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【はちのす】ゲーム実況者のしにがみさんのゲームも『Super Glitter Rush』も絶賛開発中! Flashゲームからはじまったゲーム開発者人生【インディーゲームインタビュー】
目次
「どんな人がどんなインディーゲームを作っているのか」に注目したインタビュー連載企画の9回目は、「tiny cactus studio」の「はちのす」さんを紹介します。
はちのすさんは、対戦アクションゲーム『BATTLLOON – バトルーン』を開発した専門学生チームのなかで、主にグラフィックを担当していました。現在は個人のゲーム開発者として活動し、複数の魅力的なゲームを開発しています。これまでどんなゲームを作ってきて、今はどんなゲームを作っているのか、じっくり聞いてきました。
▲「tiny cactus studio」のロゴ(左側)と、はちのすさんのプロフィールアイコン(右側)
「tiny cactus studio」のメンバーは以下の通り(名前・担当・好きなゲームの順に記載)。
はちのす:メイン開発/『Cities: Skylines』『Kenshi』『Oxygen Not Included』
※1月中旬にビデオ会議ツールを用いて取材し、5月初旬に追加で取材を実施。
※『SOULLOGUE』『Super Glitter Rush』および「しにがみ」さんのゲームの画面は、すべて開発中のものです。
Flashゲーム職人と化した中学時代から
──ベタな質問からさせてください。ゲーム開発に興味を持ったきっかけを教えてください。
はちのす:中学1年生くらいのときにFlashの動画・ゲームが流行っていまして、私の場合は脱出ゲームにめちゃくちゃハマりました。ハマりすぎた末、自分でもFlashで脱出ゲームを作ってみたいと思ったのがきっかけです。
──ゲームを作りはじめる前は、プログラミングやイラストなどの経験はありましたか。
はちのす:どちらも未経験で、作っていてわからないことが出てくる度に調べていました。今見ると出来はよろしくないものばかりですが(笑)、脱出ゲームだけ20本くらい制作・公開していました。
▲初めてゲームを公開してから10年以上経過した
──20本! すごいですね。どのくらいの期間・ペースで作っていたのでしょうか。
はちのす:中学~高校2年くらいでしょうか。作ると決めてからは1、2週間くらいで作っていました。振り返ってみると、あんなペースでよく作れていたなと思います(笑)。若いときのパワーはすごいですね。
──その時期は脱出ゲームだけをずっと作り続けていた?
はちのす:並行してRPG制作ソフトの「WOLF RPGエディター」でRPGを作っていて、友達同士で見せ合って楽しんでいました。と言っても、ちゃんと最後まで作ったのは2作で……。途中まで作ってはそのままにしてしまうことが多かったです(笑)。
──脱出ゲームは、作ったらご自身のWebサイトで公開していましたね。反響はいかがでしたか。
はちのす:当時は世間的にもFlashで盛り上がっていたこともあり、掲示板を設置したら感想をたくさんいただけたり、ニコニコ動画で実況されたりと、かなり反響は良かったように思います。ほとんどがポジティブな意見で、モチベーションにつながっていました。
──今はドットグラフィックを描いているはちのすさんですが、グラフィックを学びはじめたのもFlashでゲームを作っていたころでしょうか。
はちのす:Flashゲームでは「Shade3D」という3DCGソフトを使っていました。3Dの脱出ゲームにしなかったのは、単に私のスキル不足ですね。ドットグラフィックを描きはじめたのは大学に入ったあとくらいです。まぁ大学は2年で中退してしまったんですが……。
▲Flashゲームのスクリーンショット
──どうして中退してしまったのか、お聞きしてもいいですか?
はちのす:大学はデザイン関連の学部に入っていましたが、ゲームとは無縁でした。いろいろと悩みましたが、ゲーム開発を本業にしたいと強く思って中退し、日本工学院専門学校のゲームクリエイター科に入学しました。
──数ある専門学校のなかでも日本工学院専門学校を選んだ理由を教えてください。
はちのす:一番の理由は家から近いことなんですが(笑)、現在はゲームクリエイターとして活躍している生高橋さん(@hyaku1128)が在籍していたのも要因の一つです。当時から生高橋さんとはTwitter上では知り合っていて、学校の様子なども聞けていたため、安心してこの学校を選べました。当然ながら生高橋さんとは学年が違うのですが、一緒にゲームを作ることになるとはまったく思っていませんでした。
──専門学校に通ってみて良かったと思うことはありますか。
はちのす:中学から大学に至るまで、ゲーム作りを志す同年代の人にまったく出会えませんでした。そういった人たちが多い専門学校は、とても刺激になりました。
──イヤな質問ですが、専門学校で真面目にゲーム制作について学ぶ姿勢を持った人の比率はいかがでしょうか。
はちのす:どうしても本気で取り組む人は、一部に限られてしまう印象でした。それでも、日本工学院専門学校はやる気のある人が比較的多いような気がしています。
──今は北海道にお住まいですが、専門学校で学んだあとの進路についても伺いたいです。
はちのす:ゲーム会社などを経験し、現在はフリーランスのゲーム開発者として活動しています。ゲームの受託開発を請け負う傍ら、個人開発も進めています。
──兼業という道もあったと思いますが、ゲーム開発者一本に絞っているのはなぜでしょうか。
はちのす:兼業していた時期もありましたが、ゲーム開発に使える時間があまり長くないのがネックでした。2021年になってからはお仕事を依頼されるなど機会に恵まれ、思い切って独立しました。
独立してからはゲーム開発に没頭できるうえ、請け負う仕事でも裁量権をいただけています。自分のクリエイティビティを最大限発揮でき、とても楽しく仕事できています。兼業に比べて収入が安定しないといった不安もありますが、この生き方のほうが自分に合っている気がしています。
──個人・チーム・ゲーム会社の社員と、はちのすさんはどれも経験していますが、個人開発がもっとも自分に合っているからそうしているのですか?
