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「Worlds 2019」直前! Summer Splitを振り返る【北米・欧州編】
目次
LEC(欧州)代表のG2 Esportsが優勝という形で幕を閉じた「Mid-Season Invitational」(MSI)。春夏間の国際大会では、それぞれの地域が予想しなかったであろう結果を持ち帰り、今シーズンの最終目標への思いを秘めてSummer Splitを戦った。
そして10月2日から、世界最強のチームを決定する「World Championship 2019」(通称「Worlds」)が始まる。全てのチームは「Worlds」へ出場し、自らが最強であると高らかに宣言するために準備を整えてきている。その前にこの夏、各地域がどのように戦い、どのチームが「Worlds」への出場権を勝ち取ったのかを振り返っていきたい。
▲観客たちの熱狂で包まれたデトロイトにて行われた「LCS 2019 Summer Final」
世界各地のリーグの中で、特に強豪とされるLCS(北米)/LEC(欧州)/LPL(中国)/LCK(韓国)/LMS(台湾・香港・マカオ)の5大リーグ。「LCS」は『LoL』開発運営会社であるRiot Gamesのお膝元として長い歴史を誇り、世界中にファンを持つチームが華々しく戦うリーグとして知られている。
昨年の「Worlds」までは、国際大会においてLCK/LPLそしてLECと比して結果が奮わない地域とも見られていたが、昨年の「Worlds 2018」ではCloud9によるLCKチームを破っての初のベスト4入りや、「MSI 2019」における昨年の世界王者Invictus Gamingを破っての決勝進出と、これまでの評価を覆す活躍を見せた。
これまでの北米代表とはひと回りもふた回りも違う実力を、国際大会で見せつけたTeam Liquid(TL)。この王者に対し、それを追うべく新規参入の組織も古豪もそれぞれに自らの武器を携えて始まったのが今年のSummer Splitとなった。
2018シーズンを迎えるに際しての大型補強以来、NA(北米)のトップチームとして結果を出し続け、「MSI 2019」ではLCSチームとして初となるライアット主催の国際大会決勝へと進んだTL。続くSummer Splitも安定して勝ちを重ねてパフォーマンスの高さをはっきりと見せ、1位でシーズンを終えた。
プレイオフではBo5がことごとく5試合目までもつれ込む形にこそなったものの、北米チームの中ではやはり一つ抜けて仕上げてくるC9を破り、地域内で初の4スプリット連続優勝を成し遂げた。
この優勝により、Doublelift選手は7回目のLCS王者となり、Team Solo Mid(TSM)のBjergsen選手を上回ることとなった。また同じくジャングルのXmithie選手も6回目の優勝を飾った。
今夏はミッドシーズン後という点や、NAという地域の性格もあって中~下位のチームは安定して勝ち数を重ねるという点でかなり苦しんでいた。例外としてTLとC9が勝ち上がってくるのはいつものことだが、今シーズンそこに割り込もうと上がってきたのは古豪、Counter Logic Gaming(CLG)だった。
トップレーンにTCL(トルコ)から獲得したRuin選手が入ったことで、トップ側で有利以上を作りたいSummer Splitの環境に適応。昨年は安定しなかったチームを仕上げて着実に順位を上げることに成功し、プレイオフも白熱した試合を繰り広げた。結果としては今シーズンの「Worlds」出場は成らなかったものの、メンバーの補強やチームの再編を経てLCSの古豪が再生したことをファンに見せることができたと言えるだろう。
TLとC9がそれぞれ期待に違わぬ力を見せて「Worlds」への切符を手にした一方で、最後に残った1枠を巡る戦いも激しいものとなった。
Summer Splitに存在感を見せたCLG、現在のチーム名で戦う最後のシーズンとなったClutch Gaming、ベテラン揃いの意地を見せたいFlyQuest、シーズン終了間際までJGが安定しなかったTeam SoloMidと、北米らしい千差万別なチームが顔をそろえたのがRegional Finalsだ。
