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【ホロウサ】すべてのゲームがライバル!最強のゲームを目指して『wanderdawn』を作る【インディーゲームインタビュー】
「どんな人がどんなインディーゲームを作っているのか」に注目したインタビュー連載企画の10回目は、個人で運営するゲーム開発サークル「Horou samatolune」の「ホロウサ」さん(6月初旬、「ホロウさま」から名前を変更)を取り上げます。ライバルがいると燃える性質だと話すホロウサさんに、これまで作ってきたゲームの変遷や鋭意制作中の『wanderdawn』(『朝はどこ wanderdawn』から改名)などについて聞いてきました。
▲Horou samatoluneのロゴ
Horou samatoluneのメンバーは以下の通り(名前・担当の順に記載)。
ホロウサ:メイン開発
※4月中旬、ビデオ会議ツールを用いて取材。
※『wanderdawn』の画面は、すべて開発中のものです。
ホロウサ:プログラムの基礎は専門学校で学び、あとはすべて独学です。イラストは元々描くのが好きで、スマホゲームの二次創作イラストを描くなどしていたからか、ゲーム用のグラフィックについて学ぶのも苦ではありませんでした。BGMは探せば作品に合うものが見つかるかなと思っていましたが、しっくりくるものは見当たりませんでした。そうなると自分で曲も作るしかないと思い立ち、勉強しました。
──すべてゲーム制作に必要だから身につけたと。
ホロウサ:はい。自分が思い描く世界を十分に表現するために、今も勉強しています。一部のゲームでは手が回りきらず、ほかの方におまかせしていることもありますが。たとえば『wanderdawn』ではデキストリンさん(@orion_s6)に曲を一任しています。
──チームを組もうとは思っていない?
ホロウサ:デキストリンさんに制作を依頼したときは、私のゲームの世界観にマッチするとても素晴らしいBGMを作っていただけたので、こんな仲間がチームにいたらいいのに!とは思いました。自分のペースを守って集中して作業したい気持ちも大きく、良いめぐり合わせがやってくるまでは基本的に一人で頑張りたいですね。うーん、一人とチーム、どっちも一長一短に感じています。どちらが性に合うかはまだよくわかっていません(笑)。
──なんでも一人でこなせてしまうからこその悩みなのかもしれませんね。そんなホロウサさんは、どういったツールを使って開発しているのか気になります。
ホロウサ:骨子は「Unity」、描画ツールは「Aseprite」、音楽はスマホアプリの「BeatMaker 2」を使っています。
──スマホアプリを使うのはなんだか意外でした。BeatMaker 2の気に入っているポイントを教えてください。
ホロウサ:直感的に操作しやすく、プリセットの音源も豊富。音にエフェクトをかける機能が優秀です。無料の範囲で使っていますが、自分好みの変な音を作りやすくて気に入っています。
▲BeatMaker 2を使って多彩な曲を作っている
──AsepriteやUnityを使いはじめたきっかけは?
ホロウサ:Asepriteは使っている知り合いが多かったからですね。ドット絵が描きやすく、キレイにドット絵が出力できるので重宝しています。Unityはスマホゲームの作りやすさで評判が良かったので選びました。当時使っていたPCは頼りないスペックだったにも関わらずUnityの動作が軽く、とても助かりました。
▲Asepriteを使ったドット絵の制作画面
ホロウサ:そうですね。猫型ウイルスを操ってセキュリティーを壊していくアクションゲームの『ネコノイア』が初めてリリースした作品です。ですが、最初に開発に着手した作品は『wanderdawn』です。
──『wanderdawn』のほうが先だったのですね。
ホロウサ:作っていたら思っていたよりも規模が大きくなりそうだったので先送りにしました。『wanderdawn』で採用予定であるシステムの一部を実装したミニマムなゲームをリリースし、ゲームを完成させる経験を積むために作ったのが『ネコノイア』でした。
──『ネコノイア』は「Unity製ゲーム投稿サイト unityroom」内のイベント「Unity1週間ゲームジャム」を通じ、2018年に投稿していました。Unityを使って1週間以内にお題に沿ったゲームを作る同イベントを活用した理由を教えてください。
ホロウサ:規模の小さなゲームを発表する機会としてはちょうどよいイベントで、参加者も多いです。締め切りが1週間なのと参加者の多さ、どちらも私がモチベーションを維持しやすい要素だったので活用させてもらいました。
──投稿後、『ネコノイア』のスマホ版もリリースしています。
ホロウサ:スマホゲームの二次創作イラストつながりでできた、スマホゲーム好きの友人たちに『ネコノイア』をプレイしてもらいたかったからですね。それに、スマホゲームを自分の手でリリースする経験もしてみたかったので。リリースしてから2年したころに開発機材が壊れ、アップデートをかけられなくなってしまった事情から、やむを得ずストアから消しましたが……。
──反響はいかがでしたか?
