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『三國志14 パワーアップキット』 ファンのための改良要素ばかりを詰め込んだ拡張パック! 【オススメPCゲームレビュー】

2021年リリースの注目PCゲームをご紹介する連載「Alienware Zone的おすすめPCゲームレビュー」。

日本で歴史を題材にした作品は数あれど、『三国志』(正確には『三国志演義』)と戦国時代の人気は別格であろう(歴オタ度が深刻化するとさらに源平合戦や南北朝時代(太平記)なども入ってくる)。

その人気の確立に貢献してきたのが、コーエーテクモゲームスの2大歴史シミュレーションゲーム三國志』シリーズであり、『信長の野望』シリーズなのである(なお『源平合戦』というゲームも1994年に発売されている)。そして2020年1月16日には『三國志』シリーズの最新作『三國志14』が、年末の12月10日には拡張パックである『パワーアップキット』が発売された。

今回ご紹介するのは、この『パワーアップキット』。本編である『三國志14』についてもっと知りたいという方は、以前の記事を参照していただきたい。

■『三國志14』シリーズ35年目、守りに入らない積極性が生み出した“駆け引き”要素が楽しい男前な最新作【オススメPCゲームレビュー】

今回は新作“風”ではなく、
ファンのための拡張パック


コーエーテクモゲームスの歴史シミュレーションシリーズではおなじみの“パワーアップキット”。それ単体ではゲームとして動作しないが、本編に新たな機能やデータを追加できる拡張パックである。ただ近年の作品では、よりお得感を求める風潮もあってか、機能拡張というよりはほぼ新作に等しいほどの内容変更をもたらすものが多かった。たしかに価格を見ると安い新作ソフトが1本買えるくらいの値段である。そのため、ファンの間でも意見が分かれるところではあった。

そんな中、今回の『三國志14 パワーアップキット』は、拡張パックとしてはまさに“正統派”な内容となっている。

メインは、AIのアルゴリズムを含めたバランスの調整、従来のゲームシステムを継承・拡張した新要素(コマンド、戦法など)と遊び方に変化をもたらす新要素(地の利、異民族、諸外国との交易)の追加。そして、本編を遊び尽くしたプレイヤー向けのショートシナリオ“戦記制覇”が新モードとして追加されているが、こちらは短時間でプレイ可能で、かつプレイヤーの攻略テクニックを競う“やり込み要素”、本編のおまけとも言うべきものである。

この内容に「コスパが~」と文句をたれる人もいるだろうが、『三國志14』をン百時間かけて遊んできたプレイヤーにとっては、今まで培ってきたノウハウはムダにならないし、改善点もかなり評価できるものなので感謝しかない。新作同等の構成で作られた作品も会社の戦略としてありなのかもしれないが、次回作もぜひこれでお願いしたい。

メリットだらけの強い味方!
異民族参戦!

ここからは『三國志14 パワーアップキット』で変わったところについて説明していく。

一番大きな変化としては、“地の利”の導入とそれに伴う“異民族”を利用した戦術が可能になったことだろう。

今回は全国が17の州(地域)に分けられている。各州には1~5の都市が配されており、その過半数を支配下に置くと、州の“地の利”という特殊効果が得られるようになるのだ。


特殊効果は州によってすべて異なる(17種類ある)が、大きく3つのカテゴリに分けられる。

●5つの異民族(北東部の“烏桓”、北部の“鮮卑”、西北部の“羌”、南東部の“山越”、そして南西部の“南蛮”)のいずれかと外交が可能になるもの
●4つのユーラシア諸国(大秦国(ローマ帝国)、安息国(パルティア)、貴霜国(クシャーナ)、天竺国(インド))のいずれかと交易が可能になるもの
●その他

その他の効果には、コマンド実行にかかる日数が減る“地縁”、配下武将の経験値が貯まりやすくなる(=能力値が上昇しやすくなる)“学宮”などがあり、どの地の利もメリットはかなり大きい。そしてもちろん、これはプレイヤー以外の勢力も利用できる要素。

これまでは、空白地や弱小勢力を手当たり次第に吸収していく、悪く言えば行き当たりばったりな戦略でもよかったのが、地の利の影響を考えた戦略が有効になっているのだ。とくに、異民族との外交権は弱小勢力にとっては死活問題と言っていい。


シリーズ作品でも何度か登場してきた異民族。それらをプレイしたことがある人にとっては、どちらかと言えば「敵に回したときだけ厄介な存在」のイメージが強く残っているかもしれない。今回も敵に回すと厄介であることには変わりないが、味方に付けることができるようになっている。そして、味方になるとものすごく頼もしい存在になるのである。

