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『ELDEN RING』Steam版レビュー:古き良きRPGの面白さと難しさを現代に蘇らせた、“覚悟”ある者たちに贈る壮大すぎる冒険譚
目次
全世界待望のアクションRPG『ELDEN RING』(エルデンリング)がついに発売となり、プレイしたユーザーは悲喜こもごも、あらゆる感情を爆発させています。筆者自身、本作をプレイしてクリアできたことに喜びと達成感を覚えつつ、その歯ごたえのありすぎる難度等にちょっとした悔しさの感情を抱えてしまいました。
そんな私が本作を評価するとすれば、「古き良きRPGの面白さと難しさを現代に蘇らせた、“覚悟”あるものに贈る壮大すぎる冒険譚」です。
本レビューはキャラクリエイト時に選択できる「生まれ」をオーソドックスなスタイルである放浪剣士、ソロプレイ中心でプレイしました。
●『エルデンリング』のポイント
フロム・ソフトウェアが手掛けた、
『エルデンリング』は新規IPとして発表・制作されていますが、ソウルシリーズをはじめ、フロム・ソフトウェアが手掛けてきたアクションRPG作品の要素がふんだんに詰め込まれています。
ゲームの流れを簡単に説明すると、プレイヤーは「褪せ人」と呼ばれる存在として狭間の地に降り立つことになり、砕けてしまったエルデンリングを修復してエルデの王になるのが主な目的です。
その過程で必要となるのが、各地に存在する大ボス「デミゴッド」たちの討伐。彼らと戦い、彼らが守る「大ルーン」と呼ばれるアイテムを回収していくことでエルデの王への道が開けていきます。
狭間の地では何が起こっている、もしくは起こってきたのか。その世界に存在する人々の思惑や謎を解明していきながら、道中いたるところに存在する敵やボスたちとの死闘を繰り広げ、自身を成長させていきます。
ゲームシステムの基礎はソウルシリーズとほぼ変わらず。基本ゲージはHP、FP(MPのようなもの)、スタミナの3つで構成されており、レベルアップ時は筋力や知力などさまざまなパラメータを上げ、自分好みのキャラクターに成長させていくアクションRPGとなっています。 ソウルシリーズとの大きな違いは、マップがオープンワールドになっている点でしょう。
道中で手に入れた経験値は、敵にやられて倒れてしまうとその場に置き去りです。拾えないまま再度倒れてしまうと、すべてが無に帰すロストシステムは、ソウルシリーズの伝統として本作でも健在です。
ボス戦の難しさに代表される高難度システムは変わらぬ一方、アクション部分についてはボタン入力によるジャンプが追加され、さらにガード成功時に敵の体勢を崩しやすい攻撃を発動する「ガードカウンター」と、攻撃手段も増えています。
オープンワールドにおける移動手段としては、従来どおりの歩きのみではなく、霊馬による騎馬が可能になりました。騎馬状態では高速で移動が可能なほか、二段ジャンプや特殊条件下で高高度ジャンプもできるので、探索にはもってこいのシステムとなっています。
また、騎馬状態のまま攻撃も可能なので、敵モンスターによっては一方的に有利な展開を作り出すこともできます。
これらのアクションを有効活用し、狭間の地での探索を進めていきましょう。
新要素「遺灰」「戦灰」により、
本作から追加された新たなシステム「遺灰」「戦灰」により、ソロで厳しい戦闘であっても選択肢が増えており、戦いを有利に進めることができるようになりました。
「遺灰」はさまざまな能力を持つ霊を、1戦闘につき1種類のみ召喚することが可能になるシステムです。一度につき1体はもちろん、霊によっては5~6人まとめて召喚するものも。状態異常を付与する霊などもいるため、固有能力による強みがあります。
また、敵からのターゲッティングをそらす役割としても有効ですので、強敵との戦闘に困ったときは積極的に使用していきましょう。
しかし、注意すべき点が2つ。遺灰はとあるアイテムを所持していないと使用できない点。そして、一部エリアでしか使用できない点です。戦闘中・探索中、画面左に薄青い墓のマークが表示されているエリアでしか霊は呼べないため、土壇場でミスをしないよう注意が必要です。
一方、「戦灰」は通常武器に装備することができる特殊技です。ダンジョンクリアやボス討伐、探索の報酬など獲得方法はさまざまで、種類自体も攻撃・防御・補助など多岐にわたります。