ホロウサ:『ネコノイア』のことを知っていたり遊んでくれた方が非常に多く、驚きました。『ネコノイア』をプレイしてから『wanderdawn』のことを知った方までいて、ありがたいです。
──unityroomでは4作品を手がけています。そのうち2020年に投稿した『MURIEL-獣の少女と不浄の塔-』と『すごいうちゅう彷徨うネコ -ヒューエルスペースキャット-』はチームで作ったとのことですが、どういった経緯でチームメンバーが集まったのですか。
ホロウサ:どちらの作品もメンバーは被っていませんが、同じゲーム開発コミュニティのDiscordサーバで集まりました。雑談のような軽いノリでメンバーが集まったので、人選に深い事情はありません(笑)。
──これら2作品ではチームで制作していましたが、チーム制作をしてみた感想はいかがでしたか。
ホロウサ:自分の話し方や伝え方が悪く、伝えたいことが相手に正しく伝わらなかったり伝わりきるまで時間がかかったりしてしまうのが歯がゆく感じました。開発の進め方でハラハラしたこともありましたが、なんだかんだで無事完成しましたし楽しかったですね(笑)。
▲『すごいうちゅう彷徨うネコ』では、シナリオおよびグラフィックを担当
──unityroomを利用してみて、どのあたりが気に入っていますか?
ホロウサ:気軽にゲームを投稿・公開できることですね。見渡す限り個性豊かなゲームばかりが並び、かつて流行ったFlashゲームの倉庫サイトに近い空気を感じていて居心地が良いです。
──unityroomの話とはズレますが、「VR Chat」(VR空間上でアバターを通じてコミュニケーションするサービス)にもハマっていますね。
ホロウサ:友人からHTC Viveを譲り受けたことをきっかけに、VRChatに触れはじめました。自分も周りも美少女だらけで楽しいってのもありますし(笑)、ほかの方の作りこまれたアバターを眺めるのも面白いです。ハマっていくうちに自分も3Dモデルを作りたくなり、3Dモデル「フランケンドエイミー」&「シュヴァルツェアイン」を制作・販売しました。
──僕はVRにほぼ触れていないので3Dモデルの相場もわかりませんが、1万5000円はなかなかな価格ですね。
ホロウサ:3Dメカの「シュヴァルツェアイン」と、それに乗り込めるメイドアバター「フランケンドエイミー」の2体セットとはいえ、やっぱり周りからは高いって言われますね(笑)。
──見るからにギミックが凝っているのでそれくらいの値付けになるのもしかたないかもしれませんね。VR用の3Dモデルは、ゲーム用の3Dモデルを作るのと勝手は違うものでしょうか。
ホロウサ:VRChatでうまく動くようにカスタムしている箇所があり、そのまま別のプラットフォームやゲームに流用もできないですね。こうやって3Dモデルを作っていると、VRChatのワールドや3Dゲームを作ってみたくなります(笑)。その前に『wanderdawn』を完成させないとですね。
ホロウサ:謎の災害が起きて異形の化物がはびこる不思議な世界を舞台に、人工的に生み出された幽霊の少女「アネモネ・スペクトラ」を操る、探索型の2Dアクションゲームです。かつての文明や災害後に作られたであろう構造物「アーティファクト」を集め、亡くなったと思われる人の残留思念から生まれた武器を駆使して化物「スイレイ」を退治し、駆け抜けます。
──本作のBGMは前にお話したデキストリンさんが担当されているとのことですが、それ以外はすべて一人で作っているのでしょうか。
ホロウサ:ゲーム背景は知り合いに頼んでいます。ゲーム背景とBGMのどちらも良いものに仕上がっていて、とても気に入っています。
──本作でとくに力を入れている点を教えてください。
