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『Expeditions: Rome』Steam版レビュー:カエサルが活躍した時代を戦い抜く難しくも面白いターン制RPG

目次
  1. 1人のローマ人としてカエサルの代わりを務める『Expeditions: Rome』
  2. ローマ軍として占領地を平定していく
  3. シビアだが複雑さを感じさせない「軍団」「戦闘」、 そしてADV的な「探検」パート
    1. 「軍団」パート
    2. 探検パート
    3. 「戦闘」パート
  4. 所々煩わしさがあるが、 時間を忘れて遊びこむほど高い完成度
THQ Nordicから2022年1月21日に発売された、Logic Artists開発PC向けターン制RPG『Expeditions: Rome』(エクスペディションズ:ローマ)のレビューをお届けします。

本作においてプレイヤーは、ローマの軍団長となってギリシアや北アフリカなどの戦いに身を投じる、歴史ifもののターン制ストラテジックRPG(いわゆる、シミュレーションRPG)です。

本作は、2013年にリリースされた16世紀のスペイン探検隊をテーマにした『Expeditions: Conquistador』(エクスペディションズ:コンキスタドール)と、2017年リリースの790年頃のバイキングをテーマにした『Expeditions: Viking』の『Expeditions』シリーズの最新作。プレイヤーは、ローマにおいて政敵に父親を殺されたことからローマを離れることになったというものです。


『Expeditions: Rome』のポイント
  • 古代ローマ人になりきりプレイができる
  • 軍団/戦闘/探検の3パートそれぞれやり込み甲斐あり
  • シリーズファンには馴染みあるが、本作で初体験だとちょっと難度高め

1人のローマ人としてカエサルの代わりを務める『Expeditions: Rome』

ゲームプレイを始めるとオープニングの後キャラクタークリエイトが開始。このキャラクリは、性別や肌の色/背丈/髪の色だけでなくローマ風の名前などローマ人ロールプレイに特化した設定ができます。

選べる難易度は全4段階で、マニュアルセーブが不可能な「鉄人」モードや「戦闘死」などのオプションも選択可能です。

▲難易度は4段階。さらに2つのオプションがある


キャラクリエイトでは、外見と名前を含めた選択肢が数多く施されていることに加え、キャラクターの性格付けとして「レトリカル・スタイル」(キャラクターの性格付け)を3種類のうち1つを選びます。このレトリカル・スタイルは、力で説得する「エートス」、論理的に語りかける「ロゴス」、そして感情的にコミュニケーションする「パトス」の3種類が存在。会話パートにおいて特殊な選択肢として出現し、場合によって交渉を有利に進められます。

▲キャラクタークリエイト画面。ローマっぽい名前が多数用意されている

▲性格を決める「レトリカル・スタイル」は3種類。交渉ごとに影響する

▲レトリカル・スタイルが「ロゴス」なら、相手を言葉で脅すようなロゴス用の選択肢を会話で使用できる

他にも、ゲーム内でいつでも確認できる百科事典的な「コーデックス」 では、用語集やステータス効果、古代ローマの特徴などなど本作が持つ時代性やゲームシステムを確認できます。

▲「用語集」はローマ時代のストーリーにどっぷり浸かりたい人にはうれしい

ローマ軍として占領地を平定していく

ゲーム序盤は軍団キャンプを中心地に部隊を率いて、航海中に強襲してきた海賊達の討伐と島の占領が目的となります。この序盤における一連の戦闘と軍略はチュートリアルも兼ねているのですが、筆者はチュートリアルを兼ねた戦闘に数日間詰まってしまい、ダメージや敵の出現数を見てもそれなりにシビアであると感じました。

▲戦略を練りやり直しを繰り返せば勝利できるが、全体的に難しさが目立つ。初戦でも容赦ない

序盤が終わる段階でユリウス・カエサルは死んでしまい、カエサルが行ったガリア戦争やエジプト遠征などのイベントを代わりに実行するのがプレイヤーとなります。この結果からプレイヤーは軍団長となり、親衛隊と部隊を率いて各地を会戦の後に占領していきますが、占領した地域をローマ軍が完全に掌握するためには、プレイヤー自身が赴いて様々なトラブルを解決する「平定」というクエストを繰り返しこなさなくてはなりません。つまり、敵の軍団を倒す→「平定」クエストを解決する→地域の占領が完了する、という手順を地域ごとに行う必要があるのです。


