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『Voice of Cards ドラゴンの島』Steam版レビュー:TRPGを最新技術で蘇らせた「むしろ新しい」RPG
『ドラゴンクエスト』に代表されるような剣と魔法の世界を冒険するRPGを、すべてカードで表現したRPG『Voice of Cards ドラゴンの島』(以下『ドラゴンの島』) Steam版が、2021年10月29日に発売された。先に同社のRPG『ドラゴンクエスト』を例に挙げたが、じつは『ダンジョンズ&ドラゴンズ』に代表されるテーブルトークRPG(以下「TRPG」)をビデオゲーム化した作品と説明したほうがより正確な表現だ。
●『Voice of Cards ドラゴンの島』のポイント
まだファミコンソフト『ドラゴンクエスト』どころか、PCゲームの古典RPG『ウィザードリィ』や『ウルティマ』すらなかった1974年に発売された、RPGの原型とも言えるテーブルゲーム『ダンジョンズ&ドラゴンズ』が元祖。最近では『クトゥルフ神話TRPG』が有名だ。
ゲームマスターと呼ばれる人がシナリオやマップを用意。プレイヤーが言葉で「街を出る」と言えば「あなたが街を出ると、そこには舗装された道と、その周辺には草むらがあります」というように、言葉で状況説明をしてくれるというゲーム進行となっている。
『ドラゴンの島』のコンセプトは、元となったTRPGにより近い雰囲気をビデオゲーム上で再現しようとした作品なのである。
本作はカードを使ったビジュアルの徹底ぶりは相当なもの。まず主人公を含む最大5人のパーティはもちろん、敵も含めた人物やモンスターは全員、戦闘シーンやステータス画面でカードとして表示される。戦闘時、キャラクターカードにはHPと攻撃力、防御力という3つのパラメーターが表示されている。
▲キャラクターのステータス画面。レベルアップに伴いHPと攻撃力、防御力と速さが増えていく
戦闘時には、剣で斬る動作はキャラクターのカードが攻撃する相手のところへ移動し、ズシャッと剣の軌跡のように動いて攻撃を表現している。魔法は攻撃する相手の前に移動した後に、魔法の種別に応じて火や水、風や光、闇といったエフェクトが攻撃先のカードへ向かうといった具合だ。
▲水系の魔法を使ったところ。敵に向かってエフェクトが飛んでいる
カードをモチーフにしているのはキャラクターだけではない。たとえば町中や建物内では街の人物(NPC)は人物のシルエットカードとして表示されている。その場所へ自分(移動時はチェスの駒のような表示)を移動させることで「話しかけた」扱いとなり、カードが表向きになる。
▲屋内のマップ表示。人のシルエットは、話しかけてみるまで誰なのかはわからない
このゲームでもっとも特徴的なのは街を出た後のフィールドや、ダンジョンなどのマップの表現だ。海以外のマップはすべて裏返されたカードで表現されており、街からフィールドに出た時点ではプレイヤーの現在位置に隣接するカードだけが裏返されて、そこが道なのか草むらなのか、それとも歩けない山なのかがわかる。外周(海)はわかるものの、陸地については「そこに行ってみるまでわからない」状態となっているのだ。
筆者はこの画面を見て、初めてファミコン版『ドラゴンクエスト』をプレイしたときのワクワク感に近い感情が蘇ってきた。伏せられた膨大な量のマップカードが「あの山の向こうには、何があるのだろう?」「次の街には、この橋を渡ればいい?」と、好奇心を刺激してくれた。
▲中央上部は歩いてきた草原で、駒がある中央が「ツギの街」。左~下は伏せられているカード。右側の黒いカードは森
移動できる先は、カード表面が見えている場所に限られる。表向きになったカードの場所へ移動してみると、敵との遭遇やイベントなどがランダムで発生。ゲームマスターの落ち着いた渋い声で、テキスト表示と同時に音声でも読み上げてくれる。
