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新連載!【ストーム久保の「プロ格闘ゲーマーのゲンバから」第1回】人生のトリガーを引いた話
2018年からプロゲーミングチーム「Atlas Bear」に所属してプロゲーマー活動を開始しました「ストーム久保」と申します。25歳、男です。
メインで活動しているゲームは『ストリートファイターⅤ アーケードエディション』で、使用キャラクターはアビゲイル。ゲームセンターでアルバイトをしながら、2018年の「Capcom Pro Tour」を巡って12月に行われる「Capcom Cup 2018」本選に出場、結果を残すことを目標に日々活動をしています。
昔、通っていた渋谷のゲームセンター「渋谷スポーツランド」の店長にゲーメスト(アーケードゲーム専門雑誌。1999年休刊)をたくさん譲ってもらったことがあります。そのとき初めてゲーム雑誌を読んだのですが、なんて面白くて素敵なものなのだろうか!と何度も読み直して噛みしめたものです。
そのときから密かに大きな場で記事やコラムを書くことに憧れを抱いていたので、今回お話を頂いた時は跳び跳ねて喜びました(笑)。
執筆を開始してまずはテーマを決めることから始めたのですが、同じくALIENWARE ZONE様で掲載している先輩プロゲーマーたちのように攻略やプロゲーマー論の記事を書くべきか考えました。
先輩たちとは格闘ゲーム歴もプロゲーマー歴も大きく離れていて説得力の差が出てしまい、比べるとどうしても私の方が薄味になってしまう恐れがあります。
なのでどうにか私にしか書けないものを探した結果、「プロ格闘ゲーマーのゲンバから」と題して、「経験」をテーマに書くことにしました。私が経験した大会や対戦、出来事、感情などを頭から絞り出してお見せします。
私の頭の中にしかないものを言語化するのが難しくて難航していますが、自分が楽しんだゲーム雑誌のようにみんなにも喜んでもらえるよう……せめて暇つぶし程度になるくらいのものを書く努力をしていきますのでよろしくお願いいたします。
今回は第1回目なので、まず私が格闘ゲームを始めたきっかけとプロゲームを目指したきっかけ、つまり「人生のトリガーを引いた話」を書かせていただきます。
ゲームを始めた当初は、キャラクターやその演出にしか興味がなかったので、コンボや立ち回りなど格闘ゲームの深い部分はまったく知らず&わからず、ただ純粋に「キン肉マン」ファンとして技を出して動かすだけで楽しんでいました。
ですが、ゲームセンターと言えば対戦、ですよね。ここで初めて人と、しかも見知らぬ人との対戦を経験します。初めて乱入されたときはもちろん負けたワケですが、私の中で何とも言葉にできない感情が沸いてきたのを今も覚えています。
近い感情としては喜びなのでしょうか、負けたのになぜか嬉しくて仕方ない。
今思い返せば、私の周りにはいなかった「格闘ゲームと『キン肉マン』好きの人と遊べた!」という、ただそれだけで嬉しかったのだと思います。その経験をきっかけにさらに格闘ゲームとゲームセンターにハマっていき、次第に自分と共通の趣味を持つ人との交流や対人戦の面白さ、格闘ゲームの魅力を知っていきます。
元々学校の友達には格闘ゲームをする人はいなかったので、共通の趣味で遊べる人たちがいるゲームセンターは、私にとって遊園地よりも愉快で刺激的でした。
しかし通い始めて半年経ったころ、『キン肉マン マッスルグランプリ2』はお店から撤去されてしまいます。今思えば売り上げが悪かったのでしょう。
遊んでいたゲームがなくなったことで、ゲームセンター通いを辞めるか否か悩みました。今まで対戦を通して顔なじみになっていた人たちと会えなくなった寂しさを感じましたが、一度格闘ゲームの楽しさを味わってしまうと、あの刺激的なゲームセンターライフを送りたい気持ちが勝りました。
そこで、『キン肉マン』と入れ替わりで稼働を開始した『ストリートファイターIV』を始めることにしたんです。
『ストリートファイターIV』から本格的に戦術やコンボを学び始めましたが、最初は勝つことや有名になることなんて頭になかった超エンジョイ勢、ただの漫画とゲーム好きの少年でした。
数回ほど海外大会に参加しましたが結果を出すことができず、チャンスを得られないまま『ストリートファイターⅤ』が発表されました。『ストⅤ』はゲームセンターではなく家庭用のみの発売だったこともあって、自分の今の環境や生活を考えるとこれからプロゲーマーにはもっと勝てなくなるな……そう諦めてしまいました。今まで以上にチャンスはなくなっていくと決めつけて、前線から一歩引くことにしたんです。