この「平定」はメインクエストと絡む形で構成されていることが多く、自身がギリシアへ送り出されることになったローマ内部の調略に結びついていることは、無理矢理関連させたものであるようにも感じられましたが、ストラテジックRPGの部分を活かすような作りであるとも納得できます。

他にも、軍団ミッションの他には部下が原住民に捕まり勝手な行動によって起こした事件を解決するサブクエストも存在。戦闘が伴うサブクエストでは、プレイキャラを筆頭としたユニークユニットを投入して戦うことができないため、雇った親衛隊を投入する必要があります。


▲マップへの入場時に選択できる親衛隊。一部ミッションでは、シロネスなど仲間でなく雇った親衛隊でしか入れないものがある

この親衛隊は「戦争屋」や「融和的」などそれぞれ属性を持ち、会話パートにおいてプレイヤーの交渉結果や行動によって賛同と反対にわかれることで特徴が付けられます。

どの結果を選んでもすべての仲間が納得しないことで、プレイヤーはそれぞれのリスクをとって決断をする必要があることから、各々のプレイヤーによる親衛隊や軍団の性格を付けることに成功しています。

▲裏切り者を殺すか殺さないかでも親衛隊の評価が分かれる。ある意味敵でなく、味方とコミュニケーションしながら進むゲームでもある

シビアだが複雑さを感じさせない「軍団」「戦闘」、
そしてADV的な「探検」パート

本作は大きく分けて3つのパートに分かれています。プレイヤーが1人の兵士として各地域で戦うストラテジックRPGな「戦闘」パートと、軍団長として部隊をマップ上で指揮する「軍団」パート、そして各キャラクターとさまざまな会話と交渉を繰り広げてクエストを進める「探検」パートです。プレイヤーに求められる技能は戦闘/軍団/探検でそれぞれ違いますが、なるべく違和感ないように調整されています。

「軍団」パート

まず全体マップでは、目標地点をクリックするとプレイヤーが移動する、もしくは再生アイコンを選ぶと、時間が進行します(時間加速は等倍から3倍まで)。これは「軍団」パートで軍団に命令を下したときも同じで、指令を下した後に時間を進めることで行動し始めます。



軍団ミッションの戦闘においてユニット表示はかなり抽象化されていますが、軍団で見るべきなのは戦闘フェーズの軍略選択における自軍の戦力と敵の戦略、そして軍略を選択した後の影響です。勝利や敗北の後に戦力を復旧させるために、どこまで犠牲に許容できるか問われるものとなっています。堅実に行きたいのなら人員など消耗が少ないものを、より相手に痛手を負わせたいのなら敵の兵力を減らす戦略を選びます。

基本的には戦力消耗が避けられないため、つまらなくはないのですがやや味気ない部分もあります。「平定」を成り立たせるための施策に思えますが、それでも占領した地域を眺める喜びは大きいです。

▲軍団での会戦パート。各ユニットが抽象化されている

▲戦闘フェーズが進展する度に軍略の選択が求められる

▲「軍団を派遣」を選択するだけでは行動しない。決定したら時間を進める必要がある

プレイヤーが各地を移動していると、時にランダムイベントが発生します。このランダムイベントは、メインクエストに絡むものからステータスのアップ/ダウン/怪我に加え、敵とのエンカウントやアイテム入手も含んだ多種多様なものです。

しかしながら、ランダムで発生してしまうため、先の「平定」クエストをクリアするための道中で怪我や戦闘に巻き込まれて時間を浪費してしまうのが煩わしく感じてしまいます。

▲ランダムイベントは悪く無い施策であるとは思うのだが、どうしても面倒な印象を持ってしまう

探検パート

「探検」パートは、軍団の駐屯地や神殿、街など特定の地域にプレイヤーや親衛隊を連れて探索や戦闘を行うモードです。マップ内に入れば画面上に映る地点をクリックすると移動する、オーソドックスな見下ろし型のRPGと同じ雰囲気になります。吹き出しが付いている人物に話しかけることで、戦略物資の購入やクエストの発生・進展が起こります。

クエストの追跡は、マップ上にアイコンが登場するために目的地へ移動しやすいのですが、インタラクトできるオブジェクトがわかりにくく、Altキーを用いて常にハイライトを表示する必要があります。