はちのす:いえ、関わるゲームが作りたいものであれば個人でもチームでも関係なく開発してみたいです。ただ、会社だと必ずしも作りたいゲームを作れるわけではないため、会社で働くなら自身がゲームの根幹に関わりやすいポジションに就きたいです。専門学校で体験したチーム開発は非常に面白かったので、できればまたチームで作りたいとも思っています。
──現在メインで使っている開発ツールを教えてください。
はちのす:「GameMakerStudio2」と「Unity」です。専門学校でチーム開発していたときはUnityを使っていて、個人開発するときはGameMakerStudio2を使っています。
▲GameMakerStudio2を使ったゲーム開発画面
──GameMakerStudio2のほうが使いやすいでしょうか?
はちのす:そうですね。Unityは2D・3Dどちらも扱えますしエディタ拡張とかアセットも豊富なのは魅力ですが、やらないといけないこともそれだけ多く発生します。GameMakerStudio2は、はじめから使える便利な機能が多く、2Dを手軽かつキレイに表示しやすい。最悪、コードを書かなくてもなんとかなるといったメリットがあるため、使い続けています。
──ゲームで採用しているグラフィックはいつもドットですが、いつごろからドットグラフィックを描きはじめたのですか。
はちのす:大学受験が終わったあと、WOLF RPGエディターでゲームを作っていたときなので、5年以上経ってますね。プリセットの絵やフリー素材だけでは味気なく感じ、オリジナルのグラフィックを作ろうと思い立ちました。
ほかのゲームではどういったツールを作っているのか、どんなグラフィックを描いているのかなどいろいろと調べていたなかで見つけたゲームが、当時は開発中だった『Hyper Light Drifter』です。これまで私が見たことのない描き方のドットグラフィックで、衝撃を受けて強く影響されています。
──アートとして描くドットグラフィックと、ゲーム用として描くドットグラフィックの違いはありますか。
はちのす:私の場合ですが、ゲーム用のドットグラフィックであれば、見せ方を意識しながら描いています。敵が攻撃しようとしているのか・移動しようとしているのかが一瞬で区別できなかったり、開閉がわかりづらい扉があったりすると、プレイヤーはストレスを感じます。オブジェクトやモーション一つひとつがどういった機能を有しているのか、一目見ただけでわかるように気を付けています。アニメーションの場合もできるだけ大げさに、大振りになるようにして、わかりやすさを重視しています。
▲オブジェクトやモーションの目的・役割が視覚的にわかりやすくなるよう工夫している
──はちのすさんはかわいいドットグラフィックのキャラを描くことが多くなってきましたが、作る際に意識していることはありますか。
はちのす:かわいいキャラをデザインするときは、海外のカートゥーンアニメを強く意識しています。ドットで描くうえでは情報量を制御するというか、わかりやすくシンプルにすることがかわいさにもつながっていると思います。
当然ながらドットは角ばっていて、思い描いたデザインをそのままドットに起こすと不要なドットが多くてごちゃごちゃし、見づらくなってしまいます。それにかわいくありません。最近作っているゲームでは、アウトラインは少し太くしてひとつながりになるようにしたり、使用する色数を抑えたりすることで、見やすく・わかりやすくしています。
▲かわいいドットグラフィックを描くためにさまざまな工夫を凝らしている
──はちのすさんはミニゲームを作ってTwitterに動画をちょくちょく投稿していますね。個人的にこの目的が気になっています。
はちのす:販売を考えて作ったものではなく、完全に趣味ですね(笑)。一つのゲームをずっと開発しているとしんどくなってくるので、そんなときに1週間くらいお休みし、試したい技術・表現やひらめいたアイデアを実装・投稿しています。息抜き代わりにやっていたことですが、これで実装した技術を本番の開発に生かすこともあるので、思ったよりも役立っているのかもしれません。
はちのす:はい。高校生くらいのときにWOLF RPGエディターで作っていた『The Souls of Yore』をもとに、大学生になってから開発していました。ジャンルとしてはアクションアドベンチャーで、WOLF RPGエディターだと自分のやりたいことを実装するのが厳しそうに感じたため、GameMakerStudio2を使って開発することにしました。
▲『The Souls of Yore』の開発記録
──開発はすべてお一人で?
はちのす:私は音楽関係はからっきしで、作曲は中学時代の友人であるbluesさん(@blues_unlock)にお願いしました。『The Souls of Yore』のころから2人で「noitems studio」というチームを組んで作っていました。
──本作は開発を休止しています。その理由を教えてください。
はちのす:面白いものを作ることを最優先にしていたら、本作を完成まで持っていくのは時間がかかりすぎると気付いたからです。本作は『BATTLLOON - バトルーン(以下、バトルーン)』に関わるまで開発し続けていて、当初は『バトルーン』を完成させたあとに開発を再開しようと考えていました。
しかし、『バトルーン』を作りきったことでゲーム1本をリリースするのがどれほど大変かを思い知りました。『バトルーン』はチームで作ったうえに、ボリュームも控えめです。『SOULLOGUE』のメイン開発は私一人で、『バトルーン』よりもボリュームが膨大となると完成まで何年かかるかわからず、開発に伴うリスクが大きく感じました。という事情により開発を休止し、規模の小さなゲームをコンスタントにリリースしていく方向に舵を切ることにしました。
──はちのすさんは「講談社ゲームクリエイターズラボ」に本作で応募し、二次選考まで進みました。講談社ゲームクリエイターズラボは最大で計2000万円の開発支援金が支給されるプロジェクトですが、金銭面以外で魅力に思う部分を教えてください。
はちのす:ゲームをずっと一人で作っていると、「このゲームは本当に面白いのか」と悩むようになります。そんなとき、つねに寄り添って意見をいただける方がいてくれるのはありがたいです。ゲーム会社であれば上司やプロデューサーなど見てくれる方は多いと思いますが、個人や少人数チームだとそういった募集をかけるのはなかなか難しいと実感しています。
──同プロジェクトには残念ながら落ちてしまいましたが、またこうした機会があれば本作を復活させたいでしょうか。
はちのす:はい。今回のプロジェクトなど、開発に集中して取り組めるような環境が整ったら再開したいですね。
はちのす:チーム開発の授業で作ったゲームです。2年生(※)と3年生の合同授業だったため、学年が上の生高橋さんとも一緒に作ることができました。
(※)はちのすさんは2年生として編入した
──授業の一環として作っていたゲームが、なぜ商業作品になったのでしょうか。
はちのす:パブリッシャーのUNTIESさん(ソニー・ミュージックエンタテインメントのレーベル)にお声がけいただいたことが契機になっています。そもそもUNTIESさんは『SOULLOGUE』を見て問い合わせいただいたのですが、先ほど話した通り開発を休止していまして……。お話を持ちかけていただけた貴重な機会を逃すまいと、当時手がけていた『バトルーン』を代わりに推薦したという経緯です。
──UNTIESさんはパブリッシャーとしてどういったサポートをしてくれたのでしょうか。
はちのす:Steam、ニンテンドーeショップでの販売やローカライズと、YouTuberに本作を遊んでもらったり海外でイベント出展したり。開発以外のすべてをサポートしてもらえました。スケジュールもゲーム内容も自由にさせてもらえたので、動きやすかったですね。
──学校側の協力もあったのかと思います。
はちのす:そうですね。学校のカリキュラムでは前期・後期では別の作品を作ることになっていたのですが、今回は特例で年間を通じて『バトルーン』を開発できることになりました。それと、Nintendo Switchの開発機を教室に置いておくのはまずいということで、元は物置のような使われ方としていたところではありますが、部屋を割り当ててもらえました。
▲マスターアップ時、学校の開発部屋で撮った写真。向かって左側が生高橋さん、右側が高梨さん
──学校ではずっと『バトルーン』の開発にかかりきりだったのですか?