異民族にはそれぞれ拠点があり、その都市が属する州の地の利を得ると外交が可能となる。たとえば烏桓と外交をするには、幽州(現在の北京とその周辺の地域)の過半数を制する必要がある。外交では他の勢力と同様、贈り物をして友好度を高めることでさまざまなコマンドが実行できるようになる。

中でも、特に重要なのが武将のレンタルだ。関係を“友好”まで高めるとイベントが発生し、異民族の長がやってきて友好の証として武将を貸してくれる。この異民族の武将たちの能力はそれなりに高いくらいなのだが、個性、戦法、そして陣形がえらく強い。また、例外なく野戦、それも山や森での戦闘にも有利だ。上級以下の難易度なら、まず異民族武将に最大まで兵を持たせて突撃し、敵の兵力を駆逐させた後に投石など城攻め用の部隊を送ってラクに制圧する……というパワープレイもあり。一度借りたら、関係が悪化するまで借りっぱなしで地域も関係なく連れて行けるのもありがたい。

▲関係が友好以上になると武将が借りられる。友好なら2人、親密以上ならさらに3人(合計5人)も!

だいたいどのシナリオでも、公孫サンや馬騰ら僻地の弱小君主たちは巨大な勢力の前にジリ貧の戦いを強いられていたが、今回は異民族を利用することでだいぶ戦いやすくなっている。『三國志』シリーズは、最初は曹操や孫策など使いやすい君主でプレイし、慣れてきたら弱小君主で腕試しをするというのが王道の楽しみかた。相変わらず荊州四天王(韓玄、金旋、趙範、劉度)の弱さは際立っており、そこは今回もかなり厳しいのだが、異民族を使える君主にはこのような救済措置が加わった。

もちろん、強い勢力にとっても彼ら彼女らはエース級の人材となり得る。明確にメリットだらけの存在なのだ。

ゲーム後半で効いてくる“交易”や
細かい改良もうれしい

先に挙げた“ユーラシア諸国との交易”が気になる人もいるだろう。この要素は、即効性はないが三国鼎立後など大きな戦力同士が拮抗した状態の時に大きく役立つもの。こちらも異民族同様、特定の州の地の利を獲得することで可能となる要素となる。


交易候補は、大秦国(ローマ帝国)、安息国(パルティア)、貴霜国(クシャーナ)、天竺国(インド)の4ヵ国。地の利次第で同時に複数とも交易できる。なお、この4ヵ国は史実では戦争関係になったことがあり、ゲーム内でも同じような時期に戦争を始めたりする(プレイヤーにとっては、友好度の上昇に多少影響がある程度)。

交易は、使者となる武将+ある程度の金、兵糧、兵士が必要となり、だいたい100日以上かけて行き来することになる。見返りの収入は多く、さらに交易相手から一定以上の友好度を獲得すると“貴重品”がもらえるように。貴重品は、退却確率100%になるものや寿命が延びるもの、さらには攻城戦で力を発揮する戦法が使えるようになるものなど、いずれも非常に強力。特に戦法を習得できる“書”は、能力値の高い武将に与えればまさに無双状態に。

▲ユーラシア諸国と友好度を最大まで上げれば、異民族の持つものと同等の超強力な戦法も使える

ただし、貴重な人材や元手がいることと(戦争状態にあるときなど、意外に物資が足りなくなる)そこまで友好度を上げるのはかなりの時間を要することになるので、交易が活きてくるのはゲーム後半になりそうだ。もしくは三国鼎立後のシナリオをプレイする時に覚えておいて活用するといいだろう。

その他、歴史上の有名なエピソードを題材にした固有戦法の追加や、施設関連の改善、敵をおびき寄せる“偽報”コマンドの導入など、拡張パックらしい細やかな改良が多数施されている。機動力が落ちる山岳地帯で施設を活用できるようになったのは非常に大きく、防衛戦ではその恩恵をよりたくさん享受できるはずだ。



上級者たちへの挑戦状“戦記制覇”と
初心者へのアドバイス

新たに加わった“戦記制覇”は、有名な戦いをモチーフにしたショートシナリオモード。特定の地方を舞台に2~3の勢力だけで短期間(現在配信中のシナリオでは1年半~最長2年半ほど)争うことになる。『三國志14』が発売される前に配信された体験版『プレイデータ収集版』をプレイしたことがある人は、それと同じような規模感だと思えばいい。

