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『両手いっぱいに芋の花を』Steam版レビュー:すべての戦闘で最善の選択を求められるストイックRPG

目次
  1. ハードな世界観設定と2頭身キャラのギャップ
  2. 雑に戦えばすぐに全滅するシビアな戦闘
  3. プレイヤーが生み出したキャラたちが紡ぐ物語
  4. 1870円以上の価値がある「懐かしき本格」RPG
SteamおよびNintendo Switchで『両手いっぱいに芋の花を』が、PLAYISMより2022年3月10日に発売された。ジャンルは『ウィザードリィ』のような一人称視点でダンジョンを探索するコマンド選択式の3DダンジョンRPG。リアルタイム要素はなく、落ち着いて遊べるRPGは、今となってはむしろ新鮮に感じた。ダンジョンは3D CGで描画されるほか、自分が操作する調査隊と敵モンスターの両方は2頭身の可愛いテイストで表示される。

▲移動中は一人称視点だが、戦闘シーンではクォータービューに切り替わる

ここまでの説明を聞く限り、昔ながらのRPGを現代風のコミカルなテイストで再現したレトロゲームのような印象を持つだろうが、実際にプレイしてみると印象は少し違ってくるというのが、このゲームの面白いところ。


『両手いっぱいに芋の花を』のポイント
  • ハードな世界観設定と2頭身キャラのギャップ
  • 雑に戦えばすぐに全滅するシビアな戦闘
  • 高いキャラクターメイキングの自由度

ハードな世界観設定と2頭身キャラのギャップ

このゲームの世界設定は、土壌汚染が広がっている世界。作物が正常に育たなくなり、土壌汚染の影響を受けずに育つ特別な種を求めているのが、プレイヤーが操作する調査隊のメンバー。迷宮へ挑むのは、錬金術師が遺したという特別な種を探すのが目的だ。

この設定を知れば『両手いっぱいに芋の花を』というタイトルには第一印象とは異なる、重い意味が含まれていたことに気付く。世界を支配しようとしている悪のドラゴンを倒しに行くのではなく、人々が明日、来週、来月も生き延びるための冒険なのだ。可愛い2頭身キャラのグラフィックとは裏腹に、世界観はかなりハード。

▲調査隊が探し求めているのは、植物の種。さらりと語られるストーリーだが、よく考えてみるとかなり重い話

▲ストーリーを知ったうえでタイトル画面を見ると、ぐっとくるものがある

▲オープニングデモは、街に到着した調査隊の面々を引きのアングルで映す。この街の人々のため、調査隊はダンジョンへ潜る

雑に戦えばすぐに全滅するシビアな戦闘

ゲームの進め方としては、攻略したいダンジョンを選び、そこに3人パーティの調査隊を送り込むというもの。しかし、一度の挑戦でダンジョンの攻略を終えることは難しく(理由は後述)、途中で何度か拠点へ戻りつつ少しずつ攻略していく流れになる。シンボルエンカウント式に加えて、敵の位置はマップ上にも表示されるほか、近寄ると敵モンスターのパーティ構成も見える。

敵はダンジョン内を移動せずに待機しているため突然エンカウントすることはないし、敵の向きも変わらない。そのため、敵の横や背後からエンカウントすれば、最初のターンだけは不意打ちとして一方的に攻撃できるという要素もある。

▲敵のシンボルは、ダンジョン内にグラフィックとして描画されているほか、マップ上にも「△」アイコンとして表示される(画面右上参照)

各隊員のパラメータは体力(HP)とスタミナ、精神力という3つ。このうち体力とスタミナは戦闘を終えるごとに全快するが、一般的なRPGにおける「魔力(MP)」に相当する精神力だけは回復しないのがポイント。

ローグライト系ゲームでは拠点に戻るとダンジョンが初期化されてしまうが、本作は拠点に戻ってもマップは初期化されないどころか、開けた扉や操作したレバー、点灯させた壁の松明といった状態は引き継がれている。全滅したことによるデスペナルティも拠点に戻されるだけ。では、本作は簡単なのかと聞かれれば、そうではない。難しさのキモはマップ踏破ではなく、各戦闘シーンにあるからだ。

▲ベースキャンプへ帰還すると敵は復活するがマップは保持されるうえ、開けた扉や点灯させた松明などの情報は引き継がれる

このゲームの戦闘では、自分のパーティ3人に対して、モンスターのグループは最多でも4匹まで。3対4なので簡単そうに感じるかもしれないが、敵の攻撃力は異常に高く、たかが1~2発の攻撃を受けただけで行動不能に陥ってしまう。では、どうすればいいのか。その答えは、戦闘画面にある。

▲自分のHPが65しかないのに、雑魚の攻撃もマトモに食らうと30ダメージ

こちらの行動選択画面では、対峙している敵が「誰に」「どんな攻撃をするか」が表示されている。敵全員がこちらの前衛を狙っているならば、前衛はガード。残りの2人が敵の前衛を狙って攻撃すればいいし、敵が3匹以上いるときに味方パーティ3人をそれぞれ狙っているならば、こちらは全員ガードするのが正解。通常、一度に20~30程度のダメージを受ける攻撃も、ガードすれば受けるダメージはグッと減る(元のダメージ量の10%程度)。

そう聞くと「敵の行動に合わせて、最適解を選んでいけばいいだけ?」と考える人もいるだろう。実は攻撃はもちろん、ガードをするためにもスタミナが必要になる。そのため適宜スタミナを回復する「構えなおし」行動を取らなければスタミナ不足でガードできず、大ダメージを受けてしまうこともある。