そして『ストV』が発売されて2年経過したころ。
昔、あれだけあった情熱は失せてしまい、ただアルバイトをしながらたまに大会やイベントに参加してワイワイする程度の活動をしていました。同時にプロゲーマーに激しく嫉妬していたのも事実です。
本当は自分も格闘ゲームにすべてを捧げて生きていきたいという気持ちがありつつ、現実をゆがんだ形で受け止めていました。
「そもそもプロゲーマーは稼げない」
「ボンボンみたいな金持ち連中しかできないこと」
「自分のような人間には許されない」
実際のプロゲーマーはそんなことないのに、自分に対していろんな言い訳や嘘をぶつけては言い訳して文句を言う。でも、この感情をどうしたらいいのか解決方法もわからない。行き場のないイライラを抱えて漠然と生きていました。
2016年12月、3年間続けていたゲームセンターのアルバイトを辞めたのをきっかけに、一度きっぱりゲームへの未練を捨ててみようと就職活動を始めました。スーツを着て就活をしていると最初のうちは自分が全うな人間になっていっている気がして気分が良かったのです。あいつらとは違う。そんな優越感もありました。
でも、それも短い期間でした。しばらくするとまた前のようにイライラが吹き上げてきたのです。
何となくイライラの原因はわかっていましたが、相変わらず目を背けていました。そんなイライラした状態でやっていると当然のように就活は失敗続きです。
ゲームで生きていきたい。
もはや自分の中でもわかりきっている気持ちでしたが、一度抑えつけようとした思いが就活の失敗もあって一気に弾けてしまい、挙げ句、何もしたくなくなって、前よりも状況は悪化してしまいました。
部屋に引きこもって過ごす日々で、格闘ゲームをすることさえも嫌になり、でも今を変えることもしない。時間だけが過ぎていく……。
そんな生活が変わったきっかけは2017年の「EVO」です。
部屋でぼんやりと『ストV』部門のTOP8を観ていたら、追加される新キャラクターのPVが流れました。
このPVを見た瞬間、脳裏に
「あっ、俺はこのキャラを使うんだな」
と浮かんだのは今でもはっきりと覚えています。
Twitterでは苦情が多かったようですが、見た目から動きまですべて久保好み。理想的なキャラクターが脳に直撃した衝撃で吹っ切れたのでしょう。自分はもう今以上にひどい状況にはならないだろう、気持ちを抑えるのはやめて、この際本当にやりたかったことをやってみよう。
逆ギレに近い気持ちだったかもしれませんが、ようやく自分の気持ちに正直になって行動する決意をし、清々しい気持ちになりました。あの瞬間がプロゲーマーを目指すきっかけだったのは間違いありません。
自分の本当にやりたいことを否定して生きるのは、正しくてもつらいことだと思い知って、間違っていてもやっていようと、私は今生きています。
これらが私のプロゲーマーになったきっかけです。
今回は濃い自分語りで口から火を吹いてしまいそうですが(笑)、読んでくださった方が私にちょっとでも興味を持ってもらえたら幸いです。
■ストーム久保プロフィール
本名・クボ アラシ。『キン肉マンマッスルグランプリ2』から格闘ゲームを始め、『ストリートファイターⅣ』シリーズ、『ストリートファイター×鉄拳』、『ストリートファイターV』シリーズをプレイ。2014年「Red bull 5G バイキングぽいぽい 東関東」2位を経て、2018年にプロゲーマーに。同年「NCR2018」7位タイ、「SCR2018」5位タイ、「Red bull Conqest」4位を経て、「Capcom Cup」の切符を手にした。所属チームは「AtlasBear」で、「無敵時間」が個人スポンサーとなっている。人生の目標は「死ぬまでゲームと生きていく」。最近の悩みは、配信で話すことがなくなってきた時に、とりあえず出してみる鉄板ネタのレパートリーがほとんどネモさん絡みの話になってきて危機感を覚えたこと。
■関連リンク
ストーム久保 Twitter
https://twitter.com/stormkubo
ストーム久保 Twitch
https://www.twitch.tv/stormkubo
メインで活動しているゲームは『ストリートファイターⅤ アーケードエディション』で、使用キャラクターはアビゲイル。ゲームセンターでアルバイトをしながら、2018年の「Capcom Pro Tour」を巡って12月に行われる「Capcom Cup 2018」本選に出場、結果を残すことを目標に日々活動をしています。
プロゲーマーの現場と本音をお伝えします