▲クリアーすると、三国時代より400年後の“唐”王朝建国の元勲たちが古武将として手に入る

ショートシナリオゆえに初心者向けの簡単なモードかと思いきや、実はゲームに慣れていないと相当難しい。むしろ、効率を極め尽くしたヘビーユーザーにこそオススメの、ゲームクリアー後に挑むやり込み要素と言える。

面白いのは、本編と異なり強制的に発生する歴史イベントをいかにコントロールするかが重要な点。たとえば“反董卓連合”のシナリオで董卓軍を使った場合、まともに歴史イベントを起こさせてしまうと、呂布に次ぐ武力を誇る武将である華雄がムダ死にしてしまいその後大苦戦に陥る。『三国志演義』で勝った側をプレイするときは歴史イベントを起こし、負けた側をプレイするときは起こさずに進めることがコツなのだ。

さらに、クリアー後は行動に応じてスコアが発表される。先日、公式でスコアアタックが開催されていたが、今後も公式非公式問わず、上級プレイヤー同士でスコアを競うという新たな楽しみが生まれそうだ。

戦記制覇は極めた人なら最短で10数分でクリアーできるという。実況動画にも適しているので、ぜひ挑戦してみてほしい。なお、筆者はあれこれウンウン悩みながら唸りながらというプレイスタイルなので、皆さんの活躍を草葉の陰から見守ろうと思う……。


『三國志14 パワーアップキット』は、『三國志14』本編を楽しめた人なら間違いなく“買い”の一品。ゲームバランスを大きく変えることなく、元々のコンセプトをより磨き上げたものになっているので、シーズンパスの追加コンテンツを購入するかどうかはともかく、これだけは買っておいたほうがいい。

一方、本編をプレイしていなかった人には、若干本編単体のほうがお安くはなっているものの、『with パワーアップキット』を買うことをオススメする。土地や兵站の概念が加わったことでこれまでのシリーズ作品からガラッと変わってしまっているが、慣れれば必ずやあなたの時間泥棒になってくれることだろう。

そして新規プレイヤーの方へ、ゲームに慣れるまでのオススメのプレイスタイルを紹介。シナリオ“官渡の戦い”の曹操もしくは袁紹、孫権で難易度中級以下でプレイし、すぐに軍団を作って本拠地以外の都市をすべて委任する。あとは勝手に配下の軍団が方針に従って戦ってくれるので、内政などを進めつつ彼らの手助けだけをしていれば、すぐに操作方法やゲームの進め方にも慣れる。あとは、次第に自分が操作する範囲を増やしていけば、次のプレイ以降では独力で戦えるようになっているはず。

▲軍団を作ると、単純に勢力全体の“命令書”の数が増えることにもなるので、戦力さえ整っていればより侵略速度もアップするのだ

戦闘の際は“前衛”と“後衛”を意識して作るといい。魚鱗や鶴翼などの陣形の武将で前を固めて進軍し、方円や投石など遠距離攻撃に強い陣形の武将をついて行かせれば、より効率よく戦える。また、陣や砦、弓櫓を始めとした“建物”を使いこなせるようになると一気に戦闘が楽しくなる。新施設の射台や鉄索はものすごく使えるものなので、まずはそれらの有効性が実感できるようになることを目指してほしい。


Illustrated by Keiji Hida
©コーエーテクモゲームス All rights reserved.

※『三國志14』ゲーム本編と「パワーアップキット」がセットになった『三國志14 with パワーアップキット』も発売中です。重複購入にご注意ください。


●タイトル:三國志14 パワーアップキット
●ジャンル:歴史シミュレーションゲーム
●発売元:コーエーテクモゲームス
●プラットフォーム:PC(Steam)、PlayStation 4、Nintendo Switch
●発売日:2020年12月10日
●価格: 6380円 ※『三國志14』とセットになった『三國志14 with パワーアップキット』は1万1880円
●必須スペック
OS: Windows 8.1/10 64bit
プロセッサー: Intel Core i3-3220(3.0GHz以上)
メモリー: 4GB以上
グラフィック:NVIDIA GeForce GTX660
ストレージ: 30GB
●推奨スペック
OS: Windows 8.1/10 64bit
プロセッサー: Intel Core i7-3770(3.0GHz以上)
メモリー: 8GB以上
グラフィック: NVIDIA GeForce GTX 1060 6GB
ストレージ: 30GB
●公式サイトURL:https://www.gamecity.ne.jp/sangokushi14/wpk/
●ダウンロードサイトURL:
https://store.steampowered.com/app/872410/14/
【連載】Alienware Zone PCゲームレビュー<2021年版>

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