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『棄海:プランティーズアドベンチャー』Steam版レビュー:ゲームシステムはシューティングゲームだけど、やっていることはメトロイドヴァニア!?
『棄海:プランティーズアドベンチャー』は、メトロイドヴァニア系の新作だ。Steamで「メトロイドヴァニア」タグが付いたゲームは1236本(2021年12月1日時点)。よほどの秀作でない限り埋もれてしまうだろうが、このゲームはその中でも目立つ存在となるだろう。なにしろ、このゲームのジャンルは「メトロイドヴァニア」+「ツインスティックシューティング」(キーボード操作の場合はWASDで移動し、マウスでAIM)なのだから。
プレイヤーが操作するのは半魚人のような子ども「プランティー」。フィールドは全部海中なので、上下左右好きな方向へ移動できる。このため、メトロイドヴァニアでよくある「ぎりぎりでジャンプが届かない」といった、シビアなジャンプを求められるようなギミックは存在せず、アクションゲームが比較的苦手な人でも遊べる親切設計。難易度EASYを選べるのも好印象だ。
▲マップを開くと、未踏エリアは外形線が途切れているので、どこに行けばいいのかがすぐにわかる
『棄海:プランティーズアドベンチャー』のポイント
ダッシュ回避中の無敵時間で
プレイヤーが操作するプランティーは武器を持っていない。右スティックを傾けると照準代わりの点線が表示されるので、これを敵(変種魚)に向けるとロックオンカーソルが出現。この時に攻撃ボタンを押すとカジキ型ロボ「ブラント」が点線の方向へ高速移動し、敵を攻撃する。
▲画面右の敵キャラに「プラント」が突進して攻撃しているところ
ロボのブラントにはやられ判定がなく、ダメージを受けるのはプランティーのみ。戦闘は左スティック(WASDキー)でプランティーを移動させつつ右スティック(マウス)で敵をAIMし、ブラントで攻撃する。ここまでなら一般的なシューティングゲームなのだが、このゲームには「マーキング」という独自システムがある。
プランティーには「ダッシュ回避」という、無敵時間がある前方へのダッシュ移動がある。この無敵時間中に敵の中心をすり抜けると、敵をマーキングできる。マーキング中は与ダメージ量が増加する上、再攻撃までのクールダウンが早くなるという利点もある。これを使いこなせるようになると、戦闘が一気に楽に、そして楽しくなるのだ。
アクションゲームでは敵の攻撃をぎりぎりでガードして弾く「パリィ」システムが人気だが、シューティングゲームでこのようなシステムが採用されるのは珍しい。かつて「自機を敵弾にかすらせる」ことでパワーアップするシューティングゲームは存在したが、それとも違う新しいシステムだ。
▲ダッシュ回避で敵の中心をすり抜け、マーキングしたところ
▲マーキング中の攻撃はダメージが多い上、すぐに再攻撃できるようになる
ダッシュ回避の無敵時間は、ダッシュ開始から2キャラ程度進んだところまで。この移動距離の間に敵と交差し、無敵時間が終わる前に離れなくてはならないので、出す間合いは意外とシビア。動きが遅い敵には狙っていけるけれども、きちんと間合いを調整してから出さないと失敗するという、絶妙な調整。これがアクションやシューティング好きの人には燃える要素となる。
▲回避不可能と思える敵の弾幕も、ダッシュ回避を上手く使えばノーダメージで倒すこともできる
ボス戦ではボスが地面に潜り、どこから攻撃を仕掛けてくるのかわからなくなるときもある。そこで役に立つのが、攻撃ボタンを長押しした時に出せる「バリア」だ。数秒間しか持続しないがバリア展開中は完全無敵になるため、意表を突いた攻撃を防げる。
Steamの販売ページでは「メトロイドヴァニア」「アクション」というタグが付けられているこのゲーム。しかし、ここまでの紹介文を読んだ方にはご理解いただけているはずだ。このゲームはアクションではなく、優れた全方向スクロールの「ツインスティックシューティング」だということを。
▲攻撃ボタンを長押しするとブラントが自分の周りを数秒高速回転し、敵からの攻撃を防いでくれる
▲ゲーム開始直後にいろいろ表示されるが、深く考えずにゲームを進める人がほとんどだろう
ところが、ストーリーを読み進めていくと、いろいろと不穏な空気が漂ってくる。たとえば、「WE CAN SAVE THE WORLD」と書かれた巨大な看板には、プランティーと同じ姿の海底ガーディアンが描かれ、守っている対象は現代にもある高層ビル群。では、人類はどこへ行ったんだろう? というか、自分は人類ではないのか? などの疑問が発生。
そんなことを考えながら指示に従って通路を進んでいったとき、あるエリアへ足を踏み入れた途端にドン・カチカチの大群に襲われ、瀕死になるプランティー。ブラントはそんなプランティーを運び、スタート地点のアウトポストへ。「複数の損傷と手足の脱臼」という診断結果。つまりプランティーは生物だけど、結構な大怪我をしているということ。
▲ドン・カチカチの大群に襲われて、一瞬で瀕死になるプランティー
プランティーに戦闘の基礎を教えてくれるロボコーチも、過去100年に何十万人もの新兵を育ててきたと話していた。つまり、プランティーのようなガーディアンが他にもいたはず。でも、プランティーは「5年ぶりの新兵」だという。
人類とは似て非なる生物であるガーディアンの自分に、人類の未来が託されている? でも過去5年、ガーディアンはいなかったというのはどういう意味?
