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『バトルフィールド 2042』レビュー:混沌の中でも確かに光る「BF」の純粋な拡張。その将来性は!?
DICE開発、エレクトロニック・アーツ販売の人気FPS『バトルフィールド』シリーズ最新作である本作『バトルフィールド 2042』は、シリーズ最大の128人対戦と広大なスケールのマップの登場に加え、スペシャリストの導入によってプレイスタイルの幅を広げた。
多人数対戦が楽しめる「All-out Warfare」だけでなく、シリーズに見られなかった分隊ごとにアイテムを回収して脱出劇を繰り広げる「Hazard Zone」や、過去のシリーズ作品が美しく蘇り、それらをプレイヤーが自由に組み合わせることのできる「Battlefield Portal」などのモードが含まれている。
『バトルフィールド 2042』のポイント
※本稿は、先行アクセススタートから、ビークルやPP-29への修正が入ったUpdate#2(バージョン0.2.2)までのプレイに基づくものである。
これまでより遥かに広くなったマップには、ひとつのマップでも個性のあるロケーションが楽しめるのが魅力的だ。砂漠化の進む都市部をモチーフにしたマップ「アワーグラス」では、高層ビルに映る美麗なディスプレイから、廃墟と化したスタジアムまで、走り回っていても飽きることがない。その他にも、コンテナヤードが印象的な「マニフェスト」や、一面白銀の氷に囲まれた「ブレイクアウェイ」など、2042年の世界にどのような出来事があったのだろうと想像したくなるようなロケーションが用意されている。
その魅力的なマップは、実に美しいビジュアルで表現され、環境表現も魅力のひとつだ。ベータテストでも訪れた「オービット」では、青々とした草木と、美しい水面に驚かされた。それだけでなく、ゲーム中に変化する天候とトルネードも、スケールアップによる“次世代”感を演出している。レースゲームのデモのように銃に水滴が付着したり、細かい粉塵が舞い上がったりと、随所でグラフィックカードを唸らせるパワフルな表現を128人対戦で体験できる点は素晴らしい。
だが発売直後、本作の128人に疑問を示すメディアの記事や、コミュニティの声が散見された。DICEの元CEOであるPatrick Söderlund氏による、「128~264人対戦は技術的には可能だが面白くはない」という発言も、時を経て話題となった。
先行アクセス直後のAll-out Warfareでは、当然ながら遊び方が手探りなプレイヤーが多く、大きなマップやスペシャリスト制、ビークルの使い方、そして立ち回りが一辺倒になってしまっている印象を受けた。それも仕方のないことだ。大きく変わったゲームと相まって、調整不足の武器やビークルのバランス、多くの不具合に翻弄されただろう。筆者もその一人だ。
そして筆者は、リリース直後のゴタゴタに翻弄されると同時に、本作を評価するにはまだ早いとも感じた。プレイヤーがゲームにフィットする時間が必要であるだけでなく、大きな不具合がある程度解消するまで、本作を評価することは時期尚早と感じたわけだ。
繰り返しになるが、本作は128人で対戦するタイトルだ。例えレビュアーひとりが何十時間遊ぼうが、他の多くのプレイヤーがゲームをある程度理解するまでは、そのタイトルを理解したとは言い難い。
確かに本作には様々な齟齬が見られる。例えば、128人という人数に対して少なすぎるビークルが挙げられる。特にゲームの初動は移動手段に乏しく、演出である輸送機からワラワラと降ろされて、全力ダッシュで向かった先の拠点はもうビークルでスポーンした味方が制圧しているという場面を何度も見た。これは正直言って、プレイヤーの慣れの問題だろう。少し考えればわかることだが、ビークルは歩兵が赴きにくい拠点を率先して制圧すべきであり、リリースから時間が経った執筆時点では、その考えを持っているプレイヤーが多いように感じる。
そして同時に、マップの広さ故にプレイヤーがマラソンをする場面が多いという問題は、バイクやバギーといった、非武装系ビークルの追加が求められるという一点に尽きる。本作は随所に電気自動車やトゥクトゥクといった非武装ビークルは用意されているが、その数は足りていない。それらを自由に呼び出せる機能が求められる。
筆者はPS3で『BF3』を遊び、24人対戦のコンクエストに慣れていた。フレンドと一緒にマップを駆け回って拠点を制圧しまくる楽しさは、筆舌に尽くしがたい。だが、PS4で『BF4』に触れたとき、自分の小ささに絶望した。このとき24人から64人対戦となったことで、筆者の中で今作と同じような問題が起こっていたのだ。