このゲームでは、つねに「次に何をすべきか」の目標を確認できる。それら「南西の方向にある●●へ行け」などの指示に従っていれば、次の目標へはすぐに到達できる。けれども「伏せられたマップカードが残っているうちは、次の街には進みたくない」という、筆者のような性格の人もいるだろう。そこで周辺のマップカードをすべて裏返し、全体を明らかにしてから先へ進むと、キャラクターたちはちょうどいいレベルに成長しているはずだ。特定の敵を倒すために、同じ場所を行ったり来たりしてレベル上げをするような行為はほとんど不要だったのも嬉しい。
▲ゲームマスターによるストーリーの読み上げ。次に何をするとストーリーが進むのかは常時表示されているので、ストーリー進行で迷うことはない
さきほど「移動できる先は、カードの表面が見えている場所のみ」と説明した。もしも前の街へ戻りたい場合には、現在位置までカードを裏返しにしてきた道ができているため、わずか1歩の移動で前の街に戻ることができる。これはダンジョンなど敵の巣窟でも同じで(視界が悪い一部フロアを除く)。通ってきた道であれば、1歩で前のフロアへの階段まで移動できるという親切設計となっている。
未知のダンジョンを一歩一歩切り拓くことは重要視するが「目的の敵を倒したダンジョンから、外へ帰るための移動で雑魚にエンカウントするのは腹が立つよね。だから1歩で帰るといいよ」というクリエイターの意思を感じた。
▲すでに開いているカードの場所であれば1歩で移動できるので、敵とのエンカウントもほとんどせずに済む
▲最大4枚までセットできるスキルのうち、どれを使うかを選ぶ画面。右端には「何もしない」選択肢もある
一般的なRPGとやや異なるのが、魔法を使うためにはMPにあたるアイテム「ジェム」が必要になるという点。ジェムは味方パーティ全員で共有しており、各キャラクターが行動可能になるごとに1個追加される。これにより「身体が燃えている敵には水系魔法が有効。水魔法はジェムを2個必要とするから、魔法使いが水魔法を使えるように、最初に行動する戦士はジェムを使わない通常攻撃を出しておこう」という戦略が生まれてくる。
序盤のうちは使用するジェムも2個までのスキルがほとんどだが、レベルアップするにつれてジェムを3~4個消費する大ダメージスキルも覚える。後半になるほどジェムの消費管理が攻略のポイントになってくるが、システム自体は非常にシンプル。「このスキルを使いたかったのに、ジェムが足りない」という経験を繰り返しているうちに、自然とジェム運用が身に付く。
▲ジェムを2個使うスキル。そのぶん強力だが、このキャラより前に行動したキャラがジェムを温存しておく必要がある
戦闘については、敵味方関係なく攻撃力と防御力の数字が常時表示されている。防御力が低い相手には通常攻撃でもいいが、防御力が高い敵に対しては弱点属性(火、水、風、光、闇)を狙っていくと効率よくダメージを与えられるという具合。
なお、親切心には定評があるこのゲームだが、敵ごとの弱点属性だけはゲーム内で表示されないため、敵ごとの弱点属性一覧表は自作しておくと便利だ。
複数ハード向けに作られた中で、
『ドラゴンの島』はSteamのほかにもPlayStation 4(以下「PS4」)とNintendo Switchでも発売されている。ゲーム内容に差はないが、いくつかの面で差は生じている。
まず、Nintendo Switch版はTVモードと携帯モードという2つの遊び方ができる反面、解像度は1280×720ピクセル(TVモード時)とやや低め。これに対してPS4版とSteam版では1920×1080ピクセルでの表示が可能だ。
▲カードを拡大表示したところ。カード上部にある金箔のような装飾が輝いて美しい
さらにSteam版だけはフィールド上での移動先を指定する駒の移動でマウスを使えるので、アナログスティックで移動先を指定する他の2機種に比べて操作性が良い。戦闘シーンでもマウスカーソルでスキルカードをドラッグし、攻撃は敵のカードの上に。回復は味方カードの上へドロップするという操作に対応している。これは操作性の向上に加えて、まるで実際のカードを手で移動させているような感覚もあり、もっともTRPGに近いプレイ感を味わえる。
▲全機種中で唯一、マウスでカードをドラッグして敵に重ねるという操作ができるSteam版
豪華クリエイターたちが集結した名作!
