00過去にアドベンチャーゲーム『Get Even』を手掛けたThe Farm 51スタジオの新作『Chernobylite』は、チェルノブイリ原発事故の発生をきっかけに、特殊な物質「チェルノブライト」が近辺に発生してしまった架空現代のロシアを舞台にしています。プレイヤーはひとりの科学者となり、どこかへ消えてしまった妻を探しているうちに、裏でうごめく巨大な陰謀を目の当たりにする……といった内容のSFサバイバルホラーRPGです。


プレイヤーは科学者イーゴルとなり、行方不明の妻を探しながら、さまざまな人物と関係を築いていくことになります。自身や仲間となった者たちの身を守るために素材を集め、武器を扱い、拠点を作るのが大事なのはもちろんですが、それ以上に重要なのは「プレイヤーが選択」する場面です。プレイヤーの選択は周囲の状況を変えるだけではなく、事件の真相を掴めるかどうかにもつながっていきます。


仲間になる人物の個性の強さと、意見の違いにより印象に残るシーンや会話が多いおかげで、感情移入の度合いがちょうどよくなっています。与えられる選択肢に関して非常に悩めるようになっているため、RPGとして良質なゲームプレイを体験できます。

ということで、2021年7月28日に早期販売タイトルから製品版タイトルへの移行を果たした本作をレビューしていきます。

『Chernobylite』のポイント

• 素材収集、拠点の設営と刺さる人には刺さるサバイバル要素
• ひとつの選択によりミッションの成否、人間関係、そして運命が変わる。
• シナリオとプレイヤーの決断をうまくリンクさせている良質なゲームプレイ

荒廃した地域で手がかりを探し求める、
SFサバイバルホラーRPG

本作のあらすじとしては、主人公である研究者イーゴルが発電所に侵入を試みるところから物語が始まります。

傭兵2人を連れたイーゴルは、消えてしまった妻の目撃情報をもとに発電所内部へ侵入します。一行が奥深くへと進む中、そこへ突如現れたある人物の襲撃により退却を強いられるものの、イーゴルは諦めることなく新たに仲間と手がかりを集めていきます。


プレイヤーはイーゴルの視点からさまざまな事象を経験していくうちに、この地でいったい何が起きたのか、そしてなぜ妻が消えてしまったのか、その事件と原因を自身の手で見つけていくことになります。

ゲームシステムとしてはFPSを中心としており、主に6つの大きなマップに割り当てられた数多くのミッションをこなします。銃器による射撃やナイフでの攻撃、アーマーでの武装やガスマスク着用による危険地帯の通過など、荒廃してしまったマップを進みながら、手がかりなどミッション遂行に必要な目標物を見つけていきます。

マップ上にはさまざまなアイテムの作成が可能となるクラフト素材が落ちており、それらを集めることでより円滑にミッションを進めることができるでしょう。


マップ上におもな目的を指し示す「◇」アイコンのほか、近づくといろいろな出来事が起こる「？」マークが存在することがあります。

この「？」マーク付近では、人物との出会いや兵士たちとの戦い、素材が豊富に揃った部屋、そして重要なヒントなどが隠されています。いろんなイベントが起こるので、発見できたらすぐ近くに寄ってみると良いでしょう。

FPS要素に加えて、
素材収集や簡単な拠点設営も楽しめる

本作では一日が昼・夜の二部に分かれており、それぞれで活動内容が違います。

昼は主人公を含むメンバーにミッションを割り当て、それぞれの任務をこなしてもらいます。ミッションはメインミッションとサブミッションがあり、メインミッションを進めていくことでストーリーが進行します。サブミッションは、イーゴル以外の進行では自動でミッション成否が判定され、仲間の体調や得意分野、装備しているアイテムによって成功確率が変動します。ミッションに失敗すると怪我を負ったり報酬素材を獲得できなかったりしますが、最悪の場合は死亡してしまう可能性もあるため、ミッションの割り当ては慎重に行いましょう。


