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フライトシム新作『Microsoft Flight Simulator』レビュー! 最高の飛行体験には推奨スペック以上のPCが欲しい【オススメPCゲームレビュー】

マイクロソフトが8月18日にリリースしたAsobo Studio開発のフライトシミュレータ最新作『Microsoft Flight Simulator』(以下、便宜上『MSFS2020』と表記)。じつに約13年ぶりの新作かつ話題作となった本作のレビューをお届けする。

本作は、Microsoft Storeの他にSteamでも発売。筆者はゲーム遊び放題のサブスクリプション「Xbox Games Pass」に加入しており、そこに『MSFS2020』が含まれているため、それを利用しプレイに挑んだ。


長い歴史を持つ『Microsoft Flight Simulator』シリーズ

『Microsoft Flight Simulator』は、1982年にリリースされた初代から数えて拡張版などを加えると13作品ほどリリースされ、公式紹介映像では表現力の変貌を垣間見れる。シリーズは1982年にリリースされた『Microsoft Flight Simulator 1.0』から始まり、表現こそワイヤーフレームだが、画面に見える速度計や高度計など基本的なレイアウトは長いシリーズの中で継承されてきた。

日本国内で2007年にリリースされた『Microsoft Flight Simulator X』と拡張版『栄光の翼(Acceleration)』以降、フライトジャンル自体が下火となったためか本作に至るまでの13年間新作がリリースされていなかった(なお、派生作としては2012年にF2Pの『Microsoft Flight』が展開)。E3 2019で発表された本作は、圧倒的な低高度での高精細なグラフィックを持って世間にアピールし注目を集めた作品となった。


他にもスピンオフタイトルとして、第二次世界大戦期の航空戦を題材とした『Microsoft Combat Flight Simulator』が3作まで20世紀末から21世紀初頭に掛けてリリース。零戦二一型や五二型、スピットファイア、P-51Dなどがプレイ可能だった。

カジュアルで美麗な空の旅を体感できるゲームプレイ

▲建物の形が微妙に日本風でないが大まかな雰囲気は良く出来ている

前述のように、『Microsoft Flight Simulator』シリーズは長い歴史を持っている。では、約13年ぶりに登場した本作はどうだろうか?本作のゲームプレイは、非常にカジュアルでフライトスティックだけでなくコントローラーでのプレイも容易だ。

フライト自体の難易度は、アシストレベルという範囲で設定可能。「ALL ASSISTS」と「MIDDLE-GROUND」、そして「TRUE TO LIFE」の3段階で、アシスト範囲も細かく設定出来る。アシスト範囲を広げ難易度が低くなるほど派手な動きをしても機動の負担による自機の破壊が起こらない。こうなると、建造物や地表に当たっても墜落判定にならないため、様々な土地へ無茶な着陸も可能となる。


一方でアシストの難易度を上げれば、飛行速度による降下/上昇率やエンジンの温度や回転数、機体強度の負担など、飛行機を取り巻く様々な現象に目を配りながら飛行するというシミュレーターならではのリアリティを感じられるのが面白いところ。難易度を上げてプレイするなら、是非ともフライトスティックを接続して遊びたい。他にも、操作全般のチュートリアルも搭載。現時点で日本語が実装されていないことが残念だが、この解説を一通り終えれば飛行機のセオリーを大体は理解出来るだろう。

視点は機内(コックピット)と機外(三人称)の2種類。コックピット視点では、MFD(多機能ディスプレイ)内のタッチパネルも含む画面に見えるほぼ全ての計器を操作可能だ。計器の見方や使い方さえ知れば本格パイロット気分な雰囲気を味わえる。またコントローラー/フライトスティックへのキーアサインは自動で行われ、設定画面でボタンを押すと設定された項目の色が反転するようになっている配慮が良い。


メニュー画面だけでなく、プレイ中のUIへのアクセス性はモダンで、マウスと併用しカーソルを画面上部を移動させると項目が出現。目的にあったアイコンを選択するだけで簡潔に現在位置の確認や管制塔との通信も行える。管制塔との通信では、AIに通信を任せることで頼りになる相棒と組んで飛んでいる様を感じられるだろう。