『ドラゴンの島』は発表当初から、制作に関わるクリエイターたちの豪華さが話題を呼んでいた。
ストーリーの読み上げやナレーションを担当する「ゲームマスター」は、『ニーア・レプリカント ver.1.22474487139...』で白の書を演じた有名声優・安元洋貴氏の渋いイケボ。
クリエイティブディレクターは『ドラッグ オン ドラグーン』『ニーア』シリーズで知られるヨコオタロウ氏だし、音楽も『ニーア』シリーズの岡部啓一氏による美しいメロディ&ハイトーンな女性ヴォーカルは健在。
キャラクターデザインは『ドラッグ オン ドラグーン』シリーズで知られるミストウォーカー・藤坂公彦氏による魅力的なキャラクター。
シナリオは『ニーア リィンカーネーション』の松尾勇気氏による、ブラックで奥深く、後半で「!」という展開もあるストーリー。
そして開発は『ファイナルファンタジー ブレイブエクスヴィアス』のエイリムだから、動作スピードや演出、プレイ感もばっちりだ。
これだけのスタッフが集っているゲームタイトルなのだから、つまらないはずがない。エンディングを迎えるまでは、何一つ欠点は見つけられなかった。そう、エンディングを迎えるまでは。
▲グラフィックも綺麗で、操作性も抜群。ストーリーもややブラックで筆者の大好物
このゲームに感じた唯一の欠点は、ボリュームの物足りなさ。せっかく面白いゲームなので、もっともっと遊んでいたかったというのが本音だ。
前述したように、すべてのマップはもちろん、全ダンジョンのカードも裏返しながら丁寧にプレイしていたため、結果として全キャラクターのレベルは上限の30近くに到達。ラスボスで少々苦戦してしまい、少しだけレベル上げをして全キャラのレベルはMAXにしてからクリア段階でのプレイ時間を見たところ11時間程度だった。クリア後に提示されるヒントに従って「真のエンディング」条件を満たしてクリアしたのは、さらにその1時間後。
レベルを上がりづらくすれば、クリアまでにもっと時間がかかるゲームに調整できたに違いない。次に何をすればいいのかを表示しなければ、ユーザーを迷わせることもできただろう。でも、このゲームではそれをしていない。イライラしてストレスを感じながら50時間遊べるゲームよりも、ワクワクしながら遊べる12時間のほうを選んだのだろう。3520円で、最高の12時間を体験できるゲーム、と言っていいだろう。
▲ゲーム中、困っている人を助けるなどして入手できる「不思議なカード」。全種類集めると、何かいいことがあるらしいが……
クリア後はセーブデータを引き継いで2周目を遊べるようになっているし、2周目は雑魚戦闘をすべて回避することも可能なので、イベントだけを駆け足で見られる。またゲーム内ゲームのカードゲームも面白い。
主人公パーティの外見を『ニーア・レプリカント ver.1.22474487139...』キャラに変えるDLCは110円。BGMを変更するDLCも330円で販売されている。『ニーア』シリーズのファンならば、これら有料DLCを導入して2周目を楽しんでみるのもいい。
余談だが、Steam版『ドラゴンの島』の必要スペックを見ていると、OSはWindows 8.1以降、プロセッサーもCore i3-2100以上と、かなりの低スペックが記載されている。筆者がテキスト執筆用に使っているオンボードグラフィックのビジネス用途のノートパソコン(Core i5-1035G1)へインストールしてみたが、まったく問題なく遊べてしまった。ゲーミングPCは持っていないが、Steamでゲームを遊んでみたい、という方にもお勧めできる作品だ。
▲各キャラクターとの会話回数やイベント消化によって、登場人物のカードが更新される。1周目で全部オープンにならなかったら、2周目でコンプリートを目指そう
(C)2021 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved.
●タイトル:Voice of Cards ドラゴンの島
●ジャンル:RPG
●発売元:スクウェア・エニックス
●開発元:スクウェア・エニックス
●プラットフォーム:PC(Steam)、PlayStation 4、Nintendo Switch
●発売日:
PC 2021年10月29日
PS4/Switch 2021年10月28日
●価格:3520円[税込]
●必須スペック
OS: Windows 8.1/10 64bit
プロセッサー:Intel Core i3-2100 または AMD A8-7600
メモリー:4GB
グラフィック: NVIDIA GeForce® GTX 650 2GB または AMD Radeon R7 260X