正直に言って、これは筆者……つまりプレイヤー側の問題だと考えている。筆者はこのとき、自分の存在が小さくなったことに耐えられなかったのだ。
筆者の場合は『BF1』や『BFV』を経て、徐々に64人対戦での小ささにおける身の振り方を覚えていき、時間はかかったが、今では64人対戦を楽しいと感じることができる。『BF3』という存在は、高校時代のほとんどをその作品に充てた筆者にとって大きすぎる存在となってしまい、64人対戦を拒絶していたのだ。皆それぞれの“BF像”があると思う。だがそのすべてのプレイヤーが楽しいと思える『BF』を作ることはできない。
本作の出だしは、128人対戦を拒絶するプレイヤーと、不具合を始めとした本作の悪い部分が重なって、過小評価されているように感じてならない。
膠着状態にあるトンネルでの撃ち合いに、恐れを知らず突っ込んで何故か生きている味方にゲラゲラと笑ったり、ホバークラフトで無双すべく突っ込んだ先に戦車がいて一発で倒されたりと、楽しい瞬間は何度も経験できた。
少人数戦でうまくトレードを重ねて最後の撃ち合いに勝利し、分隊員を全員蘇生するといったスーパープレイや、偏差撃ちでヘリのコックピットを撃ち抜く気持ちよさなど、これらを一気に味わうことは恐らく『BF』だけだろう。これらに代表される『BF』らしい、お祭りゲーたる所以は、『BF2042』でも健在である。
だからこそ、Steamで低い評価を受けながらも、アクティブユーザーTOP10にランクインしているのだろう。128人となってスケール感をアップしつつも、『BF』らしさをしっかり残せたという意味では、デザインの方向性としては間違っていない。「多人数」でBFの次世代観をセンセーショナルにリリースした思い切りの良さは一定の評価をすべきだ。ただし、過去作で見られたクロースクォーターを楽しみたいという思いは強い(恐らくアップデートで追加されていくはずだ)。
ミクロとマクロの戦局の割合とその楽しさはゲームの拡張によって大きくズレていく。そして、スコアボードの撤廃による陣営の中での自分の立ち位置の不透明さや、ビークルに与えたダメージがわからない点などが、ぞのズレを加速させてしまっている。
本作のプレイヤーを見ていると、チームの勝利には興味がないプレイヤーが多いように見える。自分の目の前に敵がいれば前に出て撃ち殺し、自軍の拠点に近いポイントが制圧されてもそれに気づきもしない。だが、それが一番幸せだし、スコアボードのない本作では仕方のないことだ。
公園で砂遊びに熱中する幼児は、蝶が飛んでくれば追いかけていくだろう。その“蝶にあたるもの”を演出して欲しいのだ。ゲーム内でプレイヤーの流動を自然に演出する要素が足りていないように感じられた。
ある程度リアルな重火器を登場させる『BF』の本流では、これ以上のゲームシステムの拡張には慎重であるべきだと思っている。もっとも、その拡張とミクロとマクロのバランスを図ったのが、『BFV』で登場した「グランドオペレーション」だろう。
グランドオペレーションは、複数のマップとゲームモードを織り交ぜることでゲームプレイにバラエティーをもたせることに成功した。長過ぎるという別の問題が発生していたが、この方向性は決して間違っていなかったのではと、純粋に拡張された『BF2042』を遊んでいると思う。
こう考えると、『BF』シリーズにはさらなるゲームチェンジが必要だ。『BF』の純粋な拡張には限界を感じる(この筆者の感性が、すでに古いものである可能性も否定しない)。
プレイスタイルを拡張した
次に、「スペシャリスト」についてだ。本作では突撃兵、衛生兵、援護兵、斥候兵といった過去作の「兵科」という概念は廃され、自由にガジェットを選択することができる。そのうえで、個性的なアビリティを持つスペシャリストを選択するのだ。
スペシャリストには、ウィングスーツで驚異的な機動力を発揮するものから、敵をスポットすることができるドローンを飛ばせるものまで、多くの種類が用意されている。この自由度の高さは素晴らしく、これまで以上にプレイヤーの想像するプレイを実現できるデザインになっている。
ウィングスーツで拠点から拠点に長距離飛行するのはシンプルに楽しく、大勢の味方が攻め入る地点にドローンを飛ばし、大量の敵をスポットしてアシストを得るのはチームへの貢献とスコアの面で2度美味しい。昨今の流行であるヒーローシューター的な要素は、プレイヤーのゲームプレイの幅をうまく拡張することに成功している。
正式リリースから7日経ってUpdate #2が入ったものの(※)、未だに解消されていないものは多い。そして、ハイエンドGPUで安定して高フレームレートが出ない問題など、修正に時間がかかるものも見られる。
