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PC版『アサシンクリード ヴァルハラ』レビュー! 斧か暗殺か、神か自分か、略奪者か仲間か。グレーなヴァイキングの生き様を味わう

ユービーアイソフトは2020年11月10日、『アサシンクリード ヴァルハラ』(PC/PS5/PS4/Xbox Series X|S/Xbox One)をリリースした。パルクールと暗殺がメインのアクションゲームだった『アサシンクリード』シリーズは、10作目の『アサシンクリード オリジンズ』からオープンワールド・アクションRPGとしての要素を強化。最新作『アサシンクリード ヴァルハラ』もその系譜に入る作品だ。本作の舞台となっているのは、7つの王国がせめぎ合う9世紀のイングランド。プレイヤーは北の地ノルウェーからやってきたヴァイキング「エイヴォル」として、「鴉の戦士団」の仲間たちと共に新天地を征服していく物語となっている。12月15日に配信されたパッチ1.1.0を踏まえたうえでのレビューをお届けしよう。


ヴァイキングの獰猛な戦いと
伝統的な暗殺の両立

本作においてとくに印象的だったのは、ヴァイキング流の豪快な戦闘スタイルと、シリーズ伝統の暗殺の2種類どちらも楽しめることにある。コンテンツアドバイザーを担当した歴史家のティエリー・ノエル氏によると、実際のヴァイキングの戦い方は凶暴で、同時に多才でもあったという。彼らはあらゆる武器を二刀流で使いこなし、奇襲などさまざまな戦術を用いていた。『アサシンクリード ヴァルハラ』にはその戦闘スタイルが忠実に反映されている。

▲斧で敵をひっくり返すエイヴォル。攻撃はどれも非常にパワフルだ(※パッチ1.04適用時に撮影)

▲敵の手足や首がふっ飛ぶ描写も多く、かなり残忍な印象(※パッチ1.04適用時に撮影)

目玉はやはり二刀流での戦いだろう。両手に武器を装備すれば、敵意むき出しの攻撃モーションが繰り広げられる。斧・槍・剣・戦鎚など、武器の組み合わせによってモーションが変わるので、いろいろ試してみるといい。

フィニッシュムーブにも豊富なパターンがあり、これには頭や四肢の切断描写も含まれる。エイヴォルと一緒に叫びたくなるくらいテンションが上がる演出だ。また、中には「ガードすると一定確率で周囲を火の海にする」といったパッシブボーナスを持つ武器も。スキルツリーやアビリティを解放するとより多彩なアクションが可能になる。

▲物資のために修道院を襲撃する鴉の戦士団たち

▲襲撃中に仲間と宝箱を開けるエイヴォル

このようなヴァイキング流の戦いを堪能できるのが襲撃イベントだ。要塞や修道院へ奇襲を仕掛けて物資を奪う。財宝が入っている箱を開けるには仲間の協力が必要で、角笛を大きく鳴らすと仲間のヴァイキングたちを招集できる。正面からの大乱闘、逃げまどう罪のない市民たち、仲間と開ける宝箱……襲撃しているとき、プレイヤーは紛れもない略奪者となる。

リリース当初、たくさんのキャラクターが入り乱れて戦うシーンの直後では、なぜか急激にコントラストが強くなったり、オブジェクトの表示がバグることがあった。しかしパッチ1.04配信後には改善され、快適にプレイできるようになっている。

筆者が使っているPCスペックは、2Kの推奨動作環境(高+プリセット/1440p/60fps)に近いので、平均フレームレートは以下のようになった(使用機種:デスクトップPC: インテル Core i7-10700K/ GeForce RTX 2060 SUPER 8GB)。

▲高+プリセット/1440p/平均52fps(※最新パッチ1.1.0配信後に測定)

▲最高プリセット/1440p/平均47fps(※最新パッチ1.1.0配信後に測定)

そしてヴァイキングの「獰猛な戦い」を語る上では、本作の流血表現削除についての騒動に触れなければならないだろう。ユービーアイソフトは日本語版を流血表現を削除した状態で発売し、それが事前告知していた規制内容に無かったためユーザーの大きな反感を買った。その後の説明や対応も二転三転しており、火に油を注ぐ結果になってしまっている。また、暗殺表現も事前告知なしで削除されていた。

12月10日、ユービーアイソフトは流血表現の削除について「日本語版における表現修正項目の誤認」ゆえの「オプションの設定ミス」が原因だったと述べ、12月15日に流血表現の復活を含むをオンにできるパッチ1.1.0を配信。SNSを見ると「やっと血が出るようになった」「血飛沫が出た」という声が確認できた。

実は、筆者はたまたま未審査版(詳しくはコチラを参照)をダウンロードしてしまったようで、パッチ1.1.0より前から流血表現が確認できていた。他ユーザーの動画などで確認したところ、出血量は最新パッチ1.1.0後の審査済みバージョンとあまり変わらない。未審査版はユービーアイストアにてなぜか11月中旬から配信され、11月30日に審査済みのバージョンに差し替えられている。