DirectX: Version 11
ストレージ:5GB
●推奨スペック
OS: Windows 8.1/10 64bit
プロセッサー:Intel® Core™ i3-2100 または AMD A8-7600
メモリー:4GB
グラフィック: NVIDIA GeForce GTX 660 または AMD Radeon R9 270X
DirectX: Version 11
ストレージ:5GB
●公式サイトURL:https://www.jp.square-enix.com/vocd/
●ダウンロードサイトURL:
Steam:https://store.steampowered.com/app/1113570/Voice_of_Cards/
●『Voice of Cards ドラゴンの島』のポイント
- TRPG経験者なら懐かしくてたまらない演出の数々
- はじめてコンピュータRPGを遊んだ時のようなワクワク感
- シンプルながら、ちょっとした工夫で効率が変わる戦闘システム
すべて「カード」で構成されたビジュアル&システム
TRPGについてご存じない方のため、あらためて簡単に説明しておく。まだファミコンソフト『ドラゴンクエスト』どころか、PCゲームの古典RPG『ウィザードリィ』や『ウルティマ』すらなかった1974年に発売された、RPGの原型とも言えるテーブルゲーム『ダンジョンズ&ドラゴンズ』が元祖。最近では『クトゥルフ神話TRPG』が有名だ。
ゲームマスターと呼ばれる人がシナリオやマップを用意。プレイヤーが言葉で「街を出る」と言えば「あなたが街を出ると、そこには舗装された道と、その周辺には草むらがあります」というように、言葉で状況説明をしてくれるというゲーム進行となっている。
『ドラゴンの島』のコンセプトは、元となったTRPGにより近い雰囲気をビデオゲーム上で再現しようとした作品なのである。
本作はカードを使ったビジュアルの徹底ぶりは相当なもの。まず主人公を含む最大5人のパーティはもちろん、敵も含めた人物やモンスターは全員、戦闘シーンやステータス画面でカードとして表示される。戦闘時、キャラクターカードにはHPと攻撃力、防御力という3つのパラメーターが表示されている。
▲キャラクターのステータス画面。レベルアップに伴いHPと攻撃力、防御力と速さが増えていく
戦闘時には、剣で斬る動作はキャラクターのカードが攻撃する相手のところへ移動し、ズシャッと剣の軌跡のように動いて攻撃を表現している。魔法は攻撃する相手の前に移動した後に、魔法の種別に応じて火や水、風や光、闇といったエフェクトが攻撃先のカードへ向かうといった具合だ。
▲水系の魔法を使ったところ。敵に向かってエフェクトが飛んでいる
カードをモチーフにしているのはキャラクターだけではない。たとえば町中や建物内では街の人物(NPC)は人物のシルエットカードとして表示されている。その場所へ自分(移動時はチェスの駒のような表示)を移動させることで「話しかけた」扱いとなり、カードが表向きになる。
▲屋内のマップ表示。人のシルエットは、話しかけてみるまで誰なのかはわからない
このゲームでもっとも特徴的なのは街を出た後のフィールドや、ダンジョンなどのマップの表現だ。海以外のマップはすべて裏返されたカードで表現されており、街からフィールドに出た時点ではプレイヤーの現在位置に隣接するカードだけが裏返されて、そこが道なのか草むらなのか、それとも歩けない山なのかがわかる。外周(海)はわかるものの、陸地については「そこに行ってみるまでわからない」状態となっているのだ。
筆者はこの画面を見て、初めてファミコン版『ドラゴンクエスト』をプレイしたときのワクワク感に近い感情が蘇ってきた。伏せられた膨大な量のマップカードが「あの山の向こうには、何があるのだろう?」「次の街には、この橋を渡ればいい?」と、好奇心を刺激してくれた。
▲中央上部は歩いてきた草原で、駒がある中央が「ツギの街」。左~下は伏せられているカード。右側の黒いカードは森
移動できる先は、カード表面が見えている場所に限られる。表向きになったカードの場所へ移動してみると、敵との遭遇やイベントなどがランダムで発生。ゲームマスターの落ち着いた渋い声で、テキスト表示と同時に音声でも読み上げてくれる。
このゲームでは、つねに「次に何をすべきか」の目標を確認できる。それら「南西の方向にある●●へ行け」などの指示に従っていれば、次の目標へはすぐに到達できる。けれども「伏せられたマップカードが残っているうちは、次の街には進みたくない」という、筆者のような性格の人もいるだろう。そこで周辺のマップカードをすべて裏返し、全体を明らかにしてから先へ進むと、キャラクターたちはちょうどいいレベルに成長しているはずだ。特定の敵を倒すために、同じ場所を行ったり来たりしてレベル上げをするような行為はほとんど不要だったのも嬉しい。