これらの不具合が、残念ながら本作の評価を著しく下げてしまっている。事実、ファイルの操作などをしない状態では、RTX 3090を用いても最高設定(フルHD・144fps)が出ない。
※掲載時点ではUpdate#3.1が、全プラットフォームへ適用されている。深刻な不具合は概ね解消され、細かいバランス調整がなされている。
データドライブはマップに配置されているものや、他プレイヤーが得たものを倒して奪い合うこともできる。比べてしまうのも酷だが、「All-out Warfare」に比べて静かで地味なゲームプレイになっている。
だが、少人数戦ならではの、脱出航空機を巡る戦いは緊張感があって楽しい面もある。車両で無双されて一瞬で全滅するといった、「All-out Warfare」 であれば笑って許される死も、「Hazard Zone」では笑えない。『Escape from Tarkov』をカジュアルにしたといえば聞こえがいいが、『Escape from Tarkov』ほど奥深くなく、使い回された広いマップで分隊デスマッチをしているような感覚だ。
また、このモードでは分隊内での連携が不可欠となるわけだが、リリース時点で本作にボイスチャットは実装されていない。
「Battlefield Portal」は
そして最後は、「Battlefield Portal」のお話だ。このモードでは、『BF1942』『BFバッドカンパニー2』『BF3』に登場した一部の武器やマップ、ビークルなどのアセットを自由に配置して、プレイヤー自身がゲームを作成でき、それらを自由にプレイヤーが遊ぶことができる。
過去のモードの再現はもちろんだが、ビークルのみのデスマッチや、ナイフ攻撃オンリーといった、オリジナリティ溢れるゲームを作成できる。作ったゲームモードをSNSで紹介したり、サーバーブラウズでとんでもないゲームを見つけたり、まさに「Portal」の名に相応しい。
美しく蘇ったマップたちは、過去作のプレイヤーであれば感涙モノで、ノスタルジーを呼び起こさせる。それだけでなく、『BF』のおバカなお祭り感を濃縮したモードから、ガンファイトに特化したモードまで、「All-out Warfare」とはまた違った、先に述べた「プレイヤーが持つそれぞれのBF観」を楽しめるものになっている。
ここまでつらつらと苦言も含めて率直に語らせていただいたが、推奨グラフィックカードの高騰と、PS5やXbox Series X|Sの入手の難しさなど、昨今の情勢に恵まれていないことも間違いない。
リリース直後の不具合によって霞んでしまっているが、次世代を感じるグラフィックや人数、マップのスケールから垣間見える、“現代”を舞台とした『BF』の進化は、素直に見どころがある。
アップデートによって、不具合も改善の兆しを見せ始め、ゲームバランスの調整、QoLの向上などが日々行われている。現代戦で多人数の戦いを楽しめる『BF2042』は、唯一無二の存在といっても過言ではない。
今後もアップデートによって、期待に応えられる作品にブラッシュアップされていくことを、『BF』シリーズの長年のファンのひとりとして願いたい。
©2021 Electronic Arts Inc. EA , the EA logo, the DICE logo, Ripple Effect Studios and Battlefield are trademarks of Electronic Arts Inc. いかなる武器、乗り物、装備の製造者も、このゲームと提携、このゲームを後援、または協賛するものではありません。
●タイトル:バトルフィールド 2042
●ジャンル:FPS
●発売元:エレクトロニック・アーツ
●開発元:DICE
●プラットフォーム:PC(Steam、Origin)、PlayStation 5、PlayStation 4、Xbox Series X|S、Xbox One
●発売日:2021年11月19日
●価格:
アルティメットエディション 家庭用ゲーム機版1万6000円[税込] / PC版1万4500円[税込]
ゴールドエディション 家庭用ゲーム機版1万3000円[税込] / PC版1万2000円[税込]
スタンダードエディション PS5、Xbox Series X|S機版9700円[税込] / PS4、Xbox One、PC版8700円[税込]
●必須スペック
OS: Windows 10 64bit
プロセッサー: Intel Core i5-6600K または AMD Ryzen 5 1600
メモリー: 8GB
グラフィック:NVIDIA GeForce GTX1050Ti(1GB) または AMD Radeon RX 560