▲フィニッシュムーブではかなりの血飛沫が出る(※最新パッチ1.1.0適用後に撮影)

削除されていた暗殺演出については公式からの言及もなく、復活したというユーザーの声も見られない。ちなみに、未審査版ではクエスト中などに重要人物を暗殺すると演出が入る。臓器や骨をアサシンブレードで破壊するもので、かなり生々しい。

さて、ヴァイキング流の戦いや規制についての説明が長くなってしまったが、忘れてはいけないのがシリーズ伝統とも言えるステルスプレイである。

▲少し見づらいが、左腕にアサシンブレードをつけている(※パッチ1.04適用時に撮影)

▲暗殺ですべての敵を一撃で倒せるようになる一撃暗殺オプション

前作には登場しなかった暗殺器具「アサシンブレード」の復活、過去作のように暗殺によって一撃で敵を倒せる「一撃暗殺」オプションの追加はシリーズ経験者にとって嬉しい要素だろう。

一撃暗殺オプションをオンにすると「本来のゲーム体験と異なるものになる」という注意書きが表示される。確かに少し簡単すぎる気はしたが、一撃で敵を倒せるほうが真正面から叩くヴァイキング流の戦い方とのメリハリがあって楽しい。一撃暗殺オプションがオフになっているとレベルの高い敵は一撃で倒せず、暗殺を試みても結局は接近戦になってしまうからだ。


暗殺を使ったアプローチとしては、ほぼすべての建物や岩肌を自由に登れるパルクールで高所から暗殺したり、草陰に隠れて暗殺したりなどさまざまな戦法を楽しむことができる。

ちなみにバトル難易度は「スカルド」「ヴァイキング」「バーサーカー」「ドレングル」の4つが用意されており、この順で難しくなっていく。シリーズ初心者やアクションが苦手な人なら、「スカルド」で遊べばそれほどやられることなく進めることができるはずだ。敵の感知力を調整するステルス難易度やHUD・ワールドマップ表示などを調整するエクスプロア難易度もある。バトルに自信はないが、探索は自力で楽しみたいといった細かい要望に応えてくれるのは嬉しい機能だ。

運命ではなく選択によって紡がれるサーガ


本作のストーリーは幼少期のエイヴォルが体験した悲しい過去から始まる。成長しノルウェーを離れたエイヴォルは、「レイヴンズソープ」という小さな居住地をイングランドに築いた。鴉の戦士団の仲間とその首長である義兄シグルドとともに、エイヴォルはイングランドを征服する旅に出る。

征服といっても、目的はイングランドで覇権を争う7つの王国に対して有利な関係を築くこと。王国の個性豊かな領主たちと同盟関係を結ぶのが主なミッションだ。共通の敵を倒すために巨大な城を落としたり、王国を脅かす不可解な事件を解決することで同盟関係を結んでいく。


メインクエストを進めるにあたって重要なのが「選択肢」だ。どの会話を選ぶかによってクエストの展開は変わっていく。本作は今までのシリーズよりも、選択肢が大きな影響を及ぼすようになっている。

加えて登場する選択肢には意味深なものが多く、選んだ後に何が起きるか想像しづらい場合が少なくない。敵のボスを殺すのか、生かすのか、裏切り者はどちらの人間なのか……。筆者はそんな選択肢に思わず尻込みして、運に任せて選んでしまうこともあった。

しかしこのゲームの醍醐味は、運命ではなく自分の意志でサーガを作ることにある。登場するヴァイキングはほとんどが信心深く、運命は定められているものだと考えている。実際、幻視というお告げのようなものもストーリーでは重要な存在となっている。


ただ彼らのセリフから分かるのは、彼らが運命よりもそこに至るまでの自分の行動を大切にしていること。運命にははっきりとした形がなく、実際に未来を作るのは自らの行いだということを彼らは知っている。どんな結末が待っていても、後悔のないように考え抜いて決断するのがこのゲームの楽しみ方だと筆者は感じた。

この征服の物語にはある2つの組織の対立も関わっている。『アサシンクリード』シリーズの歴代主人公が所属していた「アサシン教団」の前身「隠れし者」と、「結社」との戦いだ。ただストーリーのメインになっているのは、あくまでエイヴォルと仲間たちのイングランド征服。過去作についての知識が無くても楽しめるだろう。さすがに現代編はシリーズ未経験者にとってわかりづらいかもしれないが、イングランド征服のメインクエストに比べてボリュームはとても少ない。分からなくても気後れする必要はないだろう。

▲右下の水色のアイコンが謎(ワールドイベント)を表している

また本作ではサイドクエストが廃止され、代わりに「謎」というワールドイベントが各地に散りばめられている。特定の人物に会うと発生するイベントで、サブクエストのように初めから依頼内容や目的が分かるわけではなく、何が起きるか分からないままイベントは進む。その偶然性の高さがとても楽しく、本当に旅先で出会ったできごとのように感じられる。たとえば、遺跡のそばで「妻の声が聞こえる」と喚く男性に会うイベントがある。悲しげな声を辿り周りを探索してみると、その先に思いがけないドラマが待っているのだ。明るかったり、悲しかったり、狂気的だったり、「謎」はどれもオリジナリティのあるストーリーなのが嬉しい。

