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『Back 4 Blood』Steam版レビュー:問題を抱えつつも、クラシカルな土台を保ちつつ、ゲームプレイの拡張に成功している

『Back 4 Blood』は、Turtle Rock Studiosが開発を務める、伝説的ゾンビシューター『Left 4 Dead』シリーズの血脈を継ぐ続編だ。ゾンビで溢れかえった街を個性豊かなキャラクターで銃をぶっ放しながら駆け抜けるクラシックさの上に、ゲームプレイが変化するAI Directorによって高いリプレイ性を持っている。加えて、新たなカードシステムの導入によって、ただの続編に留めない姿勢が見られる作品となっている。


『Back 4 Blood』のポイント
  • プレイ環境にアクセントを与えるAI Director
  • 様々なプレイスタイルを許容するカードシステム
  • 避けて通れない表現規制問題

B級――でもそれがいい!

本作は、リドゥン(いわゆるゾンビ)が溢れかえり文明が崩壊した世界を舞台に、個性豊かなキャラクターたちがゾンビをぶっ倒しながら立ちはだかる難関をクリアしていく協力型のFPSだ。B級ゾンビモノとして、お約束で想像しやすい物語が展開される。


本作の売りであるリプレイ性を考えると、ストーリーはある程度の動機になれば良い。薄っぺらい物語は最初の食感として興味をそそられるものに留まっているのも、肝であるゲームプレイを邪魔しない程度のものになっているという点で、ある種の「ちょうど良さ」と言えるだろう。

また、シチュエーションに合わせて様々なロケーションが見られ、フェリーや農場、学校から研究施設まで、物語を通して転々としていくのは退屈知らずで視覚的にも楽しい。

それぞれのレベルデザインは非常にシンプルだ。一見すると複雑に見える場面もあるが、一度プレイすればもう迷うことはないようなデザインに留まっている。基本的にやることはスタート地点からゴールへゾンビを倒しながら突き進むことで、明瞭だ。そのシンプルのうえで上手く作用するのが「AI Director」と「退廃カード」だ。

同じレベルでも別のプレイフィールを

「AI Director」とは『Left 4 Dead』シリーズから受け継がれる、プレイヤーのアクションに応じてゲーム内容を変化させるシステムである。そして「退廃カード」は出現するリドゥンに変化を加えるほか、定められた条件をクリアしてレベルをクリアすれば銅貨が得られるといった、レベルにアクセントを加える役割を持っている。

これらのシステムによって同じレベルであってもプレイするたびに遊び心地が変わるため、マンネリ化しにくく、リプレイ性が高まるというわけだ。主に、ただのゾンビと戦っている中で突然現れる変異体が、ゲームプレイを彩っている。変異体は突進してくるものから拘束してくるものまでさまざまで、拘束した仲間を助けるほか、チームでまず変異体を倒しにいくなど、Co-opプレイとしての側面を強く感じさせる。


ゾンビシューターに成り立つさまざまな“楽しさ”

FPSというジャンルの楽しさはなんだろうか? ひたすら撃ったらゲージがもりもり減っていく楽しさ、敵がバタバタと倒れていく爽快感、単発銃で弱点を正確に狙い撃つ満足感など、さまざまだと思う。ゾンビという題材である以上、本作でもこれらの楽しさを存分に味わうことができる。

だが、本作の魅力はそれだけではない。それが「立ち回りによる快感」だ。本作には3つの難易度が用意され、ノーマル的難易度の「ベテラン」以上の難易度は敵の多さや食らうダメージ、フレンドリーファイアが有効など、シンプルに難しくなっている。

これをクリアするためには4人の連携が必須であり、フレンドとただゾンビをなぎ倒していくだけではなく、「前回はこう負けたから、対策として別のアイテムを持っていこう」といった戦術による立ち回りや、どの順番で敵を撃つかなどの咄嗟のコミュニケーションによる連携など、ストラテジー的な楽しさがある。


わらわらと出現するリドゥンを倒す楽しさと、仲間と連携する楽しさが、変化するゲームプレイが組み合わさって、本作の楽しさは唯一無二のものになっているのだ。

プレイスタイルの幅を広げるカードシステム

『Left 4 Dead』シリーズからの最大の変化は、「カード」システムにある。拠点である「ホープ要塞」では、カードデッキを組むことができる。カードは主にマルチプレイをクリアすることで得られる「物資ポイント」を消費することで入手。スタミナや体力の上昇といったシンプルなカードから、弾薬の総量を+75%するが回復系アイテムが使用できなくなるといったリスキーなものまでさまざまだ。


プレイヤーはこれらを自由に選んでデッキを作り、ミッション開始時にデッキの一番上部にあるカードがスターターとして有効化され、次のレベルへの進行やコンティニューの際に複数枚の中からドロ―していく。

デッキを組むこのシステムは、ロールとも呼べるゲームプレイを実現する。特定の武器や弾丸のダメージを上げることで攻撃に特化させることはもちろん、HPや防御力を盛ってタンク的な役割に徹したり、蘇生速度や味方のHPを底上げするビルドでヒーラーになったりとサポートに徹することもできる。さまざまなカードをバランス良く盛り込んでフレキシブルに対応できるビルドを組んでも良い。プレイヤーそれぞれが持つ「求めるゲームプレイ」を手助けしてくれるシステムになっている。