ホロウサ:「気持ちよさ」ですね。移動や攻撃が気持ちよくなるように調整していて、その一環として攻撃時のSEにもこだわっています。現実味がない不思議な音でありながら、それでも気持ちよくなってもらえるような音を作っています。また、光や陰影を美しく描画することで、本作の不思議な世界に没入しやすくなっていると思います。
▲アネモネをはじめとするキャラのかわいさにも注目してほしいとのこと
──はじめてゲーム開発に着手したのが本作だと話がありましたが、作ろうと思ったきっかけを教えてください。
ホロウサ:あるとき、ハマっていたスマホゲームでオリジナルのキャラデザインを募集するコンテストに応募してみたのがきっかけでしょうか。残念ながら入選しなかったんですが、このコンテストを機に考えたキャラへの愛着は湧いていて、この子が主役のゲームを作りたくなりました。
▲オリジナルキャラクターデザインコンテストを機に考えた「シュルツェ・アイン」
──3Dのゲームにしなかった理由はあるのでしょうか。
ホロウサ:はじめは3Dのゲームにするため、モデルも3Dで作っていたのですが、当時の3Dの経験の浅さから思うように動かせませんでした。一旦3Dは止めにして2Dで挑戦したら道筋が見えてきて、『wanderdawn』として制作しています。
▲3Dモデルのプロトタイプ
──主人公を見ていると、浮遊感と慣性の効いた移動方法が目立ちますね。
ホロウサ:気持ちよさを重視していて、カッコよく空を飛ぶ感覚を味わってもらえるようにしています。開発初期段階は幽霊と人間の状態を切り替えられるようにして、幽霊のときだけ空中浮遊できるようにしていました。ですが、それだと今はどちらの状態なのかプレイヤーがとっさにわからなくなるときがあってストレスが溜まります。
そこを悩んでいたとき、友人にテストプレイしてもらったら、人間状態でありながら空中を快適に移動していました。バグみたいな挙動で実現させていたのですが、動きやすくて気持ちよかったので、状態を切り替えるシステムは没に。こちらの方法をブラッシュアップさせて新しく組み込みました。
──リロードが自動なのも快適さ・気持ちよさを追及しているからでしょうか。
ホロウサ:それもありますが、当初はスマホゲームとしてリリースしようと思っていた名残でもあります。リロード操作の実装により特定の場所をタップ・スワイプさせるのはプレイヤーに負担になりそうだったので、シンプルに動かせるようにしたいと思っていました。本作で残弾数の管理だけでなくリロードの操作までさせるのは楽しさにつながらないですし、見栄えの点から画面上にボタンはあまり配置したくないのもあります(苦笑)。ボタンを少なく、シンプルな操作を心がけていた結果、そういう仕様になりました。
──1ボタンで両手に持った武器で交互に攻撃できるのも、シンプルな操作を目指したからなんですね。
ホロウサ:いやー、そこは操作方法が思いつかなかっただけです(苦笑)。
──そもそも両手に武器を持てるようにしたのはなぜですか?
ホロウサ:2丁拳銃とか両手にそれぞれ武器を持って戦う姿ってカッコいいじゃないですか。プレイヤーのことを考えて操作方法を練るのも大事ですが、自分が思い描くカッコよさを貫くのも同じくらい大事ですね。
──そういったこだわりがあるからか、武器の種類も多いように思います。
ホロウサ:少なくとも20~30種類くらいは出そうと思っています。敵が落とす武器は種類が同じでも性能は異なりますし、「魂チップ」というシステムにより弾の特徴を変化させることも可能です。銃器のほかにも、刀やハンマーなど近接武器も実装しています。
あとは自動で敵を攻撃するドローンをオプションとして用意する予定なのですが、今のところ強すぎるのでどう調整しようか悩んでいます(笑)。
▲近接武器も用意されている
──ホロウサさんの好きな武器は?