少しずつ明かされる、プランティーとガーディアンの存在意義。旅の途中、美しい珊瑚に出会ったと思ったら、それは看板。看板が老朽化のためか、剥がれて落ちていくというシーンを見ると、何かただならぬ状況が起きてしまったということは察することができる。
そしてゲームタイトルにあるプランティー「ズ」という複数形は、まさかプレイヤーのプランティーがたくさんいるということ? タイトルにある「棄海」って、まさか?
▲「WELCOME TO ROYLA」という文字が、むしろ物悲しい看板
このように、可愛いキャラクターとは裏腹に、ディストピアな世界観のストーリーが展開する本作。ただストーリーがドラマチックなだけに、海外メーカー産のゲームだと聞いて微妙な翻訳テキストを心配する人も少なくないはず。
本作は台湾に本拠地を置く18Light Gameが作っているが、日本語によるテキストメッセージに破綻はまったく感じられなかった。強いて言うならば、Steamの商品ページに掲載されているゲーム紹介文で少々日本語が破綻していた程度。
この「ダッシュ回避でマーキング~すれ違いざまに反撃」という工程が上手くいくと、自分でプレイしていても「俺SUGEEEE!」感を満喫できる。こんなにも戦闘行為自体が楽しく、かつメトロイドヴァニアなので逐次セーブしながら自分のペースで長時間プレイできるという喜びが味わえるゲームはあまりない。
ただし、欠点もないわけではない。敵は右スティックでロックオンできるのに、破壊可能な壁やオブジェクトは、ブラントを当ててみるまでわからないこと。このため、アイテムBOXを破壊しないまま通過してしまったり、壊せる壁に気付かずに行き詰まってしまうことがあった。筆者はこれを防ぐために、通常移動時ですら右スティックをグリグリ動かし、ブラントの発射ボタンを連打していた。大きなデメリットはないが、騒がしいし、BGMの邪魔にもなるため、できればそんなことはしたくなかったというのが本音だ。
けれども、そんな欠点を補って余りある魅力に溢れたゲームに仕上がっている。たくさん世に溢れた「メトロイドヴァニア」に食傷気味という人にこそ、本作を遊んでいただきたい。
▲壊せる場所を探すため、怪しい物体を見つけたらすぐにブランドをぶつける癖をつけておくといい
余談だが、要求されるPCのスペックについては、筆者がテキスト執筆用に使っているオンボードグラフィックのビジネス用途のノートパソコン(Core i5-1035G1)でテスト。フレームレートを60fpsから30fpsへ落とせば、「少し遅い?」くらいのゲームとして楽しめた。ビジネス用途PCしか持っていない人にもおすすめできる一作だ。
© 2012-2021 18LIGHT GAME LTD.