3日間連続、全ての対戦がBo5という過酷な日程で行われたNA最後の「Worlds」出場枠を巡る戦いを勝ち上がったのは、Clutch Gaming(CG)だった。初戦でFlyQuestを破ると、今シーズン調子を上げてきていたCLGも4ゲームの末に撃破。そして最終日にはTSMに対しては第5ゲームまでもつれ込む激闘の末に、1年ぶりの「Worlds」出場をもくろむ北米きっての名門を打ち破って、プレイインからの出場権を獲得したのだ。中日なし、連続3日間で全13ゲームという類を見ないハードな日程を乗り越えての出場である。
Huni選手やCodysun選手といった「Worlds」出場経験のあるプレイヤーの活躍もさることながら、LCSで活躍する北米出身のミッドレーナーとしてのDamonte選手も注目株だ。プレイインから参加する北米チームということで、昨年のC9のように「代表チームの中では地域最弱」という下馬評を覆す快進撃を見せられるのか、期待と注目が集まっている。
欧州にとって国際大会での優勝というのは長らく一つの目標であり続けた。初めての「Worlds」は欧米圏のチームからなる招待制だったため、本当の意味での世界大会ではなかったという見方もあり、世界最強の地域という称号は彼らにとって渇望の対象だったのだ。昨年の「Worlds」ではあと一歩というところまで進みながら、掴むことが叶わなかった国際大会優勝をついに手にしたのが、「MSI 2019」だった。
かくして世界最強チームとなったG2に対してどのように挑むのか、「Worlds 2019」で世界最強の地域の称号を確固たるものにするべく、どのような準備をしていくのか、LECのSummer Splitは例年以上に欧州の意地と挑戦が詰め込まれたシーズンとなった。
「MSI 2019」でSKT T1(T1)、そしてTLを破って欧州悲願の国際大会優勝を飾ったG2。彼らにはこの夏も当然ながら多くの注目と期待が集まった。
初週を2勝0敗と快勝でスタートするとそのまま順調に勝ち星を重ね、Week 3にFnatic(FNC)戦で待ったをかけられるまで首位を独走。その後も常に勝ちを譲らず、プレイオフ出場が確定するまで勝ちを重ね続けた。
最終的に敗れた3試合は対FNCの1ゲームと、対Team Vitality(VIT)およびFC Schalke 04 Esports(S04)戦。後者2戦はシーズン終盤であり、プレイオフ出場が決まった後の試合で、さらに通常のセオリーからかなり離れたチャンピオン選択の結果なので、FNC以外のチームに正面から当たって敗れた試合はなかったとも言えるほどの強さを見せつけた。
プレイオフは決勝進出を懸けた準決勝、そして決勝といずれもFNCと対峙、2度のBo5はいずれも第5ゲームまでもつれ込む接戦となったが、最後に勝利したのはG2だった。この勝利によって春・MSI・夏と3つのタイトルを獲得し、昨年中国で全タイトル制覇に迫ったRoyal Never Give Up(RNG)に続き、グランドスラムに挑むという形で「Worlds」出場となった。
G2を追う形でLECの中でも結果を残したのが、LECきっての名門であるFnatic(FNC)だ。Spring Splitこそチーム作りに苦労し、序盤は連敗続きとファンをハラハラさせていたものの、Summer SplitにはSpringのようなチグハグな印象は全くなかった。攻撃的な(時に突っ込み過ぎるような)ゲーム展開を好み、G2に対しても通算で1勝1敗と互角の戦績を収め、レギュラーシーズン2位という結果を残すことができている。
プレイオフこそBo5で戦った対G2というカードを2回とも落とす結果には終わったものの、「LECチームの中でG2を止めるチームがあるとすればFNC以外にないだろう」と思わせるだけのプレイを見せてくれている。メンバーの多くは昨年の「Worlds」で多くの試合を戦った経験があり、開催地域もホームということで注目の集まるチームの一つとなっている。
LECはフランチャイズ化に伴い、いくつかのチームが新規に、あるいは久々に一部リーグに復帰し、また大型の補強を行って高い期待を集めてシーズンに臨んだチームも存在した。G2やFNCといった継続してEUのトップリーグで戦ってきたチーム以外の彼らはどうだっただろうか。
結果から言えば、これらのチームの多くは、1年を通してパフォーマンスを上げていくという点で多くの苦労を味わうことになってしまった。Misfits選手はプレイオフ出場の可能性が失われた時点でメインだったプレイヤーを放出してしまったし、Origenは春の勢いを見せることはできなかった。SplyceとSchalke 04はそんな中では安定して上位陣を追いかけ続けることができたチームで、双方とも組織がしっかりと戦えていることを示すことができたと言える。