はちのす:週5日のうち2日がその授業で、主に授業時間のなかで開発していました。開発終了間際は土日や正月を返上して開発しちゃいましたが……(笑)。
──『バトルーン』の開発において、はちのすさんが担当した部分を教えてください。
はちのす:ゲーム内のグラフィックはすべて私が担当しました。最後のほうはスケジュールが押していたこともあって、演出やプログラムの一部も手がけました。音以外はすべて関わっていたのかなと思います。
──はちのすさんは『バトルーン』をどう評価していますか。
はちのす:本作を作ってからしばらく経ちますが、今遊んでみてもめちゃめちゃ楽しくて、対戦ゲームとして良くできているシステムだと自負しています。開発初期段階からつまらないと思ったことは1ミリもなかったです。ここまでシンプルな操作でアツく戦えるゲームは少ないのではないでしょうか。
──はちのすさんが主に担当していたグラフィックに関してはいかがでしょうか。
はちのす:今までは『SOULLOGUE』のようなリアル寄りの少し寂れたデザインを描いていて、『バトルーン』でかわいいデザインに初めて挑戦しました。初めての割には、と言ってしまうと言い訳がましいですが、我ながらかわいい出来になったと思っています。
▲はちのすさんが『バトルーン』で気に入っているデザインはデカい爆弾
──一緒に開発したメンバーの印象を教えてください。
はちのす:皆すごかったですよ。とくにリーダー・ディレクターを務めた生高橋さんは天才ですね。一切の無駄がない、洗練したゲームデザインを考える人で、全生徒が憧れる存在でした。それでいてすべての人に分け隔てなく接していましたし、テンションが高い明るい性格なのでチームのムードメーカーでもありました。生高橋さんがいたことで、チームが良い空気のまま開発できましたね。
また、メインプログラマーの高梨さんは、開発スピードの早さが印象的でした。『バトルーン』のアイデアが出たその日のうちにプロトタイプを組み上げるなど、手早く動いてくれたおかげで予想以上の試行錯誤を重ねられ、クオリティの向上につながりました。
──実際に発売してみて、手ごたえはいかがでした?
はちのす:ローカル対戦のみという本作の仕様と相性の良いNintendo Switch版のほうがSteam版より断然多く売れたのは予想通りではありますが、日本と同じくらい海外でも売れて、売れ行きはかなり好感触です。売れたことはうれしかったですし、実況動画やファンアートを見て、『バトルーン』を好きになってもらえたのだと感じられました。
はちのす:スマホで操作することを考えた、シンプルでカジュアルな弾幕STG(シューティングゲーム)です。プレイヤーが放つ弾は敵弾を吸収できるのが特徴で、敵弾を巻き込めば巻き込むほど威力がアップします。
このシステムによって敵弾は避けやすくなっていますが、プレイヤーが撃てる弾の数に制限を設けています。難しすぎず簡単すぎない、ちょうど良い難易度になっているかと思います。デザインはかわいらしく仕上げ、誰でも遊びやすいゲームを目指して開発中です。
──はちのすさんが推したいポイントは。
はちのす:操作を左右の移動とショットのみに絞ったシンプルなところ。それと、ボスのキャラクターデザインはこだわっているので注目してほしいですね。
▲ボスのみと戦うステージをクリアしていく形式で、30体のボスを用意している。はちのすさんのお気に入りボスは「SPACE BUDDIES」
──『SOULLOGUE』もSTG系のゲーム(ツインスティックシューター)でした。
はちのす:本作のシステムは『SOULLOGUE』のバトルを簡単にして、スマホ向けに落とし込んで実現しています。直近で『SOULLOGUE』を再開できる見込みがなく、なんらかの形で『SOULLOGUE』の一部でも実現できればと思って採用しています。
──本作はPCでもリリースしますが、スマホ向けに設計されています。なぜでしょうか。
はちのす:一人でも多くの方に遊んでもらいたくて、ユーザー数が圧倒的に多いスマホを軸に据えています。
──そうなると、スマホ版は有料にしないということでしょうか?
