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『Dying Light 2 Stay Human』Steam版レビュー:前作よりもリアル志向になって、さらに緊張感が高まる仕上がりに!

ざあっと屋根の上を駆け抜けて、おおっと落ちてしまった。寄ってきた感染者をナタで横様に切ってみせダウンさせたら華麗に壁のヘリに掴まってまた屋根へ。高所恐怖症の人間はこの体験でショック療法のように治るのだろうな、などと考えているうちに目的の場所へ辿り着こうとしている。

ところが日が暮れてしまった。感染者が凶暴化する、そのうえ自分も感染しているので転化してこのままでは感染者になってしまう。だからすぐさまライトのあるところに潜り込む。感染には灯りが対応策になっている。転化の具合がよくなってきたところで移動して、目的地に着いた。
※ ※ ※


――『Dying Light 2 Stay Human』(ダイイングライト2 ステイヒューマン)のゲームプレイはざっとこんなところに落ち着く。細かく言えば後半はもっとスローペースだ。

前作である『Dying Light』は2015年1月26日に発売され、今なおアップデートやイベントが行われているライブゲームである。その評価は「パルクール」をどのゲームよりもうまく扱えていると好評を博した。ジャンルとしてはFPSに近いが、FPP(First Person Perspective)という表現のほうがふさわしい。つまり一人称視点のパルクールアクションゲームだ。

近接攻撃がメインで銃は(DLCが出たらどうなるかはわからないが)まったくといっていいほど出てこない、メレーアクション(近接攻撃)ゲームでもある。協力プレイができるのもウリのゲームだ。

導入として、世界は「ハランウイルス」によって人類のほとんどが感染者、つまりゾンビになってしまった舞台で、唯一の街がある、ということがオープニングムービーで語られる。「ハラン」とは前作の舞台となった街でもあるが、滅んだのだ。このような世界で、さすらいの旅人である主人公「エイデン」は妹を探すため旅を続けることになる。今作のウリは「選択肢による変化」でもある。

▲『Dying Light 2 Stay Human』初報

『Dying Light 2 Stay Human』のポイント
  • 前作よりもリアル志向なゲームシステム
  • パルクールも戦いも現実的なものに変化
  • 本稿執筆時点ではバグが多く見られる

スローペースなイントロダクションは
やがて訪れるシビアさへの糸口

主人公のエイデンは、さすらいの「流浪人」と呼ばれる人種で、やっかいなことを解決するのも流浪人、やっかいなことを持ってくるのも流浪人といった風で、一介の旅人である。


本作は滅びた世界の残り香を感じられるオープニングアクトがある。たとえば、滅亡前のワインの瓶を見て「どんな味がしたんだろうな」などとエイデンがつぶやくところなど、じつにエモい。



また「バイオマーカー」と呼ばれる、転化の度合いを色で判別する腕輪を装備していないと、人として認めてもらえない。なぜならいつ転化するかわからないからだ。そんな中、エイデンは安息の地と妹を探し求めて旅を続けることになる。

本作はイントロダクションが終わるまであえて移動速度を落としていて、最初に負荷を与えてから解放する設計となっている。イントロダクションの終わりに移動速度もスタミナも上昇、このときのスピード感の違いには驚かされるし、ワクワクさせられる。なにしろ次はオープンワールドの街に繰り出せるのだから。

自由度の高いアクションはリアル志向に

本作は「スタミナ」を強く意識させるデザインとなっている。板を伝って屋上に登るときに掴まっているだけでもスタミナが減り、途中でスタミナが尽きれば落下する。このため素早く移動しなければならないし、戦闘においても攻撃するたびにスタミナが減り、尽きれば攻撃らしい攻撃はできなくなる。スタミナを管理しながら移動し、戦うのだ。なお、走ることに対してはスタミナは減らない。