序盤で手に入るアイテム「砥石の小刀」を獲得することで、所持している戦灰の付け替えが可能になります。戦灰は何度付け外しをしてもなくならないため、自分好みの技が手に入ったらどんどん装着していきましょう。
戦灰を装備時、武器が持つ属性の変更も同時に行えます。これにより、武具ごとに決められている能力補正の値をある程度調整できるので、キャラステータスにあわせてより最適な武具を作り上げることができます。
注意してほしいのは、一部レアな武具にもともと装着されている戦灰は付け替えできない点。レアな武具はそれ自体の能力も高いことが多いので、属性を切り替えられる通常武器とともに使い分けていくのが良いでしょう。
冒険心をかきたてる、
「オープンワールド」と銘打たれた本作は、鬱蒼とした森のなかにふと現れる洞窟、山岳にそびえる巨城、嵐が吹き荒れる遺跡、湖に沈んでしまった街や地下に広がる宇宙のような空間。そのほかプレイヤーの想像を優に超え広がっていく世界は、新たな場所へ訪れるたびに心を惹き付けて離しません。
舞台となる狭間の地は、筆者の想像を優に超えてしまうレベルで広いです。それと同じくらいには、本作の持つボリュームは非常に多く、一周をじっくり遊んでラスボスと対面したのは67時間ほどでしたが、それでもなお未回収のイベントは複数あり、未踏破の地やダンジョンは数多く存在していました。
概算にはなってしまいますが、筆者のペースで一周分のイベントやダンジョンをすべて踏破しボスも討伐するとなると、おそらく100~110時間は軽く超えてしまうかもしれません。
それほどにボリュームが詰め込まれた世界を旅している気分は、まさしく冒険の旅といえるもので、探索をすればするほど新たな発見がある本作はRPGが好きな筆者にとって非常に価値のある時間でした。しかし、進めていくうちに「あれ……?」と思う自分がいたのです。
旅路が素晴らしいからこそ、
先述した壮大すぎるボリュームはゲームを進めれば進めるほど、「まだ続くの……?」と思ってしまうほどに詰め込まれていました。それだけならとてもうれしいことなのですが、そのボリュームの多さと同時に押し寄せてくる難度上昇の波がすさまじく、序盤~中盤まであった楽しさが突如失われていき、最終的には難しさのベクトルが急激に変わってしまったことに対する苦痛が勝っていきます。
例えるならば、ファミコン時代に発売された古き良きRPG作品のなかでも、とりわけ難しいものをプレイしていた際の印象と似ていました。何も知らぬ土地を歩きながら、足で情報を得ていく感覚。順調に進行していくも、途中から突然跳ね上がる道中のモンスターの強さや、終盤~ラストに登場するボスがもつ理不尽さ。
最終的に本作をクリアすることへの達成感は生まれたので、例にあげた作品と体験としては近いものでした。しかし、本作はいつもの達成感と同時に、正直苦しさもありました。
ソウルシリーズにおける敵の攻撃パターンは、こちらがどのボタンを押しているかや、プレイヤーとの距離によって判別されているものが多くあるようで、ある程度経験を積むと、相手の攻撃を一部の種類のみに制限させることも可能でした。
しかし、本作ではそうしたパターンがあればマシな方で、後半になればなるほどランダム性と一発のダメージも高くなっていきます。やたらと遅めに振りかぶる攻撃や効果範囲が分かりづらい攻撃、攻撃判定がいつまで持続しているかわからない攻撃など、よほど同じボス戦を繰り返さないと把握できないようなものがランダムに降り注いできます。
そんなボスが一体だけならまだしも、同時に複数体出現するのが当たり前のような状態になり、挙句の果てにはボスが大きすぎる、エフェクトが派手すぎて視界を塞いでくる、攻撃時に身体が動き過ぎて全体モーションが把握しづらい……なんてものも出てくるので、ロックオンするとかえって不利になってしまうものもありました。
ダメージが高いだけならまったく問題ないと思えてしまうほどの攻撃が、後半のボスにはいくつも備わっているため、自身の操作ミス以外の要因で死ぬことが増えていくのです。
近年フロム・ソフトウェアが開発し、そのなかでも筆者がやり込んでいた『Demon’s Souls』や『SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE』を見ると、ゲームの展開やプレイヤースキル・レベルの上昇に合った戦闘難度だと思っています。とくに後者に至っては本作のような綿密なレベルアップシステムがなくとも、自身のスキルの上達がとても感じられる出来になっていました。
