Gamers Zone

move to login

GAME PCゲームで勝ち抜くための情報満載!

『Sherlock Holmes Chapter One』Steam版レビュー:オープンワールドで若き日のホームズを操作する難解推理ゲーム

世界中でもっとも有名な探偵、シャーロック・ホームズ。彼が登場するゲームは数多くあるが、『Sherlock Holmes Chapter One』(シャーロック・ホームズ チャプターワン)は彼がまだ探偵を始める前の青年時代にスポットを当てたオープンワールドの推理ゲームだ。プレイヤーは三人称視点でシャーロック・ホームズを動かし、事件の真相に迫っていく。


短編集『シャーロック・ホームズの思い出』に掲載された「グロリア・スコット号事件(青空文庫)」に登場する大学生のホームズが、小説に登場する中ではもっとも若いエピソード。このゲームに登場するホームズはそれよりも前のエピソードという設定なので、成人したばかりの頃(1873年前後)が物語の舞台となっている。


舞台は地中海にある島「コルドナ」。ホームズは相棒のジョンと共に、母の墓があるこの島へ降り立つところからストーリーが始まる。観光で賑わっているコルドナには、きらびやかな表向きの顔とは別に、さまざまな犯罪が行われている。

余談だが、相棒のジョンは後に生涯の相棒となる医師「ジョン・H・ワトスン」とは別人の「もう一人のジョン」という設定。別人なのに同じ名前なのは、単なる偶然……?q

『Sherlock Holmes Chapter One』のポイント
  • オープンワールドで事件を捜査・推理する新鮮な体験
  • 謎解きアドベンチャーファンに「ちょうどいい」難易度
  • 正解も不正解もない。あるのは、ホームズの判断のみ

オープンワールドでの捜査・推理は新鮮

これまでオープンワールドのゲームにはアクションRPGはあったが、謎解きアドベンチャーゲームをオープンワールドで遊ぶというのは比較的珍しい。そこで本記事ではまず、基本のゲームシステムから説明していこう。

画面は三人称視点で進行、移動やカメラ操作などの操作はTPS系に近いので、操作に迷うことはないだろう。ホームズを移動させ、インタラクトできる対象に近寄ると「◎」アイコンが表示される。ここでボタンを押すと対象が人間なら話しかけて、対象が物体なら調べる動作を行うというのが基本となる。

▲話しかけることができるときや、調べられる対象に近づくと「◎」アイコンが表示される

ただし、広い建物の中にたくさんの人物がいる場合、すべての物体や人物に接近しなくてもいいように、「周囲を分析する」という機能が用意されている。これを使うと、視界内でインタラクトできる場所があれば離れている場所でも「◎」アイコンが表示される。使用するたびにリチャージする時間が必要となるため連発はできないが、インタラクトできる場所が見つからないためにシナリオが進まない……というストレスは皆無だ。

▲「周囲を分析」したところ。青白くなっているところがスキャンされた場所だ

なお、ホームズにはもうひとつ、他の人にはない特殊な能力がある。ホームズの類いまれなる観察力を発揮できる「集中」ボタンを押すと、相手の外観はもちろん、会話内容や服装、しぐさなどから相手の国籍や職業、性格や趣味などまで推理できる。

この2つの能力を駆使して事件を解決に導いていくことになるという、このゲームならではのシステムを採用している。

▲ホテルのソファでくつろいでいる男性を「集中」でチェック

謎解きアドベンチャーゲームファンも納得の
「ちょっと難しい」難易度設定

この手のミステリー色の強いゲームが大好きな人ならば、その難易度はもっとも気になる点だろう。ましてやホームズの2つの能力があると聞けば、「プレイヤーが推理する余地もなく、どんどん事件が解明されてしまうのでは?」と不安になる人がいてもおかしくない。このゲームの難易度は「難しい」と感じるものになっているが、「絶対わからん! こんなの解けない!」とういうほどではない。イメージ的には「少し難解」、5段階の難易度中4くらいという印象だ。

前述したように、ホームズの特殊能力によってインタラクトする「場所」で迷うことはないのだが、次に「どこへ」向かえばいいのかについては自分で考えなければならない。例えば最初の事件では、ある部屋の前にはホテルマンが立っており、ホームズが入れないようになっている。ところが「拾った杖を、持ち主である退役軍人へ返しに行け」という指示は出るものの、その相手がどこにいるのかはわからない。

実は拾った杖の持ち主が判明すると、さきほどまでドアの前に立ちふさがっていたホテルマンがいなくなっており、ドアを開けられるようになっているのである。最初の事件ではこの「さっきまでいたホテルマンがいない?」と気付けないと、事件が起こりすらもしない。簡単すぎず、かと言って難しすぎるわけでもないという絶妙な難易度設定だと筆者は感じた。

▲特に目立った表示もなく、ある時からホテルマンが消えていた。ここに入るといよいよ事件が始まる

正解も不正解もない。
あるのはプレイヤーが選んだ選択肢のみ

ホームズに「観察」という能力があることは前述したが、事件の関係者など、重要人物に対してはより深く「観察」することもできる。

事件の被害者である英国の退役軍人クレイヴン卿に対しては、顔はもちろん身体からつま先に至るまで、じっくり観察することになる。彼を観察した結果、「結婚指輪をしていない」「顔が赤く腫れている」「高価な新品の服を着ている」「拳が赤く変色している」という4つの情報を得た。

一般的な推理ゲームであれば、この4つの情報を得たところで登場人物のプロフィールが確定する流れ。しかし、このゲームではこれらの情報から、彼のプロフィールが何なのかを推察するのも、プレイヤーの選択肢に委ねられている。