そしてこの夏に注目された新チームと言えばRogueを外すことはできないだろう。Spring Splitは最下位とリーグの洗礼を浴びる結果に終わったこのチームだが、少しずつメンバーを変更しながら戦える形を模索し、他チームが不調な中で貴重な勝利をもぎ取ると、2スプリット目にしてプレイオフ進出を勝ち取ったのだ。Regional Finalsの参加チーム枠がLECでは変更されていたことからRegional Finals出場は成らなかったが、シーズン終盤に躍進するその姿は多くの新たなファンを生み出していた。
LCS(北米)
第一シード:Team Liquid
第二シード:Cloud9
第三シード:Clutch Gaming
LEC(欧州)
第一シード:G2 Esports
第二シード:Fnatic
第三シード:Splyce
欧米から「Worlds 2019」に送り込まれるチームたちには、これまでよりもさらに大きな期待がかかっている。
Team Liquidは昨年の王者iGを破ったことで北米という地域の評価を覆し、入念な対策を準備して遂行する能力を見せてくれた。中でもADCのDoublelift選手は、名実共に北米最高のプレイヤーの一人でありながら、グループステージを突破したことがないというジンクスをまずは破らなくてはいけない。
Cloud9は例年北米チームの中では最後まで生き残ることから「北米最後の希望」と呼ばれ、昨年はついに「Worlds」ベスト4入りを達成した。名将Reaparedコーチ率いるこのチームは昨年プレイインからスタートしたものの、大会期間中にも大きく成長してその適応力と戦略の確かさを見せつけている。今大会ではグループ分けの時点から強敵との闘いが待ちうけていると見られているが、それでもその底力で何が起きるかはわからない。
Clutch Gamingはチーム創立から初の「Worlds」参戦だが、トップレーンのHuni選手、ボットレーンのCodySun選手は複数回の「Worlds」出場経験もあるベテランで、特にHuni選手は華々しいデビューを遂げた欧州への凱旋であり、それ以上に古巣であるSKT、FNCとの闘いを熱望している。北米出身ミッドレーナーとしてDamonte選手も注目されるだろう。まずはプレイインで強豪リーグとしての強さを見せつけたいところだ。
欧州からの参加チームは何といってもG2が最も注目されるチームだろう。「MSI 2019」の優勝チームとして現時点で「最強」を名乗ることができるチームであり、さらにSpring Split~MSI~Summer Splitを制覇して「Worlds」を含めたグランドスラムに挑む権利を持つ唯一のチームでもある。奇抜な戦略の開発に余念のない、欧州でもひと際風変わりな選択をするという点でも目が離せないチームだ。
続いてのFNCは欧州、あるいは『LoL』の競技シーンという視点で見ても看板と呼ぶにふさわしい名門中の名門だ。シーズン1の優勝以降も数々の国際大会に出場、2018年はあと一歩及ばなかった「Worlds」決勝と多くのドラマに彩られ、また、そのような大舞台まで勝ち上がってくる実力を秘め維持しつづけている。今年はG2とも激しく競り合える攻撃的なスタイルで再び頂点を目指すことになる。
Splyceは久々の「Worlds」参戦で、日本のDetonatioN FocusMeと同じグループに配置された。欧州のチームとしては比較的落ち着いたゲームを展開し、選ぶ戦略も手堅いことが多いチームだったが、Regional Finalsではうって変わって序盤のリードから相手を押し切り、早い時間で試合を終わらせる姿を見せている。今年大型新人と期待され、期待に応える活躍を見せたHumanoid選手をはじめとする強力なメンバーが「Worlds」ではリスクをとるのか、着実に行くのか、どのような戦略をとるのか注目されるところだ。
欧州には「MSI」に続く今年の国際大会制覇、北米には初の国際大会タイトル獲得がかかったこの世界大会。アジアのチームたちが覇を唱えつづける中で、長らく辛酸を舐めてきた欧米チームに、昨年から大きな風が吹きつつある。この秋もし烈な激戦が繰り広げられることだろう!
画像出典:LoL Esports Photos
© 2019 Riot Games, Inc. All rights reserved.