また、メインミッションはイーゴルによる遂行でしかストーリーを進めることができませんが、事前に味方を派遣することも可能です。これが成功すると、マップ内に配置される敵兵士の数が減ります。時間としては一日ぶん進んでしまうことにはなりますが、味方のミッションが成功してくれれば、よりスムーズにメインミッションをこなせます。


ミッション中は落ちている薬草やキノコ、電気素材や科学素材など、さまざまな素材は手に入れることができます。こうした素材は拠点クラフト用のアイテムに使用したり、仲間たちの回復や食事にあてたりすることができます。ミッションを進めるために素材収集は必須で、携帯しているPDAを使うことでイーゴルから一定距離までの周囲に存在する素材をハイライト表示することができます。素材はあればあるほどプレイヤーの得となるので、できる限り回収していきましょう。


そしてミッションを終えて帰ってくると、夜が訪れます。

夜は仲間たちと他愛ない会話をしたり、仲間とともに訓練を行ったりすることができます。なかでも訓練は本作で重要な要素で、イーゴルの能力を強化することができます。

仲間たちには戦闘やステルス、素材収集など各々の得意分野が存在しており、銃器のダメージアップや素材収集率のアップ、ステルス状態での移動速度アップなど、どれも取っておいて損はない能力を獲得することができます。新たな仲間が加入したら、どんな能力に秀でているかを調べることをおすすめします。


イーゴル一行が滞在することになる拠点も、プレイヤーの手によって数多くの施設を内部に建設することができます。武器製造・改造のための施設や新たな建造技術の開発、医療品や装備品・アイテムなどの制作、はたまた仲間の生活空間を快適にするためのスタンドライトや空気清浄機、アイテムを収められる倉庫や棚など、建設できるものは多岐にわたります。

ただ、拠点内の状況を最適なものにすることも求められるので、好きなものだけをどんどん作ってしまえ！ というわけにはいきません。クラフト時に電力や空気清浄度、騒音や放射物質への対策といった状況を示すステータスが表示されるので、それらの数値を下回らないようにすることにより、仲間からの信頼度や体力・精神力の回復への影響を最小限に抑えることができます。


さらに、事件の手がかりの収集度合いによっては、イーゴルの自室にある特殊な装置「アリアドネ」にアクセスすることができます。この「アリアドネ」を使用することによって過去の記憶を疑似体験することができ、最終目標への大きな一歩となる情報が得られます。

この過去記憶の疑似体験は真実を掴むための必須工程なので、ミッション遂行中はなるべく「？」マークの箇所を探索したり、メインミッションにおける選択肢を注意深く選ぶ必要があります。そのため選択肢を選ぶ際は、いままで得た情報を洗い直しながら、最適な答えを導き出しましょう。

時には死をおそれない試行錯誤が攻略の鍵となる

ミッション中は敵組織であるNARの兵士たちや、突如虚空から出現するモンスターたちの攻撃を掻い潜り、時には対峙しながら妻であるタチヤナの消息につながる手がかりを探すことになります。敵の狙いはかなり正確なうえ一発ごとのダメージも大きく、避けるのも一苦労です。事前準備をしっかりしていったとしても油断はできません。

イーゴルの体調は体力ゲージと放射能汚染ゲージ、精神ゲージの3つで確認することができますが、敵を一体倒すごとに精神ゲージが下がっていき、最終的には視界の不安定化をはじめとしたデメリットがいくつか生じます。敵を倒すごとに精神ゲージが削がれてしまうので、どれだけ静かに行動し、いかに見つからずにやり過ごす、もしくは最小限の戦いをしていくかが生存への鍵となります。


本作では体力がゼロになってもゲームオーバーにはならず、攻撃を加えてきた敵の種類によっては「捕縛」という形で捕らえられることになります。捕縛された場合、イーゴルはNAR軍前哨基地に送り込まれ拷問されてしまいます。

注意すべき点として、この捕縛という状況はミッションの成否に関わらずゲーム内時間の一日が過ぎてしまうため、再度はじめからミッションをこなさなくてはいけません。また、装備品はすべて奪われ、基地内のどこかに隠されてしまいます。装備品が置いてある場所は基地へ訪れるごとに変わるため、決まった攻略ルートはありません。敵兵士の動向に注意しながら話を盗み聞きしてみましょう。