ストレージ: 100GB
●推奨スペック
OS: Windows 10 64bit
プロセッサー: Intel Core i7-4790K または AMD Ryzen 7 2700X
メモリー: 16GB
グラフィック: NVIDIA GeForce RTX3060 または AMD Radeon RX 6600 XT
ストレージ: 100GB
●公式サイトURL:https://www.ea.com/ja-jp/games/battlefield/battlefield-2042
●ダウンロードサイトURL:
Steam https://store.steampowered.com/app/1517290/Battlefield_2042/
Origin https://www.origin.com/jpn/ja-jp/store/battlefield/battlefield-2042
多人数対戦が楽しめる「All-out Warfare」だけでなく、シリーズに見られなかった分隊ごとにアイテムを回収して脱出劇を繰り広げる「Hazard Zone」や、過去のシリーズ作品が美しく蘇り、それらをプレイヤーが自由に組み合わせることのできる「Battlefield Portal」などのモードが含まれている。
『バトルフィールド 2042』のポイント
- 魅力的なビジュアルとスペシャリストの導入で拡張された『BF』らしさ
- これまでにない挑戦を見せる「Hazard Zone」と「Battlefield Portal」
- ローンチ時点での調整不足は感じるが、シリーズの将来性に期待
※本稿は、先行アクセススタートから、ビークルやPP-29への修正が入ったUpdate#2(バージョン0.2.2)までのプレイに基づくものである。
“次世代”を感じる映像美! 「All-out Warfare」での128人対戦の面白さとは?
まず、本作の中核である、「All-out Warfare」について説明しよう。このモードは、最大128人というシリーズ史上最大の人数で最大規模の広大なマップを舞台に、シリーズでお馴染みとなったコンクエストとブレークスルーを楽しめるもの。これまでより遥かに広くなったマップには、ひとつのマップでも個性のあるロケーションが楽しめるのが魅力的だ。砂漠化の進む都市部をモチーフにしたマップ「アワーグラス」では、高層ビルに映る美麗なディスプレイから、廃墟と化したスタジアムまで、走り回っていても飽きることがない。その他にも、コンテナヤードが印象的な「マニフェスト」や、一面白銀の氷に囲まれた「ブレイクアウェイ」など、2042年の世界にどのような出来事があったのだろうと想像したくなるようなロケーションが用意されている。
その魅力的なマップは、実に美しいビジュアルで表現され、環境表現も魅力のひとつだ。ベータテストでも訪れた「オービット」では、青々とした草木と、美しい水面に驚かされた。それだけでなく、ゲーム中に変化する天候とトルネードも、スケールアップによる“次世代”感を演出している。レースゲームのデモのように銃に水滴が付着したり、細かい粉塵が舞い上がったりと、随所でグラフィックカードを唸らせるパワフルな表現を128人対戦で体験できる点は素晴らしい。
だが発売直後、本作の128人に疑問を示すメディアの記事や、コミュニティの声が散見された。DICEの元CEOであるPatrick Söderlund氏による、「128~264人対戦は技術的には可能だが面白くはない」という発言も、時を経て話題となった。
先行アクセス直後のAll-out Warfareでは、当然ながら遊び方が手探りなプレイヤーが多く、大きなマップやスペシャリスト制、ビークルの使い方、そして立ち回りが一辺倒になってしまっている印象を受けた。それも仕方のないことだ。大きく変わったゲームと相まって、調整不足の武器やビークルのバランス、多くの不具合に翻弄されただろう。筆者もその一人だ。
そして筆者は、リリース直後のゴタゴタに翻弄されると同時に、本作を評価するにはまだ早いとも感じた。プレイヤーがゲームにフィットする時間が必要であるだけでなく、大きな不具合がある程度解消するまで、本作を評価することは時期尚早と感じたわけだ。
繰り返しになるが、本作は128人で対戦するタイトルだ。例えレビュアーひとりが何十時間遊ぼうが、他の多くのプレイヤーがゲームをある程度理解するまでは、そのタイトルを理解したとは言い難い。