一方、本作では急激に跳ね上がってしまっているうえに、オープンワールドという性質もあいまって、プレイヤースキルやレベル&敵の強さとのバランス調整が難しくなってしまったのかもしれません。「勝てた!」「上達した!」という喜びを感じるよりも先に、「ようやく終わった!」「もう戦いたくない!」という疲労感を感じることが多かったのも事実です。
オープンワールドにおける探索と発見はとても魅力的で、ロケーション・世界観・キャラクターや抱えている謎など、冒険心をかきたてられる世界として非常に素晴らしいものだったぶん、後半から頻繁に感じてしまう疲労感の嵐は残念でなりません。
本作はオープンワールドでさまざまなボスと戦いますが、私の環境(CPU:Core-i7 12700K, MB:ASROCK Z690 PG Riptide, GPU:RTX 2080 SUPER, メインメモリ:32GB SSDインストール)では、ほぼすべてのボス戦の際に高頻度でカクつきが発生していました。一瞬映像が飛ぶだけでも致命的なのですが、厄介なのは操作も受け付けなくなってしまう点です。映像が止まったと思ったら高速で動き出し、その間に入力された操作はすべて無効にされてしまっていました。
最初に気づいたのは配信しながらのプレイだったため、CPUに負荷がかかりすぎていたのかと疑いました。しかし、配信なし・オフラインモード、シングルディスプレイなどいくつも環境を変えてプレイしたにも関わらず、同じ箇所でカクつきは発生しています。
レビュー執筆中に2、3回ほどパッチがあたり、パッチノートにはパフォーマンス問題に関する修正もありましたが、現時点(2022年4月7日時点)でもいまだ改善はされておりません。ゲームファイルの整合性確認もやってみましたが、やはりダメでした。
それならばと、ユーザー側自身でCPUやグラフィックボードの設定を調整してみましたが、ほとんど改善がみられず残念な結果に……そのままラストまで戦い抜きましたが、自分のせいではないのに負けてしまうことが幾度となく積み重なるストレスは……やはり苦痛でした。
この問題点に関しては、発売からまだ日も浅く最適化が進んでいなかったことが原因と考えられます。PC版『SEKIRO』が発売されプレイした当初も動作は不安定になりがちだったので、今後のアップデートではより安定していってくれることを切に願います。
自己責任にはなりますが、PC環境によっては細かな調整で直る可能性もあります。もしも私と同様の症状でお悩みの方は、BIOSもしくはOS上からグラフィックボード自体の電源効率、CPUのコア数・クロック周波数などゲームプレイに関係がありそうな箇所を適宜変更・制限を加えながらチェックしてみることをおすすめします。
この過酷な冒険は達成感を得られるが、
一周目をじっくり楽しんで約70時間、未踏破の地やキャラクターイベント、未知のボスがまだ隠れていそうな気配を残したままクリアでしたが、筆者個人としてはまだまだ狭間の地を冒険していたい気持ちがあります。
探索をすればするほど、キャラクターのレベルアップはもちろん、装備品や遺灰の強化、新たなアイテムや魔術・祈祷の獲得などをすれば有利に働いていきます。ただ、あくまでも“有利に”なるというだけで、確実に勝てるわけではありません。
最終的に自身のプレイヤースキルと経験・知識がものをいうゲームとなっているので、敵の動き・パターンを何度もトライして練習する必要があります。それでもやはり「難しい!」と感じたら、オンラインマルチプレイを試してみるのもひとつの手でしょう。
戦灰や遺灰など、いままでソウルシリーズに触れてこなかった人でも遊びやすくなっている部分もあります。筆者自身も、もしこれからソウルシリーズに触れてみたいという方にどれをオススメするか考えるなら本作であることは間違いありません。一方で、難度の調整が極端すぎるために、新規層が離れてしまう可能性も十分に含んでいます。
これまで述べてきたいくつかの理由もあり、本作はゲームを遊ぶ人皆にオススメしたいのにも関わらず、諸手を挙げてできないものとなっているのです。
しかし、プレイヤー各々の、唯一無二の冒険が楽しめるのも確かなのです。そのため、何度倒されて打ちのめされても立ち上がるチャレンジ精神を持つ人、そして“覚悟”のある人にぜひおすすめしたい一作となっています。
©BANDAI NAMCO Entertainment Inc. / ©2022 FromSoftware, Inc.