●タイトル:棄海:プランティーズアドベンチャー
●ジャンル:スローライフ街破壊ゲーム
●発売元:18Light Game Ltd., CE-Asia, 樂磚Joy Brick, Mayflower Entertainment
●開発元:18Light Game Ltd., FunZone Games
●プラットフォーム:PC(Steam)
●発売日:2021年11月19日
●価格:1840円[税込]
●必須スペック
OS: Windows 7
プロセッサー:Intel Core i3
メモリー:4GB
グラフィック: NVIDIA GeForce GTX920 または AMD R7 370
ストレージ:5GB
●推奨スペック
OS: Windows 10
プロセッサー:Intel Core i5
メモリー:8GB
グラフィック: NVIDIA GeForce GTX970 または AMD RX 570
ストレージ:10GB
●公式サイトURL:https://18light.cc/jp/PFA/
●ダウンロードサイトURL:
Steam https://store.steampowered.com/app/1286280/
プレイヤーが操作するのは半魚人のような子ども「プランティー」。フィールドは全部海中なので、上下左右好きな方向へ移動できる。このため、メトロイドヴァニアでよくある「ぎりぎりでジャンプが届かない」といった、シビアなジャンプを求められるようなギミックは存在せず、アクションゲームが比較的苦手な人でも遊べる親切設計。難易度EASYを選べるのも好印象だ。
▲マップを開くと、未踏エリアは外形線が途切れているので、どこに行けばいいのかがすぐにわかる
『棄海:プランティーズアドベンチャー』のポイント
- メトロイドヴァニアなのにツインスティックシューティング
- ダッシュの無敵時間で敵とすれ違う、美しくもアツい独自システム
- 可愛いビジュアルとは裏腹の不穏なストーリー
ダッシュ回避中の無敵時間で
「敵の中心を通過」すると反撃のチャンス
プレイヤーが操作するプランティーは武器を持っていない。右スティックを傾けると照準代わりの点線が表示されるので、これを敵(変種魚)に向けるとロックオンカーソルが出現。この時に攻撃ボタンを押すとカジキ型ロボ「ブラント」が点線の方向へ高速移動し、敵を攻撃する。▲画面右の敵キャラに「プラント」が突進して攻撃しているところ
ロボのブラントにはやられ判定がなく、ダメージを受けるのはプランティーのみ。戦闘は左スティック(WASDキー)でプランティーを移動させつつ右スティック(マウス)で敵をAIMし、ブラントで攻撃する。ここまでなら一般的なシューティングゲームなのだが、このゲームには「マーキング」という独自システムがある。
プランティーには「ダッシュ回避」という、無敵時間がある前方へのダッシュ移動がある。この無敵時間中に敵の中心をすり抜けると、敵をマーキングできる。マーキング中は与ダメージ量が増加する上、再攻撃までのクールダウンが早くなるという利点もある。これを使いこなせるようになると、戦闘が一気に楽に、そして楽しくなるのだ。
アクションゲームでは敵の攻撃をぎりぎりでガードして弾く「パリィ」システムが人気だが、シューティングゲームでこのようなシステムが採用されるのは珍しい。かつて「自機を敵弾にかすらせる」ことでパワーアップするシューティングゲームは存在したが、それとも違う新しいシステムだ。
▲ダッシュ回避で敵の中心をすり抜け、マーキングしたところ
▲マーキング中の攻撃はダメージが多い上、すぐに再攻撃できるようになる
ダッシュ回避の無敵時間は、ダッシュ開始から2キャラ程度進んだところまで。この移動距離の間に敵と交差し、無敵時間が終わる前に離れなくてはならないので、出す間合いは意外とシビア。動きが遅い敵には狙っていけるけれども、きちんと間合いを調整してから出さないと失敗するという、絶妙な調整。これがアクションやシューティング好きの人には燃える要素となる。
▲回避不可能と思える敵の弾幕も、ダッシュ回避を上手く使えばノーダメージで倒すこともできる
ボス戦ではボスが地面に潜り、どこから攻撃を仕掛けてくるのかわからなくなるときもある。そこで役に立つのが、攻撃ボタンを長押しした時に出せる「バリア」だ。数秒間しか持続しないがバリア展開中は完全無敵になるため、意表を突いた攻撃を防げる。
Steamの販売ページでは「メトロイドヴァニア」「アクション」というタグが付けられているこのゲーム。しかし、ここまでの紹介文を読んだ方にはご理解いただけているはずだ。このゲームはアクションではなく、優れた全方向スクロールの「ツインスティックシューティング」だということを。
▲攻撃ボタンを長押しするとブラントが自分の周りを数秒高速回転し、敵からの攻撃を防いでくれる
可愛い子どもの両生類のように見えるプランティーと、不穏なストーリー
このゲームをスタートすると、最初はプランティーが眠りから覚めるシーンから始まる。「アウトポスト管理員」と名乗る機械は、プランティーのことを「プランティーZX-921」と呼んでいる。当然、ゲームを始めたばかりのタイミングで伝えられる「ZX-921」というのは形式番号かな? くらいの気持ちでスルー。「西暦2487年9月22日午前7時です」と言われても、特に違和感はなく「今から466年後のストーリーか」くらいに受け止めてゲームを継続。▲ゲーム開始直後にいろいろ表示されるが、深く考えずにゲームを進める人がほとんどだろう
ところが、ストーリーを読み進めていくと、いろいろと不穏な空気が漂ってくる。たとえば、「WE CAN SAVE THE WORLD」と書かれた巨大な看板には、プランティーと同じ姿の海底ガーディアンが描かれ、守っている対象は現代にもある高層ビル群。では、人類はどこへ行ったんだろう? というか、自分は人類ではないのか? などの疑問が発生。
そんなことを考えながら指示に従って通路を進んでいったとき、あるエリアへ足を踏み入れた途端にドン・カチカチの大群に襲われ、瀕死になるプランティー。ブラントはそんなプランティーを運び、スタート地点のアウトポストへ。「複数の損傷と手足の脱臼」という診断結果。つまりプランティーは生物だけど、結構な大怪我をしているということ。
▲ドン・カチカチの大群に襲われて、一瞬で瀕死になるプランティー
プランティーに戦闘の基礎を教えてくれるロボコーチも、過去100年に何十万人もの新兵を育ててきたと話していた。つまり、プランティーのようなガーディアンが他にもいたはず。でも、プランティーは「5年ぶりの新兵」だという。
人類とは似て非なる生物であるガーディアンの自分に、人類の未来が託されている? でも過去5年、ガーディアンはいなかったというのはどういう意味?
