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『BREATHEDGE』レビュー! 何もかもが欠乏気味のスペース・サバイバルから満ち溢れるロシアンジョークとノスタルジア【オススメPCゲームレビュー】
2021年リリースの注目PCゲームをご紹介する連載「Alienware Zone的おすすめPCゲームレビュー」。
今回ご紹介するのは、2021年2月25日にSteamで2年におよぶアーリーアクセスが終了し、晴れて正式リリースとなった『Breathedge』(ブレスエッジ)。本作は深宇宙で遭難した宇宙船の唯一の生存者「マン」が、限られた物資を頼りに生き残りを図る、一人称視点のサバイバル・オープンワールドアドベンチャーだ。
「宇宙で遭難した男が生き残りを図る」ということで、ひょっとしたらシリアスな作品だと勘違いしてしまった人もいるかもしれないが、まったくそんなことはない。メインビジュアルからもなんとなく伝わってくるとおり、本作はかなりイカれたノリで制作されているし、「不死身のニワトリ」が頻繁に登場し「……なぜ?」という気持ちにさせてくれる(笑)。
こんな作品に対して、「これこれこんな世界観とシステムで、興味深い物語が展開する。果たしてマンはどうなってしまうのか?」的な無難なまとめ方をしてしまうのは、逆に誠意のない仕事だとは思わないだろうか(異論は認めます)。
少なくとも筆者はそう思ったので、「遠慮なし」でいろいろお伝えしていこうかと思う。
冒頭の数分間は秘密!
ゲームの冒頭部分はデベロッパー公式の紹介文などでも秘密扱いになっているので、本稿でもそれに習って詳しくは説明しないでおく。ぜひ実際にゲームをスタートしたときに驚くなり、呆れるなりしていただきたい。
ちなみに筆者は、操作もおぼつかないまま慌てふためくこととなり、無重力状態のエアロック内で四方の壁にぶつかりまくる大惨事となった。どんな事が起こってしまうのか、想像をたくましくしてもらえると幸いだ。
しょっぱなのごく軽い、それでいて致命的なハプニングを切り抜けたあとは、プレイヤーは物資も情報もない、ないない尽くしの状況に放り出される。
一応、マンの着ている宇宙服(に搭載された慇懃無礼なAI)との会話や、おっぱい星人(ケツだけ星人的な意味で)のような謎の存在・ベイブからの通信がヒントにはなるものの、どちらも役に立つような立たないような……といった感じ。
プレイヤーは何をするにしても、自分で考え、想像し、判断しなくてはならない。
一応、その時点で目指すべきタスクが示されていたり、何かありそうな場所はマーカーが表示されるのだが、どうやってそのタスクをこなせばいいのか、どうやってそこにたどり着けばいいのかがわからない。ゲームが終盤にさしかかるまでは、そんな状態が続いていく。
それにしてもだ。宇宙空間を遊泳し、探索しつつ生き残りを図るゲームなのに、酸素タンクすら持ってない状態からスタートするのはどうかしていると思う(いい意味で)。
主人公・マンが空気のない場所で活動できるのはわずか75秒間だけ。マンの移動速度は秒速6mほどなので、約450mしか進めない計算になる。もちろん本当に450m先まで行ってしまうと、そこで酸素切れになって死んでしまうのだが……。
▲体力がゼロになれば当然ゲームオーバー
では半分の225mなら大丈夫かといえば、もちろんそんなことはなく、行って戻ってくるだけで酸素を使い果たしてしまう。
なので序盤のうちは半径100mほどの球状の空間を探索し、酸素の残量が残り20秒くらいになったらエアロックまで戻るという動きを繰り返すことになる。たとえるなら、海女さんが素潜りでアワビやサザエを取ってくるような要領で、あちこちから「いいもの」を集めてくるわけだ。
また重力のない場所では、自分の動きに感性が働くことにも注意。秒速6mはそこそこのスピードなので(時速だと約21km)、こまめにスタビライザーを使用しないとあっという間に目標物から離れていってしまう。
そして、宇宙空間で目標物を見失うと、あっという間に自分の位置や、向いている方向すらわからなくなることにも留意しておこう。
宇宙服のバイザーに霜がついて視界を奪われ、霜が溶けて周りが見えるようになったときには、すでにシャトルに戻るための酸素は残っていなかった……。ちょっとでも油断するとすぐそんなことが起こるのが、ここ大宇宙の恐ろしさだ。
乏しい物資をやりくりし、
さて、ゲームのスタート地点となるシャトル内には様々なものが存在するが、それらは見事なまでにガラクタばかりで、役に立ちそうなものはほとんどない。水や食料といった、生きるための最低限の物資すら船外から調達する必要がある。
途方に暮れそうになる状況だが、とりあえず船外に出てよく目をこらしてみると、宇宙空間に氷やゼリー状の物体が浮いているのが見える。これらを回収し、シャトルに持ち帰れば「飲料水」や「栄養パック」(食料)に加工することができる。
