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『Age of Empires IV』レビュー:十数年ぶりに復活したナンバリング最新作は、シングルプレイが大幅に拡張

2021年10月30日にリリースされた、16年ぶりのナンバリング最新作となるRelic Entertainment開発、Xbox Game Studios発売の人気RTS『Age of Empires IV』(エイジ オブ エンパイアIV。以下、『AoE4』)のレビューをお届けします。2017年に発表され、4年もの開発期間を経てようやく発売された本作は、過去作の持ち味をそのままに現代的なグラフィックや練り込まれた歴史考証を持っています。


『Age of Empires IV』のポイント
  • 歴史考証もしっかり! シングルでも楽しめるキャンペーン
  • 良くも悪くも操作量が勝敗を左右するマルチプレイ
  • 完成度は高いが、操作やシステムの古さをどう評価するか

クラシックなRTSの感触そのままに
美麗なグラフィックとなった『AoE4』

本作がナンバリングタイトルとして十数年ぶりに登場した作品であることから、ある程度ジャンルがどのように歩んで来たかを簡潔に解説します。

初代『Age of Empires』はマイクロソフト傘下のEnsemble Studiosによって開発され、1997年にPC向けに発売されたRTSです。紀元前から紀元後前後の古代を中心にエジプトやヒッタイト文明などが登場するタイトルでした。

▲グラフィックが刷新された『Age of Empires Definitive Edition』

1999年に発売され、ある意味シリーズの定番を作り上げたナンバリング2作目の『Age of Empires II』では中世が舞台。2005年発売の『Age of Empires III』では、18世紀前後の大航海時代が舞台となっていました。

しかしながら、Ensemble Studiosは長年歴史をテーマとするRTSを開発してきたため飽きてしまいます。その後MMORPGなどを開発するものの、最終作として『Halo Wars』を残しチームは解散してしまいました(この顛末についてはゲーム開発ノンフィクション本「血と汗とピクセル」で詳しく書かれている)。

後のシリーズとして、Free-to-Playの『Age of Empires Online』を2011年にリリースするも、2014年にサービス終了。2017年に『AoE4』が発表されるまで、2013年に『AoE2 HD』がリリースされるなど、過去作を現行OSに対応する形でフランチャイズは存続していました(それ以降も、『AoE』3作目まで現行OS向けに対応させた『Definitive Edition』がリリース)。

そのような経緯を経て発売された最新作『Age of Empires IV』は、ユニットを単体で操作する形式のリアルタイムストラテジーゲームです。中世における各文明の歴史を、現実の土地と照らし合わせながら追体験するチュートリアルを兼ねたシングルプレイヤーと、PvEで戦えるスカーミッシュ、1vs1から4vs4で戦えるマルチプレイヤーを備えています。キャンペーンの難易度は4段階です。



発売時に実装された文明はイングランド、中国、フランス、神聖ローマ帝国、モンゴル、ルーシ、デリースルタン国、アッバース朝の8つ。文明にはそれぞれ特徴があり、イングランドでは強力なロングボウ(弓兵)、モンゴルでは食料となる畑を耕せない代わりに移動可能な町の中心を備えているなど、それぞれ強みと弱みを持っています。

▲ゲーム自体は日本語化されているのに公式サイトのチュートリアルが日本語化されていない

▲ゲーム内のチュートリアルは基本操作やテクニックを教えてくれる

グラフィックとしては、フォトリアル路線でなく『AoE3』のビジュアルを発展させたようなミニチュア感溢れるビジュアル。各文明のユニットは、これまでのシリーズ同様にカメラを引いても一目で各陣営のユニットが見分け付くようにリアリティを保ちながら色分けされています。

基本的な軍事ユニットは、槍兵は騎兵に強く、騎兵は弓兵に有効で、弓兵は槍兵に射程のアドバンテージがある三すくみとなっており、それぞれの兵種に対して得意/不得意が明確に出ています。

▲カメラを引いた状態でも赤青陣営の剣士と槍兵、弓兵など区別が付くようになっている

『AoE4』のシステムは、操作体系や資源管理も含めて基本的に『AoE2』と同じですが、次の時代に進むためには建物の建築が必要など、微妙に現代に合わせた調整(気付かない細かい部分での簡略化)がなされています。