はちのす:はい。広告を入れる無料ゲームとしてリリースする予定です。PC版も300円ほどと、負担にならないくらいの額にしようと考えています。スマホ版とPC版でゲーム内容に差は出ない仕様で、プレイヤーの好みに合ったプラットフォームを選んで遊んでいただけるようにしています。
──サウンドはつよみーさん(@tsuyomi0508)にお願いしています。
はちのす:サウンドを誰かに頼みたいなぁと何の気はなしにユルいツイートをしてみたら、手を挙げてもらえたのがつよみーさんです。もともとの知り合いというのもあり、頼みやすかったですね。
つよみーさんはかわいい曲だけでなく、ロックやジャズなど幅広いジャンルの曲も作れる方で、非常に心強いです。本作でもつよみーさんの腕前を存分に生かした、さまざまなジャンルの曲が楽しめます。
──本作はパブリッシャーさんに頼まず、ご自身の手でリリースするとのこと。どういった理由からその選択をしたのですか。
はちのす:パブリッシャーさんにお願いすれば売上が見込めたりPRやリリースが楽になるとは思いますが、一人でゲームを作るだけでなくPRをしてリリースまで持っていく経験を積みたいという意欲のほうが強いからです。スマホやSteamなどのプラットフォームでリリースしている個人開発者は大勢いるので、勉強もしやすいと思います。
──本作のリリース時期は決まっていますか。
はちのす:別のゲーム開発を優先しており、その合間に少しずつ進めていきます。ゲーム自体はほぼ完成しているため、そこまで時間はかからないかなとは思いつつ、いつになるかは今のところ未定です。
はちのす:ゲーム実況者であるしにがみさん(@sinigami227)の企画で、しにがみさんのスマホゲームの開発に関わっています。Android/iOSでリリース予定です。
──しにがみさんから声がかかったのでしょうか。
はちのす:いえ、大手ゲーム会社のプロデューサーの方(上の動画ではアツシさんと呼ばれている方)からお誘いいただけました。
──このゲームで、はちのすさんはどこからどこまで担当しているのですか?
はちのす:企画立案や大まかな仕様などはしにがみさんが担当しています。私はそれ以外、デザインからプログラミングなどを受け持っています。
──しにがみさんとやり取りしてみた感想を教えてください。
はちのす:しにがみさんはセンスあふれる人で企画内容も面白いですし、ご自身でゲームを作っている経験もあるからか、話もスムーズに進みました。
──他にもいろいろと伺いたいことはありますが、話せない情報が多いと思います。
はちのす:最新情報についてはしにがみさんの動画で公開されるらしいです。しにがみさんのYouTubeチャンネルをチェックしながら、リリースをお待ちいただければ幸いです。
はちのす:『バトルーン』開発時に、イベントで試遊してもらったり実況動画を見たりしたとき、皆さんに楽しく遊んでもらう様子を見られて本当にとても感激したんです。作って良かった、報われたなという気持ちになりました。
そのときの衝撃がずっと心に残っていて、これからもゲームを作ってプレイヤーを楽しませたい、笑顔にしたいと思うようになって、開発のモチベーションにつながっています。ゲームをゼロから生みだしたからこそ、ここまで思い入れも深くなったのだと思います。うーん、ちょっとクサいこと言ってますね(笑)。
──ストレートな気持ちが聞けて、僕としてはうれしいです。試遊できるオフラインイベントがほぼなくなってしまった現状は、やはり寂しいですか。
はちのす:寂しいですね! オンラインイベントだと試遊まではできたとしても、私たち開発者にはその方の反応がわからないですし、顔を見られないのは残念。ことこまかにフィードバックを得られる貴重な機会でもあるので、早く世の中が落ち着いて、オフラインイベントが問題なく開催されるようになってほしいです。
──今抱えているゲームをすべてリリースできたら、次はどんなゲームを作ってみたいですか。
はちのす:今までストーリーがあるゲームを作ったことがありません。ですので、会話ががっつり発生する、ストーリー性重視のゲームを作ってみたいです。ゲームジャンルやプラットフォームにあまり強いこだわりはなく、良いシステムを思いついたらそれに合うプラットフォームを選びたいですね。
──おっと、忘れていました。最後に質問させてください。しにがみさんのゲームと『Super Glitter Rush』で忙しそうなところ恐縮ですが、『Monaka's Sugar High Nightmare』ってどうなりました?
はちのす:アーティストの方たちと緩いノリで開発をはじめたゲームで、半分くらいの完成度です。明け透けに申し上げると開発の優先順位は高くないので完成の目処が立つのはかなり先になりそう……。もし完成しなくても、何らかの形では公開するつもりです。
あと、ブイブイラボのますだたろうさんが作曲を担当しています。ブイブイラボさんが作っている『シューフォーズ-SUPER UFO FIGHTER-』は、『バトルーン』を超えてくる作品になるのではないかと思い、期待しています。
ちょっと眠らせているプロジェクトもありますが、複数のゲームが進行していますので、どのゲームも楽しんでいただけるよう、全力で開発していきます!
▲「Kawaiiの暴力」をコンセプトに据えたアーケードライクアクションゲーム『Monaka's Sugar High Nightmare』のPV
©2019 noname studio Published by Sony Music Entertainment (Japan) Inc.
©2019 tiny cactus studio
©2021 tiny cactus studio
©2021 しにがみ
『Super Glitter Rush』Steamストアページ(デモ版を配信中)
https://store.steampowered.com/app/1338020/Super_Glitter_Rush/
『Super Glitter Rush』
ジャンル:弾幕STG
発売日:未定
プラットフォーム:Steamおよびitch.io(ともにWindows)、Android、iOS
プレイヤー数:1人
価格:300円程度を予定(PC版)、無料(スマホ版)
はちのす Twitter
https://twitter.com/HACHINOS_
はちのす pixivFANBOX
https://www.fanbox.cc/@hachinos
『BATTLLOON - バトルーン』 Steamストアページ
https://store.steampowered.com/app/985800/BATTLLOON/
はちのすさんは、対戦アクションゲーム『BATTLLOON – バトルーン』を開発した専門学生チームのなかで、主にグラフィックを担当していました。現在は個人のゲーム開発者として活動し、複数の魅力的なゲームを開発しています。これまでどんなゲームを作ってきて、今はどんなゲームを作っているのか、じっくり聞いてきました。
▲「tiny cactus studio」のロゴ(左側)と、はちのすさんのプロフィールアイコン(右側)
「tiny cactus studio」のメンバーは以下の通り(名前・担当・好きなゲームの順に記載)。
はちのす:メイン開発/『Cities: Skylines』『Kenshi』『Oxygen Not Included』
※1月中旬にビデオ会議ツールを用いて取材し、5月初旬に追加で取材を実施。
※『SOULLOGUE』『Super Glitter Rush』および「しにがみ」さんのゲームの画面は、すべて開発中のものです。
Flashゲーム職人と化した中学時代から
紆余曲折ありました
──ベタな質問からさせてください。ゲーム開発に興味を持ったきっかけを教えてください。はちのす:中学1年生くらいのときにFlashの動画・ゲームが流行っていまして、私の場合は脱出ゲームにめちゃくちゃハマりました。ハマりすぎた末、自分でもFlashで脱出ゲームを作ってみたいと思ったのがきっかけです。
──ゲームを作りはじめる前は、プログラミングやイラストなどの経験はありましたか。
はちのす:どちらも未経験で、作っていてわからないことが出てくる度に調べていました。今見ると出来はよろしくないものばかりですが(笑)、脱出ゲームだけ20本くらい制作・公開していました。
▲初めてゲームを公開してから10年以上経過した
──20本! すごいですね。どのくらいの期間・ペースで作っていたのでしょうか。
はちのす:中学~高校2年くらいでしょうか。作ると決めてからは1、2週間くらいで作っていました。振り返ってみると、あんなペースでよく作れていたなと思います(笑)。若いときのパワーはすごいですね。
──その時期は脱出ゲームだけをずっと作り続けていた?