▲「栄養パック」や「飲料水のボトル」を回収できることもある
▲船外から遺体を連れてくることもできる
食料問題がある程度解決したら、次は道具を用意しよう。このあたりはサバイバル要素のあるゲームではおなじみの流れだが、本作ではいわゆる「作業台」に相当する施設は「フードプロセッサー」という名称である。予備知識なしでプレイすると飲料水や食料を加工するための施設だと思い込みやすいのでご注意を。
フードプロセッサーでさまざまなツールを作りだせば、貨物コンテナを叩き壊したり、小惑星の表面からアルミを採集するなど、入手できる物資の種類もだんだん増えていく。
あちこちで設計図を手に入れることで、クラフトできるものが増え、そのうちに宇宙服を強化する装備もクラフト可能となる。たとえば酸素容量を増加させる「酸素バルーン」を装備すれば、船外活動できる時間が75秒から100秒になる! ……だいぶ小刻みな延長だがないよりはマシだ。
また、酸素を補給できる「酸素ステーション」を宇宙空間に設置すれば、それまでより離れた場所まで足を伸ばせるようにもなる。
行動範囲が広がれば広がるほど、入手できる物資は増え、行動の自由も広がっていく……。つまり本作はそのタイトル通り、息が続く限界(ブレスエッジ)を伸ばしていくことで、状況や物語を進展させていくゲームなのである。
こう説明すると、うまくプレイすれば順調に進展していくゲームのように感じるかもしれないが、実際にはそんなことはない。断じてない。
物資はつねに不足気味であり、探索そのものより、探索に必要なツールやアイテムを作るための物資を探し回っている時間が長いようなところがある。そして何をしていようが喉は渇き、腹も減る。たまにはベッドで休息し、体力を回復する必要だってある。
ツール類も使っているうちにすぐに壊れてしまうので、壊れる前に新しいものを作っておく必要もある。それを怠ると、ツールなしで物資を集めるハメになり、さらに面倒な事態になるので諦めて作るしかない。
そうこうしているうちに時間が経過、また飢えと渇きが襲ってきて……といった具合に、やるべきことはつねに山積みで、プレイするほどに積み重なっていくような感覚がある。
「まず物資を蓄積すれば効率化できるのでは?」と思った人もいるかもしれない。でもその場合は、インベントリとコンテナ(アイテムボックス)がすぐに溢れてしまう。どんなふうに遊ぶにせよ、やりくりの大変さを存分に味わうことができるだろう。
▲部屋のあちこちに物資を置いて管理するハメに……
本作の舞台は宇宙ということで、前後左右はもちろん、上下方向にも大きな広がりがある。しかしイベントを進めていく順番はプレイヤーに委ねられているため、入手できる物資や設計図の見逃しが起こりやすく、適切な装備を整えないまま先に進んでいたことに「後から気がつく」ことも多い。
ゲーム中直面する問題の多くは、「酸素ステーション」の数を増やすことで強引に解決できるのだが、そこがある意味では罠でもある。ステーションをむやみに増やすとステーションへの酸素補給が煩わしいし、物資の浪費にもつながってしまう。
そうした本作のアンバランスな遊び応えを、宇宙での過酷なサバイバル感や、オープンワールドの醍醐味と感じるか。それとも不親切だと感じてしまうか。そこが本作を楽しめるかどうかの大きな分かれ目になってくるだろう。
▲二章の早い段階で「ロケット」掃除機を見つけられないと、大変なことになるだろう(なりました)
ロシアのデベロッパが描く
なお、本作で描かれている未来世界は「ソビエト連邦が崩壊しなかった未来」らしく、事あるごとに「同志」と呼びかけられたり、プロパガンダ的な映像や絵があちこちにあったり、艦内放送ではソ連軍軍歌の「タチャンカ(某『R6S』の彼を思い浮かべるかもしれないが、荷台に機関銃を据え付けた馬車のこと)」や、ロシア民謡風のポップス(?)が流れていたりする。物資の欠乏ぶりもあいまって(それは遭難が主因だとは思うが)、なかなかのディストピアっぷりを醸し出している。
また本作のアートワークは、1960年代に流行した流線型のロケットや、シュールな形の光線銃、木目調プラスチックなどに象徴される、いわゆるなレトロフューチャー調。当時は西側諸国だけでなく、東側諸国でも同様のムーブメントがあり、しかも宇宙開発でソ連がアメリカに先んじていた時代でもあるため、ソ連が存続した未来像としても、どこかしっくりくるものがある。
ちなみに本作のデベロッパーはロシアのスタジオであるRedruins Softworks。筆者は「これがレトロフューチャーの本場の人たちが出す味か……」などと奇妙な説得力と感慨深さ、そして郷愁を感じてしまった。
そして随所に仕込まれたロシアンジョーク(?)的なネタアイテムがいちいち面白い。最初のうちはコレクションを楽しんでいたが、あまりにも膨大なのと、持ち運べる物資の量のシビアさゆえに、泣く泣く諦めるようになるのがせつなくもある(笑)。
▲ローカライズはかなり丁寧かつ秀逸
▲フェイタリティを決めた瞬間、宇宙船が爆発!