ホロウサ:見た目が好きなのはレーザーです。威力は弱いけど目を引くビジュアルのプレゼント箱「クリスマス」も良いですね。ネズミを呼び出せるギミックを搭載しているチーズ「チーズ」とかユニークな武器も用意していて、武器を集める楽しさの一助になればいいなと思っています。
▲ユニークな武器の「クリスマス」
──お話にも挙がっていましたが、ハクスラ要素が入っていますね。
ホロウサ:ハクスラ要素を入れたのは『ファンタシースターオンライン』『ファンタシースターユニバース』シリーズが好きだからですね。あのシリーズは敵がドロップする武器を収集・吟味するのが醍醐味の一つになっていて、私はそこにドハマりしまして。はじめて手がける作品なのもあり、ハクスラ要素は外せないですね。
▲同じ武器でも性能が異なる
──体験版では序盤でボスっぽい超大型の敵が登場します。
ホロウサ:敵の生態系の頂点に立つラスボス的存在です。本作にはこのくらい大きくて強い、圧倒的強者が存在することを早めに知らせたくて序盤に配置しています。一応倒せはしますが初期装備に近い状態で挑んでも硬すぎて勝てないので、逃げるように進むことになります。この敵のHPを可視化したり強さをいじったりと、まだ調整したいところです。
▲超大型で迫力たっぷりのボス
──体験版をプレイした限り、基本的な部分は完成しているように見えます。
ホロウサ:進捗自体は芳しくないですね。作っては直し、作っては直しってのを繰り返しで、「完成まであともう少し」という状態からじりじりとしか進んでいません。たとえばですが、基本システムやUIは完成しただろうと思って友人にテストプレイしてもらったりゲーム関連のDiscordサーバーでデバッグを頼んだりしたら、直すべきポイントがいくつも見つかったこともあります。今度はゲーム全体の難易度やステージの構成などを見直していて、また作っては直しています。
──とくに試行錯誤している箇所はどこでしょうか?
ホロウサ:UIは本当に何度も作り変えています。友人がわかりづらそうにプレイしていたり単にダサかったり何だかしっくりこなかったりと理由はさまざまですが、これまで7回は変えています。
目立つところでいえば、画面構成を縦画面から横画面に変更しています。当初はスマホ向けに作っていたところゲームパッドで遊びたい声が多かったので、スマホでもPCでも遊べるように横画面の構成に変えました。今のUIで落ち着いている印象はあるものの、改良できそうだと気付いたらまだ変えるかもしれません。
──本作を披露・PRするイベントについて聞かせてください。
ホロウサ:こんなご時世なのでオフラインイベントがほとんど中止になっていますが、その一方でオンラインイベントが増えてきてまだアピールする場があるのはありがたい限りです。これまでオンラインイベントは「東京ゲームショウ 2020 オンライン」「INDIE Live Expo」「GameVketZero」などに出展していて、こうしたイベントにメインで出展しつつ、(※コミケ)など数少ないオフラインイベントの機会も狙っていけたらと思います。
と言っても懐事情が厳しいので、参加できるとしても近場や、出展料が安いイベントに絞ってしまうんですが(苦笑)。今まで参加したなかだと「デジゲー博」が安くて助かりました。このイベントの雰囲気も好きなので、また出られたらうれしいです。
──リリースするプラットフォームはすでに決めていますか。
ホロウサ:Steamは確定していて、ほかはどうしようか考え中です。スマホゲームとして開発しはじめた本作ですが、紆余曲折あってPC向けに舵を切ったため、
ホロウサ:月並みかもしれませんが、私好みのゲームを作れる点ですね。私の場合、どこを探しても理想のゲームが見つからなかったので開発している節がありますし。『wanderdawn』は私の「好き」を詰め込んでいて、できあがれば自分が求めている最高のゲームになります。誰よりも自分がゲームの完成を待ち望んでいると言えるでしょう。
ライバルが多いことも魅力です。世の中には素晴らしい作品があふれていて、そんなゲームを超えていきたいと思う気持ちがモチベーションになっています。ゲーム界最強の生物を目指したいですね!
──これからどんなゲームを出していきたいですか。
ホロウサ:ぼんやりと考えている3Dゲームがあるので、『wanderdawn』をリリースしたら着手したいです。
──最後に、『wanderdawn』の目標を教えてください。
ホロウサ:闘争心は強いほうだと思っていまして、インディーゲーム界隈の代名詞になっている作品、たとえばUNDERTALEなどと肩を並べる、超えるようなものにしたいと思っています。口だけにならないよう、がんばって開発していきます!
©2021 Horousamatolune All Rights Reserved.