はちのす:並行してRPG制作ソフトの「WOLF RPGエディター」でRPGを作っていて、友達同士で見せ合って楽しんでいました。と言っても、ちゃんと最後まで作ったのは2作で……。途中まで作ってはそのままにしてしまうことが多かったです(笑)。
──脱出ゲームは、作ったらご自身のWebサイトで公開していましたね。反響はいかがでしたか。
はちのす:当時は世間的にもFlashで盛り上がっていたこともあり、掲示板を設置したら感想をたくさんいただけたり、ニコニコ動画で実況されたりと、かなり反響は良かったように思います。ほとんどがポジティブな意見で、モチベーションにつながっていました。
──今はドットグラフィックを描いているはちのすさんですが、グラフィックを学びはじめたのもFlashでゲームを作っていたころでしょうか。
はちのす:Flashゲームでは「Shade3D」という3DCGソフトを使っていました。3Dの脱出ゲームにしなかったのは、単に私のスキル不足ですね。ドットグラフィックを描きはじめたのは大学に入ったあとくらいです。まぁ大学は2年で中退してしまったんですが……。
▲Flashゲームのスクリーンショット
──どうして中退してしまったのか、お聞きしてもいいですか?
はちのす:大学はデザイン関連の学部に入っていましたが、ゲームとは無縁でした。いろいろと悩みましたが、ゲーム開発を本業にしたいと強く思って中退し、日本工学院専門学校のゲームクリエイター科に入学しました。
──数ある専門学校のなかでも日本工学院専門学校を選んだ理由を教えてください。
はちのす:一番の理由は家から近いことなんですが(笑)、現在はゲームクリエイターとして活躍している生高橋さん(@hyaku1128)が在籍していたのも要因の一つです。当時から生高橋さんとはTwitter上では知り合っていて、学校の様子なども聞けていたため、安心してこの学校を選べました。当然ながら生高橋さんとは学年が違うのですが、一緒にゲームを作ることになるとはまったく思っていませんでした。
──専門学校に通ってみて良かったと思うことはありますか。
はちのす:中学から大学に至るまで、ゲーム作りを志す同年代の人にまったく出会えませんでした。そういった人たちが多い専門学校は、とても刺激になりました。
──イヤな質問ですが、専門学校で真面目にゲーム制作について学ぶ姿勢を持った人の比率はいかがでしょうか。
はちのす:どうしても本気で取り組む人は、一部に限られてしまう印象でした。それでも、日本工学院専門学校はやる気のある人が比較的多いような気がしています。
──今は北海道にお住まいですが、専門学校で学んだあとの進路についても伺いたいです。
はちのす:ゲーム会社などを経験し、現在はフリーランスのゲーム開発者として活動しています。ゲームの受託開発を請け負う傍ら、個人開発も進めています。
──兼業という道もあったと思いますが、ゲーム開発者一本に絞っているのはなぜでしょうか。
はちのす:兼業していた時期もありましたが、ゲーム開発に使える時間があまり長くないのがネックでした。2021年になってからはお仕事を依頼されるなど機会に恵まれ、思い切って独立しました。
独立してからはゲーム開発に没頭できるうえ、請け負う仕事でも裁量権をいただけています。自分のクリエイティビティを最大限発揮でき、とても楽しく仕事できています。兼業に比べて収入が安定しないといった不安もありますが、この生き方のほうが自分に合っている気がしています。
──個人・チーム・ゲーム会社の社員と、はちのすさんはどれも経験していますが、個人開発がもっとも自分に合っているからそうしているのですか?
はちのす:いえ、関わるゲームが作りたいものであれば個人でもチームでも関係なく開発してみたいです。ただ、会社だと必ずしも作りたいゲームを作れるわけではないため、会社で働くなら自身がゲームの根幹に関わりやすいポジションに就きたいです。専門学校で体験したチーム開発は非常に面白かったので、できればまたチームで作りたいとも思っています。
──現在メインで使っている開発ツールを教えてください。
はちのす:「GameMakerStudio2」と「Unity」です。専門学校でチーム開発していたときはUnityを使っていて、個人開発するときはGameMakerStudio2を使っています。
▲GameMakerStudio2を使ったゲーム開発画面
──GameMakerStudio2のほうが使いやすいでしょうか?
