Gamers Zone

move to login

eSPORTS eスポーツに関する最新情報をチェック!

「Worlds2019」準決勝レポート 予想のつかない新たな時代に挑む2チームの歴史を紐解く【『LoL』世界大会2019】

目次
  1. 昨年世界王者と不死鳥の対決:iG vs FPX
  2. 最強地域韓国の意地、初のグランドスラムを目指す欧州の誇り:SKT vs G2
  3. これまでの常識が通じない、新たな時代へ
    1. G2 Esports:ocelote氏の執念がつかんだ栄光への道のり
    2. FunPlus Phoenix:台頭する中国地域に吹き込まれた新風
一年間の競技シーンを締めくくる大舞台として世界中からそれぞれの地域の強豪が集った「League of Legends World Championship 2019(Worlds 2019)」もいよいよ終盤。

準決勝に残ったのは、いわゆるメジャーリージョンと呼ばれる強豪地域の第一シード(G2 Esports・SK Telecom T1・FunPlus Phoenix)が3チームに、昨年の世界大会優勝チームであるInvictus Gaming。まさに王者たちが相まみえる会場となった。

いずれも最強を名乗るに足るであろうチームだが、パリへと進むことができるのは2チームだけ。最後の戦いに挑むべく、各地域最強のチームが激突した二つの試合を振り返っていく。

昨年世界王者と不死鳥の対決:iG vs FPX

▲決勝進出が決まり、ステージ上で喜び合うFPXメンバーたち
LPLから出場している2チームが激突することとなった準決勝第1試合。昨年圧倒的な強さを見せてLPLに王座をもたらしたInvictus Gaming(iG)と、2019シーズンに一気に飛躍してLPLのトップチームとなったFunPlus Phoenix(FPX)が決勝への切符を奪い合うカードだ。両チームとも今シーズンは、iGが春、FPXが夏スプリットを制覇しており、今年のLPL王者同士の激突でもある。

iGはTheShy選手がトップレーン側から圧倒し、中盤以降は各メンバーの技量を存分に押し付けていくスタイル。一方のFPXはミッドのDoinb選手が各レーンへと駆けつけてはタワーダイブから有利を作っていく戦いを得意としている。LPLチームの常として双方とも戦闘には積極的なのは当然としても、全く異なる勝ち筋の両者でどちらが上回るのかが注目された。

序盤から激しいダメージ交換や少数戦が行われるゲームとなり、「Worlds」平均を大きく上回るキルの応酬となったが、チーム構成の強みをより確実に発揮して見せたのはFPX側となった。iGもレーン戦、そして集団戦のいずれも目覚ましいパフォーマンスを見せるシーンもあったが、全体ではFPX側がTheShy選手を抑えきり、iGを勢いに乗せることなく最後は圧倒して見せたのだ。

特にDoinb選手は、準々決勝で使用していたライズをバンされ続けたものの、ランブル、そしてノーチラスと新たなチャンピオンを選択して目覚ましい活躍を見せていた。終わってみれば3勝1敗でFPXが昨年の世界王者を破り、LPL史上2回目となる優勝を目標に、決勝進出を決めた。

最終結果:iG(1勝)vs FPX(3勝)
▲昨年王者iGは準決勝にて敗退となり、連覇はならなかった。今年の彼らの旅路はここで終わる

最強地域韓国の意地、初のグランドスラムを目指す欧州の誇り:SKT vs G2

▲ミッドからADCへ転向したPerkz選手。笑いかけるその視線の先はかつて彼自身が座っていたミッドの席。そこには今、かつてのライバルCaps選手が座る

春夏間の国際大会「MSI」今年の準決勝の再戦カードとなった準決勝第2試合。LCKきっての新鋭プレイヤーと不死の魔王を擁して帰ってきたSK Telecom T1(SKT)が、「MSI」での雪辱を果たすべくG2 Esports(G2)へ挑むというカードである。前回の対戦と同様であれば、奇抜なバン&ピックから仕掛けてくるG2に対して、SKTがどれだけ的確な対応を行い主導権を握るのかが焦点と見られた。

しかし、実際に行われたゲームは事前の予想とは全く異なる姿を見せた。序盤のレーンでは互角あるいはSKTが若干有利を得ていく。しかしヘラルドやタワーでの応酬が行われて試合が中盤以降に入っていくと、そこからの展開が異質だったのだ。

LoL』では序盤の有利をタワーや中立モンスター獲得につなげ、ゴールド差・アイテム差に還元してはさらに続く戦闘等で有利を広げていく。雪玉が坂を転がりながら大きくなる様子になぞらえて「スノーボール」と呼ばれる展開だ。SKTは一度取った有利を着実に、確実に広げていくことにかけては定評のあるチームなのだが、このスノーボールを成功させることができない。

G2は中盤以降、レーンから離れた流動的な試合展開において、ゴールドの不利を埋める場所を的確に見つけてはゴールド差を縮め、SKTが突き放すことを許さなかったのだ。個々のハンドスキルで優れていても、チームとしての判断力や戦場全体をコントロールするための準備という点では、G2が一歩先んじていたということなのだろう。