『wanderdawn』
ジャンル:2Dアクション
発売日:未定
プラットフォーム:Steam(Windows)
プレイヤー数:1人
価格:未定
『wanderdawn』 Webサイト
https://wanderdawn.jimdosite.com/
ホロウサ Twitter
https://twitter.com/tolune
Horou samatolune BOOTHページ
https://curonaku.booth.pm/
▲Horou samatoluneのロゴ
Horou samatoluneのメンバーは以下の通り(名前・担当の順に記載)。
ホロウサ:メイン開発
※4月中旬、ビデオ会議ツールを用いて取材。
※『wanderdawn』の画面は、すべて開発中のものです。
自分が思い描く世界を表現できるのは自分だけ
──ホロウサさんはグラフィック、プログラム、音楽、SEを作れる方だとお聞きしました。どこで学んだのでしょうか?ホロウサ:プログラムの基礎は専門学校で学び、あとはすべて独学です。イラストは元々描くのが好きで、スマホゲームの二次創作イラストを描くなどしていたからか、ゲーム用のグラフィックについて学ぶのも苦ではありませんでした。BGMは探せば作品に合うものが見つかるかなと思っていましたが、しっくりくるものは見当たりませんでした。そうなると自分で曲も作るしかないと思い立ち、勉強しました。
──すべてゲーム制作に必要だから身につけたと。
ホロウサ:はい。自分が思い描く世界を十分に表現するために、今も勉強しています。一部のゲームでは手が回りきらず、ほかの方におまかせしていることもありますが。たとえば『wanderdawn』ではデキストリンさん(@orion_s6)に曲を一任しています。
──チームを組もうとは思っていない?
ホロウサ:デキストリンさんに制作を依頼したときは、私のゲームの世界観にマッチするとても素晴らしいBGMを作っていただけたので、こんな仲間がチームにいたらいいのに!とは思いました。自分のペースを守って集中して作業したい気持ちも大きく、良いめぐり合わせがやってくるまでは基本的に一人で頑張りたいですね。うーん、一人とチーム、どっちも一長一短に感じています。どちらが性に合うかはまだよくわかっていません(笑)。
──なんでも一人でこなせてしまうからこその悩みなのかもしれませんね。そんなホロウサさんは、どういったツールを使って開発しているのか気になります。
ホロウサ:骨子は「Unity」、描画ツールは「Aseprite」、音楽はスマホアプリの「BeatMaker 2」を使っています。
──スマホアプリを使うのはなんだか意外でした。BeatMaker 2の気に入っているポイントを教えてください。
ホロウサ:直感的に操作しやすく、プリセットの音源も豊富。音にエフェクトをかける機能が優秀です。無料の範囲で使っていますが、自分好みの変な音を作りやすくて気に入っています。
▲BeatMaker 2を使って多彩な曲を作っている
──AsepriteやUnityを使いはじめたきっかけは?
ホロウサ:Asepriteは使っている知り合いが多かったからですね。ドット絵が描きやすく、キレイにドット絵が出力できるので重宝しています。Unityはスマホゲームの作りやすさで評判が良かったので選びました。当時使っていたPCは頼りないスペックだったにも関わらずUnityの動作が軽く、とても助かりました。
▲Asepriteを使ったドット絵の制作画面
unityroomを中心にゲーム制作の経験を積む
──ホロウサさんのゲーム開発デビューは『ネコノイア』ですか?ホロウサ:そうですね。猫型ウイルスを操ってセキュリティーを壊していくアクションゲームの『ネコノイア』が初めてリリースした作品です。ですが、最初に開発に着手した作品は『wanderdawn』です。
──『wanderdawn』のほうが先だったのですね。
ホロウサ:作っていたら思っていたよりも規模が大きくなりそうだったので先送りにしました。『wanderdawn』で採用予定であるシステムの一部を実装したミニマムなゲームをリリースし、ゲームを完成させる経験を積むために作ったのが『ネコノイア』でした。
──『ネコノイア』は「Unity製ゲーム投稿サイト unityroom」内のイベント「Unity1週間ゲームジャム」を通じ、2018年に投稿していました。Unityを使って1週間以内にお題に沿ったゲームを作る同イベントを活用した理由を教えてください。
ホロウサ:規模の小さなゲームを発表する機会としてはちょうどよいイベントで、参加者も多いです。締め切りが1週間なのと参加者の多さ、どちらも私がモチベーションを維持しやすい要素だったので活用させてもらいました。
▲unityroom版『ネコノイア』
──投稿後、『ネコノイア』のスマホ版もリリースしています。
ホロウサ:スマホゲームの二次創作イラストつながりでできた、スマホゲーム好きの友人たちに『ネコノイア』をプレイしてもらいたかったからですね。それに、スマホゲームを自分の手でリリースする経験もしてみたかったので。リリースしてから2年したころに開発機材が壊れ、アップデートをかけられなくなってしまった事情から、やむを得ずストアから消しましたが……。
▲スマホ版『ネコノイア』のプレイ動画
──反響はいかがでしたか?