▲どのモンスターがどの味方を狙っているかは、モンスター上に出ているアイコンで判断する。剣アイコンは物理攻撃をしてくるという意味だ

敵から狙われているキャラはガードしなければならないが、狙われていないキャラは攻撃チャンスであると同時に、構えなおしでスタミナを回復するチャンスでもある。さらに言えば、敵モンスターもこちらと同じスタミナ概念を持っている。戦闘が数ターンにも及ぶと敵のスタミナも切れ、構えなおしをしてくるのだ。同じ種類のモンスターが集団で出現した場合にはスタミナが切れるタイミングもほぼ同時になるため、そこでこちらも構えなおしをするのか、それとも一気に畳み掛けるかは残っているスタミナの数値次第。

RPGファンの中には「とにかくレベルを上げて無双する」という楽しみ方をしたい人も一定数いるとは思うが、本作はそういうゲームではないことは伝わっただろうか。

▲敵モンスターは前列のウォーリアーを狙っているので、彼はガード。後列の2人は狙われていないので、敵モンスターを攻撃するという判断

▲モンスターにもスタミナという概念があるため、攻撃が続くと「構えなおし」してくる。攻めるべきか、こちらも構えなおしをすべきか迷う

プレイヤーが生み出したキャラたちが紡ぐ物語

チュートリアル的な最初のダンジョンを除き、冒険に挑むパーティメンバーはすべてプレイヤーが作り出したキャラクターたち。チュートリアルを終えた段階で最低でも3キャラの名前とクラス(職業)、種族を決めることになるので、少なくとも名前くらいは事前に考えておくといい。日本語もキャラ名として使えるのは嬉しいところ。

▲パーティメンバーの名前には、英字のほか全角日本語も併用できる

選べるクラスはウォーリアー、ナイト、クレリック、シャーマン、レンジャー、ローグ、ウィザード、ソーサラーという8種類。クラスごとの説明は割愛するが、前衛や後衛という概念がある本作では、最前線で戦う肉体派と、後方から遠距離攻撃や回復などを行うクラスの両方がパーティ内にいたほうが安定する。

とは言えこれはあくまでアドバイスであって、ソーサラー×3人のような極端なパーティを作るのも自由。名前も含めてお好みのパーティを作ったほうが、プレイに対するモチベーションも上がるだろう。この時点から、冒険は始まっているのだから。

なおメンバーは最大8人まで登録できるうえ、あとから解雇して新たなキャラクターを登録することも可能なので、キャラクターメイキング前に悩む必要はない。

▲キャラクターのクラス(職業)を選択する画面。前衛用に近距離攻撃が得意なクラス、後衛用に遠距離攻撃ができるクラスのキャラを選ぶと楽

1870円以上の価値がある「懐かしき本格」RPG

本作の画面レイアウトは、RPGの元祖『ウィザードリィ』に代表される一人称視点を採用している。左右への視点変更は必ず90度単位&高速で画面が切り替わるため、ちょっとした誤入力により自分が向いている方向がわからなくなるときがあった。マップを確認しつつ進めれば問題ないが、松明がない場所では「暗くて地図が見えない」表示になってしまう。松明がなくなったら拠点に戻って再出発するなど、計画的なダンジョン攻略が必要だ。

▲メイン画面となる一人称視点。非常に軽い動作でさくさく探索できる

▲松明を使い終えるとダンジョンが見づらいほか、マップも参照できなくなる。松明を使い終える前に、壁の松明を点灯させておくといい

キャラクターのグラフィックはシンプルな2頭身デフォルメ表示。グラフィックをシンプルにした分だけ価格が安いと考えるならば、これだけの本格RPGが1870円で遊べる「おねだん以上」なゲームであることは間違いない。

不満だった……というよりプレイヤーが気をつけたいポイントもある。敵モンスターが狙っている味方パーティの表示は、パーティメンバーの顔をアイコン代わりに表示する。このためキャラクターメイキングで似たような髪色のキャラクターをパーティに入れてしまうと、一見しただけでは誰が狙われているのかわからない。一応、「どの敵が誰を狙っているのか」かは薄い白線で表示させるオプションも用意されてはいるが、パーティメンバーの髪色は3キャラで散らしておくといい。

▲3人のパーティは、髪色をすべて別にしておくと、「誰が狙われているか」表示を見分けやすいのでおすすめ

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●タイトル:両手いっぱいに芋の花を
●ジャンル:3Dダンジョン探索型RPG
●発売元:PLAYISM
●開発元:Pon Pon Games
●プラットフォーム:Steam、Nintendo Switch
●発売日:2022年3月10日
●価格:1870円[税込]
●必須スペック
OS: Windows10 64bit
プロセッサー: Intel Pentium(2018)
メモリー:4GB
グラフィック:NVIDIA GeForce GTX 750Ti
ストレージ:250MB
●推奨スペック
OS: Windows10 64bit
プロセッサー:Intel Core i3
メモリー:4GB
グラフィック: NVIDIA GeForce GTX 1650
ストレージ:250MB
●公式サイトURL:https://playism.com/game/potato-flowers-in-full-bloom/
●ダウンロードサイトURL:
Steam https://store.steampowered.com/app/1601280/
【連載】Alienware Zone PCゲームレビュー<2022年版>

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