャラが一方的に喋ってストーリーが進むのですが、本作ではキャラ同士が会話する形式に変更したので、大部分のシナリオが書き直しになっているので、負担が重いかも……。

▲シナリオは新たに書き起こしている最中

──クリエイター支援プラットフォーム「Fantia」にて、支援した方のオリジナルキャラを本作に参戦できるプランを提供していました。こちらの現状を教えてください。

ねこび:オリジナルのグラフィックを描き、独自性能を備えるプレイアブル機体として参戦できるプランですね。隠しキャラのようなポジションで参戦するため、ストーリーも個別エンディングもとりあえずはナシにしていますが、それでも加入してくれる方が増えてしまうと工数的に非常にマズいぞ、と思いまして早々にプランを閉めてしまいました(苦笑)。閉めた時点でプランに加入していただいた方は3名いらっしゃいます。2名については、これからどんなグラフィックにするかなどを聞いていく段階なので、実装は本作リリース後になりますね。

残りの1名は、現在はVTuberとして活躍している「マシーナリーとも子」さんです。実はVTuberになる前の姿?……と言えばいいのかわかりませんが、そのころから知っている方です。『Graze Counter』の動画やコミケなどで交流し、似たような趣味をしている方だとわかってからは親近感が湧いています。マシーナリーとも子さんの機体は細かい詰めの段階で、打ち合わせを重ねてブラッシュアップしている状況です。

▲当初はネタ枠として用意したプランだったという

──Steam、Nintendo Switch以外でのプラットフォームでリリースする予定はありますか。

ねこび:Android/iOSでもリリースしようとは思ってます。ただし開発・検証用の機材を持っていないので、調達するところから始めないといけませんね。Android版は端末をどこまでサポートするかなど、苦労しそうなのが目に見えているので、SteamとNintendo Switchでリリースした後に取り掛かるつもりです。

──最近は、『INFINOS EXA』などのインディー系STGがアーケード筐体で遊べるようになった例がいくつか見られます。

ねこび:うらやましいです! STG開発者としては憧れがあるので、いつか私のゲームもアーケードで出せたらいいなぁとは思ってますが、今のところそういった予定はありませんね。

──販売本数など目標は?

ねこび:全プラットフォーム合計で1万本売れたらいいかなぁ。売れなくても焼肉代くらいになれば十分です。といいますか、「1本でも売れたら勝ち」だと思ってます。買ってくれた人が一人でもいることは本当にうれしいので。

まとめ

──ねこびさんは現在、本業の合間にゲーム開発を進めていますよね。

ねこび:はい。平日は(うまく仕事が終われば)19時くらいに帰宅し、そのあと2~3時間ほど開発にあてています。

──忙しそうなスケジュールです。ゲーム開発者として専業で生きていきたいと思うことはあるのでしょうか。

ねこび:忙しいといえば忙しいですが趣味感覚でやってますし、まったく開発せずに遊び倒す日もあるので、根を詰めているわけでもないです。「『Graze Counter』が売れたから本業辞めてゲーム開発一本で頑張ります!」って気も起こりません。博打みたいなもんだと思っちゃうので(笑)。知り合いに専業で売れてる開発者さんを見ているとメンタル面も含めて尊敬していますが、私にはとてもマネできない境地です。なので、本業と趣味(ゲーム開発)を切り分けている今のスタイルが性に合っているなーと。

──本業がゲーム開発に生きたシーンってありますか。

ねこび:本業は施工管理なので直接生きたシーンはないかなぁ。あ、でも確認の繰り返しが重視される仕事なので、開発でも確認癖がついているのは良いことだと思ってます。『Graze Counter GM Edition ver.C98』(開発途中の試遊版)をプレイしていただいた方からバグの報告はいただいていないので、そうした部分はちゃんと生きているのかなと。

──オリジナルゲームを開発する原動力はなんでしょうか。

ねこび:平凡な答えかもしれませんが、自分の好きなものがなんでも作れることでしょうか。今はどんなゲームを開発するにしてもチャレンジするハードルが低くなっているので、やってみたいと思ったことはできるだけ手を出したいです。今は2DのSTGを作っていますが、いずれ3Dにも挑戦したいですし。ジャンルもSTGに限定しておらず、3Dだと一番作ってみたいのはアーケードライクなレースゲームだったりします。どんなゲームを作るにしても、操作が気持ちいい「爽快感」を追及したいですね。こんな感じでアイデアも当分尽きそうにないので、健康である限りはずっと開発し続けていると思います。

先ほども話しましたが、クリエイティブに挑む障壁は本当に低くなっています。ゲーム開発が未経験な方も、ぜひ一緒にゲームを開発してみてほしいです。お互いに刺激を与えあう関係になれたら最高ですね!

©びっくりソフトウェア

『Graze Counter GM Edition』
ジャンル:縦スクロールSTG(超危険行為推奨系STG)
発売日:2020年冬予定
プラットフォーム:Steam、Nintendo Switch(Android/iOS版も検討中)
ゲームモード:アーケードモード、ミッションモード、エクストラモード
プレイヤー数:1人
価格:未定


びっくりソフトウェア
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