▲真ん中の青いバーがスタミナゲージ

これらに対応するのがスキルだ。「スキルツリー」をアンロックするためには、攻撃をしていれば戦闘XPがたまり、走り回っていればパルクールXPがたまっていく方式で、なおかつ「インヒビター」という特殊な薬剤が必要だ。インヒビターは3つ手に入れれば「体力」か「スタミナ」レベルを上昇させることができ、スキルツリーで選択できるスキルの多さが増える。



武器を強化するための強化素材の設計図をよりランクアップさせるには「討伐の証」が必要だが、これは強力な感染者から手に入る。つまり、戦闘をしなければ展開がきつくなるが、移動も重要なので判断に悩むことになる。この点は一定の戦略性を持っており評価できる。

▲風車のてっぺんまでこういった上下する木片に掴まっての登頂が求められる

スタミナを強く意識させるのは、「風車」という電波塔にあたるミッションだ。高いところに登っていくのだが、上下にピストンしている木片にしがみつき、タイミングを合わせながらやることになるので難易度はやや高め。なぜならば、スタミナの制限があるからだ。そして風車をアンロックすると灯りになる。

このあたりは前作とゲームデザインが異なっていて、前作では屋根から屋根へ飛び回るゲームデザインだったが、今作はビルからビルへと行ける道を探しながら、ときにビルの外壁にしがみつき、登って移動するので、パズル的な印象だ。とりわけ安全地帯となる風車を解くのはまさにパズルといった出来で、正しい筋道探しに右往左往させられる。反面、自由に動ける(とりわけ前半の)パートは楽しいのだが、パズル的な要素も楽しいばかりでもなかった。

▲中央上にあるゲージが免疫力。夜間は灯りを浴びないと減っていく

今作は前作にはなかった「免疫力」の管理があるため、緊張感がより強調されている。主人公も含めみんな感染者なので光を浴びていないといけない身体になっており、夜間に行動していると免疫力が減っていき、尽きればゲームオーバーとなる。

このため、光のあるところに(前述した風車などに)移動して免疫力を回復させながら進んでいくことになる。緊張感が前作よりも高まっていて戦略性もあり楽しめるしいい印象だ。

強い緊張感は人を選ぶ

昼と夜で街での行動が変わるのは前作を踏襲しているが、今作には「ハウラー」という感染者がいて、ヤツが叫ぶと「チェイス」が始まる。大勢の感染者が追いかけてくるので照明のある場所まで逃げなければならない。チェイスが長引けば、チェイスレベルが上がってより危険な状態になる。夜の行動の制限は前作よりもきつめだ。チェイスではうまく感染者をいなせなければゲームオーバーになりやすい。


前作にあった「グラップリングフック」の登場はかなり遅めで最終局面に近いところでようやく手に入る。それまでに身体性が拡張されるような感覚になるのは「パラグライダー」ぐらいのもので、少し味気ない。パラグライダーは高所から飛び降りるときに使える後半での移動手段だ。

▲グラップリングフックを使ったパルクールアクション

フックはこれもまた前作と比べてリアル志向で、前作ではフックを当てた場所にそのまま飛んでいけるが、今作ではインディ・ジョーンズのようにフックを当てた場所から前後して勢いを付けて移動するような用いられ方をする。

慣れると楽しいが、用いなければクリア不可の場所で何度も連用してパルクールしているさなかにミスをして落下死すると、最初からやり直しになるステージのパズル的デザインはストレスフルだ。そのくらい今作はパルクールをストーリー上で求められるし難易度も高いので人を選ぶだろう。

しかし、感染者にドロップキックをかませるダイイングライト節は健在。コンバットデザインの評価は以前より高い。パリィ、ジャストガードなど戦略性があり楽しめる。たとえば1対5の戦いにおいて3人倒してやられてしまったとしよう。再開は残りの2人だけになっておりユーザビリティの良さがある。その良さがあるだけにパルクールシーケンスの妙な厳しさは気になるところだ。