はちのす:そうですね。Unityは2D・3Dどちらも扱えますしエディタ拡張とかアセットも豊富なのは魅力ですが、やらないといけないこともそれだけ多く発生します。GameMakerStudio2は、はじめから使える便利な機能が多く、2Dを手軽かつキレイに表示しやすい。最悪、コードを書かなくてもなんとかなるといったメリットがあるため、使い続けています。
──ゲームで採用しているグラフィックはいつもドットですが、いつごろからドットグラフィックを描きはじめたのですか。
はちのす:大学受験が終わったあと、WOLF RPGエディターでゲームを作っていたときなので、5年以上経ってますね。プリセットの絵やフリー素材だけでは味気なく感じ、オリジナルのグラフィックを作ろうと思い立ちました。
ほかのゲームではどういったツールを作っているのか、どんなグラフィックを描いているのかなどいろいろと調べていたなかで見つけたゲームが、当時は開発中だった『Hyper Light Drifter』です。これまで私が見たことのない描き方のドットグラフィックで、衝撃を受けて強く影響されています。
▲『Hyper Light Drifter』のPV
──アートとして描くドットグラフィックと、ゲーム用として描くドットグラフィックの違いはありますか。
はちのす:私の場合ですが、ゲーム用のドットグラフィックであれば、見せ方を意識しながら描いています。敵が攻撃しようとしているのか・移動しようとしているのかが一瞬で区別できなかったり、開閉がわかりづらい扉があったりすると、プレイヤーはストレスを感じます。オブジェクトやモーション一つひとつがどういった機能を有しているのか、一目見ただけでわかるように気を付けています。アニメーションの場合もできるだけ大げさに、大振りになるようにして、わかりやすさを重視しています。
▲オブジェクトやモーションの目的・役割が視覚的にわかりやすくなるよう工夫している
──はちのすさんはかわいいドットグラフィックのキャラを描くことが多くなってきましたが、作る際に意識していることはありますか。
はちのす:かわいいキャラをデザインするときは、海外のカートゥーンアニメを強く意識しています。ドットで描くうえでは情報量を制御するというか、わかりやすくシンプルにすることがかわいさにもつながっていると思います。
当然ながらドットは角ばっていて、思い描いたデザインをそのままドットに起こすと不要なドットが多くてごちゃごちゃし、見づらくなってしまいます。それにかわいくありません。最近作っているゲームでは、アウトラインは少し太くしてひとつながりになるようにしたり、使用する色数を抑えたりすることで、見やすく・わかりやすくしています。
▲かわいいドットグラフィックを描くためにさまざまな工夫を凝らしている
──はちのすさんはミニゲームを作ってTwitterに動画をちょくちょく投稿していますね。個人的にこの目的が気になっています。
はちのす:販売を考えて作ったものではなく、完全に趣味ですね(笑)。一つのゲームをずっと開発しているとしんどくなってくるので、そんなときに1週間くらいお休みし、試したい技術・表現やひらめいたアイデアを実装・投稿しています。息抜き代わりにやっていたことですが、これで実装した技術を本番の開発に生かすこともあるので、思ったよりも役立っているのかもしれません。
▲作ったミニゲームの一つゲーム開発の息抜きにゲームつくってた...#prototype #gamedev #indiedev #pixelart #screenshotsaturday pic.twitter.com/o01mlIKqCU
— はちのす(Kei Kono)????tiny cactus studio (@HACHINOS_) July 18, 2020
『SOULLOGUE』はいつか開発を再開したいが……
──本格的なゲームを開発しようと動きはじめたのは、ツインスティックシューターの『SOULLOGUE』からでしょうか。はちのす:はい。高校生くらいのときにWOLF RPGエディターで作っていた『The Souls of Yore』をもとに、大学生になってから開発していました。ジャンルとしてはアクションアドベンチャーで、WOLF RPGエディターだと自分のやりたいことを実装するのが厳しそうに感じたため、GameMakerStudio2を使って開発することにしました。
▲『The Souls of Yore』の開発記録
▲『SOULLOGUE』のPV
──開発はすべてお一人で?
はちのす:私は音楽関係はからっきしで、作曲は中学時代の友人であるbluesさん(@blues_unlock)にお願いしました。『The Souls of Yore』のころから2人で「noitems studio」というチームを組んで作っていました。
▲『SOULLOGUE』の楽曲
──本作は開発を休止しています。その理由を教えてください。
はちのす:面白いものを作ることを最優先にしていたら、本作を完成まで持っていくのは時間がかかりすぎると気付いたからです。本作は『BATTLLOON - バトルーン(以下、バトルーン)』に関わるまで開発し続けていて、当初は『バトルーン』を完成させたあとに開発を再開しようと考えていました。
しかし、『バトルーン』を作りきったことでゲーム1本をリリースするのがどれほど大変かを思い知りました。『バトルーン』はチームで作ったうえに、ボリュームも控えめです。『SOULLOGUE』のメイン開発は私一人で、『バトルーン』よりもボリュームが膨大となると完成まで何年かかるかわからず、開発に伴うリスクが大きく感じました。という事情により開発を休止し、規模の小さなゲームをコンスタントにリリースしていく方向に舵を切ることにしました。
▲『SOULLOGUE』の戦闘シーン
──はちのすさんは「講談社ゲームクリエイターズラボ」に本作で応募し、二次選考まで進みました。講談社ゲームクリエイターズラボは最大で計2000万円の開発支援金が支給されるプロジェクトですが、金銭面以外で魅力に思う部分を教えてください。
はちのす:ゲームをずっと一人で作っていると、「このゲームは本当に面白いのか」と悩むようになります。そんなとき、つねに寄り添って意見をいただける方がいてくれるのはありがたいです。ゲーム会社であれば上司やプロデューサーなど見てくれる方は多いと思いますが、個人や少人数チームだとそういった募集をかけるのはなかなか難しいと実感しています。
──同プロジェクトには残念ながら落ちてしまいましたが、またこうした機会があれば本作を復活させたいでしょうか。
はちのす:はい。今回のプロジェクトなど、開発に集中して取り組めるような環境が整ったら再開したいですね。
▲落選後、Twitter上で母親に励まされたはちのすさん地べたを這いつくばったことのある人こそ、後で高く翔べるよ????
— 花咲BABA (@BABA01409433) January 15, 2021
夢は簡単に叶わないから「夢」なんだと思う✨
頑張って!