ヴァイキングとしての暮らしを満喫

▲鴉の戦士団が住むレイヴンズソープ

ヴァイキングにとってイングランド征服と同じくらい大切なのは、仲間や家族との生活である。居住地を整備し、さまざまな過去を持つ住民たちと信頼関係を築くこともエイヴォルの使命だ。居住地「レイヴンズソープ」がその主な舞台となる。

「レイヴンズソープ」は襲撃で手に入る物資を使ってアップグレードが可能だ。設備を増やすと釣りやタトゥー(見た目の変更)などが可能になり、住民とのクエストも発生する。

▲ハートマークのついた選択肢を選ぶと、そのキャラクターと恋愛関係になる

居住地での暮らしはいざこざや恋愛も多く、集団で暮らすことのリアリティが詰まっていた。ケンカの仲裁をしたり、リーダーらしく振舞って妬まれたり。恋愛イベントは複数のキャラクターに対して発生するが、エイヴォルの性別に関わらず誰とでも恋愛できる(エイヴォルの性別はいつでもシームレスに変更可能)。途中で性別を変えても恋愛イベントに影響はない。

▲ヴァイキングの口論詩。時間内に相手を罵倒する言葉を選ぼう

『アサシンクリード』シリーズは史実に基づいて制作されており、実際のヴァイキングたちが築いた文化を体験できるのも魅力だ。最もユニークなのはヴァイキング流ラップバトルの口論詩だろう。屈強な戦士たちがリズミカルに罵倒しあうのは見ていて気持ちが良い。とにかく強い言葉を返せばいいのではなく、ちゃんと韻を踏んでいるか、相手の言葉の文脈にも沿っているかが良い口論詩の基準だ。口論詩での戦いに勝つとカリスマレベルが上昇し、新しい会話の選択肢を選べるようになる。仮面のアイコンの場所に行けば、口論詩の相手が待っているだろう。

バグが消えるのが待ち遠しい!
グレーなヴァイキングの生き様を体感できる一作

最後にいくつかの細かな不具合について説明しておこう。2020年12月15日現在、まだフリーズが発生するものの、オートセーブがこまめに行われるので再起動しても大事には至っていない(筆者は約60時間プレイして2,3回フリーズした)。筆者のほうでは発生しなかったが、全てのプラットフォームで複数のクエストが進行不能になるバグが公式フォーラムにおいて確認されている。まだ買ってない人はこれらの大きな不具合が直ってから購入したほうががいいかもしれない。

多くの騒動やバグを除けば、『アサシンクリード ヴァルハラ』は複雑なヴァイキングの生き様を身をもって体感できる良作と言える。ヴァイキングのエイヴォルは、白黒つけられないアンバランスさが魅力的な主人公だった。獰猛な戦い方と静かな暗殺という戦い方、略奪者としての残酷さと仲間を想う絆の強さ……。また、神を信じていても、神より自分の意志と行動を大切にする場面があるのも面白い。

不具合が解決され、多くのユーザーがそんな体験をできる日が来るのが待ち遠しいゲームだ。


(C)2020 Ubisoft Entertainment.All Rights Reserved.Assassin’s Creed, Ubisoft, and the Ubisoft logo are registered or unregistered trademarks of Ubisoft Entertainment in the US and/or other countries.

●タイトル:アサシンクリード ヴァルハラ
●ジャンル:オープンワールドアドベンチャー/アクションRPG
●発売元:ユービーアイソフト
●開発元:Ubisoft Montreal
●プラットフォーム:PC、PlayStation 5、PlayStation 4、Xbox Series X|S、Xbox One
●発売日:2020年11月10日
●価格:
通常版:9240円(税込)
ゴールドエディション:1万3200円(税込)
アルディメットエディション:1万5840円(税込)
●必須スペック
OS: Windows 10 64bit
プロセッサー: AMD Ryzen 3 1200 3.1Ghz または Intel Core i5-4460 3.2Ghz
メモリー: 8GB
グラフィック:AMD Radeon R9 380 4GB または NVIDIA GeForce GTX960 4GB
ストレージ: 50GB
※DirectX12対応GPU必須
●推奨スペック
OS: Windows 10 64bit
プロセッサー: AMD Ryzen 5 1600 3.2Ghz または Intel Core i7-4790 3.6Ghz
メモリー: 8GB
グラフィック:AMD Radeon RX570 8GB または NVIDIA GeForce GTX1060 6GB
ストレージ: 50GB
※DirectX12対応GPU必須
●公式サイトURL:https://ubisoft.co.jp/acv
●ダウンロードサイトURL:
UBISOFT Store:https://store.ubi.com/jp/assassin-s-creed-valhalla-all-games
Epic Gamesストア:https://www.epicgames.com/store/ja/product/assassins-creed-valhalla/home
【連載】Alienware Zone PCゲームレビュー<2020年版>

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