普段はゲームばかりしている私が、いろいろな縁あって本サイトでコラムを掲載させてもらえることになりました。昔、通っていた渋谷のゲームセンター「渋谷スポーツランド」の店長にゲーメスト(アーケードゲーム専門雑誌。1999年休刊)をたくさん譲ってもらったことがあります。そのとき初めてゲーム雑誌を読んだのですが、なんて面白くて素敵なものなのだろうか!と何度も読み直して噛みしめたものです。
そのときから密かに大きな場で記事やコラムを書くことに憧れを抱いていたので、今回お話を頂いた時は跳び跳ねて喜びました(笑)。
執筆を開始してまずはテーマを決めることから始めたのですが、同じくALIENWARE ZONE様で掲載している先輩プロゲーマーたちのように攻略やプロゲーマー論の記事を書くべきか考えました。
先輩たちとは格闘ゲーム歴もプロゲーマー歴も大きく離れていて説得力の差が出てしまい、比べるとどうしても私の方が薄味になってしまう恐れがあります。
なのでどうにか私にしか書けないものを探した結果、「プロ格闘ゲーマーのゲンバから」と題して、「経験」をテーマに書くことにしました。私が経験した大会や対戦、出来事、感情などを頭から絞り出してお見せします。
私の頭の中にしかないものを言語化するのが難しくて難航していますが、自分が楽しんだゲーム雑誌のようにみんなにも喜んでもらえるよう……せめて暇つぶし程度になるくらいのものを書く努力をしていきますのでよろしくお願いいたします。
今回は第1回目なので、まず私が格闘ゲームを始めたきっかけとプロゲームを目指したきっかけ、つまり「人生のトリガーを引いた話」を書かせていただきます。
▲2015年ごろのストーム久保選手
格闘ゲームを始めたきっかけは『キン肉マン』
格闘ゲームとゲームセンター通いを始めたのは2008年の夏。当時ちょうどハマっていた「キン肉マン」が題材の格闘ゲーム『キン肉マン マッスルグランプリ2』がゲームセンターで稼働開始、しかも原作で好きだったキャラクターが使えると知った私は、初めて地元横浜のゲームセンターに行って格闘ゲームをプレイします。ゲームを始めた当初は、キャラクターやその演出にしか興味がなかったので、コンボや立ち回りなど格闘ゲームの深い部分はまったく知らず&わからず、ただ純粋に「キン肉マン」ファンとして技を出して動かすだけで楽しんでいました。
ですが、ゲームセンターと言えば対戦、ですよね。ここで初めて人と、しかも見知らぬ人との対戦を経験します。初めて乱入されたときはもちろん負けたワケですが、私の中で何とも言葉にできない感情が沸いてきたのを今も覚えています。
近い感情としては喜びなのでしょうか、負けたのになぜか嬉しくて仕方ない。
今思い返せば、私の周りにはいなかった「格闘ゲームと『キン肉マン』好きの人と遊べた!」という、ただそれだけで嬉しかったのだと思います。その経験をきっかけにさらに格闘ゲームとゲームセンターにハマっていき、次第に自分と共通の趣味を持つ人との交流や対人戦の面白さ、格闘ゲームの魅力を知っていきます。
元々学校の友達には格闘ゲームをする人はいなかったので、共通の趣味で遊べる人たちがいるゲームセンターは、私にとって遊園地よりも愉快で刺激的でした。
しかし通い始めて半年経ったころ、『キン肉マン マッスルグランプリ2』はお店から撤去されてしまいます。今思えば売り上げが悪かったのでしょう。
遊んでいたゲームがなくなったことで、ゲームセンター通いを辞めるか否か悩みました。今まで対戦を通して顔なじみになっていた人たちと会えなくなった寂しさを感じましたが、一度格闘ゲームの楽しさを味わってしまうと、あの刺激的なゲームセンターライフを送りたい気持ちが勝りました。
そこで、『キン肉マン』と入れ替わりで稼働を開始した『ストリートファイターIV』を始めることにしたんです。
『ストリートファイターIV』から本格的に戦術やコンボを学び始めましたが、最初は勝つことや有名になることなんて頭になかった超エンジョイ勢、ただの漫画とゲーム好きの少年でした。
格闘ゲームから離れていた時期
『ストリートファイターIV』シリーズもバージョンアップを繰り返して『ウルトラストリートファイターIV』になったころ、海外大会を回ってプロゲーマーになれないかな、と試していた時期がありました。▲『ストリートファイターIV』大会に参加
数回ほど海外大会に参加しましたが結果を出すことができず、チャンスを得られないまま『ストリートファイターⅤ』が発表されました。『ストⅤ』はゲームセンターではなく家庭用のみの発売だったこともあって、自分の今の環境や生活を考えるとこれからプロゲーマーにはもっと勝てなくなるな……そう諦めてしまいました。今まで以上にチャンスはなくなっていくと決めつけて、前線から一歩引くことにしたんです。