確かに本作には様々な齟齬が見られる。例えば、128人という人数に対して少なすぎるビークルが挙げられる。特にゲームの初動は移動手段に乏しく、演出である輸送機からワラワラと降ろされて、全力ダッシュで向かった先の拠点はもうビークルでスポーンした味方が制圧しているという場面を何度も見た。これは正直言って、プレイヤーの慣れの問題だろう。少し考えればわかることだが、ビークルは歩兵が赴きにくい拠点を率先して制圧すべきであり、リリースから時間が経った執筆時点では、その考えを持っているプレイヤーが多いように感じる。
そして同時に、マップの広さ故にプレイヤーがマラソンをする場面が多いという問題は、バイクやバギーといった、非武装系ビークルの追加が求められるという一点に尽きる。本作は随所に電気自動車やトゥクトゥクといった非武装ビークルは用意されているが、その数は足りていない。それらを自由に呼び出せる機能が求められる。
ゲームの拡張と、自身の縮小
本作を通して感じたことが、自分の存在の小ささだ。128人対戦となったことで、ゲームスケールの絶対値が2倍になっていないのに、プレイヤーの数だけが2倍になっているということである。これは筆者が『BF3』から『BF4』への移行で感じたことでもある。筆者はPS3で『BF3』を遊び、24人対戦のコンクエストに慣れていた。フレンドと一緒にマップを駆け回って拠点を制圧しまくる楽しさは、筆舌に尽くしがたい。だが、PS4で『BF4』に触れたとき、自分の小ささに絶望した。このとき24人から64人対戦となったことで、筆者の中で今作と同じような問題が起こっていたのだ。
正直に言って、これは筆者……つまりプレイヤー側の問題だと考えている。筆者はこのとき、自分の存在が小さくなったことに耐えられなかったのだ。
筆者の場合は『BF1』や『BFV』を経て、徐々に64人対戦での小ささにおける身の振り方を覚えていき、時間はかかったが、今では64人対戦を楽しいと感じることができる。『BF3』という存在は、高校時代のほとんどをその作品に充てた筆者にとって大きすぎる存在となってしまい、64人対戦を拒絶していたのだ。皆それぞれの“BF像”があると思う。だがそのすべてのプレイヤーが楽しいと思える『BF』を作ることはできない。
本作の出だしは、128人対戦を拒絶するプレイヤーと、不具合を始めとした本作の悪い部分が重なって、過小評価されているように感じてならない。
肝心なのは“BFらしさ”
ここまで批評してきたが、肝心の“BFらしさ”は、本作にもたしかに存在すると強調しておきたい。欠点はあれど、初動で歩兵がダッシュしている傍らを戦車が駆け抜け、上空をヘリコプターがかすめていく臨場感や、その歩兵たちが敵のヘリに蹂躙される様などは、実に『BF』らしい。膠着状態にあるトンネルでの撃ち合いに、恐れを知らず突っ込んで何故か生きている味方にゲラゲラと笑ったり、ホバークラフトで無双すべく突っ込んだ先に戦車がいて一発で倒されたりと、楽しい瞬間は何度も経験できた。
少人数戦でうまくトレードを重ねて最後の撃ち合いに勝利し、分隊員を全員蘇生するといったスーパープレイや、偏差撃ちでヘリのコックピットを撃ち抜く気持ちよさなど、これらを一気に味わうことは恐らく『BF』だけだろう。これらに代表される『BF』らしい、お祭りゲーたる所以は、『BF2042』でも健在である。
だからこそ、Steamで低い評価を受けながらも、アクティブユーザーTOP10にランクインしているのだろう。128人となってスケール感をアップしつつも、『BF』らしさをしっかり残せたという意味では、デザインの方向性としては間違っていない。「多人数」でBFの次世代観をセンセーショナルにリリースした思い切りの良さは一定の評価をすべきだ。ただし、過去作で見られたクロースクォーターを楽しみたいという思いは強い(恐らくアップデートで追加されていくはずだ)。
ゲーム全体を感じさせる演出を
これまで述べてきたように、同時プレイ人数を増やすことは、『BF』が真摯に向き合うべき問題点だ。人数を増やし、マップを広くすることは、相対的にプレイヤーが起こすアクションの重要度が変わってくる。32人対戦で破壊する戦車と、128人対戦で倒す戦車では、その重みが異なる。そこで如何にプレイヤーに「そのゲームの勝敗」に寄与させるかは、考えなければならない。ミクロとマクロの戦局の割合とその楽しさはゲームの拡張によって大きくズレていく。そして、スコアボードの撤廃による陣営の中での自分の立ち位置の不透明さや、ビークルに与えたダメージがわからない点などが、ぞのズレを加速させてしまっている。
本作のプレイヤーを見ていると、チームの勝利には興味がないプレイヤーが多いように見える。自分の目の前に敵がいれば前に出て撃ち殺し、自軍の拠点に近いポイントが制圧されてもそれに気づきもしない。だが、それが一番幸せだし、スコアボードのない本作では仕方のないことだ。
