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“G”を初実戦投入!! NorCal Regionals 2019のゲンバ 【ストーム久保の「プロ格闘ゲーマーのゲンバから」第7回】

ALIENWARE ZONEをご覧の皆さま、どうも! TEAM iXA所属 ストーム久保です。

今回は2019年3月29日から31日にかけて、アメリカ・カリフォルニア州サンノゼで開催されたCPT大会「NorCal Regionals 2019」(以下、NCR)にて私が経験した出来事を執筆させていただきます。

険しい海外大会に加えて、エントリーミスから始まったデスプールの話や、久保史上初となるサブキャラクターの実戦投入、反省と成長、新しい考えを学んだ今回の海外遠征の経験など、盛りだくさんな内容を皆さまにお届けしたいと思います。

「ストーム久保、デスプールからだってよ」

「NCRのエントリーやっていなかった……」

「登録完了」のマークが見当たらないことに気がついたのは、アメリカへ出発する3日前でした。当然ですが、エントリーをしていないと大会に参加できません。プロ格闘ゲーマーが大会に参加できないということは、もはや会社員が出社しないのと同義です!

慌てて大会主催者にメールを送ります。エントリーの締め切りから2時間ほど経っていましたが、2時間ならばギリギリ滑り込ませてくれるかもしれない。そう祈っているところに、主催者から返事が届きます。

「悪いけど、ルールだからもうエントリーはできないね。でも当日来てくれれば“デスプール”に参加できるよ!」

デスプールとは、大会のエントリーができなかった選手が、大会に参加できる権利を懸けた当日予選のことです。大会当日に現地でのみ受付を開始、集まった未エントリーの選手たちだけでトーナメントを作成します。このトーナメントで優勝、または準優勝をすると本来の大会に参加することができます(デスプールを行わない大会もありますので、エントリーミス、ダメゼッタイ!)。

NCRのデスプールのルールは、優勝者がpool15のウィナーズに、準優勝がpool16のルーザーズに参加となっています。ここはウィナーズで突破して、ほかの参加者と同じ状況になりたいところです。

航空券、宿泊するホテルの予約を無駄にしないためにも、自分がやってしまった失態を取り戻すためにも、まず私の目標は「デスプールの突破」となりました。そして、チームオーナーの板垣さんに連絡して謝りました。TEAM iXA運営の皆様、スポンサー様、ファンの皆様、本当に申し訳ございませんでした。今後二度とエントリーなどの大切な項目のチェックは怠りません。


デスプール in ストーム久保

現地に到着してから、素早くデスプールのエントリーを済ませて祈り始めます。

「頼むから強豪はちゃんとエントリーしておいてくれ……!」

過去に何度かデスプールは見たことがありますが、どこも本来のトーナメントと同じくらいハイレベルでした。自分が悪いとはいえ、突破したいので強豪がデスプールにいないことをひたすら祈ります。

当日エントリー受付も終了して、デスプールのトーナメントが発表されました。

参加人数は私を含めて8名と少なかったです。これほど参加人数が少ないとは、皆さんしっかりしていますね。しかし参加選手の中で目立つ存在が1人。去年の「CAPCOM CUP 2018」に出場したペルーの強豪ベガ使い、Pikoro選手が参加していました。

思わずPikoro選手に「ちゃんとエントリーしましょうよ!」と話しかけに行こうと思いましたが、ブーメランがすごい勢いで私に突き刺さるのは目に見えたので、これから始まる試合に集中することにしました。


初戦は家庭用のランク「GrandMaster」のさくら使い、Ceelows選手。私は今回もアビゲイルを使用しましたが、アビゲイルはさくらが非常に苦手なんです。さくらの飛び道具、鋭いジャンプ攻撃、全キャラ屈指の機動力がアビゲイルにうまいこと刺さりまくり、日本で練習しているときでもあまり勝てないキャラクターでした。

格闘ゲームはメンタルが重要。自信がなければ自分の信じた選択が取れないので、苦手意識があるキャラクターとの対戦は、メンタルがマイナスに働きます。さらに試合が始まる前にCeelows選手の仲間たちが集まってきて、私を囲む形で陣取ります。海外大会特有のアウェーな環境で試合が始まります。

Ceelowa選手が攻撃を当てるたびに、周りにいる仲間たちは歓声を上げ、その歓声でCeelows選手が勢いづいて、プレイのパフォーマンスが上がっていくのを対戦を通して感じました。そして同時に、私のパフォーマンスが下がっていった気がします。

気になるんです、周りの声が。何を言っているのか、言葉がわからないのに気になります。孤独感と緊張と焦りが瞬く間に私を呑み込んでいく感覚がとても気持ち悪く、解消できないまま1試合目を落としてしまいます。

2試合目も負けたら終わってしまうプレッシャーは大会でよく経験していますが、デスプールといういつもと違う環境がさらに私を焦らせます。このままではいけない、すぐにキャラクターセレクト画面に戻ってクールタイムに入ります。