そして『ストV』が発売されて2年経過したころ。
昔、あれだけあった情熱は失せてしまい、ただアルバイトをしながらたまに大会やイベントに参加してワイワイする程度の活動をしていました。同時にプロゲーマーに激しく嫉妬していたのも事実です。
本当は自分も格闘ゲームにすべてを捧げて生きていきたいという気持ちがありつつ、現実をゆがんだ形で受け止めていました。
「そもそもプロゲーマーは稼げない」
「ボンボンみたいな金持ち連中しかできないこと」
「自分のような人間には許されない」
実際のプロゲーマーはそんなことないのに、自分に対していろんな言い訳や嘘をぶつけては言い訳して文句を言う。でも、この感情をどうしたらいいのか解決方法もわからない。行き場のないイライラを抱えて漠然と生きていました。
2016年12月、3年間続けていたゲームセンターのアルバイトを辞めたのをきっかけに、一度きっぱりゲームへの未練を捨ててみようと就職活動を始めました。スーツを着て就活をしていると最初のうちは自分が全うな人間になっていっている気がして気分が良かったのです。あいつらとは違う。そんな優越感もありました。
でも、それも短い期間でした。しばらくするとまた前のようにイライラが吹き上げてきたのです。
何となくイライラの原因はわかっていましたが、相変わらず目を背けていました。そんなイライラした状態でやっていると当然のように就活は失敗続きです。
プロゲーマーになるきっかけは「EVO」で観たあの映像
そんな失敗とともに、あることに気がつきました。ゲームへの未練を捨てるどころか、余計にゲームに対する気持ちが強くなっただけだったのです。ゲームだけが生き甲斐だったことに気がつきました。いや、もっと前から気がついていたのですが、それに背を向けていました。でもこのときはっきりわかりました。ゲームで生きていきたい。
もはや自分の中でもわかりきっている気持ちでしたが、一度抑えつけようとした思いが就活の失敗もあって一気に弾けてしまい、挙げ句、何もしたくなくなって、前よりも状況は悪化してしまいました。
部屋に引きこもって過ごす日々で、格闘ゲームをすることさえも嫌になり、でも今を変えることもしない。時間だけが過ぎていく……。
そんな生活が変わったきっかけは2017年の「EVO」です。
部屋でぼんやりと『ストV』部門のTOP8を観ていたら、追加される新キャラクターのPVが流れました。
このPVを見た瞬間、脳裏に
「あっ、俺はこのキャラを使うんだな」
と浮かんだのは今でもはっきりと覚えています。
Twitterでは苦情が多かったようですが、見た目から動きまですべて久保好み。理想的なキャラクターが脳に直撃した衝撃で吹っ切れたのでしょう。自分はもう今以上にひどい状況にはならないだろう、気持ちを抑えるのはやめて、この際本当にやりたかったことをやってみよう。
逆ギレに近い気持ちだったかもしれませんが、ようやく自分の気持ちに正直になって行動する決意をし、清々しい気持ちになりました。あの瞬間がプロゲーマーを目指すきっかけだったのは間違いありません。
自分の本当にやりたいことを否定して生きるのは、正しくてもつらいことだと思い知って、間違っていてもやっていようと、私は今生きています。
これらが私のプロゲーマーになったきっかけです。
今回は濃い自分語りで口から火を吹いてしまいそうですが(笑)、読んでくださった方が私にちょっとでも興味を持ってもらえたら幸いです。
■ストーム久保プロフィール
本名・クボ アラシ。『キン肉マンマッスルグランプリ2』から格闘ゲームを始め、『ストリートファイターⅣ』シリーズ、『ストリートファイター×鉄拳』、『ストリートファイターV』シリーズをプレイ。2014年「Red bull 5G バイキングぽいぽい 東関東」2位を経て、2018年にプロゲーマーに。同年「NCR2018」7位タイ、「SCR2018」5位タイ、「Red bull Conqest」4位を経て、「Capcom Cup」の切符を手にした。所属チームは「AtlasBear」で、「無敵時間」が個人スポンサーとなっている。人生の目標は「死ぬまでゲームと生きていく」。最近の悩みは、配信で話すことがなくなってきた時に、とりあえず出してみる鉄板ネタのレパートリーがほとんどネモさん絡みの話になってきて危機感を覚えたこと。
■関連リンク
ストーム久保 Twitter
https://twitter.com/stormkubo
ストーム久保 Twitch
https://www.twitch.tv/stormkubo
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