ホロウサ:『ネコノイア』のことを知っていたり遊んでくれた方が非常に多く、驚きました。『ネコノイア』をプレイしてから『wanderdawn』のことを知った方までいて、ありがたいです。
──unityroomでは4作品を手がけています。そのうち2020年に投稿した『MURIEL-獣の少女と不浄の塔-』と『すごいうちゅう彷徨うネコ -ヒューエルスペースキャット-』はチームで作ったとのことですが、どういった経緯でチームメンバーが集まったのですか。
ホロウサ:どちらの作品もメンバーは被っていませんが、同じゲーム開発コミュニティのDiscordサーバで集まりました。雑談のような軽いノリでメンバーが集まったので、人選に深い事情はありません(笑)。
──これら2作品ではチームで制作していましたが、チーム制作をしてみた感想はいかがでしたか。
ホロウサ:自分の話し方や伝え方が悪く、伝えたいことが相手に正しく伝わらなかったり伝わりきるまで時間がかかったりしてしまうのが歯がゆく感じました。開発の進め方でハラハラしたこともありましたが、なんだかんだで無事完成しましたし楽しかったですね(笑)。
▲『すごいうちゅう彷徨うネコ』では、シナリオおよびグラフィックを担当
──unityroomを利用してみて、どのあたりが気に入っていますか?
ホロウサ:気軽にゲームを投稿・公開できることですね。見渡す限り個性豊かなゲームばかりが並び、かつて流行ったFlashゲームの倉庫サイトに近い空気を感じていて居心地が良いです。
──unityroomの話とはズレますが、「VR Chat」(VR空間上でアバターを通じてコミュニケーションするサービス)にもハマっていますね。
ホロウサ:友人からHTC Viveを譲り受けたことをきっかけに、VRChatに触れはじめました。自分も周りも美少女だらけで楽しいってのもありますし(笑)、ほかの方の作りこまれたアバターを眺めるのも面白いです。ハマっていくうちに自分も3Dモデルを作りたくなり、3Dモデル「フランケンドエイミー」&「シュヴァルツェアイン」を制作・販売しました。
▲「フランケンドエイミー」&「シュヴァルツェアイン」のPV
──僕はVRにほぼ触れていないので3Dモデルの相場もわかりませんが、1万5000円はなかなかな価格ですね。
ホロウサ:3Dメカの「シュヴァルツェアイン」と、それに乗り込めるメイドアバター「フランケンドエイミー」の2体セットとはいえ、やっぱり周りからは高いって言われますね(笑)。
──見るからにギミックが凝っているのでそれくらいの値付けになるのもしかたないかもしれませんね。VR用の3Dモデルは、ゲーム用の3Dモデルを作るのと勝手は違うものでしょうか。
ホロウサ:VRChatでうまく動くようにカスタムしている箇所があり、そのまま別のプラットフォームやゲームに流用もできないですね。こうやって3Dモデルを作っていると、VRChatのワールドや3Dゲームを作ってみたくなります(笑)。その前に『wanderdawn』を完成させないとですね。
不思議な世界を気持ちよく冒険する『wanderdawn』
──『wanderdawn』の紹介をお願いします。ホロウサ:謎の災害が起きて異形の化物がはびこる不思議な世界を舞台に、人工的に生み出された幽霊の少女「アネモネ・スペクトラ」を操る、探索型の2Dアクションゲームです。かつての文明や災害後に作られたであろう構造物「アーティファクト」を集め、亡くなったと思われる人の残留思念から生まれた武器を駆使して化物「スイレイ」を退治し、駆け抜けます。
▲2Dアクションゲーム『wanderdawn』のPV
──本作のBGMは前にお話したデキストリンさんが担当されているとのことですが、それ以外はすべて一人で作っているのでしょうか。
ホロウサ:ゲーム背景は知り合いに頼んでいます。ゲーム背景とBGMのどちらも良いものに仕上がっていて、とても気に入っています。