公園で砂遊びに熱中する幼児は、蝶が飛んでくれば追いかけていくだろう。その“蝶にあたるもの”を演出して欲しいのだ。ゲーム内でプレイヤーの流動を自然に演出する要素が足りていないように感じられた。
ある程度リアルな重火器を登場させる『BF』の本流では、これ以上のゲームシステムの拡張には慎重であるべきだと思っている。もっとも、その拡張とミクロとマクロのバランスを図ったのが、『BFV』で登場した「グランドオペレーション」だろう。
グランドオペレーションは、複数のマップとゲームモードを織り交ぜることでゲームプレイにバラエティーをもたせることに成功した。長過ぎるという別の問題が発生していたが、この方向性は決して間違っていなかったのではと、純粋に拡張された『BF2042』を遊んでいると思う。
こう考えると、『BF』シリーズにはさらなるゲームチェンジが必要だ。『BF』の純粋な拡張には限界を感じる(この筆者の感性が、すでに古いものである可能性も否定しない)。
プレイスタイルを拡張した
「スペシャリスト」
次に、「スペシャリスト」についてだ。本作では突撃兵、衛生兵、援護兵、斥候兵といった過去作の「兵科」という概念は廃され、自由にガジェットを選択することができる。そのうえで、個性的なアビリティを持つスペシャリストを選択するのだ。スペシャリストには、ウィングスーツで驚異的な機動力を発揮するものから、敵をスポットすることができるドローンを飛ばせるものまで、多くの種類が用意されている。この自由度の高さは素晴らしく、これまで以上にプレイヤーの想像するプレイを実現できるデザインになっている。
ウィングスーツで拠点から拠点に長距離飛行するのはシンプルに楽しく、大勢の味方が攻め入る地点にドローンを飛ばし、大量の敵をスポットしてアシストを得るのはチームへの貢献とスコアの面で2度美味しい。昨今の流行であるヒーローシューター的な要素は、プレイヤーのゲームプレイの幅をうまく拡張することに成功している。
改善が続くバージョンアップ
発売から約1カ月が経過した2021年12月現在、武器の少なさや、ブレークスルーで極端に防衛側が有利なデザインといったゲームバランス調整不足、死亡時に操作不能になるといった深刻な不具合は、見逃せない欠点であることは間違いない。正式リリースから7日経ってUpdate #2が入ったものの(※)、未だに解消されていないものは多い。そして、ハイエンドGPUで安定して高フレームレートが出ない問題など、修正に時間がかかるものも見られる。
これらの不具合が、残念ながら本作の評価を著しく下げてしまっている。事実、ファイルの操作などをしない状態では、RTX 3090を用いても最高設定(フルHD・144fps)が出ない。
※掲載時点ではUpdate#3.1が、全プラットフォームへ適用されている。深刻な不具合は概ね解消され、細かいバランス調整がなされている。
中途半端で需要のない「Hazard Zone」
もうひとつの柱でありながら、あまりマッチングしなくなってしまった「Hazard Zone」モードは『Escape from Tarkov』をカジュアルにしたようなもので、データドライブを持って、2回ほど訪れる脱出ポイントを目指し、脱出することが目標だ。データドライブはマップに配置されているものや、他プレイヤーが得たものを倒して奪い合うこともできる。比べてしまうのも酷だが、「All-out Warfare」に比べて静かで地味なゲームプレイになっている。
だが、少人数戦ならではの、脱出航空機を巡る戦いは緊張感があって楽しい面もある。車両で無双されて一瞬で全滅するといった、「All-out Warfare」 であれば笑って許される死も、「Hazard Zone」では笑えない。『Escape from Tarkov』をカジュアルにしたといえば聞こえがいいが、『Escape from Tarkov』ほど奥深くなく、使い回された広いマップで分隊デスマッチをしているような感覚だ。
また、このモードでは分隊内での連携が不可欠となるわけだが、リリース時点で本作にボイスチャットは実装されていない。
「Battlefield Portal」は
ノスタルジー満点のファンサービス
そして最後は、「Battlefield Portal」のお話だ。このモードでは、『BF1942』『BFバッドカンパニー2』『BF3』に登場した一部の武器やマップ、ビークルなどのアセットを自由に配置して、プレイヤー自身がゲームを作成でき、それらを自由にプレイヤーが遊ぶことができる。過去のモードの再現はもちろんだが、ビークルのみのデスマッチや、ナイフ攻撃オンリーといった、オリジナリティ溢れるゲームを作成できる。作ったゲームモードをSNSで紹介したり、サーバーブラウズでとんでもないゲームを見つけたり、まさに「Portal」の名に相応しい。