1試合目の相手の動きを思い出して、どこか欠点はなかったか? アビゲイルに対しての理解度は高かったか? 動きのパターンはいくつあったか、考えてから2試合目を開始することにしました。クールタイムを自ら設けられたおかげで冷静になって、相手のアビゲイルに対する理解度の低さを突いた戦法でどうにか2、3試合を辛勝。1回戦を勝ち上がります。

1回戦目からこれほどきついとは思っていなかったので、消費が激しくてうなだれそうになりましたが、次はウィナーズセミファイナルなので気合を入れなおします。

相手はこのデスプールでもっとも注意している、Pikoro選手。

ここで負けるとウィナーズでの本来のトーナメントへの参加は不可能になってしまうので、CAGのどぐら選手にお願いしてアドバイスをもらってから挑むことにします。どぐら選手はベガ使いなので、試合前にアドバイスを授かった状態で挑めたのは非常に大きかったです。

それに今回もアビゲイルに対しての理解度が低い雰囲気がしたので、ふんだんに必殺技を押し付け挑んだところ……Pikoro選手にストレートで勝利!

デスプールの山場を超えられたことで自信がついて、ウィナーズファイナルでコーディー使いと対戦したときは何の迷いもなく動くことができました。やはり格闘ゲームはメンタルが重要ですね! デスプールをウィナーズで突破して、本来のトーナメントに参加することができました!


配信されていないオフストリームの試合を、私のアカウントでYouTubeにて配信してみました。NCRは非常にレベルの高い試合が多く、見応えがありますのでぜひご覧ください。


新しい可能性 "G"

前回(2019年3月15日~17日)の大会「Final Round2019」で世界的に評価が上がったキャラクター、G。アビゲイルの弱体化が思いのほか深刻だったので、代わりとなるキャラクターを探していたところに現れたGは、私に新しい可能性を見せてくれました。

NCRまではずっとGを練習していたので、それなりにGを動かせるようになっていましたが、正直大会でアビゲイルではなくGを使用する自信はありませんでした。大会経験がないキャラクターを出して、敗退するのは怖い。しかし大会で使っていかないと、練習している意味がないです。なので、NCRは私の大会初Gの場として計画していた大会でした。

エントリーミスでデスプールからのスタートなので、さすがに1ミスで明暗分かれるデスプールで慣れていないGを使用することはできませんでした。突破したことで本来のトーナメントに入れて余裕が生まれたので、経験を積むことに。

プール16、1回戦の相手はガイル使いだったので、Gを投入。デスプールからの連戦で、体も心もあったまっていたのでミスも少なく勝利。私の大会初Gはいい滑り出しをしたと思います。

2回戦目以降は名前を知っている相手としか当たらなかったので、アビゲイルを出していましたが、3回戦目で敗北。ルーザーズに落ちてからは何度かGを出して勝利しますが、ルーザーズセミファイナルでまちゃぼー選手にアビゲイルとGの両方を出して挑むも敗北……。

私のNCRは0ポイントで終了しました。

あのコンボフィーンドとルーザーズで対戦。

NCR感想 ~葛藤~

怒られてしまうかもしれないませんが、今回はポイントを獲得することができなかったショックよりも、デスプールを突破してついた自信と、Gを大会で使用した経験値を得られたことが嬉しいと感じています。

Gを使用した試合はどれも練習が足らない負け方をしてしまいましたが、もっと練習していれば勝てた試合もあったのだと、手ごたえを感じることもありました。

今回の大会を踏まえて、私はメインキャラクターの変更を真剣に考えることにしました。

アビゲイルは2年間やり続けてきたキャラクターなので、動かし方やキャラ対策は年季が入っていると自負していますが、今回の弱体化によって自信が持てないのも正直な気持ちです。

アビゲイルは私の大好きなキャラクターですが、世界的に嫌われてしまったキャラクターなので弱体化は仕方ありません。本当ならアビゲイルを使用してプロを続けていきたいのですが、私も昔と違って結果を出さなければいけない立場になりました。そこでアビゲイルと同じ系統の性能をしているGに目を付けました。

爆発力があって、コマンド投げを持っていて、Vトリガーが強力、去年のアビゲイルにあった要素を多く持っています。ありがたいことに、Gは飽きが来ないほどにやり込むポイントが多いので、飽き性な私が今でも楽しく対戦ができています。

今後の練習次第でGがメインになる可能性がありますが、アビゲイルを辞めたわけではありません。むしろ「いつか来るアビゲイル復権」までプロとして活動を続けていくためのGだと思っていただければ幸いです。

今回はエントリーの段階から、対戦内容に至るまで反省点が多かったですが、収穫もたくさんあったので、それを糧に今後も頑張っていきます。

以上、NorCal Regionals 2019のゲンバからでした。

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【コラム】ストーム久保の「プロ格闘ゲーマーのゲンバから」

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