他にも興味深いのはリアルタイムに変更できる時間と天候だ。天候や時間帯は飛行中に「WEATHER」項目を開くことで設定可能で、時間や高高度の雲から空気中のエアロゾル濃度、降雪、嵐、雷、気温、気圧濃度、様変わりする地上を一瞬で切り替えられる。都度メニュー画面に戻らずに再設定できるのは素直に嬉しい。


目を見張るグラフィック
―低高度の実在感を演出する超高品質な「木」

グラフィックはとても写実的。リアリティの高い多彩な雲の表現や、低高度におけるスケール感の違和感が解決されているのが本作の大きな強みだ。特に都市部で低空飛行してみると、画面いっぱいに多種類の建築物が隙間無く遠方まで建ち並ぶため、街の緻密な密集感が感じられる。

▲非常に高品質な木であるため、低空を飛んでもリッチな雰囲気が破綻していない

もう少し目を凝らしてみると、本来なら街路樹や大小の植物がない所にまで木々が隙間なく乱雑に自動生成されていることに気付くだろう。これによって街そのもののリアリティが多少削がれてしまっているが、スケール感や距離感の演出に強く作用している。単純に巨大な建物と地上を走る車、そして大小様々な木々を無意識に比較し、大きさを想像出来てしまっている。このため低高度でも「普段より高い所を飛んでいる」と感じやすくなっているのだ。


『MSFS2020』のリッチな飛行体験は、極力省略しない建築物描写と多層で多彩な雲、そして超高品質な「木」によるスケール感によってもたらされていると言っていいだろう。

また、グラフィックの設定は地上の描写にも大きく影響を与える。低設定では、地表の建造物や木々が大きく省略され、密度や描画距離も短く輪郭もぼやけてしまうが、設定が高くなるにつれより遠方にまで木々が描画される。最低でも中設定ぐらいからが『MSFS2020』のもつグラフィックの説得力を感じられるはずだ。

▲雲の表現は美麗かつととてもダイナミックで写実的

プレイヤーは広い地球で何を楽しむのか

本作のマップはあまりに巨大だ。地球全土の地形が再現されていることからリアリティのある地形を低空飛行でも楽しむ事が出来る。日本や中国、南北アメリカ、そしてヨーロッパ諸国に加えアフリカ大陸や中東、アジア、そしてオーストラリアから南極まで地球儀に描かれている地形ならどこでも飛行可能なのだ。

▲飛行開始する位置や飛行場は地球儀上から設定できる


リリース直後の本作では、はっきりとした物語(シナリオ)は現時点で設けられていないために、プレイヤーは気になる所を好き勝手に飛行することになる。「ただ飛んでみたい」や「この土地の風景を見たい」などの純粋な初期衝動はいち早く満たされるだろう。

しかし、ある程度時間が経過し満足感を得てしまうと、純粋な航空機(民間機)ファン以外は新たに遊ぶ理由が見つからなくなってしまう。リリース直後の本作に弱点があるとすれば、これがその1つだ。

▲『MSFS2020』のみなとみらいにはランドーマークタワーがあるものの、ホテルと観覧車が無いため殺風景

▲夜間の都市描写は街灯のライティングからリアリティが高く見える


▲観光飛行はとても面白く、アメリカ アリゾナ州デビスモンサン空軍基地近くのボーンヤードに眠る飛行機群や、第二次世界大戦の戦地の一つとなったウェーク島もリアリティある形で見れる

他にも、地球上のランドマークはほぼ完璧に再現されているように見える一方で、一部分でマップの修正が必要な地域も多く見られた。例えばイギリスならロンドンのビッグベン近くのウェストミンスター橋が水没していることやテムズ川のそのものの高低差。日本なら横浜で特徴的な半月型の「ヨコハマ グランド インターコンチネンタル ホテル」がモデル化されていないこと、そして東京タワーがただのビルになっていることなど細かな建造物関連が多い。今後のアップデートで修正されることに期待したい。

▲『MSFS2020』のロンドンではウェストミンスター橋が水没していることに加え、よく見ると川岸の岸壁が無くなっている

また、より長く楽しむためには欲求やモチベーションを変化させる必要がある。空港間の移動、海外からの帰国ルート、大陸横断飛行など、時間がかかるが現実の飛行機でできることをプレイヤーが自発的に見つけて行かなくてはならない。ヘリコプターなどの追加機体(サードパーティー製を含む)やVRへの対応、キャンペーンやミッションなどコンテンツが後々リリースされる予定であるため、これらは時間をかけて解決していくことになるだろう。

