2021年リリースの注目PCゲームをご紹介する連載「Alienware Zone的おすすめPCゲームレビュー」。今回のタイトルは、2021年4月14日に発売された3D探索アドベンチャー『黄昏ニ眠ル街』だ。


自慢の飛行船が壊れ、東洋の街に降り立った少女・ユクモ。街は静まり返り、なぜか人々の姿は消えてしまっていた。彼女は飛行船を直すために、この地に隠された「大地の源」を探すことになる。

制作をほぼ1人で担当したイラストレーター・3Dデザイナーのnocras氏による緻密でエキゾチックなビジュアルと、エレクトロニックミュージシャンのUjico*氏が担当した心地良いサウンドトラック（※Snail's House名義でも活躍）に注目が集まっているが、ゲームとしてもユニークな仕上がりになっている。

本稿ではそんな『黄昏ニ眠ル街』のレビューをお届けしたい。

発見と絶景が絶えない東洋の街

本作の一番の魅力は、そのマップデザインにあるだろう。用意周到に設置されたアイテムと仕掛け、立ち位置によってがらっと変わる美しい街の景色。この2つのおかげで、すみずみまで探索したくなるマップになっている。また、どう歩いても2つのうちどちらかを見つけられるので、ムダな移動が生まれづらい。

▲オレンジ色の「大地の源」を集めよう

▲人のいない街に残ったネズ族。ネコのような見た目をしていて、探索のヒントをくれる

まず主人公・ユクモは、ネズ族のコガラから助言を受け、「大地の源」やコインなどのアイテムを集め始める。探索の舞台となるマップは複数あり、それぞれ違った特徴を持っている。

「大地の源」とは、ランタン型のビンに詰まった不思議なエネルギー源のことだ。屋根のてっぺんや足場に隠されていたり、破片を集めたり、灯篭に火をつけたりなど、仕掛けを解くことで現れるパターンも多い。

▲街に点在する灯篭すべてに火をつけると、「大地の源」が出現することも

▲絶妙な位置にアイテムや仕掛けがあり、探索欲をそそり続ける

仕掛けの一部は広範囲に散らばっているので、プレイヤーは街をくまなく探索したくなるはずだ。その移動中に別の仕掛けや「大地の源」を発見できるような、効率的な設計が嬉しい。たとえ最初に目をつけていたアイテムが手に入らなくても、収穫がゼロになることはほぼないだろう。退屈な移動はなく、常に「あんなところに大地の源が！」「次はあっちに行ってみよう」といったわくわくした気持ちになれる。

▲大橋の下では澄み切った水路が目を惹くが……

▲大橋の上に行くと景色は一変。いろんな場所から街を見たくなる

入り組んでいて高低差のある街は、いる場所によってまったく違う表情を見せてくれる。「大地の源」ではなく、自分だけの絶景を探すことも本作の醍醐味だ。つい宝探しを忘れてフォトモードに夢中になってしまうのは言うまでもない。のどかなサウンドトラックと環境音に没頭して、ただ歩いてみるのもいいだろう。

ふと見えたきれいな景色を前に、思わず立ち止まってしまうような、そんな素敵な瞬間が誰にでも訪れるはずだ。

ひとつの街の上で進化する探索の楽しさ

▲霧によって行く手を阻まれた状況からゲームは始まる

▲「神木の聖域」のアスレチックステージ。クリアすると霧が晴れる

実は、ゲーム序盤から上記のような本作の魅力を存分に味わうことはできない。まずはそれぞれのマップを覆う霧を晴らす必要がある。もともとの街は霧のせいで視界が悪く、行ける場所も制限されているのだ。どうやら、この霧のせいで街の人々がいなくなってしまったらしい。「神木の聖域」に訪れその加護を受ければ、霧を消して街を救うことができるという。

「神木の聖域」はアスレチックステージになっていて、クリアすれば加護を受けられる。動く足場を進むステージやワープで進む迷路など、聖域の種類はさまざまだ。ひとつとして同じものはなく、いつも新鮮な気持ちで楽しめた。アスレチックステージはコインでスキップできるので、アクションが苦手な人でも心配はいらない。

▲霧が晴れて使えるようになったジャンプ台。街をもっと自由に探索できる

聖域をクリアすると、街は本来の姿に戻っていく。霧が晴れた街はとても清々しい。霧に遮られていた場所に加えて、ジャンプ台や転送装置も解放される。プレイヤーの世界は一気に広がるだろう。