▲ゲームマスターによるストーリーの読み上げ。次に何をするとストーリーが進むのかは常時表示されているので、ストーリー進行で迷うことはない
「面倒臭いことはさせたくない」ゲーム
このゲームをプレイしていて感じたことは、プレイヤーに「面倒臭い」ことはさせたくない、という作り手側の意思だ。さきほど「移動できる先は、カードの表面が見えている場所のみ」と説明した。もしも前の街へ戻りたい場合には、現在位置までカードを裏返しにしてきた道ができているため、わずか1歩の移動で前の街に戻ることができる。これはダンジョンなど敵の巣窟でも同じで(視界が悪い一部フロアを除く)。通ってきた道であれば、1歩で前のフロアへの階段まで移動できるという親切設計となっている。
未知のダンジョンを一歩一歩切り拓くことは重要視するが「目的の敵を倒したダンジョンから、外へ帰るための移動で雑魚にエンカウントするのは腹が立つよね。だから1歩で帰るといいよ」というクリエイターの意思を感じた。
▲すでに開いているカードの場所であれば1歩で移動できるので、敵とのエンカウントもほとんどせずに済む
シンプルだが工夫や知識で効率が変わる戦闘システム
このゲームの戦闘システムは、かなりシンプルだ。敵味方それぞれ最大3人ずつのパーティのうち、速さが早い順に攻撃可能になるというもの。味方の攻撃順が来たら、セットしておいたスキルカード4枚のうち、どのカードをどの敵に使うかを選ぶ。ちょうど、RPGの行動画面で「たたかう」「まほう」など表示される選択肢を、あらかじめセットしておくようなものだ。▲最大4枚までセットできるスキルのうち、どれを使うかを選ぶ画面。右端には「何もしない」選択肢もある
一般的なRPGとやや異なるのが、魔法を使うためにはMPにあたるアイテム「ジェム」が必要になるという点。ジェムは味方パーティ全員で共有しており、各キャラクターが行動可能になるごとに1個追加される。これにより「身体が燃えている敵には水系魔法が有効。水魔法はジェムを2個必要とするから、魔法使いが水魔法を使えるように、最初に行動する戦士はジェムを使わない通常攻撃を出しておこう」という戦略が生まれてくる。
序盤のうちは使用するジェムも2個までのスキルがほとんどだが、レベルアップするにつれてジェムを3~4個消費する大ダメージスキルも覚える。後半になるほどジェムの消費管理が攻略のポイントになってくるが、システム自体は非常にシンプル。「このスキルを使いたかったのに、ジェムが足りない」という経験を繰り返しているうちに、自然とジェム運用が身に付く。
▲ジェムを2個使うスキル。そのぶん強力だが、このキャラより前に行動したキャラがジェムを温存しておく必要がある
戦闘については、敵味方関係なく攻撃力と防御力の数字が常時表示されている。防御力が低い相手には通常攻撃でもいいが、防御力が高い敵に対しては弱点属性(火、水、風、光、闇)を狙っていくと効率よくダメージを与えられるという具合。
なお、親切心には定評があるこのゲームだが、敵ごとの弱点属性だけはゲーム内で表示されないため、敵ごとの弱点属性一覧表は自作しておくと便利だ。
複数ハード向けに作られた中で、
Steam版が最高の完成度
『ドラゴンの島』はSteamのほかにもPlayStation 4(以下「PS4」)とNintendo Switchでも発売されている。ゲーム内容に差はないが、いくつかの面で差は生じている。まず、Nintendo Switch版はTVモードと携帯モードという2つの遊び方ができる反面、解像度は1280×720ピクセル(TVモード時)とやや低め。これに対してPS4版とSteam版では1920×1080ピクセルでの表示が可能だ。
▲カードを拡大表示したところ。カード上部にある金箔のような装飾が輝いて美しい
さらにSteam版だけはフィールド上での移動先を指定する駒の移動でマウスを使えるので、アナログスティックで移動先を指定する他の2機種に比べて操作性が良い。戦闘シーンでもマウスカーソルでスキルカードをドラッグし、攻撃は敵のカードの上に。回復は味方カードの上へドロップするという操作に対応している。これは操作性の向上に加えて、まるで実際のカードを手で移動させているような感覚もあり、もっともTRPGに近いプレイ感を味わえる。
▲全機種中で唯一、マウスでカードをドラッグして敵に重ねるという操作ができるSteam版
豪華クリエイターたちが集結した名作!