少しずつ明かされる、プランティーとガーディアンの存在意義。旅の途中、美しい珊瑚に出会ったと思ったら、それは看板。看板が老朽化のためか、剥がれて落ちていくというシーンを見ると、何かただならぬ状況が起きてしまったということは察することができる。
そしてゲームタイトルにあるプランティー「ズ」という複数形は、まさかプレイヤーのプランティーがたくさんいるということ? タイトルにある「棄海」って、まさか?
▲「WELCOME TO ROYLA」という文字が、むしろ物悲しい看板
このように、可愛いキャラクターとは裏腹に、ディストピアな世界観のストーリーが展開する本作。ただストーリーがドラマチックなだけに、海外メーカー産のゲームだと聞いて微妙な翻訳テキストを心配する人も少なくないはず。
本作は台湾に本拠地を置く18Light Gameが作っているが、日本語によるテキストメッセージに破綻はまったく感じられなかった。強いて言うならば、Steamの商品ページに掲載されているゲーム紹介文で少々日本語が破綻していた程度。
これはツインスティックシューティングの新作だ
本作は、メトロイドヴァニアのファンというよりは、ツインスティックシューティングのファンにこそプレイしてほしい一作と言える。シューティングゲームは弾を避けることが目的の作品が多いが、本作の敵は弾をほとんど撃ってこない。敵の攻撃は体当たりが中心だが、通常の攻撃では与ダメージが低いため、必然的にダッシュ回避で敵とすれ違い、マーキングしてからの攻撃を行うことになる。この「ダッシュ回避でマーキング~すれ違いざまに反撃」という工程が上手くいくと、自分でプレイしていても「俺SUGEEEE!」感を満喫できる。こんなにも戦闘行為自体が楽しく、かつメトロイドヴァニアなので逐次セーブしながら自分のペースで長時間プレイできるという喜びが味わえるゲームはあまりない。
ただし、欠点もないわけではない。敵は右スティックでロックオンできるのに、破壊可能な壁やオブジェクトは、ブラントを当ててみるまでわからないこと。このため、アイテムBOXを破壊しないまま通過してしまったり、壊せる壁に気付かずに行き詰まってしまうことがあった。筆者はこれを防ぐために、通常移動時ですら右スティックをグリグリ動かし、ブラントの発射ボタンを連打していた。大きなデメリットはないが、騒がしいし、BGMの邪魔にもなるため、できればそんなことはしたくなかったというのが本音だ。
けれども、そんな欠点を補って余りある魅力に溢れたゲームに仕上がっている。たくさん世に溢れた「メトロイドヴァニア」に食傷気味という人にこそ、本作を遊んでいただきたい。
▲壊せる場所を探すため、怪しい物体を見つけたらすぐにブランドをぶつける癖をつけておくといい
余談だが、要求されるPCのスペックについては、筆者がテキスト執筆用に使っているオンボードグラフィックのビジネス用途のノートパソコン(Core i5-1035G1)でテスト。フレームレートを60fpsから30fpsへ落とせば、「少し遅い?」くらいのゲームとして楽しめた。ビジネス用途PCしか持っていない人にもおすすめできる一作だ。
© 2012-2021 18LIGHT GAME LTD.
●タイトル:棄海:プランティーズアドベンチャー
●ジャンル:スローライフ街破壊ゲーム
●発売元:18Light Game Ltd., CE-Asia, 樂磚Joy Brick, Mayflower Entertainment
●開発元:18Light Game Ltd., FunZone Games
●プラットフォーム:PC(Steam)
●発売日:2021年11月19日
●価格:1840円[税込]
●必須スペック
OS: Windows 7
プロセッサー:Intel Core i3
メモリー:4GB
グラフィック: NVIDIA GeForce GTX920 または AMD R7 370
ストレージ:5GB
●推奨スペック
OS: Windows 10
プロセッサー:Intel Core i5
メモリー:8GB
グラフィック: NVIDIA GeForce GTX970 または AMD RX 570
ストレージ:10GB
●公式サイトURL:https://18light.cc/jp/PFA/
●ダウンロードサイトURL:
Steam https://store.steampowered.com/app/1286280/
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