●タイトル:ELDEN RING(エルデンリング)
●ジャンル:アクションRPG
●発売元:フロム・ソフトウェア / バンダイナムコエンターテインメント
●開発元:フロム・ソフトウェア
●プラットフォーム:PC(Steam)、PlayStation 5、PlayStation 4、Xbox Series X|S、Xbox One
●発売日:2022年2月25日
●価格:
通常版 9240円[税込]
デジタルデラックスエディション 9900円[税込]
●必須スペック
OS: Windows 10
プロセッサー: Intel Core i5-8400 または AMD Ryzen 3 3300X
メモリー: 12GB
グラフィック: NVIDIA GeForce GTX1060 3GB または AMD Radeon RX580 4GB
ストレージ: 60GB
●推奨スペック
OS: Windows 10/11
プロセッサー: Intel Core i7-8700K または AMD Ryzen 5 3600X
メモリー: 16GB
グラフィック: NVIDIA GeForce GTX1070 8GB または AMD Radeon RX VEGA56 8GB
ストレージ: 60GB
●公式サイトURL:https://www.eldenring.jp/
●ダウンロードサイトURL:https://store.steampowered.com/app/1245620/ELDEN_RING/
そんな私が本作を評価するとすれば、「古き良きRPGの面白さと難しさを現代に蘇らせた、“覚悟”あるものに贈る壮大すぎる冒険譚」です。
本レビューはキャラクリエイト時に選択できる「生まれ」をオーソドックスなスタイルである放浪剣士、ソロプレイ中心でプレイしました。
●『エルデンリング』のポイント
- 数々の自社作品から継承されている、遊びごたえたっぷりなアクションRPG
- 広大なマップ、魅力的なロケーションが豊富なオープンワールド「狭間の地」
- ゲーム後半以降に訪れる高難度、PC版特有の最適化問題
フロム・ソフトウェアが手掛けた、
アクションRPGの集大成的作品
『エルデンリング』は新規IPとして発表・制作されていますが、ソウルシリーズをはじめ、フロム・ソフトウェアが手掛けてきたアクションRPG作品の要素がふんだんに詰め込まれています。ゲームの流れを簡単に説明すると、プレイヤーは「褪せ人」と呼ばれる存在として狭間の地に降り立つことになり、砕けてしまったエルデンリングを修復してエルデの王になるのが主な目的です。
その過程で必要となるのが、各地に存在する大ボス「デミゴッド」たちの討伐。彼らと戦い、彼らが守る「大ルーン」と呼ばれるアイテムを回収していくことでエルデの王への道が開けていきます。
狭間の地では何が起こっている、もしくは起こってきたのか。その世界に存在する人々の思惑や謎を解明していきながら、道中いたるところに存在する敵やボスたちとの死闘を繰り広げ、自身を成長させていきます。
ゲームシステムの基礎はソウルシリーズとほぼ変わらず。基本ゲージはHP、FP(MPのようなもの)、スタミナの3つで構成されており、レベルアップ時は筋力や知力などさまざまなパラメータを上げ、自分好みのキャラクターに成長させていくアクションRPGとなっています。 ソウルシリーズとの大きな違いは、マップがオープンワールドになっている点でしょう。
道中で手に入れた経験値は、敵にやられて倒れてしまうとその場に置き去りです。拾えないまま再度倒れてしまうと、すべてが無に帰すロストシステムは、ソウルシリーズの伝統として本作でも健在です。
ボス戦の難しさに代表される高難度システムは変わらぬ一方、アクション部分についてはボタン入力によるジャンプが追加され、さらにガード成功時に敵の体勢を崩しやすい攻撃を発動する「ガードカウンター」と、攻撃手段も増えています。
オープンワールドにおける移動手段としては、従来どおりの歩きのみではなく、霊馬による騎馬が可能になりました。騎馬状態では高速で移動が可能なほか、二段ジャンプや特殊条件下で高高度ジャンプもできるので、探索にはもってこいのシステムとなっています。