装備品を回収でき次第、基地から帰還できますが、この基地内でしか手に入らない情報などもあるため、もし訪れることになった場合は周囲を注意深く探してみると良いでしょう。ただしゲームプレイ全体で見た場合、タイムリミットまでの日数は決まっているので、何度も訪れるわけにはいきません。準備を万全にしたうえで臨みましょう。

一方、モンスターからの攻撃や捕縛された基地で再度体力をゼロにされてしまうと、イーゴルは死亡してしまい、ペナルティとして所持品の中からランダムで選ばれたものを失うことになります。それだけではなく、死亡したあと大きな出来事が始まります。この点に関してはぜひ実際に遊んだときに感じてほしいポイントなので、本レビューではあまり触れないようにします。

ひとつだけ言えるとすれば、この大きな出来事はあくまでもペナルティではない、ということ。とあるアイテムを複数所持しているとアクセスできる何かがあること。そして「死は決して終わりではない」、ということを伝えておきます。ぜひご自身の目で確かめてください。

最終目標を遂げるため、
ひたすら準備を進めるイーゴル一行

拠点内にあるボードを見ることで、最終目標である発電所侵入ミッションに関する進捗情報が確認できます。ここでは、イーゴルがいままでに集めた仲間や手がかり、道具などが掲示されており、プレイヤーの判断で最終ミッションを開始することができます。

面白いのは、この最終ミッションがどのような進捗状況であっても開始できる点です。仲間の数や手がかりなどが少ないうちは、発電所への侵入経路などが限られてくるため厳しい戦いを強いられますが、一種のハードモードのようなチャレンジとして考えれば、攻略することも可能でしょう。もしかするとその時々の状況でしか見られない展開もあるかもしれません。チャレンジしたい方はぜひ挑戦してみてほしいです。

シナリオとプレイヤーの行動をリンクさせた、
良質なゲームプレイが楽しめる

本作のプレイを進めていけばいくほどに、プレイヤーは与えられる決断を躊躇することになるでしょう。それほどに各キャラクターへの感情移入の度合いが浅すぎず深すぎず、ちょうどよいバランスで成り立っています。その結果、自身にとって有益である事件の真実ならびにその手がかりを取るのか、それとも仲間や出会った人たちと築いてきた信頼関係を取るのかを選ばなければなりません。

面白い点としては、意見が噛み合わないと思ったメンバーを自身の手で外すこともできる点です。その判断が最終的にどんな結果をもたらすのかを体験するというのも、本作の醍醐味のひとつです。


物事のひとつひとつに繋がりがなさそうだったとしても、それぞれがどう絡んでいくのかは予想できず、なにげない選択が最終的に思いも寄らない結果を生み出すこともあります。そうしたひとつの選択が生み出す多くの結果とそれに伴う感情を存分に楽しめる一作になっているのです。


マルチエンディングを採用している本作は、プレイヤーのプレイスタイルによって体験が大きく変わることでしょう。ご自身の手でイーゴルがたどる探索の旅路と、妻を探し出すという最終目標の遂行をぜひ体験してみてください。

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●タイトル：Chernobylite
●ジャンル：SFサバイバルホラーRPG
●発売元：The Farm 51
●開発元：The Farm 51
●プラットフォーム：PC（Steam）
●発売日：2021年7月28日
●価格：3699円[税込]
●必須スペック
OS: Windows 7 64bit
プロセッサー: Intel Core i5-2500K CPU以上
メモリー: 8GB
グラフィック:NVIDIA GeForce GTX 660または AMD Radeon R7 260
ストレージ: 40GB
●推奨スペック
OS: Windows 7 SP1 /8/10 64bit
プロセッサー: Intel Core i7-4790K
メモリー: 16GB
グラフィック: NVIDIA GeForce GTX 970 または AMD Radeon RX 480
ストレージ: 40GB
●公式サイトURL：https://www.chernobylgame.com/
●ダウンロードサイトURL：
Steam https://store.steampowered.com/app/1016800/Chernobylite/