重く険しいゲームの動作 ―忍耐を要する初回アップデート

本来のゲームレビューであれば、インストールとアップデートは少し触れる程度になるが、本作のアップデートは特段に長時間かかる事が指摘されている。筆者もインストール容量が多いこと以外は順風満帆だったが、初回起動の設定とアップデートに約半日かかるほど多くの時間が割かれてしまった。

▲初回アップデートは91.36GBもあるうえにダウンロード速度がとても遅い

加えて、リリース以前から懸念されていた通り動作が非常に重い。筆者の環境はCore i5-6600/GeForce RTX 2060 Super/メモリ16GB/4Kモニターと、公式の推奨スペックにはCPUが少し届かない構成。グラフィック設定を中に、解像度を4KからフルHDほどに下げても都市部の低高度においてフレームレートは30にも届かないほど重さが目立った(ストリーミングキャッシュサイズが少ないことも影響している可能性がある)。一方で草木が多く建築物が少ない郊外ならフレームレート30ほどで安定した。ALIENWAREなら、メモリを32GBに増設したAURORA R11 スプレマシー・RTX搭載(Core i9-10900KF/GeForce RTX2080Ti)あたりなら、目を見張るほど美しいグラフィックで堪能できるだろう。


ゲームプレイへのアクセスはとても簡単だが、起動時の長いロードと重い動作が心的ハードを高く押し上げてしまっている。快適にプレイするにはPCそのものをハイエンドなものへアップグレードさせなければならないことに加え、前述のロード時間の長さを考えるととてもカジュアルに遊べないのはとても残念だ。

『MSFS2020』から空を飛ぶ楽しさを体験しよう

『MSFS2020』はデータ容量の巨大さと動作の重さ、そして現時点で日本語未対応な点が大きなネックであるものの、飛行に至るまでの簡潔さや充実のチュートリアル、そして初心者から現実のパイロットまで対応する難易度と幅広い様々な層に勧められるタイトルだ。


都市の細かな再現度についてはプレイを重ねる度に気になるものの、高高度を飛行し雲の切れ間から眼下に広がる大陸や都市を眺めるのはとても面白い。マルチプレイでフレンドなどと共に編隊も組めることから、一緒に観光飛行をしてみるのも一興だ。

20年代の始まりを告げる美麗なグラフィック表現を持った『Microsoft Flight Simulator』に少しでも興味をもったのなら、ぜひとも遊んでみるのが良いだろう。

Microsoft Studios © 2020 Microsoft Corporation

●タイトル:Microsoft Flight Simulator
●発売元:Xbox Game Studio
●開発元:Asobo Studio
●プラットフォーム:PC
●ジャンル:フライトシミュレーター
●発売日:発売中(2020年8月18日)
●価格:
スタンダードエディション 7450円(税込) ※Xbox Game Pass対応
デラックスエディション 1万700円(税込)
プレミアムデラックスエディション 1万3100円(税込)
●必須スペック:
OS: Windows 10 64bit
プロセッサー: Intel i5-4460 または AMD Ryzen 3 1200
メモリー: 8GB RAM
グラフィック: NVIDIA GTX 770 または AMD Radeon RX 570
DirectX: Version 11
ストレージ: 150 GB 利用可能
●推奨スペック
OS: Windows 10
プロセッサー: I 64bitntel i5-8400 または AMD Ryzen 5 1500X
メモリー: 16 GB RAM
グラフィック: NVIDIA GTX 970 または AMD Radeon RX 590
DirectX: Version 11
ストレージ: 150 GB 利用可能
●公式サイトURL:https://www.xbox.com/ja-JP/games/microsoft-flight-simulator
●ダウンロードサイトURL:
https://www.microsoft.com/ja-jp/p/microsoft-flight-simulator-standard/9NXN8GF8N9HT#activetab=pivot:overviewtab
https://store.steampowered.com/app/1250410/Microsoft_Flight_Simulator/
【連載】Alienware Zone PCゲームレビュー<2020年版>

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