『BATTLLOON – バトルーン』を振り返る
──はちのすさんは日本工学院専門学校ゲームクリエイター科に在籍しているとき、ローカルマルチプレイ対戦アクションゲームの『BATTLLOON - バトルーン』をチームで開発、商業作品としてリリースしました。はちのす:チーム開発の授業で作ったゲームです。2年生(※)と3年生の合同授業だったため、学年が上の生高橋さんとも一緒に作ることができました。
(※)はちのすさんは2年生として編入した
▲『バトルーン』のPV。2019年2月28日、PC(Steam)とNintendo Switch向けに発売した
──授業の一環として作っていたゲームが、なぜ商業作品になったのでしょうか。
はちのす:パブリッシャーのUNTIESさん(ソニー・ミュージックエンタテインメントのレーベル)にお声がけいただいたことが契機になっています。そもそもUNTIESさんは『SOULLOGUE』を見て問い合わせいただいたのですが、先ほど話した通り開発を休止していまして……。お話を持ちかけていただけた貴重な機会を逃すまいと、当時手がけていた『バトルーン』を代わりに推薦したという経緯です。
──UNTIESさんはパブリッシャーとしてどういったサポートをしてくれたのでしょうか。
はちのす:Steam、ニンテンドーeショップでの販売やローカライズと、YouTuberに本作を遊んでもらったり海外でイベント出展したり。開発以外のすべてをサポートしてもらえました。スケジュールもゲーム内容も自由にさせてもらえたので、動きやすかったですね。
──学校側の協力もあったのかと思います。
はちのす:そうですね。学校のカリキュラムでは前期・後期では別の作品を作ることになっていたのですが、今回は特例で年間を通じて『バトルーン』を開発できることになりました。それと、Nintendo Switchの開発機を教室に置いておくのはまずいということで、元は物置のような使われ方としていたところではありますが、部屋を割り当ててもらえました。
▲マスターアップ時、学校の開発部屋で撮った写真。向かって左側が生高橋さん、右側が高梨さん
──学校ではずっと『バトルーン』の開発にかかりきりだったのですか?
はちのす:週5日のうち2日がその授業で、主に授業時間のなかで開発していました。開発終了間際は土日や正月を返上して開発しちゃいましたが……(笑)。
──『バトルーン』の開発において、はちのすさんが担当した部分を教えてください。
はちのす:ゲーム内のグラフィックはすべて私が担当しました。最後のほうはスケジュールが押していたこともあって、演出やプログラムの一部も手がけました。音以外はすべて関わっていたのかなと思います。
──はちのすさんは『バトルーン』をどう評価していますか。
はちのす:本作を作ってからしばらく経ちますが、今遊んでみてもめちゃめちゃ楽しくて、対戦ゲームとして良くできているシステムだと自負しています。開発初期段階からつまらないと思ったことは1ミリもなかったです。ここまでシンプルな操作でアツく戦えるゲームは少ないのではないでしょうか。
──はちのすさんが主に担当していたグラフィックに関してはいかがでしょうか。
はちのす:今までは『SOULLOGUE』のようなリアル寄りの少し寂れたデザインを描いていて、『バトルーン』でかわいいデザインに初めて挑戦しました。初めての割には、と言ってしまうと言い訳がましいですが、我ながらかわいい出来になったと思っています。
▲はちのすさんが『バトルーン』で気に入っているデザインはデカい爆弾
──一緒に開発したメンバーの印象を教えてください。
はちのす:皆すごかったですよ。とくにリーダー・ディレクターを務めた生高橋さんは天才ですね。一切の無駄がない、洗練したゲームデザインを考える人で、全生徒が憧れる存在でした。それでいてすべての人に分け隔てなく接していましたし、テンションが高い明るい性格なのでチームのムードメーカーでもありました。生高橋さんがいたことで、チームが良い空気のまま開発できましたね。
また、メインプログラマーの高梨さんは、開発スピードの早さが印象的でした。『バトルーン』のアイデアが出たその日のうちにプロトタイプを組み上げるなど、手早く動いてくれたおかげで予想以上の試行錯誤を重ねられ、クオリティの向上につながりました。
▲『バトルーン』のベータ版
──実際に発売してみて、手ごたえはいかがでした?
はちのす:ローカル対戦のみという本作の仕様と相性の良いNintendo Switch版のほうがSteam版より断然多く売れたのは予想通りではありますが、日本と同じくらい海外でも売れて、売れ行きはかなり好感触です。売れたことはうれしかったですし、実況動画やファンアートを見て、『バトルーン』を好きになってもらえたのだと感じられました。
「全部」自分で手がける『Super Glitter Rush』
──現在開発中の『Super Glitter Rush』の紹介をお願いします。はちのす:スマホで操作することを考えた、シンプルでカジュアルな弾幕STG(シューティングゲーム)です。プレイヤーが放つ弾は敵弾を吸収できるのが特徴で、敵弾を巻き込めば巻き込むほど威力がアップします。
このシステムによって敵弾は避けやすくなっていますが、プレイヤーが撃てる弾の数に制限を設けています。難しすぎず簡単すぎない、ちょうど良い難易度になっているかと思います。デザインはかわいらしく仕上げ、誰でも遊びやすいゲームを目指して開発中です。
▲『Super Glitter Rush』のPV。スマホ向けではあるが、PCでも配信予定
──はちのすさんが推したいポイントは。
はちのす:操作を左右の移動とショットのみに絞ったシンプルなところ。それと、ボスのキャラクターデザインはこだわっているので注目してほしいですね。
▲ボスのみと戦うステージをクリアしていく形式で、30体のボスを用意している。はちのすさんのお気に入りボスは「SPACE BUDDIES」
──『SOULLOGUE』もSTG系のゲーム(ツインスティックシューター)でした。
はちのす:本作のシステムは『SOULLOGUE』のバトルを簡単にして、スマホ向けに落とし込んで実現しています。直近で『SOULLOGUE』を再開できる見込みがなく、なんらかの形で『SOULLOGUE』の一部でも実現できればと思って採用しています。
──本作はPCでもリリースしますが、スマホ向けに設計されています。なぜでしょうか。
はちのす:一人でも多くの方に遊んでもらいたくて、ユーザー数が圧倒的に多いスマホを軸に据えています。
──そうなると、スマホ版は有料にしないということでしょうか?