▲ちょっと心配になる方もいるかもしれないが、『モータルウォンバット』なので安心してください
▲と思いきや、こちらは少しアウトかもしれない!?
本作は古今東西のSF作品やゲームに詳しければ詳しいほど、味わい深く楽しめる作品であることは間違いない。
なお、Redruins Softworksの発表によれば、今後「ちょっとした追加コンテンツも実装予定」とのこと。親愛なるイワンたちがどんなクレイジーなものを準備しているか期待しつつ、まずはゲーム本編をプレイしてみてほしい。
●タイトル:BREATHEDGE
●ジャンル:オープンワールドサバイバルゲーム
●発売元:HypeTrain Digital
●開発元:RedRuins Softworks
●プラットフォーム:PC(Steam)
●発売日:2021年2月26日
●価格:2570円
●必須スペック
OS: Windows 7, 8, 10 64bit
プロセッサー: Intel core i3 (3rd generation)
メモリー: 8GB
グラフィック:NVIDIA GeForce GTX660
ストレージ: 7GB
●推奨スペック
OS: Windows 7, 8, 10 64bit
プロセッサー: Intel core i5 (4th generation)
メモリー: 8GB
グラフィック: NVIDIA GeForce GTX1060
ストレージ: 7GB
●公式サイトURL:https://www.facebook.com/breathedgegame/
●ダウンロードサイトURL:https://store.steampowered.com/app/738520/Breathedge/
今回ご紹介するのは、2021年2月25日にSteamで2年におよぶアーリーアクセスが終了し、晴れて正式リリースとなった『Breathedge』(ブレスエッジ)。本作は深宇宙で遭難した宇宙船の唯一の生存者「マン」が、限られた物資を頼りに生き残りを図る、一人称視点のサバイバル・オープンワールドアドベンチャーだ。
「宇宙で遭難した男が生き残りを図る」ということで、ひょっとしたらシリアスな作品だと勘違いしてしまった人もいるかもしれないが、まったくそんなことはない。メインビジュアルからもなんとなく伝わってくるとおり、本作はかなりイカれたノリで制作されているし、「不死身のニワトリ」が頻繁に登場し「……なぜ?」という気持ちにさせてくれる(笑)。
こんな作品に対して、「これこれこんな世界観とシステムで、興味深い物語が展開する。果たしてマンはどうなってしまうのか?」的な無難なまとめ方をしてしまうのは、逆に誠意のない仕事だとは思わないだろうか(異論は認めます)。
少なくとも筆者はそう思ったので、「遠慮なし」でいろいろお伝えしていこうかと思う。
冒頭の数分間は秘密!