美しく蘇ったマップたちは、過去作のプレイヤーであれば感涙モノで、ノスタルジーを呼び起こさせる。それだけでなく、『BF』のおバカなお祭り感を濃縮したモードから、ガンファイトに特化したモードまで、「All-out Warfare」とはまた違った、先に述べた「プレイヤーが持つそれぞれのBF観」を楽しめるものになっている。
ここまでつらつらと苦言も含めて率直に語らせていただいたが、推奨グラフィックカードの高騰と、PS5やXbox Series X|Sの入手の難しさなど、昨今の情勢に恵まれていないことも間違いない。
リリース直後の不具合によって霞んでしまっているが、次世代を感じるグラフィックや人数、マップのスケールから垣間見える、“現代”を舞台とした『BF』の進化は、素直に見どころがある。
アップデートによって、不具合も改善の兆しを見せ始め、ゲームバランスの調整、QoLの向上などが日々行われている。現代戦で多人数の戦いを楽しめる『BF2042』は、唯一無二の存在といっても過言ではない。
今後もアップデートによって、期待に応えられる作品にブラッシュアップされていくことを、『BF』シリーズの長年のファンのひとりとして願いたい。
©2021 Electronic Arts Inc. EA , the EA logo, the DICE logo, Ripple Effect Studios and Battlefield are trademarks of Electronic Arts Inc. いかなる武器、乗り物、装備の製造者も、このゲームと提携、このゲームを後援、または協賛するものではありません。
●タイトル:バトルフィールド 2042
●ジャンル:FPS
●発売元:エレクトロニック・アーツ
●開発元:DICE
●プラットフォーム:PC(Steam、Origin)、PlayStation 5、PlayStation 4、Xbox Series X|S、Xbox One
●発売日:2021年11月19日
●価格:
アルティメットエディション 家庭用ゲーム機版1万6000円[税込] / PC版1万4500円[税込]
ゴールドエディション 家庭用ゲーム機版1万3000円[税込] / PC版1万2000円[税込]
スタンダードエディション PS5、Xbox Series X|S機版9700円[税込] / PS4、Xbox One、PC版8700円[税込]
●必須スペック
OS: Windows 10 64bit
プロセッサー: Intel Core i5-6600K または AMD Ryzen 5 1600
メモリー: 8GB
グラフィック:NVIDIA GeForce GTX1050Ti(1GB) または AMD Radeon RX 560
ストレージ: 100GB
●推奨スペック
OS: Windows 10 64bit
プロセッサー: Intel Core i7-4790K または AMD Ryzen 7 2700X
メモリー: 16GB
グラフィック: NVIDIA GeForce RTX3060 または AMD Radeon RX 6600 XT
ストレージ: 100GB
●公式サイトURL:https://www.ea.com/ja-jp/games/battlefield/battlefield-2042
●ダウンロードサイトURL:
Steam https://store.steampowered.com/app/1517290/Battlefield_2042/
Origin https://www.origin.com/jpn/ja-jp/store/battlefield/battlefield-2042
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- 『Chernobylite』Steam版レビュー:感情を揺り動かす大きな選択をいくつも突きつけられる、良質なSFサバイバルホラーRPG
- 『Myst』Steam版レビュー:良質な「謎」の脱出ゲームをプレイしているような、名作ADVリメイク!
- 『Boulder Dash Deluxe』Steam版レビュー:カジュアルに遊べるアクションパズルの名作が超パワーアップした最新版!
- 『Tribes of Midgard』Steam版レビュー:北欧神話を題材にアクション、サバイバル、ローグライクをミックスした欲張り協力プレイゲーム
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