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『Road 96』Steam版レビュー:若者たちの決死の旅が独裁主義国家を変える!? 同じ体験がありえないレベルでプレイヤーの選択を重んじる珠玉のアドベンチャー!

アナタは何かから逃げ出したいと思ったことはないだろうか。今ある場所から離れたいと思ったことは? 速く走らなければ最後の電車が行ってしまう、そんな気持ちでいたことはないだろうか。

本作はDigixartとRavenscourtによって制作された一人称視点の選択型アドベンチャーゲーム『Road 96』。特徴的なのは会話での選択肢、取るアクションによってストーリーの分岐が数え切れないほどのパターンにわたって変わるという、非常に強くナラティブベースの体験を意図したデザインとなっている点だ。


内容は、1996年の独裁主義国家から国境を越えて脱出する若者たちを主人公として、その道のりを描くというもの。若者たち……と書いたが、基本的に一人旅。一度の旅を1つのエピソードして数え、合計7エピソードが待っている。

ひとつの旅で無事に脱出できることもあれば、命を落とすこともある。何より7つの旅路が終わったあと、独裁主義国家の政治がどうなるのか、その結末に関与することができて、結果的にエンディングの内容も変わる。そんな本作のレビューをお届けしたい。

『Road 96』のポイント
  •  プレイヤーの選択をなにより重んじるゲームプレイ
  •  分岐がプレイヤー固有のためハズレクジを引く可能性がある
  •  日本語翻訳は(現状)微妙な出来映え

国外へ脱出する決死の旅路は
さまざまな出会いがある

ゲームプレイでは冒頭でアンケートのような問答が始まる。一人旅が好きだとか自由が好きだとか、そういったことに答えていき、最初の若者の旅路が始まる。

▲出会いの1つ

画面は一人称視点で、ステージ制と言い換えてもいいだろう、各シーケンスで主要人物と出会ってイベントをこなしては次の旅路に向かう。クルマのキーを盗んでいればクルマで進めるし、そうでない場合はお金が許せばバスだってあるし、ヒッチハイクでもいい。とにかく北へ向かい、国境を越えるのだ。

主人公は匿名の少年や少女、つまり若者たちで、本作は独裁主義国家からの彼らによる脱出の旅を描いている。特徴的なのは各種選択肢による分岐で、自分の政治的立場を表明することによって国家の根幹が揺らいでいく。つまり、革命もあり得るわけだ。

▲主要人物の1人、ゾーイ

主要人物とは、7つの旅路に絡んでくる「6名と2人組、合わせて7組」の人物のことだ。彼らが各シーケンスに関わってくる。誰とどの順で何回出会うかはランダムで、シーケンスで起こることは具体的にはミニゲームや選択肢を含めた問答だ。

▲旅路には軌跡が描かれる

なお、各シーケンスでは90年代などに流行った楽曲のタイトルが表示される。注意したいのはSteamのストアページにある「90年代のヒット曲満載のサウンドトラック」というのは誤った情報である点だ。ヒット曲はシーケンスのタイトル名に留まっており、ゲーム本編の楽曲はオリジナルのものが使用されている。

しかし、音楽の使い方はシーケンスが変わるたびに音楽も変わって、ミスマッチも起こしていないので、このディレクションは巧みだ。

▲これは主要人物のうちのジョンという人物。とある密謀に関わっている

また、本作にはミニゲーム集とも呼べる側面があるが、筆者が最初に体験したのはサッカーのミニゲーム。左右に振れるインジケーターのちょうどよいところでボタンを押してPKを決める、というもの。本作ではこういったミニゲームが幾度となくあらわれる。銃を突きつけられ、相手のテンションゲージを振り切らせないように会話を誘導するものすらある。

▲突然始まる「強盗になれるかどうか」のクイズ

数々のミニゲームがあるが陳腐なものではなく、各シーケンスのプレイ濃度を高めている。たとえば主要人物の「ゾーイ」に言われてトランペットを吹くシーンなんて、顔がほころぶようなエモさがある。