▲二段ジャンプなどのアクションも可能に。街を飛び回るのに便利だ

▲時計を使えば、昼と夜を切り替えられる

ジャンプ中の加速や二段ジャンプといった新しいアクションも使えるようになる。より高く遠くに飛び、今まで取れなかったアイテムを獲得できるのだ。この技を使うと街をハイスピードで駆け回れるので、その爽快感も気持ちいい。

筆者は高所から大ジャンプして、パノラマを望むことにハマっていた。ショートカットになるし、落ちてもダメージはないからストレスフリーだ。

そして転送装置で屋内に入ると、時計で昼と夜を切り替えることができる。夜は「大地の源」が放つ光を見つけやすい。探索に手間取った時は変えてみるといいだろう。星空や暖かい提灯の光に包まれた夜の街は、昼とはまた違った印象だ。

▲後半は飛行船での探索もできる。街の地形を活かしたフライトを満喫しよう

ひとつの街の上でいろいろな仕組みが更新され、探索の楽しさが進化していく。これも本作の魅力だろう。

特にゲーム後半で飛行船の修理が終わり、空からの探索ができるようになったのは胸が躍った。操縦する時の独特な浮遊感には癒されるし、船底が水をはじく細かな演出も美しい。もちろん、上空にもアイテムは用意されている。鳥居や橋の間にあるポイントを順番にくぐり抜ける仕掛けもあるので、街の地形をとことん活かしたフライトが楽しめるだろう。

本作の不満点は少ないのだが、マップ間の行き来が難しいことが気になった。まず別のマップに移動するには、必ずユクモの拠点がある「静閑渓谷」を経由する。行きたいマップに直行できるようになると、かなり便利だと感じた。

そして静閑渓谷には別のマップへ行くための看板があるのだが、ここにマップ名が書かれていない。書いてあるのは、マップに入るために必要な大地の源の数だ。数だけだとどの場所に行くか分かりづらいから、マップ名があればよりスムーズに移動できるだろう。随時アップデートを行っているようなので、改善に期待したい。

世界観を味わい尽くすやりこみ要素

▲各マップではユクモの服や家具が販売されている。これは筆者のお気に入りの服

▲購入したものは、ユクモの拠点で見ることができる

本作ではコインで服や家具を買うことが可能だ。フリルやリボンを取り入れた、東洋の民族衣装のような服がかわいらしい。異国情緒あふれる家具と合わせて、ユクモの拠点にコレクションとして置いておける。

さらに、「大地の源」を180個以上集めないと開かない隠し部屋も用意されている。ゲームクリアに必要な最低個数は150個なので、それ以上集めるとかなりの手ごたえがあるはずだ。隠し部屋には「大地の源」や本作のストーリーについてより理解を深められるアイテムが置いてある。

最後に不具合と解決策について説明しておこう。グラフィックボードに高負荷がかかる不具合が発生しているらしく、筆者も画面のちらつきを確認できた（※2021年5月1日時点）。すでにアップデートにて対応されているが（※2021年4月15日時点）、もし今も筆者のような不具合が発生するなら、以下の解決策を試してみてほしい。

NVIDIAコントロールパネル→3D設定の管理→プログラム設定→追加→tasomachiを追加→垂直同期の設定をオンにすれば快適にプレイできる。


秀逸なマップデザインや、より楽しく変化していく探索に夢中になった本作。難易度は決して高くないので、雰囲気だけ味わってみたいプレイヤーでも十分に楽しめるはずだ。とことんアイテムを集めたり、フォトモードで撮った写真をシェアしたり、自分のペースで遊べる作品である。

ぜひゆったりとしたこの街で、思い思いに過ごしてみてほしい。その時間は静かに心を満たしてくれるだろう。

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●タイトル：黄昏ニ眠ル街
●ジャンル：3D探索アドベンチャー
●発売元：PLAYISM
●開発元：Orbital Express
●プラットフォーム：PC(Steam）
●発売日：2021年4月14日
●価格：1980円[税込]
●必須スペック
OS: Windows7/8/10 64bit
プロセッサー: 3GHz
メモリー: 8GB
グラフィック:NVIDIA GeForce GTX660
ストレージ: 3GB
●推奨スペック
OS: Windows7/8/10 64bit
プロセッサー: 3.4GHz以上
メモリー: 16GB
グラフィック: NVIDIA GeForce GTX970
ストレージ: 3GB
●公式サイトURL：https://nocras.wixsite.com/tasomachi
●ダウンロードサイトURL：
https://store.steampowered.com/app/1015890/