いずれ直るだろうが、現状でのバグ

本作は、本稿執筆時点の2022年2月24日の段階でまだバギー(バグが多い状態)だ。オートセーブしかないのがまず不親切で、実際16時間プレイしたデータではクエストを進められなくなって最初からやり直すハメになった。オブジェクトに挟まってスタックすることもあった。さらにはオンラインプレイ時にはクラッシュする頻度が上がる。シングルモードにしていてもクラッシュする。

前作がオンゴーイングゲームでずっと続いていたことを考えれば、これらのバグもいずれ修正されるだろうが、現状はバギーであることは指摘したい。

意外とストーリードリブンな作風に変化

そんなマイナス点に目をつむれば、本作は最高のパルクールアクションゲームだ。

これは重要なことだが、前作にあった銃器は今作では登場しない。火炎瓶などと同じカテゴリの補助武器として2発だけ撃てる、ガジェットとしての銃しかない。よってメレーアクションが重要なわけだが、前述したとおり戦略性があり非常に楽しい。


本作では濃厚な人間ドラマが繰り広げられる。街では「サバイバー」と自警団の「PK」が対立しており、どちらにつくかの選択肢も多様に用意されている。そもそもエイデンが高潔なので気高くプレイできる。

今作は前作にも増してストーリードリブンな作風だ。最終局面でも選択肢があり、道のりが変われば結末も変わる。そしてエンディングを迎えたあとはそのままサイドジョブを埋めるプレイができる。

▲暗喩とも取れる内容だ

ポストコロナの影響を意外にも本作は最小限に留めている。一部のコレクタブルアイテムにあるテキストでは暗喩されているものの、ストーリーには影響があまり感じられない。それよりも「いかに人間として生きるか」に焦点が合せられている。このことは私にとっては少々残念だが、あえて最小限に留めることで1本の作品としてストーリーテリングのブレをなくしており、その点は評価できる。

プレイスルーには40時間超掛かったが、本稿を書き終えてもまだ私は街を徘徊するつもりだ。そのくらいの魅力があるゲームプレイだった。

あなたも緊張感のあるパルクールアクションゲームに興味が湧いたらぜひとも手に取ってほしい。いくらか欠点も書いたが、終えてみれば得がたい体験をしたと感じているのは確かな感覚だ。

この滅びた世界に向かうあなたへ告げる。グッドナイト、グッドラック。


Dying Light 2 (C) Techland S.A. Published and developed by Techland S.A. All other trademarks, copyrights and logos are property of their respective owners. All rights reserved.

●タイトル:Dying Light 2 Stay Human(ダイイングライト2 ステイヒューマン)
●ジャンル:オープンワールドアクションRPG
●発売元:Techland
●開発元:Techland
●プラットフォーム:PlayStation 5PlayStation 4、Xbox Series X|S、Xbox One、PC(SteamEpic Games Store
●発売日:2022年2月4日
●価格:
通常版:8770円[税込] ※PS5/PS5版は8778円[税込]
デラックスエディション:1万978円[税込]
アルティメイトエディション:1万3178円[税込]
●必須スペック
OS: Windows 7
プロセッサー: Intel Core i3-9100 または AMD Ryzen 3 2300X
メモリー: 8GB
グラフィック: NVIDIA GeForce GTX 1050 Ti または AMD Radeon RX 560 4GB
ストレージ: 60GB
●推奨スペック
OS: Windows 10 64bit
プロセッサー: Intel Core i5-8600K または AMD Ryzen 5 3600X
メモリー: 16GB
グラフィック: NVIDIA GeForce RTX 2060 6GB または AMD RX Vega 56 8GB
ストレージ: 60GB
●公式サイトURL:https://dl2.dyinglightgame.com/ja/
●ダウンロードサイトURL:
Steam https://store.steampowered.com/app/534380/Dying_Light_2_Stay_Human/
Epic Game Store https://www.epicgames.com/store/ja/p/dying-light-2-stay-human
【連載】Alienware Zone PCゲームレビュー<2022年版>

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