ないない尽くしの欠乏生活
ゲームの冒頭部分はデベロッパー公式の紹介文などでも秘密扱いになっているので、本稿でもそれに習って詳しくは説明しないでおく。ぜひ実際にゲームをスタートしたときに驚くなり、呆れるなりしていただきたい。ちなみに筆者は、操作もおぼつかないまま慌てふためくこととなり、無重力状態のエアロック内で四方の壁にぶつかりまくる大惨事となった。どんな事が起こってしまうのか、想像をたくましくしてもらえると幸いだ。
しょっぱなのごく軽い、それでいて致命的なハプニングを切り抜けたあとは、プレイヤーは物資も情報もない、ないない尽くしの状況に放り出される。
一応、マンの着ている宇宙服(に搭載された慇懃無礼なAI)との会話や、おっぱい星人(ケツだけ星人的な意味で)のような謎の存在・ベイブからの通信がヒントにはなるものの、どちらも役に立つような立たないような……といった感じ。
プレイヤーは何をするにしても、自分で考え、想像し、判断しなくてはならない。
一応、その時点で目指すべきタスクが示されていたり、何かありそうな場所はマーカーが表示されるのだが、どうやってそのタスクをこなせばいいのか、どうやってそこにたどり着けばいいのかがわからない。ゲームが終盤にさしかかるまでは、そんな状態が続いていく。
それにしてもだ。宇宙空間を遊泳し、探索しつつ生き残りを図るゲームなのに、酸素タンクすら持ってない状態からスタートするのはどうかしていると思う(いい意味で)。
主人公・マンが空気のない場所で活動できるのはわずか75秒間だけ。マンの移動速度は秒速6mほどなので、約450mしか進めない計算になる。もちろん本当に450m先まで行ってしまうと、そこで酸素切れになって死んでしまうのだが……。
▲体力がゼロになれば当然ゲームオーバー
では半分の225mなら大丈夫かといえば、もちろんそんなことはなく、行って戻ってくるだけで酸素を使い果たしてしまう。
なので序盤のうちは半径100mほどの球状の空間を探索し、酸素の残量が残り20秒くらいになったらエアロックまで戻るという動きを繰り返すことになる。たとえるなら、海女さんが素潜りでアワビやサザエを取ってくるような要領で、あちこちから「いいもの」を集めてくるわけだ。
また重力のない場所では、自分の動きに感性が働くことにも注意。秒速6mはそこそこのスピードなので(時速だと約21km)、こまめにスタビライザーを使用しないとあっという間に目標物から離れていってしまう。
そして、宇宙空間で目標物を見失うと、あっという間に自分の位置や、向いている方向すらわからなくなることにも留意しておこう。
宇宙服のバイザーに霜がついて視界を奪われ、霜が溶けて周りが見えるようになったときには、すでにシャトルに戻るための酸素は残っていなかった……。ちょっとでも油断するとすぐそんなことが起こるのが、ここ大宇宙の恐ろしさだ。
乏しい物資をやりくりし、
わずかに行動範囲を広げていく繰り返し
さて、ゲームのスタート地点となるシャトル内には様々なものが存在するが、それらは見事なまでにガラクタばかりで、役に立ちそうなものはほとんどない。水や食料といった、生きるための最低限の物資すら船外から調達する必要がある。途方に暮れそうになる状況だが、とりあえず船外に出てよく目をこらしてみると、宇宙空間に氷やゼリー状の物体が浮いているのが見える。これらを回収し、シャトルに持ち帰れば「飲料水」や「栄養パック」(食料)に加工することができる。
▲「栄養パック」や「飲料水のボトル」を回収できることもある
▲船外から遺体を連れてくることもできる
食料問題がある程度解決したら、次は道具を用意しよう。このあたりはサバイバル要素のあるゲームではおなじみの流れだが、本作ではいわゆる「作業台」に相当する施設は「フードプロセッサー」という名称である。予備知識なしでプレイすると飲料水や食料を加工するための施設だと思い込みやすいのでご注意を。
フードプロセッサーでさまざまなツールを作りだせば、貨物コンテナを叩き壊したり、小惑星の表面からアルミを採集するなど、入手できる物資の種類もだんだん増えていく。
あちこちで設計図を手に入れることで、クラフトできるものが増え、そのうちに宇宙服を強化する装備もクラフト可能となる。たとえば酸素容量を増加させる「酸素バルーン」を装備すれば、船外活動できる時間が75秒から100秒になる! ……だいぶ小刻みな延長だがないよりはマシだ。
また、酸素を補給できる「酸素ステーション」を宇宙空間に設置すれば、それまでより離れた場所まで足を伸ばせるようにもなる。
行動範囲が広がれば広がるほど、入手できる物資は増え、行動の自由も広がっていく……。つまり本作はそのタイトル通り、息が続く限界(ブレスエッジ)を伸ばしていくことで、状況や物語を進展させていくゲームなのである。
こう説明すると、うまくプレイすれば順調に進展していくゲームのように感じるかもしれないが、実際にはそんなことはない。断じてない。
物資はつねに不足気味であり、探索そのものより、探索に必要なツールやアイテムを作るための物資を探し回っている時間が長いようなところがある。そして何をしていようが喉は渇き、腹も減る。たまにはベッドで休息し、体力を回復する必要だってある。