操作だけでなく基本システムもほぼ変わらず、ホットキーでそれぞれの操作をショートカットで実行することや、ユニットを複数選択し「Ctrl」+フルキーの数字でそれぞれグループ化できることも含めて過去作そのままです(しかしながら、複数種類のユニットをまとめて選択すると「弓兵」や「槍兵」などそれぞれ選択できる)。資源も食料と木材、石材、黄金と同じ4種類で、資源を採取できる地域も変わっていません。

▲次の時代に進む時にはそれぞれ歴史的建造物を作る必要があり、どちらを選択するかで効果の違いも出てくる

▲Ctrl+フルキーの数字でグループ化できるようになるが、基本的な操作はほぼ過去作と同じ

ゆえに、カメラ移動はマウスカーソルを画面端に寄せる以外では矢印キーを用いるしかなく、キーアサインを変更できるとはいえ、あまりにも過去作とほぼ同様の操作体系は、2021年の現在としては遊びにくさを感じてしまいます(昔の感覚で遊べるとはいえ、矢印キーを使わせるのはレガシーすぎる)。

他にも、移動指示を出したAIユニットが地形に引っかかり行動を止めてしまうことや、自動迎撃などが原因で勝手に戦線を広げて損害が大きくなってしまうなど気になる部分もあります。

歴史考証と向き合った『AoE4』
シングルでも楽しめる重厚なキャンペーン

本作のシングルキャンペーンモードは各文明のチュートリアルを兼ねており、例えばノルマン人キャンペーンは『AoE4』の操作方法とイングランド文明の特殊性を習得することに終始しています。ゲームプレイ中に挿入される解説はとても多く、ゲームプレイにおいてどうすれば有効な手段となるか、操作方法を含めて教えてくれます。

また、初回起動時にプレイすることになるチュートリアルは、ユニットの効率的な生産方法や時代を進められる「民族の象徴」の効果(人が多くなければ建築が進まないなど)や、槍兵/騎兵/弓兵の三すくみ構図など、ゲームプレイに大切な基本的なことを教えてくれます。他にも、システムの細部をパズル的な問題に挑戦という形で覚えられる「孫子の兵法」も良い施策です。


▲それなりに難易度は高いが挑戦する気持ちにさせてくれる

本作のキャンペーンの語り方は、その時代の人物の回想から語る『AoE2』や、オリジナルストーリーを描いた『AoE3』と異なり、史実をベースに舞台となる現実(現代)の土地を映しながら、CGによるキャラクターを重ね合わせて歴史的な出来事を説明するドキュメンタリー風です。


▲現代の映像に兵士たちがシルエットとして描かれるため、会戦スケールがわかりやすくなっている

とくにキャンペーンの難易度は初心者でも楽しめるように、味方の増援や資源が配置されていることから詰まりにくく、同時に戦略を考える必要性も教えてくれる難しさも備えています(もちろんシナリオが進めば難しいミッションもある)。


キャンペーンのシナリオをクリアすると、解説映像の他に『AoE4』登場の文明にまつわる歴史解説ドキュメンタリーがアンロック。2~3分の映像ですが、そのクオリティは高く、本作に登場する武器の威力やモチーフの意味合いを知れるようになっています。この歴史考証について、開発者は「教育ゲームとしての要素に注目して欲しい」とメディアインタビューで答えられるほどの精度です。

▲他にもシナリオ開始時に流れる解説映像の文字は全て日本語化されているほどローカライズは丁寧

▲アンロックできるドキュメンタリーの一部。ゲーム内では何気なしに眺めている剣士の鎖帷子の開発や効果もわかる

▲ドキュメンタリーはヨーロッパだけでなく、モンゴルなどアジア方面も含めて解説は充実している

本作のキャンペーンは、歴史考証の深さをアピールするだけでなく、ダイナミックに変化する時代を味わえるほどの完成度を持っています。2021年という時代に則したモダンで素晴らしい仕上がりです。

昔と変わらず操作量(APM)が勝敗を左右する
マルチプレイ

対人戦やスカーミッシュにおいて本作は、過去作の『AoE』シリーズと同じく町の人を増やし、資源を集めて兵を生産すると共に文明のレベルを「暗黒の時代」→「領主の時代」→「城主の時代」→「帝王の時代」と発展させ、敵対するプレイヤー/AIを倒す(もしくは「民族の象徴」や「聖地の占領」によって勝利)というのは変わっていません。