たとえば拳が赤いのは誰かを殴ったばかりなのか、それとも彼が健康のためにボクシングを嗜んでいるからなのか。どちらが正解かはわからないが、どちらの判断をしてもゲームオーバーになることはない。あくまでホームズ(プレイヤー)がそう判断した! ということで、それが正解ルートとしてゲームが進行し、物語にも影響はない。

▲高価かつ新品の服を着ているところから、「裕福でお洒落」という推察

▲4つ設定された観察ポイントを総合して判断する。ただし、彼を「英国貴族」と判断するか、「病気の英国人」と判断するかはプレイヤーの選択次第

人物に対するプロフィールの確定と同様に、ホームズが犯人を警察に突き出すか、それとも見逃してやるかの判断も委ねられている。もちろん、これもどちらを選ぼうがそれはホームズ自身であるプレイヤーの判断なので、どちらも正解。正義や悪と断定できることなど、この世にはないのだから。

▲捜査の結果、わかった事実の断片をホームズの脳内でマッピングする「記憶の宮殿」。複数の事実を組み合わせると、新しい推理が誕生する

▲捜査と推理の結果、犯人が確定した。犯人には前科があるため、逮捕されれば死刑はほぼ決定だろう。しかし、彼が犯した罪には同情に値するだけの理由があった

▲犯人を警察に突き出したところ。この判断は正しかったのかどうか。それは誰にもわからない

突然始まる新しい捜査モードを
どう受け止めるかで評価は変わる

このゲームは部分的に「集中」で人物や物体を観察する必要があるが、基本は移動とインタラクトが中心。このため使用ボタン数も少なく、操作についてはすぐに慣れるだろう。

しかし事件現場では、証拠が一定数揃うと自動的に「想像」というモードが始まり、犯人や被害者の位置関係を指定しなければならないのだが、この操作に関するチュートリアルはない。

このほかにも、ドアの前でひそひそ話をしているメイドたちに近づくと耳の形をしたアイコンが表示され、それを選ぶと「噂話」モードに移行。これも特にチュートリアルはなく、画面右上に表示される「有効なキーワードを聞き取ろう」という指示が出るのみ。

さらに、捜査で集めた証拠を組み合わせて関連性を推理するモードも、ボタン操作の説明「ロックまたはアンロック」という説明しか表示されない。

前述した3つの捜査モードはすべて事件を解決するために必要なので、無視するわけにはいかない。事件を解決に導くための捜査や推理をしたくてゲームをプレイしているのに、各捜査モードの操作方法や目的を手探りで探すために捜査がストップしてしまうのは、正直ストレスだった。次以降のエピソードでも、次々と新たな捜査モードが登場する。

ただし、このゲームはどんなに時間がかかろうと、間違った捜査や推理をしようと、ゲームオーバーにはならない。じっくりと腰を据え、新しい捜査モードが始まっても「これはどうやって操作するのかな?」とポジティブに受け止められれば、珠玉の推理シナリオを堪能できるはず。19世紀後半の街を歩き回り、当時の文化や人物の服装などを観察するという楽しみ方もオススメだ。

ちなみに、日本語テキストはすんなり読めるものになっているので、「読みづらくて内容が入ってこない」なんていうことはなかった。

オープンワールド+謎解きアドベンチャーという今までにないゲーム体験ゆえ、この手探り感を楽しめるかどうか。合う合わないがはっきりしそうだが、この体験は他では味わえないもの。少しでも興味があれば、ぜひ一度プレイしてみてほしい。

▲証拠が一定数揃うと始まる「想像」モード。グシャっとなった光の線に触れ、事件当時の人物配置を想像する

▲メイド同士の会話に耳を傾け、事件に関係あるワードが表示された時のみチェック

▲捜査結果の断片は、1つを選択してロックしてから、もう1つの断片を選ぶ。関連性があるなら、ホームズの推理結果が追記される

© 2021. Frogwares Ireland Ltd. All rights reserved. “Sherlock Holmes” is a registered trademark of Frogwares Ireland Ltd. All rights reserved.

●タイトル:Sherlock Holmes Chapter One
●ジャンル:オープンワールド推理アドベンチャー
●発売元:Frogwares
●開発元:Frogwares
●プラットフォーム:PC(SteamEpic Games Store)、PlayStation 5、Xbox Series X|S
●発売日:2021年11月16日
●価格:
通常版 Steam、Epic Games Store、Xbox Series X|S版 5600円[税込] / PlayStation 5版 4730円[税込]
デラックスエディション Steam、Epic Games Store、Xbox Series X|S版 7500円[税込] / PlayStation 5版 6578円[税込]
●必須スペック
OS: Windows 10 64bit
プロセッサー:Intel Core i5-6600 または AMD Ryzen 5 2600
メモリー:12GB
グラフィック: NVIDIA GeForce GTX960(4GB) または AMD Radeon R9 380(4GB)
DirectX: Version 11
ストレージ:28GB
●推奨スペック
OS: Windows 10 64bit
プロセッサー:Intel Core i5-8400 または AMD Ryzen 5 3600
メモリー:12GB
グラフィック: Nvidia GeForce GTX1070(8GB) または AMD Radeon RX 5600 XT
DirectX: Version 11
ストレージ:28GB
●公式サイトURL:https://sherlockholmes.one/
●ダウンロードサイトURL:
Steam
https://store.steampowered.com/app/1137300/Sherlock_Holmes_Chapter_One/
Epic Games Store
https://www.epicgames.com/store/ja/p/sherlock-holmes-chapter-one
【連載】Alienware Zone PCゲームレビュー<2021年版>

WRITER RANKING プロゲーマーやゲーム業界人などの人気ライターランキング