それだけに、もっと遊びたかった
『ドラゴンの島』は発表当初から、制作に関わるクリエイターたちの豪華さが話題を呼んでいた。ストーリーの読み上げやナレーションを担当する「ゲームマスター」は、『ニーア・レプリカント ver.1.22474487139...』で白の書を演じた有名声優・安元洋貴氏の渋いイケボ。
クリエイティブディレクターは『ドラッグ オン ドラグーン』『ニーア』シリーズで知られるヨコオタロウ氏だし、音楽も『ニーア』シリーズの岡部啓一氏による美しいメロディ&ハイトーンな女性ヴォーカルは健在。
キャラクターデザインは『ドラッグ オン ドラグーン』シリーズで知られるミストウォーカー・藤坂公彦氏による魅力的なキャラクター。
シナリオは『ニーア リィンカーネーション』の松尾勇気氏による、ブラックで奥深く、後半で「!」という展開もあるストーリー。
そして開発は『ファイナルファンタジー ブレイブエクスヴィアス』のエイリムだから、動作スピードや演出、プレイ感もばっちりだ。
これだけのスタッフが集っているゲームタイトルなのだから、つまらないはずがない。エンディングを迎えるまでは、何一つ欠点は見つけられなかった。そう、エンディングを迎えるまでは。
▲グラフィックも綺麗で、操作性も抜群。ストーリーもややブラックで筆者の大好物
このゲームに感じた唯一の欠点は、ボリュームの物足りなさ。せっかく面白いゲームなので、もっともっと遊んでいたかったというのが本音だ。
前述したように、すべてのマップはもちろん、全ダンジョンのカードも裏返しながら丁寧にプレイしていたため、結果として全キャラクターのレベルは上限の30近くに到達。ラスボスで少々苦戦してしまい、少しだけレベル上げをして全キャラのレベルはMAXにしてからクリア段階でのプレイ時間を見たところ11時間程度だった。クリア後に提示されるヒントに従って「真のエンディング」条件を満たしてクリアしたのは、さらにその1時間後。
レベルを上がりづらくすれば、クリアまでにもっと時間がかかるゲームに調整できたに違いない。次に何をすればいいのかを表示しなければ、ユーザーを迷わせることもできただろう。でも、このゲームではそれをしていない。イライラしてストレスを感じながら50時間遊べるゲームよりも、ワクワクしながら遊べる12時間のほうを選んだのだろう。3520円で、最高の12時間を体験できるゲーム、と言っていいだろう。
▲ゲーム中、困っている人を助けるなどして入手できる「不思議なカード」。全種類集めると、何かいいことがあるらしいが……
クリア後はセーブデータを引き継いで2周目を遊べるようになっているし、2周目は雑魚戦闘をすべて回避することも可能なので、イベントだけを駆け足で見られる。またゲーム内ゲームのカードゲームも面白い。
主人公パーティの外見を『ニーア・レプリカント ver.1.22474487139...』キャラに変えるDLCは110円。BGMを変更するDLCも330円で販売されている。『ニーア』シリーズのファンならば、これら有料DLCを導入して2周目を楽しんでみるのもいい。
余談だが、Steam版『ドラゴンの島』の必要スペックを見ていると、OSはWindows 8.1以降、プロセッサーもCore i3-2100以上と、かなりの低スペックが記載されている。筆者がテキスト執筆用に使っているオンボードグラフィックのビジネス用途のノートパソコン(Core i5-1035G1)へインストールしてみたが、まったく問題なく遊べてしまった。ゲーミングPCは持っていないが、Steamでゲームを遊んでみたい、という方にもお勧めできる作品だ。
▲各キャラクターとの会話回数やイベント消化によって、登場人物のカードが更新される。1周目で全部オープンにならなかったら、2周目でコンプリートを目指そう
(C)2021 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved.
●タイトル:Voice of Cards ドラゴンの島
●ジャンル:RPG
●発売元:スクウェア・エニックス
●開発元:スクウェア・エニックス
●プラットフォーム:PC(Steam)、PlayStation 4、Nintendo Switch
●発売日:
PC 2021年10月29日
PS4/Switch 2021年10月28日
●価格:3520円[税込]
●必須スペック
OS: Windows 8.1/10 64bit
プロセッサー:Intel Core i3-2100 または AMD A8-7600
メモリー:4GB
グラフィック: NVIDIA GeForce® GTX 650 2GB または AMD Radeon R7 260X
DirectX: Version 11
ストレージ:5GB
●推奨スペック
OS: Windows 8.1/10 64bit
プロセッサー:Intel® Core™ i3-2100 または AMD A8-7600
メモリー:4GB
グラフィック: NVIDIA GeForce GTX 660 または AMD Radeon R9 270X
DirectX: Version 11
ストレージ:5GB
●公式サイトURL:https://www.jp.square-enix.com/vocd/
●ダウンロードサイトURL:
Steam:https://store.steampowered.com/app/1113570/Voice_of_Cards/
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