そして10月2日から、世界最強のチームを決定する「World Championship 2019」(通称「Worlds」)が始まる。全てのチームは「Worlds」へ出場し、自らが最強であると高らかに宣言するために準備を整えてきている。その前にこの夏、各地域がどのように戦い、どのチームが「Worlds」への出場権を勝ち取ったのかを振り返っていきたい。
【北米】サモナーズカップを切望するLCS
▲観客たちの熱狂で包まれたデトロイトにて行われた「LCS 2019 Summer Final」
世界各地のリーグの中で、特に強豪とされるLCS(北米)/LEC(欧州)/LPL(中国)/LCK(韓国)/LMS(台湾・香港・マカオ)の5大リーグ。「LCS」は『LoL』開発運営会社であるRiot Gamesのお膝元として長い歴史を誇り、世界中にファンを持つチームが華々しく戦うリーグとして知られている。
昨年の「Worlds」までは、国際大会においてLCK/LPLそしてLECと比して結果が奮わない地域とも見られていたが、昨年の「Worlds 2018」ではCloud9によるLCKチームを破っての初のベスト4入りや、「MSI 2019」における昨年の世界王者Invictus Gamingを破っての決勝進出と、これまでの評価を覆す活躍を見せた。
これまでの北米代表とはひと回りもふた回りも違う実力を、国際大会で見せつけたTeam Liquid(TL)。この王者に対し、それを追うべく新規参入の組織も古豪もそれぞれに自らの武器を携えて始まったのが今年のSummer Splitとなった。
4スプリット連続優勝を成し遂げたTeam Liquid
▲北米最強のチームとして初の4スプリット連続優勝を果たしたTL、そして単独最多優勝となったDoublelift選手2018シーズンを迎えるに際しての大型補強以来、NA(北米)のトップチームとして結果を出し続け、「MSI 2019」ではLCSチームとして初となるライアット主催の国際大会決勝へと進んだTL。続くSummer Splitも安定して勝ちを重ねてパフォーマンスの高さをはっきりと見せ、1位でシーズンを終えた。
プレイオフではBo5がことごとく5試合目までもつれ込む形にこそなったものの、北米チームの中ではやはり一つ抜けて仕上げてくるC9を破り、地域内で初の4スプリット連続優勝を成し遂げた。
この優勝により、Doublelift選手は7回目のLCS王者となり、Team Solo Mid(TSM)のBjergsen選手を上回ることとなった。また同じくジャングルのXmithie選手も6回目の優勝を飾った。
復権した古豪、Counter Logic Gaming
▲Summer SplitにおけるCLG復権の立役者として、Ruin選手の加入が果たした役割は大きい今夏はミッドシーズン後という点や、NAという地域の性格もあって中~下位のチームは安定して勝ち数を重ねるという点でかなり苦しんでいた。例外としてTLとC9が勝ち上がってくるのはいつものことだが、今シーズンそこに割り込もうと上がってきたのは古豪、Counter Logic Gaming(CLG)だった。
トップレーンにTCL(トルコ)から獲得したRuin選手が入ったことで、トップ側で有利以上を作りたいSummer Splitの環境に適応。昨年は安定しなかったチームを仕上げて着実に順位を上げることに成功し、プレイオフも白熱した試合を繰り広げた。結果としては今シーズンの「Worlds」出場は成らなかったものの、メンバーの補強やチームの再編を経てLCSの古豪が再生したことをファンに見せることができたと言えるだろう。
第三のイスを巡る戦い
▲3日連続のBo5を勝ち抜いたLira選手(左)とHuni選手(右)TLとC9がそれぞれ期待に違わぬ力を見せて「Worlds」への切符を手にした一方で、最後に残った1枠を巡る戦いも激しいものとなった。
Summer Splitに存在感を見せたCLG、現在のチーム名で戦う最後のシーズンとなったClutch Gaming、ベテラン揃いの意地を見せたいFlyQuest、シーズン終了間際までJGが安定しなかったTeam SoloMidと、北米らしい千差万別なチームが顔をそろえたのがRegional Finalsだ。
3日間連続、全ての対戦がBo5という過酷な日程で行われたNA最後の「Worlds」出場枠を巡る戦いを勝ち上がったのは、Clutch Gaming(CG)だった。初戦でFlyQuestを破ると、今シーズン調子を上げてきていたCLGも4ゲームの末に撃破。そして最終日にはTSMに対しては第5ゲームまでもつれ込む激闘の末に、1年ぶりの「Worlds」出場をもくろむ北米きっての名門を打ち破って、プレイインからの出場権を獲得したのだ。中日なし、連続3日間で全13ゲームという類を見ないハードな日程を乗り越えての出場である。