▲トランペットを吹くミニゲームは音ゲー

プレイヤー独自の体験が生まれるのは
良くも悪くもある

本作はプレイヤーが何を選んだかでも分岐するが、そもそも1つのシーケンスから次のシーケンスへ移動した後でなにが起こるかは未知で、プレイヤーごとにまったく異なった体験が出来上がる。それこそが本作の何よりの特色だ。


だが、これには良い側面もあれば悪い側面もある。とても感動的なストーリーラインになるプレイヤーもいれば、ちぐはぐでいまいち連続性を感じ取れず興ざめするプレイヤーも現れうる。

▲主要人物にも物語があり、それを運良く追っていければ作品の深みも感じられる

そのくらいなにが起こるか未知で、プレイヤー独自の体験になるのは保証できるが、当たりを引くかハズレを引くかは運次第で、プレイヤーごとに評価が分かれるだろう。

ただし各シーケンスの密度、会話の濃厚さや選択肢のおもしろさは揺るがないので、この点は、奇妙な言い回しになるが安全に評価できる。

翻訳に難あり……!?

本作は日本語訳に難があり、ストアページには「独裁主義国家ペットリア」とあるがインゲームでは「ペトリア」と表記されている。そのほかにも男の子の一人称が私になったり僕になったりちぐはぐで、「~~のよ」などと書かれてもいる。

意味を掴みづらいほどの翻訳には出会ってないが、世評を見るとどうにも意味を取れないほどのシーケンスもあるようだ。この点に目をつむれればよいが気になる人にはつらい体験となるだろう。

▲アレックスは男の子で普段はこんな言葉遣いしない上に、重要なシーケンスでこれ

筆者は幸いにしてそこまでひどい翻訳には出会わなかったため本作を推しているが、反論もあるはずだとも思う。スタッフロールを見ると日本人がローカライズしていないこともわかった。できればネイティブの日本語話者に訳してもらいたかったところだ。

最後に浮かび上がる岐路はプレイヤー次第

あなたはなにかから逃げ出したいと思ったことはないだろうか。今ある場所から離れたいと思ったことは? 速く走らなければ、最後の電車がもうすぐ行ってしまう、そんな気持ちでいたことはないだろうか。

▲7つのエピソードが終わるころにはこういった軌跡が見られる

本作はそんな若者たちによる逃避行を描く。最後に浮かび上がるのはプレイヤー個人に委ねられた独自の道のりとなる。良い旅となるか悪い旅となるかは、現実に運の要素が絡むように、本作もまたその通りだ。グッドラック、良い旅……脱出を……!


(C)2021, Digixart Entertainment

●タイトル:Road 96
●ジャンル:ナラティブ駆動型アドベンチャー
●発売元:Digixart、Ravenscourt
●開発元:DigixArt
●プラットフォーム:PC(Steam、Epic Games Store)、Nintendo Switch
●発売日:2021年8月16日
●価格:2196円[税込]
●必須スペック
OS: Windows 7 または 10
プロセッサー: Intel Core i5-4460 または AMD Ryzen 3 2300U
メモリー: 8GB
グラフィック: NVIDIA GeForce GTX 1060 または AMD RX 5700
DirectX: Version 11
ストレージ: 15 GB
●推奨スペック
OS: Windows 10
プロセッサー: Intel Core i5-8600K または AMD Ryzen 5 3600XT
メモリー: 16GB
グラフィック: NVIDIA GeForce RTX 2060 Super または RX 5700XT
DirectX: Version 11
ストレージ: 15 GB
●公式サイトURL:https://www.road96.com/
●ダウンロードサイトURL:
Steam https://store.steampowered.com/app/1466640/Road_96/
Epic Game Store https://www.epicgames.com/store/ja/p/road-96
【連載】Alienware Zone PCゲームレビュー<2021年版>

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