▲Altを一回押すと、インタラクトできるオブジェクトや人物の輪郭が強調され見やすくなるため(花瓶や宝箱、扉、死体、施設など)、マップの探索時には必ず有効にしておきたい。戦闘終了後、倒した敵にインタラクトすると武器や防具などアイテムを入手可能だ


「戦闘」パート

「戦闘」パートは、「探索」パートからヘックスの戦闘画面へ難なく移行するのが良くできており、キャラクターの初期配置が必ず発生することから高い公平性も保っています。戦闘システム自体はターン制ストラテジーゲームですが、ダメージや戦闘隊形によって戦局が左右することから、シビアな詰め将棋的ロジカルさでバランスを成り立たせています。

一方で戦闘に慣れが必要となっており、敵は序盤から全力で倒しにかかるため、チュートリアルの意味を成していません。単に説明だけで、プレイヤーに勝利を経験させづらくなっています。

他にも細かい所だと、百人隊長や戦力、物資の補充などができる軍団キャンプにおける各施設の設定画面に移るためには、軍団キャンプに入り探索パートに移る必要があります。それだけでなく、マップ上で選択しプレイキャラが施設へ移動しなければ設定に入れないなど、アクセシビリティの悪さが目立っていたのが残念でした。

▲軍団の設定を行うためにはキャンプ内をとにかく右往左往しなくてはならないし、移動する時間がもどかしい


所々煩わしさがあるが、
時間を忘れて遊びこむほど高い完成度

序盤のチュートリアルにおいてプレイヤーに与える経験が不十分であることと、難易度曲線やアクセシビリティ、翻訳の質が良くないと感じる部分もありますが、ゲームそのものの完成度は高く、アニメーションやグラフィック、ストーリー、システムなどを含めてもタクティカルRPGとして様々なリスクを管理し制御する面白さに溢れています。

「軍団」と「探索」、そして「戦闘」パートを含めたゲーム全体を見てもキャラクターのアニメーションや時代考証、戦闘パートの面白さなどかなり多くの部分で品質が高く基礎の部分がちゃんと面白く仕上がっているだけに、ユーザー体験の部分で大小ストレスが複数存在するため、ゲームそのものの完成度の歪さを感じてしまいます。

しかしながら、ゲームシステムやグラフィックを含め高いレベルで整っていることから、シリーズ作品に長く触れていたユーザーからみると、より良いバランスであるのではと思えました。


軍団/戦闘/探検の3パートが盛り込まれていることに加え、その難易度もシビアさを見せることからプレイヤーによって相性が如実に現れるタイトルであると思えます。現在ではアップデートも進んでおり、2月中旬には様々な不具合を修正するアップデート1.2.1が、3月中旬にはゲームパッドに対応するなどサポートも手厚いです。

カエサルが生きた時代を、自キャラを操作して追体験するローマ時代の歴史ifものストラテジックRPG。歴史シミュレーションやRPGに興味がある方、ローマ時代に興味がある方はぜひ触れてみてはいかがでしょうか。

(C) 2022 THQ Nordic AB, Sweden. Developed by Logic Artists. Expeditions, THQ and their respective logos are trademarks and/or registered trademarks of THQ Nordic AB. All rights reserved. All other trademarks, logos and copyrights are property of their respective owners.

●タイトル:Expeditions: Rome
●ジャンル:ストラテジックRPG
●発売元:THQ Nordic
●開発元:Logic Artists
●プラットフォーム:PC(SteamEpic Game Store)
●発売日:2022年1月21日発売
●価格:5850円[税込]
●必須スペック
OS: Windows 7/10 64bit
プロセッサー: Intel Core i5-4690K または AMD FX-8350 X8
メモリー: 8GB
グラフィック: NVIDIA GeForce GTX960 4GB または AMD R9 380 4GB
ストレージ: 30GB
●推奨スペック
OS: Windows 10 64bit
プロセッサー: Intel Core i5-9500F または Ryzen 5 3600X
メモリー: 16GB
グラフィック: NVIDIA GeForce GTX 1070 8GB または AMD RX Vega 56 8GB
ストレージ: 30GB
●公式サイトURL:https://expeditionsseries.com/https://sites.google.com/view/expeditions-rome/
●ダウンロードサイトURL:
Steam https://store.steampowered.com/app/987840/Expeditions_Rome/
Epic Game Store https://www.epicgames.com/store/ja/p/expeditions-rome
【連載】Alienware Zone PCゲームレビュー<2022年版>

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