Huni選手やCodysun選手といった「Worlds」出場経験のあるプレイヤーの活躍もさることながら、LCSで活躍する北米出身のミッドレーナーとしてのDamonte選手も注目株だ。プレイインから参加する北米チームということで、昨年のC9のように「代表チームの中では地域最弱」という下馬評を覆す快進撃を見せられるのか、期待と注目が集まっている。
【欧州】新たなる最強地域を目指すLEC
欧州にとって国際大会での優勝というのは長らく一つの目標であり続けた。初めての「Worlds」は欧米圏のチームからなる招待制だったため、本当の意味での世界大会ではなかったという見方もあり、世界最強の地域という称号は彼らにとって渇望の対象だったのだ。昨年の「Worlds」ではあと一歩というところまで進みながら、掴むことが叶わなかった国際大会優勝をついに手にしたのが、「MSI 2019」だった。
かくして世界最強チームとなったG2に対してどのように挑むのか、「Worlds 2019」で世界最強の地域の称号を確固たるものにするべく、どのような準備をしていくのか、LECのSummer Splitは例年以上に欧州の意地と挑戦が詰め込まれたシーズンとなった。
欧州最強の悪童たち
▲Spring、MSI、Summerと3つのタイトルを制覇したG2。残る今年のタイトルは「Worlds」のみだ。「MSI 2019」でSKT T1(T1)、そしてTLを破って欧州悲願の国際大会優勝を飾ったG2。彼らにはこの夏も当然ながら多くの注目と期待が集まった。
初週を2勝0敗と快勝でスタートするとそのまま順調に勝ち星を重ね、Week 3にFnatic(FNC)戦で待ったをかけられるまで首位を独走。その後も常に勝ちを譲らず、プレイオフ出場が確定するまで勝ちを重ね続けた。
最終的に敗れた3試合は対FNCの1ゲームと、対Team Vitality(VIT)およびFC Schalke 04 Esports(S04)戦。後者2戦はシーズン終盤であり、プレイオフ出場が決まった後の試合で、さらに通常のセオリーからかなり離れたチャンピオン選択の結果なので、FNC以外のチームに正面から当たって敗れた試合はなかったとも言えるほどの強さを見せつけた。
プレイオフは決勝進出を懸けた準決勝、そして決勝といずれもFNCと対峙、2度のBo5はいずれも第5ゲームまでもつれ込む接戦となったが、最後に勝利したのはG2だった。この勝利によって春・MSI・夏と3つのタイトルを獲得し、昨年中国で全タイトル制覇に迫ったRoyal Never Give Up(RNG)に続き、グランドスラムに挑むという形で「Worlds」出場となった。
LECの看板・Fnatic
▲一つのチームとして仕上がり、G2と激しく優勝争いを演じたFNCG2を追う形でLECの中でも結果を残したのが、LECきっての名門であるFnatic(FNC)だ。Spring Splitこそチーム作りに苦労し、序盤は連敗続きとファンをハラハラさせていたものの、Summer SplitにはSpringのようなチグハグな印象は全くなかった。攻撃的な(時に突っ込み過ぎるような)ゲーム展開を好み、G2に対しても通算で1勝1敗と互角の戦績を収め、レギュラーシーズン2位という結果を残すことができている。
プレイオフこそBo5で戦った対G2というカードを2回とも落とす結果には終わったものの、「LECチームの中でG2を止めるチームがあるとすればFNC以外にないだろう」と思わせるだけのプレイを見せてくれている。メンバーの多くは昨年の「Worlds」で多くの試合を戦った経験があり、開催地域もホームということで注目の集まるチームの一つとなっている。
新たなる挑戦とチームの難しさ
▲シーズン後半からトップレーンを務め、後半におけるRGEの原動力となったFinn選手。残念ながらRegional Finals出場は成らなかった。LECはフランチャイズ化に伴い、いくつかのチームが新規に、あるいは久々に一部リーグに復帰し、また大型の補強を行って高い期待を集めてシーズンに臨んだチームも存在した。G2やFNCといった継続してEUのトップリーグで戦ってきたチーム以外の彼らはどうだっただろうか。
結果から言えば、これらのチームの多くは、1年を通してパフォーマンスを上げていくという点で多くの苦労を味わうことになってしまった。Misfits選手はプレイオフ出場の可能性が失われた時点でメインだったプレイヤーを放出してしまったし、Origenは春の勢いを見せることはできなかった。SplyceとSchalke 04はそんな中では安定して上位陣を追いかけ続けることができたチームで、双方とも組織がしっかりと戦えていることを示すことができたと言える。