また、騎馬状態のまま攻撃も可能なので、敵モンスターによっては一方的に有利な展開を作り出すこともできます。
これらのアクションを有効活用し、狭間の地での探索を進めていきましょう。
新要素「遺灰」「戦灰」により、
ソロで厳しい戦闘に新たな選択肢が増えた
本作から追加された新たなシステム「遺灰」「戦灰」により、ソロで厳しい戦闘であっても選択肢が増えており、戦いを有利に進めることができるようになりました。「遺灰」はさまざまな能力を持つ霊を、1戦闘につき1種類のみ召喚することが可能になるシステムです。一度につき1体はもちろん、霊によっては5~6人まとめて召喚するものも。状態異常を付与する霊などもいるため、固有能力による強みがあります。
また、敵からのターゲッティングをそらす役割としても有効ですので、強敵との戦闘に困ったときは積極的に使用していきましょう。
しかし、注意すべき点が2つ。遺灰はとあるアイテムを所持していないと使用できない点。そして、一部エリアでしか使用できない点です。戦闘中・探索中、画面左に薄青い墓のマークが表示されているエリアでしか霊は呼べないため、土壇場でミスをしないよう注意が必要です。
一方、「戦灰」は通常武器に装備することができる特殊技です。ダンジョンクリアやボス討伐、探索の報酬など獲得方法はさまざまで、種類自体も攻撃・防御・補助など多岐にわたります。
序盤で手に入るアイテム「砥石の小刀」を獲得することで、所持している戦灰の付け替えが可能になります。戦灰は何度付け外しをしてもなくならないため、自分好みの技が手に入ったらどんどん装着していきましょう。
戦灰を装備時、武器が持つ属性の変更も同時に行えます。これにより、武具ごとに決められている能力補正の値をある程度調整できるので、キャラステータスにあわせてより最適な武具を作り上げることができます。
注意してほしいのは、一部レアな武具にもともと装着されている戦灰は付け替えできない点。レアな武具はそれ自体の能力も高いことが多いので、属性を切り替えられる通常武器とともに使い分けていくのが良いでしょう。
冒険心をかきたてる、
バリエーション豊かなマップロケーション
「オープンワールド」と銘打たれた本作は、鬱蒼とした森のなかにふと現れる洞窟、山岳にそびえる巨城、嵐が吹き荒れる遺跡、湖に沈んでしまった街や地下に広がる宇宙のような空間。そのほかプレイヤーの想像を優に超え広がっていく世界は、新たな場所へ訪れるたびに心を惹き付けて離しません。舞台となる狭間の地は、筆者の想像を優に超えてしまうレベルで広いです。それと同じくらいには、本作の持つボリュームは非常に多く、一周をじっくり遊んでラスボスと対面したのは67時間ほどでしたが、それでもなお未回収のイベントは複数あり、未踏破の地やダンジョンは数多く存在していました。
概算にはなってしまいますが、筆者のペースで一周分のイベントやダンジョンをすべて踏破しボスも討伐するとなると、おそらく100~110時間は軽く超えてしまうかもしれません。
それほどにボリュームが詰め込まれた世界を旅している気分は、まさしく冒険の旅といえるもので、探索をすればするほど新たな発見がある本作はRPGが好きな筆者にとって非常に価値のある時間でした。しかし、進めていくうちに「あれ……?」と思う自分がいたのです。
旅路が素晴らしいからこそ、
物語終盤から始まる展開と難度に愕然
先述した壮大すぎるボリュームはゲームを進めれば進めるほど、「まだ続くの……?」と思ってしまうほどに詰め込まれていました。それだけならとてもうれしいことなのですが、そのボリュームの多さと同時に押し寄せてくる難度上昇の波がすさまじく、序盤~中盤まであった楽しさが突如失われていき、最終的には難しさのベクトルが急激に変わってしまったことに対する苦痛が勝っていきます。例えるならば、ファミコン時代に発売された古き良きRPG作品のなかでも、とりわけ難しいものをプレイしていた際の印象と似ていました。何も知らぬ土地を歩きながら、足で情報を得ていく感覚。順調に進行していくも、途中から突然跳ね上がる道中のモンスターの強さや、終盤~ラストに登場するボスがもつ理不尽さ。