町の人や兵士などは、ある程度自動で迎撃や仕事をしてくれますが、基本的に指示を出さなければ動かないため、様々な仕事を行わせる操作量(APM)が重要です。

▲兵士の質に圧倒され頑張って築き上げた町が破壊され敵チームに蹂躙されるのは正直悔しい

筆者は『AoE』シリーズの過去作に触れたのが遅かったため、『AoE2』や『AoE3』は知り合いとの間での初心者同士における対戦を除けば、ほとんどシングルプレイでしか体験したことしかありません。

また、他のRTSのマルチプレイでも操作量の差に負けてしまうことが多々ありました。『AoE4』もその例に漏れず、筆者が数回経験した3vs3や4vs4の試合では、敵チームがものすごい勢いで発展して倒されてしまう様を何度も経験しました。

▲操作量の違いを見せつけられたタイムライン

一方で『AoE4』が登場する前に、シリーズ過去作や他のRTSで操作量を磨いてきたユーザーは、新作においても過去作とほぼ変わらずに対応できるため、存分にその力を発揮できるようになっています。

マルチプレイの対戦モードについてのチュートリアルはゲーム内でほぼ存在せず、基本的な解説が掲載されている公式サイトも日本語表記がありません。覚える操作も多くなるため、正直に言えば初心者がこの世界に入っていくのは難しいと言わざるを得ません。

完成度は非常に高いため、
システムの古さを無視できるかで変わる評価

『AoE4』は、すべてを操作するクラシックなRTSそのままの面白さを現代に復活したことが良い点である一方で、ある程度『AoE2』より簡略化されているとはいえ、古さと共に煩わしさも強く感じてしまう悩ましいゲームでした。

RTSはリアルタイムストラテジーの略称で“ストラテジー”と名が付いていますが、事実上多量にマウスやキーボードを駆使してユニットに指示を与える操作量(Actions Per Minute、APM)が重要な、アクション性の高いゲームです。もちろん『Age of Empires』シリーズもその例に漏れません。


そのため、対人戦を含めたRTSでは、ゼロ年代において戦闘でなく内政(資源採集や発展、生産)が簡略化されてきた歴史があります。同社が手掛けた『Company of Heroes』、Eugen Systemsの『Wargame』シリーズでは内政が事実上存在せず、マップを占領することで資源を稼げていたのです。


それらの現在における到達点がMOBAや、時間の一時停止と部隊操作の自動化を導入した『Hearts of Iron IV』であると捉えられますが、その道に入れなかったRTSは多くありません。その流れの中で2021年に登場した『Age of Empires IV』は、操作体型や舞台となる時代も『AoE2』とほぼ変化がないように思える、RTSの簡略化の歴史を再びリセットしたような作品だと思いました。

それでも『Age of Empires IV』は、シングルキャンペーンの質においては、歴史的な考証や挑戦しやすい難易度、そしてドキュメンタリーが付属していることから非常に高く、マルチプレイに関してもモンゴルTCラッシュが早々に対策されていることも含めて、完成度が高いRTSです。Xbox Game Passにも対応していますし、中世の時代に興味が沸く方ならシングルプレイだけでもプレイしておく価値のあるタイトルです。

Copyright 2021 Microsoft Studios. All Rights Reserved. Age of Empires IV is a registered trademark of the Microsoft group of companies.

●タイトル:Age of Empires IV
●ジャンル:リアルタイムストラテジー
●発売元:Xbox Game Studios
●開発元:Relic Entertainment
●プラットフォーム:PC(Steam Microsoft Store)
●発売日:2021年10月29日
●価格:
通常版 Steam版7590円[税込] / MS Store版7600円[税込]
デジタルデラックスエディション 9680円[税込]
※Xbox Game Pass対応
●必須スペック
OS: Windows 10/11 64bit
プロセッサー: Intel Core i5-6300U または AMD Ryzen 5 2400G
メモリー: 8GB
グラフィック: Intel HD520 または AMD Radeon RX Vega 11
ストレージ: 50GB
●推奨スペック
OS: OS: Windows 10/11 64bit
プロセッサー: Intel Core i5 3.6GHz または AMD Ryzen 5 1600
メモリー: 16GB
グラフィック: NVIDIA GeForce GTX970(4GB) または AMD Radeon RX 570(4GB)
ストレージ: 50GB
●公式サイトURL:https://www.ageofempires.com/
●ダウンロードサイトURL:
Steam
Microsoft Store
【連載】Alienware Zone PCゲームレビュー<2021年版>

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