そしてこの夏に注目された新チームと言えばRogueを外すことはできないだろう。Spring Splitは最下位とリーグの洗礼を浴びる結果に終わったこのチームだが、少しずつメンバーを変更しながら戦える形を模索し、他チームが不調な中で貴重な勝利をもぎ取ると、2スプリット目にしてプレイオフ進出を勝ち取ったのだ。Regional Finalsの参加チーム枠がLECでは変更されていたことからRegional Finals出場は成らなかったが、シーズン終盤に躍進するその姿は多くの新たなファンを生み出していた。
東洋との戦いの中で磨き上げられた西洋の力を見よ
かくして、今年最強のチームを決めるWorldsの出場チームは以下となった。LCS(北米)
第一シード:Team Liquid
第二シード:Cloud9
第三シード:Clutch Gaming
LEC(欧州)
第一シード:G2 Esports
第二シード:Fnatic
第三シード:Splyce
欧米から「Worlds 2019」に送り込まれるチームたちには、これまでよりもさらに大きな期待がかかっている。
Team Liquidは昨年の王者iGを破ったことで北米という地域の評価を覆し、入念な対策を準備して遂行する能力を見せてくれた。中でもADCのDoublelift選手は、名実共に北米最高のプレイヤーの一人でありながら、グループステージを突破したことがないというジンクスをまずは破らなくてはいけない。
Cloud9は例年北米チームの中では最後まで生き残ることから「北米最後の希望」と呼ばれ、昨年はついに「Worlds」ベスト4入りを達成した。名将Reaparedコーチ率いるこのチームは昨年プレイインからスタートしたものの、大会期間中にも大きく成長してその適応力と戦略の確かさを見せつけている。今大会ではグループ分けの時点から強敵との闘いが待ちうけていると見られているが、それでもその底力で何が起きるかはわからない。
Clutch Gamingはチーム創立から初の「Worlds」参戦だが、トップレーンのHuni選手、ボットレーンのCodySun選手は複数回の「Worlds」出場経験もあるベテランで、特にHuni選手は華々しいデビューを遂げた欧州への凱旋であり、それ以上に古巣であるSKT、FNCとの闘いを熱望している。北米出身ミッドレーナーとしてDamonte選手も注目されるだろう。まずはプレイインで強豪リーグとしての強さを見せつけたいところだ。
欧州からの参加チームは何といってもG2が最も注目されるチームだろう。「MSI 2019」の優勝チームとして現時点で「最強」を名乗ることができるチームであり、さらにSpring Split~MSI~Summer Splitを制覇して「Worlds」を含めたグランドスラムに挑む権利を持つ唯一のチームでもある。奇抜な戦略の開発に余念のない、欧州でもひと際風変わりな選択をするという点でも目が離せないチームだ。
続いてのFNCは欧州、あるいは『LoL』の競技シーンという視点で見ても看板と呼ぶにふさわしい名門中の名門だ。シーズン1の優勝以降も数々の国際大会に出場、2018年はあと一歩及ばなかった「Worlds」決勝と多くのドラマに彩られ、また、そのような大舞台まで勝ち上がってくる実力を秘め維持しつづけている。今年はG2とも激しく競り合える攻撃的なスタイルで再び頂点を目指すことになる。
Splyceは久々の「Worlds」参戦で、日本のDetonatioN FocusMeと同じグループに配置された。欧州のチームとしては比較的落ち着いたゲームを展開し、選ぶ戦略も手堅いことが多いチームだったが、Regional Finalsではうって変わって序盤のリードから相手を押し切り、早い時間で試合を終わらせる姿を見せている。今年大型新人と期待され、期待に応える活躍を見せたHumanoid選手をはじめとする強力なメンバーが「Worlds」ではリスクをとるのか、着実に行くのか、どのような戦略をとるのか注目されるところだ。
欧州には「MSI」に続く今年の国際大会制覇、北米には初の国際大会タイトル獲得がかかったこの世界大会。アジアのチームたちが覇を唱えつづける中で、長らく辛酸を舐めてきた欧米チームに、昨年から大きな風が吹きつつある。この秋もし烈な激戦が繰り広げられることだろう!
画像出典:LoL Esports Photos
© 2019 Riot Games, Inc. All rights reserved.
執筆:山口佐和子
執筆協力:ユラガワ
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