最終的に本作をクリアすることへの達成感は生まれたので、例にあげた作品と体験としては近いものでした。しかし、本作はいつもの達成感と同時に、正直苦しさもありました。
ソウルシリーズにおける敵の攻撃パターンは、こちらがどのボタンを押しているかや、プレイヤーとの距離によって判別されているものが多くあるようで、ある程度経験を積むと、相手の攻撃を一部の種類のみに制限させることも可能でした。
しかし、本作ではそうしたパターンがあればマシな方で、後半になればなるほどランダム性と一発のダメージも高くなっていきます。やたらと遅めに振りかぶる攻撃や効果範囲が分かりづらい攻撃、攻撃判定がいつまで持続しているかわからない攻撃など、よほど同じボス戦を繰り返さないと把握できないようなものがランダムに降り注いできます。
そんなボスが一体だけならまだしも、同時に複数体出現するのが当たり前のような状態になり、挙句の果てにはボスが大きすぎる、エフェクトが派手すぎて視界を塞いでくる、攻撃時に身体が動き過ぎて全体モーションが把握しづらい……なんてものも出てくるので、ロックオンするとかえって不利になってしまうものもありました。
ダメージが高いだけならまったく問題ないと思えてしまうほどの攻撃が、後半のボスにはいくつも備わっているため、自身の操作ミス以外の要因で死ぬことが増えていくのです。
近年フロム・ソフトウェアが開発し、そのなかでも筆者がやり込んでいた『Demon’s Souls』や『SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE』を見ると、ゲームの展開やプレイヤースキル・レベルの上昇に合った戦闘難度だと思っています。とくに後者に至っては本作のような綿密なレベルアップシステムがなくとも、自身のスキルの上達がとても感じられる出来になっていました。
一方、本作では急激に跳ね上がってしまっているうえに、オープンワールドという性質もあいまって、プレイヤースキルやレベル&敵の強さとのバランス調整が難しくなってしまったのかもしれません。「勝てた!」「上達した!」という喜びを感じるよりも先に、「ようやく終わった!」「もう戦いたくない!」という疲労感を感じることが多かったのも事実です。
オープンワールドにおける探索と発見はとても魅力的で、ロケーション・世界観・キャラクターや抱えている謎など、冒険心をかきたてられる世界として非常に素晴らしいものだったぶん、後半から頻繁に感じてしまう疲労感の嵐は残念でなりません。
PC版における最適化不足はアップデートに期待
私が終盤に感じた苦痛を、よりひどいものに変えてしまったのが、PC版プレイ時のカクつきでした。これに関してはユーザーのプレイ環境やプレイ時期(ソフトのバージョン)によっても大きく変わると思うので、あくまでも私の症状を書いていこうと思います。本作はオープンワールドでさまざまなボスと戦いますが、私の環境(CPU:Core-i7 12700K, MB:ASROCK Z690 PG Riptide, GPU:RTX 2080 SUPER, メインメモリ:32GB SSDインストール)では、ほぼすべてのボス戦の際に高頻度でカクつきが発生していました。一瞬映像が飛ぶだけでも致命的なのですが、厄介なのは操作も受け付けなくなってしまう点です。映像が止まったと思ったら高速で動き出し、その間に入力された操作はすべて無効にされてしまっていました。
最初に気づいたのは配信しながらのプレイだったため、CPUに負荷がかかりすぎていたのかと疑いました。しかし、配信なし・オフラインモード、シングルディスプレイなどいくつも環境を変えてプレイしたにも関わらず、同じ箇所でカクつきは発生しています。
レビュー執筆中に2、3回ほどパッチがあたり、パッチノートにはパフォーマンス問題に関する修正もありましたが、現時点(2022年4月7日時点)でもいまだ改善はされておりません。ゲームファイルの整合性確認もやってみましたが、やはりダメでした。
それならばと、ユーザー側自身でCPUやグラフィックボードの設定を調整してみましたが、ほとんど改善がみられず残念な結果に……そのままラストまで戦い抜きましたが、自分のせいではないのに負けてしまうことが幾度となく積み重なるストレスは……やはり苦痛でした。