ただし、マルチプレイの後半まではカードの種類は少なく、この楽しさは感じにくいのは残念だ。

避けられない問題と疑問

マルチプレイを本流とするタイトルでありながら、疑問に思える仕様が目につく。まずマルチプレイで行うキャンペーンとソロキャンペーンが切り離されているという点。前述のカードデッキはソロとマルチでは別のものを設定することになる(代わりに、ソロキャンペーンデッキは最初からすべてのカードが開放されている)。

カードを開放するために必要な「物資ポイント」もソロキャンペーンではまったく手に入らない。極端な話、ソロで少し進めようとプレイしても、マルチプレイにおける恩恵はなにもない(自らの腕は上がるかもしれないが)。

さらに本作に登場するキャラクター合計8人のうち4人は、マルチプレイであるレベルをクリアしないと開放されない。

また、クイックマッチとキャンペーンのマッチングの違いがわかりにくいという点や、技術的な問題かは不明だが、マッチング時間が遅いほか、botが含まれる条件が不明瞭など、システム面での完成度は未熟な部分がある。幸いこれらは積極的なアップデートで改善されつつある。


そして、避けて通れないのは表現規制の問題だ。北米版だとリドゥンは射撃した部位が欠損する。しかし日本版では、基本的にこの欠損表現は規制されている。これによる「ぶっ飛ばす」という爽快感の低下は明白であるうえ、変異体が吹っ飛ばないことによって大きな身体がマップ上に残って邪魔になる、という問題もある。ある程度表現をマイルドにしつつも気持ちよさはそのまま、というバージョンを作るだけの時間や予算がなかったのかもしれないが、ファンとしてはオリジナルのまま遊びたいという気持ちはある。こうした表現規制問題はたびたび話題にあがるが、業界を巻き込んで粘り強く議論を続けていくほかなさそうだ。

伝説へのポテンシャル

クサイセリフを吐きながらゾンビをなぎ倒し、変異体が出てきたら大げさにリアクションするキャラクターたちは、まさにB級そのものだ。レベルをひとつずつクリアしていくシンプルなゲームデザインや、さほど複雑ではないレベルデザインも、ゲーム史でさんざん使われてきたものであり、もはやファンサービスとも言える。

シンプルでわかりやすい土台の上に、AI Directorや退廃カードによる環境の変化をつけた唯一無二のゲームプレイと、カードビルドによる自らのプレイスタイルの自由度が絶妙に相まっている。本作の海外レビューを見てみると、「革新性」が足りないと評する声が見られたが、本作にそんなものは必要ない。クラシックを丁寧になぞった上でそれを邪魔しない程度のカードシステムによる「ちょうどよさ」は評価すべきだ。


『Left 4 Dead』シリーズは2008年の発売以来、10年以上親しまれる伝説的なゲームだ。Steamの大規模なセールでは毎度「とりあえず買っておけ」と言われるほどであり、シュータージャンルの入り口として相応しい手軽さから、様々なシューティングゲームへ流れていったプレイヤーのたびたび帰って来るホームでもある。

『Back 4 Blood』が10年後、そのまた先へ語り継がれる伝説を作ることができるかは、今後のアップデートにかかってくるだろう。AI Directorと退廃カードによる環境のバリエーションと、カードデッキによってさまざまなプレイスタイルを確立させていくカスタム性の高さは、伝説へのポテンシャルとなり得るだろうか。本作がコミュニティにどう受け止められ、どのようなゲームになっていくのか見守っていきたい。

BACK 4 BLOOD TM (C)Turtle Rock Studios, Inc. All Rights Reserved. BACK 4 BLOOD TM and the BACK 4 BLOOD TM logo are the trademarks and/or registered trademarks of Slamfire, Inc. throughout the world. Turtle Rock Studios(R) and the Turtle Rock Studios(R) logo are the trademarks and/or registered trademarks of Turtle Rock Studios, Inc. throughout the world. Published by WB Games Inc. All other trademarks are the property of their respective owners. All rights reserved.

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●タイトル:Back 4 Blood
●ジャンル:協力型FPS
●発売元:ワーナーゲーム
●開発元:Turtle Rock Studios
●プラットフォーム:PC(Steam)、PlayStation 5、PlayStation 4、Xbox Series X|S、Xbox One
●発売日:2021年10月12日
●価格:
通常版 8580円[税込]
デラックス・エディション 1万1550円[税込]
アルティメイト・エディション 1万2430円[税込]
●必須スペック
OS: Windows 10 64bit
プロセッサー: Intel Core i5-6600 3.3GHz または AMD Ryzen 5 2600 3.4GHz
メモリー: 8GB
グラフィック: NVIDIA GeForce GTX 1050 Ti または AMD Radeon RX 570
ストレージ: 40GB
●推奨スペック
OS: Windows 10 64bit
プロセッサー: Intel Core i5-8400 2.8GHz または AMD Ryzen 7 1800X 3.6GHz
メモリー: 12GB
グラフィック: NVIDIA GeForce GTX970 または AMD Radeon RX 590
ストレージ: 40GB
●公式サイトURL:https://back4blood.com/ja-jp
●ダウンロードサイトURL:
Steam https://store.steampowered.com/app/924970/Back_4_Blood/
【連載】Alienware Zone PCゲームレビュー<2021年版>

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