はちのす:はい。広告を入れる無料ゲームとしてリリースする予定です。PC版も300円ほどと、負担にならないくらいの額にしようと考えています。スマホ版とPC版でゲーム内容に差は出ない仕様で、プレイヤーの好みに合ったプラットフォームを選んで遊んでいただけるようにしています。
──サウンドはつよみーさん(@tsuyomi0508)にお願いしています。
はちのす:サウンドを誰かに頼みたいなぁと何の気はなしにユルいツイートをしてみたら、手を挙げてもらえたのがつよみーさんです。もともとの知り合いというのもあり、頼みやすかったですね。
つよみーさんはかわいい曲だけでなく、ロックやジャズなど幅広いジャンルの曲も作れる方で、非常に心強いです。本作でもつよみーさんの腕前を存分に生かした、さまざまなジャンルの曲が楽しめます。
──本作はパブリッシャーさんに頼まず、ご自身の手でリリースするとのこと。どういった理由からその選択をしたのですか。
はちのす:パブリッシャーさんにお願いすれば売上が見込めたりPRやリリースが楽になるとは思いますが、一人でゲームを作るだけでなくPRをしてリリースまで持っていく経験を積みたいという意欲のほうが強いからです。スマホやSteamなどのプラットフォームでリリースしている個人開発者は大勢いるので、勉強もしやすいと思います。
──本作のリリース時期は決まっていますか。
はちのす:別のゲーム開発を優先しており、その合間に少しずつ進めていきます。ゲーム自体はほぼ完成しているため、そこまで時間はかからないかなとは思いつつ、いつになるかは今のところ未定です。
ゲーム実況者さんとともにゲームを開発中!
──話に挙がった、別のゲームとはなんでしょうか。はちのす:ゲーム実況者であるしにがみさん(@sinigami227)の企画で、しにがみさんのスマホゲームの開発に関わっています。Android/iOSでリリース予定です。
▲ゲームの開発が発表された動画。該当シーンは16分40秒~
──しにがみさんから声がかかったのでしょうか。
はちのす:いえ、大手ゲーム会社のプロデューサーの方(上の動画ではアツシさんと呼ばれている方)からお誘いいただけました。
──このゲームで、はちのすさんはどこからどこまで担当しているのですか?
はちのす:企画立案や大まかな仕様などはしにがみさんが担当しています。私はそれ以外、デザインからプログラミングなどを受け持っています。
ということでこの度、実況者しにがみさんのオリジナルゲームの開発部分を担当させてもらうことになりました~~!!????????????
— はちのす(Kei Kono)????tiny cactus studio (@HACHINOS_) December 25, 2020
しにがみさんと謎の人物アツシさん(!?)との3人で現在鋭意製作中です!!!!
私自身5年以上前から動画を見ているファンなので、ファンのひとりとしても最高のゲームを作ります!!!???? https://t.co/zeTkNLWS9v
──しにがみさんとやり取りしてみた感想を教えてください。
はちのす:しにがみさんはセンスあふれる人で企画内容も面白いですし、ご自身でゲームを作っている経験もあるからか、話もスムーズに進みました。
──他にもいろいろと伺いたいことはありますが、話せない情報が多いと思います。
はちのす:最新情報についてはしにがみさんの動画で公開されるらしいです。しにがみさんのYouTubeチャンネルをチェックしながら、リリースをお待ちいただければ幸いです。
まとめ:プレイヤーに楽しんでもらうことが開発の原動力
──オリジナルのゲームを開発する魅力とは。はちのす:『バトルーン』開発時に、イベントで試遊してもらったり実況動画を見たりしたとき、皆さんに楽しく遊んでもらう様子を見られて本当にとても感激したんです。作って良かった、報われたなという気持ちになりました。
そのときの衝撃がずっと心に残っていて、これからもゲームを作ってプレイヤーを楽しませたい、笑顔にしたいと思うようになって、開発のモチベーションにつながっています。ゲームをゼロから生みだしたからこそ、ここまで思い入れも深くなったのだと思います。うーん、ちょっとクサいこと言ってますね(笑)。
──ストレートな気持ちが聞けて、僕としてはうれしいです。試遊できるオフラインイベントがほぼなくなってしまった現状は、やはり寂しいですか。
はちのす:寂しいですね! オンラインイベントだと試遊まではできたとしても、私たち開発者にはその方の反応がわからないですし、顔を見られないのは残念。ことこまかにフィードバックを得られる貴重な機会でもあるので、早く世の中が落ち着いて、オフラインイベントが問題なく開催されるようになってほしいです。
──今抱えているゲームをすべてリリースできたら、次はどんなゲームを作ってみたいですか。
はちのす:今までストーリーがあるゲームを作ったことがありません。ですので、会話ががっつり発生する、ストーリー性重視のゲームを作ってみたいです。ゲームジャンルやプラットフォームにあまり強いこだわりはなく、良いシステムを思いついたらそれに合うプラットフォームを選びたいですね。
──おっと、忘れていました。最後に質問させてください。しにがみさんのゲームと『Super Glitter Rush』で忙しそうなところ恐縮ですが、『Monaka's Sugar High Nightmare』ってどうなりました?
はちのす:アーティストの方たちと緩いノリで開発をはじめたゲームで、半分くらいの完成度です。明け透けに申し上げると開発の優先順位は高くないので完成の目処が立つのはかなり先になりそう……。もし完成しなくても、何らかの形では公開するつもりです。
あと、ブイブイラボのますだたろうさんが作曲を担当しています。ブイブイラボさんが作っている『シューフォーズ-SUPER UFO FIGHTER-』は、『バトルーン』を超えてくる作品になるのではないかと思い、期待しています。
ちょっと眠らせているプロジェクトもありますが、複数のゲームが進行していますので、どのゲームも楽しんでいただけるよう、全力で開発していきます!
▲「Kawaiiの暴力」をコンセプトに据えたアーケードライクアクションゲーム『Monaka's Sugar High Nightmare』のPV
©2019 noname studio Published by Sony Music Entertainment (Japan) Inc.
©2019 tiny cactus studio
©2021 tiny cactus studio
©2021 しにがみ
『Super Glitter Rush』Steamストアページ(デモ版を配信中)
https://store.steampowered.com/app/1338020/Super_Glitter_Rush/
『Super Glitter Rush』
ジャンル:弾幕STG
発売日:未定
プラットフォーム:Steamおよびitch.io(ともにWindows)、Android、iOS
プレイヤー数:1人
価格:300円程度を予定(PC版)、無料(スマホ版)
はちのす Twitter
https://twitter.com/HACHINOS_
はちのす pixivFANBOX
https://www.fanbox.cc/@hachinos
『BATTLLOON - バトルーン』 Steamストアページ
https://store.steampowered.com/app/985800/BATTLLOON/
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