──本作でとくに力を入れている点を教えてください。
ホロウサ:「気持ちよさ」ですね。移動や攻撃が気持ちよくなるように調整していて、その一環として攻撃時のSEにもこだわっています。現実味がない不思議な音でありながら、それでも気持ちよくなってもらえるような音を作っています。また、光や陰影を美しく描画することで、本作の不思議な世界に没入しやすくなっていると思います。
▲アネモネをはじめとするキャラのかわいさにも注目してほしいとのこと
──はじめてゲーム開発に着手したのが本作だと話がありましたが、作ろうと思ったきっかけを教えてください。
ホロウサ:あるとき、ハマっていたスマホゲームでオリジナルのキャラデザインを募集するコンテストに応募してみたのがきっかけでしょうか。残念ながら入選しなかったんですが、このコンテストを機に考えたキャラへの愛着は湧いていて、この子が主役のゲームを作りたくなりました。
▲オリジナルキャラクターデザインコンテストを機に考えた「シュルツェ・アイン」
──3Dのゲームにしなかった理由はあるのでしょうか。
ホロウサ:はじめは3Dのゲームにするため、モデルも3Dで作っていたのですが、当時の3Dの経験の浅さから思うように動かせませんでした。一旦3Dは止めにして2Dで挑戦したら道筋が見えてきて、『wanderdawn』として制作しています。
▲3Dモデルのプロトタイプ
──主人公を見ていると、浮遊感と慣性の効いた移動方法が目立ちますね。
ホロウサ:気持ちよさを重視していて、カッコよく空を飛ぶ感覚を味わってもらえるようにしています。開発初期段階は幽霊と人間の状態を切り替えられるようにして、幽霊のときだけ空中浮遊できるようにしていました。ですが、それだと今はどちらの状態なのかプレイヤーがとっさにわからなくなるときがあってストレスが溜まります。
そこを悩んでいたとき、友人にテストプレイしてもらったら、人間状態でありながら空中を快適に移動していました。バグみたいな挙動で実現させていたのですが、動きやすくて気持ちよかったので、状態を切り替えるシステムは没に。こちらの方法をブラッシュアップさせて新しく組み込みました。
──リロードが自動なのも快適さ・気持ちよさを追及しているからでしょうか。
ホロウサ:それもありますが、当初はスマホゲームとしてリリースしようと思っていた名残でもあります。リロード操作の実装により特定の場所をタップ・スワイプさせるのはプレイヤーに負担になりそうだったので、シンプルに動かせるようにしたいと思っていました。本作で残弾数の管理だけでなくリロードの操作までさせるのは楽しさにつながらないですし、見栄えの点から画面上にボタンはあまり配置したくないのもあります(苦笑)。ボタンを少なく、シンプルな操作を心がけていた結果、そういう仕様になりました。
▲排莢のモーションも描くことでアクションの爽快さに一役買っている
──1ボタンで両手に持った武器で交互に攻撃できるのも、シンプルな操作を目指したからなんですね。
ホロウサ:いやー、そこは操作方法が思いつかなかっただけです(苦笑)。
──そもそも両手に武器を持てるようにしたのはなぜですか?
ホロウサ:2丁拳銃とか両手にそれぞれ武器を持って戦う姿ってカッコいいじゃないですか。プレイヤーのことを考えて操作方法を練るのも大事ですが、自分が思い描くカッコよさを貫くのも同じくらい大事ですね。
──そういったこだわりがあるからか、武器の種類も多いように思います。
ホロウサ:少なくとも20~30種類くらいは出そうと思っています。敵が落とす武器は種類が同じでも性能は異なりますし、「魂チップ」というシステムにより弾の特徴を変化させることも可能です。銃器のほかにも、刀やハンマーなど近接武器も実装しています。
あとは自動で敵を攻撃するドローンをオプションとして用意する予定なのですが、今のところ強すぎるのでどう調整しようか悩んでいます(笑)。
▲近接武器も用意されている
──ホロウサさんの好きな武器は?