傍目にはSKTが勝っていたはずのゲームが、明らかなミスを犯したわけでもなくG2側へひっくり返ってしまう。衝撃的な結末でG2がSKTを下し、パリへの切符を手にすることとなった。

第4試合でG2の本拠地に迫るSKTに対し、背水の陣で4対5を仕掛けたG2。その集団戦の仕上がり具合については、公式キャスターJatt氏の解説動画をぜひご覧いただきたい。


最終結果:SKT(1勝)vs G2(3勝)
▲第4試合、控えサポートだったMata選手(手前)を投入するも届かなかったSKT。試合後に彼は「G2は劣勢時でもその差を埋めるプレイができていたが、自分たちの劣勢時はミスを積み重ねるばかりで、それが敗因」と話した

これまでの常識が通じない、新たな時代へ

▲サモナーズカップを前に無邪気な笑みを見せるミッドレーナー2名。どちらもそれぞれの地域で名手として知られるミッドだけに、火花散る戦いぶりを見せてくれるにちがいない

決勝戦へと進む2チームは、いずれも競技シーンが拡大してきた中で台頭したチームだ。

G2 Esports:ocelote氏の執念がつかんだ栄光への道のり

G2が一部リーグに昇格したのは2016シーズンからで、その設立の背景にはシーズン2やシーズン3の国際大会を経験したocelot氏が打ち立てた「アジアのチームに勝てる組織を作る」という目標があった。

実際、昇格直後から欧州では上位に入る強さを見せていたものの、国際大会では振るわない状態が続いていた。チームはシーズンを経るごとに着実に補強を重ね、「ファーストブラッドキング」と称されたベテランジャングラー・Jankos選手や、Splyceで活躍していたトップレーナー・Wunder選手などをチームに加えていった。

そして、2018年の「Worlds」では第3シードでの出場から準々決勝に進出。LPLの大本命であるRoyal Never Give Up(RNG)を破ってベスト4入りを果たし、それまでの「国際大会では今一つ成果を残せないチーム」という評判を払拭した。2019シーズン開幕前にはサポートのMickyx選手、ミッドのCaps選手を獲得し、看板選手のミッドレーナーであったPerkz選手がボットレーン(ADC)へコンバートするという、大きなロースター変更によって全世界の観戦ファンを驚かせる。しかしこの大変革が春夏のLEC優勝、そして「MSI」優勝という大きな飛躍につながっている。

FunPlus Phoenix:台頭する中国地域に吹き込まれた新風

一方のFPXがLPLに参戦したのは2018シーズン。この頃のLPLは、降格を廃しつつも毎年2チームずつ参加チームが増える規模拡大の時期で、新たな参加チームに多くのタレントが集まっては、激しい順位争いを繰り広げるようになっていた。

FPXはというと、勝率は5割前後で1年目の成績としては悪くないものの、プレイオフ出場はギリギリという中堅どころだった。

2019シーズンに入るにあたり、FPXはジャングラーTian選手・ミッドDoinb選手を獲得し、さらにLMS(香港・マカオ・台湾地域)から常に国際大会で一定の活躍を見せていたチーム、Flash WolvesのWarhorseコーチを加え、一気にトップチームへとのし上がることに成功した。元々のメンバーとして、2017シーズンからデュオを組んでいるボットレーンのLwx選手・Crisp選手はLPLの生え抜きであり、トップのGimGoon選手は2014年の「KRエクソダス」以来、新天地でチャンスをつかむべく戦い続けてきた韓国人選手選手の一人だ。こちらもアジア地域の競技シーンで切磋琢磨していた才能を一つに合わせることで、2019年のレギュラーシーズンでは圧倒的な強さを見せている。

▲準決勝終了後、決勝進出が決まった2チームがサモナーズカップを挟んで対峙する

黎明期から国際大会の上位に名を連ね続ける古豪Fnatic、2013年に彗星のごとく現れて圧倒的な帝国を築いたSKT、彼らと国際大会で火花を散らしてきたRNG(あるいはその看板であるUzi選手)、彼らはすでに大会を去っている。

Caps選手をはじめとする若手のミッドレーナーは、シーズン3以来Faker選手をその目標としていたし、FPXのTian選手が『LoL』のプロを志したのは、「MSI 2015」でEDGによる初のLPLチーム国際大会優勝を見たことが発端だという。

かつては先達の背を追い、そして今やそれを追い越して先へと進もうとする2チームがパリで激突する。いずれのチームが勝利するにしても、『LoL』の競技シーンには新たな歴史が書き込まれることとなるのだ。

6週間にわたって続いてきた戦いが終わるのは、11月10日。それぞれの地域の誇りを胸に抱き、決して譲れない「世界最強」を懸けて、フランス・パリで激突するFPXとG2の戦いを見逃すな。

執筆:山口佐和子
執筆協力:ユラガワ
写真:LoL Esports Photos
© 2019 Riot Games, Inc. All rights reserved.
【特集】『リーグ・オブ・レジェンド』世界大会「Worlds 2019」

WRITER RANKING プロゲーマーやゲーム業界人などの人気ライターランキング