ツール類も使っているうちにすぐに壊れてしまうので、壊れる前に新しいものを作っておく必要もある。それを怠ると、ツールなしで物資を集めるハメになり、さらに面倒な事態になるので諦めて作るしかない。
そうこうしているうちに時間が経過、また飢えと渇きが襲ってきて……といった具合に、やるべきことはつねに山積みで、プレイするほどに積み重なっていくような感覚がある。
「まず物資を蓄積すれば効率化できるのでは?」と思った人もいるかもしれない。でもその場合は、インベントリとコンテナ(アイテムボックス)がすぐに溢れてしまう。どんなふうに遊ぶにせよ、やりくりの大変さを存分に味わうことができるだろう。
▲部屋のあちこちに物資を置いて管理するハメに……
本作の舞台は宇宙ということで、前後左右はもちろん、上下方向にも大きな広がりがある。しかしイベントを進めていく順番はプレイヤーに委ねられているため、入手できる物資や設計図の見逃しが起こりやすく、適切な装備を整えないまま先に進んでいたことに「後から気がつく」ことも多い。
ゲーム中直面する問題の多くは、「酸素ステーション」の数を増やすことで強引に解決できるのだが、そこがある意味では罠でもある。ステーションをむやみに増やすとステーションへの酸素補給が煩わしいし、物資の浪費にもつながってしまう。
そうした本作のアンバランスな遊び応えを、宇宙での過酷なサバイバル感や、オープンワールドの醍醐味と感じるか。それとも不親切だと感じてしまうか。そこが本作を楽しめるかどうかの大きな分かれ目になってくるだろう。
▲二章の早い段階で「ロケット」掃除機を見つけられないと、大変なことになるだろう(なりました)
ロシアのデベロッパが描く
レトロフューチャー感も楽しい
なお、本作で描かれている未来世界は「ソビエト連邦が崩壊しなかった未来」らしく、事あるごとに「同志」と呼びかけられたり、プロパガンダ的な映像や絵があちこちにあったり、艦内放送ではソ連軍軍歌の「タチャンカ(某『R6S』の彼を思い浮かべるかもしれないが、荷台に機関銃を据え付けた馬車のこと)」や、ロシア民謡風のポップス(?)が流れていたりする。物資の欠乏ぶりもあいまって(それは遭難が主因だとは思うが)、なかなかのディストピアっぷりを醸し出している。また本作のアートワークは、1960年代に流行した流線型のロケットや、シュールな形の光線銃、木目調プラスチックなどに象徴される、いわゆるなレトロフューチャー調。当時は西側諸国だけでなく、東側諸国でも同様のムーブメントがあり、しかも宇宙開発でソ連がアメリカに先んじていた時代でもあるため、ソ連が存続した未来像としても、どこかしっくりくるものがある。
ちなみに本作のデベロッパーはロシアのスタジオであるRedruins Softworks。筆者は「これがレトロフューチャーの本場の人たちが出す味か……」などと奇妙な説得力と感慨深さ、そして郷愁を感じてしまった。
そして随所に仕込まれたロシアンジョーク(?)的なネタアイテムがいちいち面白い。最初のうちはコレクションを楽しんでいたが、あまりにも膨大なのと、持ち運べる物資の量のシビアさゆえに、泣く泣く諦めるようになるのがせつなくもある(笑)。
▲ローカライズはかなり丁寧かつ秀逸
▲フェイタリティを決めた瞬間、宇宙船が爆発!
▲ちょっと心配になる方もいるかもしれないが、『モータルウォンバット』なので安心してください
▲と思いきや、こちらは少しアウトかもしれない!?
本作は古今東西のSF作品やゲームに詳しければ詳しいほど、味わい深く楽しめる作品であることは間違いない。
なお、Redruins Softworksの発表によれば、今後「ちょっとした追加コンテンツも実装予定」とのこと。親愛なるイワンたちがどんなクレイジーなものを準備しているか期待しつつ、まずはゲーム本編をプレイしてみてほしい。
●タイトル:BREATHEDGE
●ジャンル:オープンワールドサバイバルゲーム
●発売元:HypeTrain Digital
●開発元:RedRuins Softworks
●プラットフォーム:PC(Steam)
●発売日:2021年2月26日
●価格:2570円
●必須スペック
OS: Windows 7, 8, 10 64bit
プロセッサー: Intel core i3 (3rd generation)
メモリー: 8GB
グラフィック:NVIDIA GeForce GTX660
ストレージ: 7GB
●推奨スペック
OS: Windows 7, 8, 10 64bit
プロセッサー: Intel core i5 (4th generation)
メモリー: 8GB
グラフィック: NVIDIA GeForce GTX1060
ストレージ: 7GB
●公式サイトURL:https://www.facebook.com/breathedgegame/
●ダウンロードサイトURL:https://store.steampowered.com/app/738520/Breathedge/
【連載】Alienware Zone PCゲームレビュー<2021年版>
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