この問題点に関しては、発売からまだ日も浅く最適化が進んでいなかったことが原因と考えられます。PC版『SEKIRO』が発売されプレイした当初も動作は不安定になりがちだったので、今後のアップデートではより安定していってくれることを切に願います。
自己責任にはなりますが、PC環境によっては細かな調整で直る可能性もあります。もしも私と同様の症状でお悩みの方は、BIOSもしくはOS上からグラフィックボード自体の電源効率、CPUのコア数・クロック周波数などゲームプレイに関係がありそうな箇所を適宜変更・制限を加えながらチェックしてみることをおすすめします。
この過酷な冒険は達成感を得られるが、
相応の“覚悟”を持つべき
一周目をじっくり楽しんで約70時間、未踏破の地やキャラクターイベント、未知のボスがまだ隠れていそうな気配を残したままクリアでしたが、筆者個人としてはまだまだ狭間の地を冒険していたい気持ちがあります。探索をすればするほど、キャラクターのレベルアップはもちろん、装備品や遺灰の強化、新たなアイテムや魔術・祈祷の獲得などをすれば有利に働いていきます。ただ、あくまでも“有利に”なるというだけで、確実に勝てるわけではありません。
最終的に自身のプレイヤースキルと経験・知識がものをいうゲームとなっているので、敵の動き・パターンを何度もトライして練習する必要があります。それでもやはり「難しい!」と感じたら、オンラインマルチプレイを試してみるのもひとつの手でしょう。
戦灰や遺灰など、いままでソウルシリーズに触れてこなかった人でも遊びやすくなっている部分もあります。筆者自身も、もしこれからソウルシリーズに触れてみたいという方にどれをオススメするか考えるなら本作であることは間違いありません。一方で、難度の調整が極端すぎるために、新規層が離れてしまう可能性も十分に含んでいます。
これまで述べてきたいくつかの理由もあり、本作はゲームを遊ぶ人皆にオススメしたいのにも関わらず、諸手を挙げてできないものとなっているのです。
しかし、プレイヤー各々の、唯一無二の冒険が楽しめるのも確かなのです。そのため、何度倒されて打ちのめされても立ち上がるチャレンジ精神を持つ人、そして“覚悟”のある人にぜひおすすめしたい一作となっています。
©BANDAI NAMCO Entertainment Inc. / ©2022 FromSoftware, Inc.
●タイトル:ELDEN RING(エルデンリング)
●ジャンル:アクションRPG
●発売元:フロム・ソフトウェア / バンダイナムコエンターテインメント
●開発元:フロム・ソフトウェア
●プラットフォーム:PC(Steam)、PlayStation 5、PlayStation 4、Xbox Series X|S、Xbox One
●発売日:2022年2月25日
●価格:
通常版 9240円[税込]
デジタルデラックスエディション 9900円[税込]
●必須スペック
OS: Windows 10
プロセッサー: Intel Core i5-8400 または AMD Ryzen 3 3300X
メモリー: 12GB
グラフィック: NVIDIA GeForce GTX1060 3GB または AMD Radeon RX580 4GB
ストレージ: 60GB
●推奨スペック
OS: Windows 10/11
プロセッサー: Intel Core i7-8700K または AMD Ryzen 5 3600X
メモリー: 16GB
グラフィック: NVIDIA GeForce GTX1070 8GB または AMD Radeon RX VEGA56 8GB
ストレージ: 60GB
●公式サイトURL:https://www.eldenring.jp/
●ダウンロードサイトURL:https://store.steampowered.com/app/1245620/ELDEN_RING/
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