ホロウサ:見た目が好きなのはレーザーです。威力は弱いけど目を引くビジュアルのプレゼント箱「クリスマス」も良いですね。ネズミを呼び出せるギミックを搭載しているチーズ「チーズ」とかユニークな武器も用意していて、武器を集める楽しさの一助になればいいなと思っています。
▲ユニークな武器の「クリスマス」
──お話にも挙がっていましたが、ハクスラ要素が入っていますね。
ホロウサ:ハクスラ要素を入れたのは『ファンタシースターオンライン』『ファンタシースターユニバース』シリーズが好きだからですね。あのシリーズは敵がドロップする武器を収集・吟味するのが醍醐味の一つになっていて、私はそこにドハマりしまして。はじめて手がける作品なのもあり、ハクスラ要素は外せないですね。
▲同じ武器でも性能が異なる
──体験版では序盤でボスっぽい超大型の敵が登場します。
ホロウサ:敵の生態系の頂点に立つラスボス的存在です。本作にはこのくらい大きくて強い、圧倒的強者が存在することを早めに知らせたくて序盤に配置しています。一応倒せはしますが初期装備に近い状態で挑んでも硬すぎて勝てないので、逃げるように進むことになります。この敵のHPを可視化したり強さをいじったりと、まだ調整したいところです。
▲超大型で迫力たっぷりのボス
──体験版をプレイした限り、基本的な部分は完成しているように見えます。
ホロウサ:進捗自体は芳しくないですね。作っては直し、作っては直しってのを繰り返しで、「完成まであともう少し」という状態からじりじりとしか進んでいません。たとえばですが、基本システムやUIは完成しただろうと思って友人にテストプレイしてもらったりゲーム関連のDiscordサーバーでデバッグを頼んだりしたら、直すべきポイントがいくつも見つかったこともあります。今度はゲーム全体の難易度やステージの構成などを見直していて、また作っては直しています。
──とくに試行錯誤している箇所はどこでしょうか?
ホロウサ:UIは本当に何度も作り変えています。友人がわかりづらそうにプレイしていたり単にダサかったり何だかしっくりこなかったりと理由はさまざまですが、これまで7回は変えています。
目立つところでいえば、画面構成を縦画面から横画面に変更しています。当初はスマホ向けに作っていたところゲームパッドで遊びたい声が多かったので、スマホでもPCでも遊べるように横画面の構成に変えました。今のUIで落ち着いている印象はあるものの、改良できそうだと気付いたらまだ変えるかもしれません。
▲初期のUI
▲最新のUI
──本作を披露・PRするイベントについて聞かせてください。
ホロウサ:こんなご時世なのでオフラインイベントがほとんど中止になっていますが、その一方でオンラインイベントが増えてきてまだアピールする場があるのはありがたい限りです。これまでオンラインイベントは「東京ゲームショウ 2020 オンライン」「INDIE Live Expo」「GameVketZero」などに出展していて、こうしたイベントにメインで出展しつつ、(※コミケ)など数少ないオフラインイベントの機会も狙っていけたらと思います。
と言っても懐事情が厳しいので、参加できるとしても近場や、出展料が安いイベントに絞ってしまうんですが(苦笑)。今まで参加したなかだと「デジゲー博」が安くて助かりました。このイベントの雰囲気も好きなので、また出られたらうれしいです。
──リリースするプラットフォームはすでに決めていますか。
ホロウサ:Steamは確定していて、ほかはどうしようか考え中です。スマホゲームとして開発しはじめた本作ですが、紆余曲折あってPC向けに舵を切ったため、
まとめ
──ホロウサさんはどのようなところにゲーム開発の魅力を感じていますか。ホロウサ:月並みかもしれませんが、私好みのゲームを作れる点ですね。私の場合、どこを探しても理想のゲームが見つからなかったので開発している節がありますし。『wanderdawn』は私の「好き」を詰め込んでいて、できあがれば自分が求めている最高のゲームになります。誰よりも自分がゲームの完成を待ち望んでいると言えるでしょう。
ライバルが多いことも魅力です。世の中には素晴らしい作品があふれていて、そんなゲームを超えていきたいと思う気持ちがモチベーションになっています。ゲーム界最強の生物を目指したいですね!
──これからどんなゲームを出していきたいですか。
ホロウサ:ぼんやりと考えている3Dゲームがあるので、『wanderdawn』をリリースしたら着手したいです。
──最後に、『wanderdawn』の目標を教えてください。
ホロウサ:闘争心は強いほうだと思っていまして、インディーゲーム界隈の代名詞になっている作品、たとえばUNDERTALEなどと肩を並べる、超えるようなものにしたいと思っています。口だけにならないよう、がんばって開発していきます!
©2021 Horousamatolune All Rights Reserved.
『wanderdawn』
ジャンル:2Dアクション
発売日:未定
プラットフォーム:Steam(Windows)
プレイヤー数:1人
価格:未定
▲10月15日公開の最新PV
『wanderdawn』 Webサイト
https://wanderdawn.jimdosite.com/
ホロウサ Twitter
https://twitter.com/tolune
Horou samatolune BOOTHページ
https://curonaku.booth.pm/
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