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『Lake』Steam版レビュー:木漏れ日と湖光る故郷で郵便配達。正解のない人生を思うがままに生きたくなる選択進行型アドベンチャーゲーム

2021年9月2日、『Lake』がPC・Xbox向けに発売された。オランダの開発スタジオ「Gamious」が手がけるアドベンチャーゲームだ。

主人公は大都市でキャリアを築いた40代の女性、メレディス・ワイス。1986年、彼女は父に代わって郵便配達員の仕事をするため、故郷の町「プロビデンスオークス」へ向かう。配達を通してさまざまな住民たちと交流し、恋をして、最後には人生において重要な決断を下すことになる。


『Lake』ではプレイヤーの選択によってエンディングが分岐するが、いわゆる正解と言われるルートやバッドエンド、トゥルーエンドの類いはない。どの選択も等しく価値があるものとして描かれる。良い結末にたどり着くため、悪い結末を避けるために、プレイヤーがやりたいことを無視する必要はない。思うがままにストーリーを選べる点が特徴だ。本稿ではSteam版のレビューをお届けしたい。

『Lake』のポイント
  • 風光明媚なプロビデンスオークスでのスローライフ
  • 誰もが共感できる悩みを抱えた住民との交流
  • 正解、不正解がないから心のままに描けるストーリー

スマホも喧噪もない町で送る、ゆったりした配達員生活

主人公メレディスが2週間を過ごすプロビデンスオークスは、森と湖の町だ。大都市とは違い静かで、1980年代なのでスマホのうるさい通知とも無縁である。どうやらメレディスは、以前ソフトウェア会社で忙しく働いていたらしい。郵便配達員としての生活は、そんな日々を忘れるくらい穏やかだ。


▲配達で出会った人と立ち話。ちょっとした相談をされることも

郵便配達の仕事は月曜日から土曜日まで。父のバンを運転しながら、手紙や宅配物を町の住民たちに届けていく。時間制限や上司の目はなく、配達で出会った人々と会話をゆっくり楽しめるので、解放的な気分になれる。配達先に向かわず、湖を眺めながらただ車を走らせても誰にも文句は言われない。


運転中はラジオを聞くことができ、たまにキツネやウサギが飛び出してきて癒される。すでに訪れた場所はファストトラベルやオート運転で行くことが可能だ。配達作業は慣れてくると少し単調に感じられるため、この気遣いはありがたい。

▲仕事終わりや休日は仲良くなった住民と交流できる

▲住民たちとの予定は手帳に記録されていく。文字が重なってしまっているのが惜しい

住民たちと交流を深めていくと、仕事終わりや休日に彼らとのイベントが発生する。過保護な親に悩むティーンエイジャーとホラー映画を見たり、知らないうちに結婚して子どもをもうけた大親友と語り合ったり。自然を愛する木こりのため、アパート建設に対する抗議活動を手伝うこともある。黙々と配達をするシンプルな日々だからこそ、違う立場の人々と関わり、お互いに影響を与えあう素朴な嬉しさを思い出した。

▲フィルムカメラで町の景観を撮影

あまり大きな要素ではないが、特に印象に残ったのがフィルムカメラだ。ある住民に話しかけるともらうことができる。デジタルカメラやゲーム内のフォトモードと違って枚数制限があり、写真の仕上がりはすぐに確認できない。しかし、だからこそ本当に撮りたいものをじっくり考える時間が楽しく、イマイチな写真にも愛着が湧く。スローテンポなこのゲームにぴったりの機能だ。

夢と現実、キャリアと休息の間でどう生きるか

住民たちとの距離が縮まると、彼らがさまざまな悩みを抱えていることに気がつく。その悩みはどれも普遍的で、誰もが一度は感じたことがあるものだ。メレディスとプレイヤーは彼らの悩みに感化されながら、自身も「2週間後に町に残るか、大都市に戻るか」という難しい選択を行うことになる。

▲大親友のケイ。育児や仕事、叔父の急病に翻弄されながらも音楽制作を続ける

たとえば大親友のケイは、かつて本気で打ち込もうとした音楽との向き合い方を模索している。彼女は育児と叔父のレストランでの仕事に追われながらも、地元でミュージシャンとして人気になり始めていた。しかし叔父の急病によって音楽で羽ばたくことを諦め、彼の面倒を見ることに。それでも音楽制作を細々と続けていたケイだったが、ついに告げられた「レストランを継がないか」という提案に頭を悩ませる。レストランを継ぐことになれば、ミュージシャンとして町の外で有名になることがいよいよ難しくなるからだ。

ケイが最後に下す決断はここでは言わない。ただ彼女のストーリーには、夢は100%叶いもしないし終わりもしないと考えさせられ、思わず自分の人生を顧みた。自分は、メレディスはこれからどう生きていくのだろうかと。

幸い、「町に残るか、大都市に戻るか」を決めるまでには、たっぷり時間が用意されている。プレイヤーは最終日までに、何が好きで何をしたいかを見つければいい。町の良い面と悪い面がしっかり描かれているし、たまに大都市の会社から仕事依頼が来るので、どちらを選ぶかの判断材料になるはずだ。

▲町には良い人や良い出来事だけが待っているわけではない

▲たまにソフトウェア会社の同僚から仕事についての連絡が来る

町の悪い面は、異性といるときだけやたらカップルだと冷やかされる(本作では男女のキャラクターと恋愛関係になることができる)、噂や出来事があっという間に広まるなど、閉鎖的な環境ではよくありそうなものだ。基本的には良い住民が多いが、かなり失礼な対応をしてくる住民もいる。こういった出来事に反論するか、同調するかはプレイヤー次第である。

ソフトウェア会社の同僚からの連絡は、町にいながらも都会のビジネスを思い出させるだろう。莫大な利益が期待できる商談、開発中の商品について語る同僚の声は、ビジネスの楽しさに満ちている。依頼された仕事をこなせば、同僚が褒めてくれることもある。スローライフか、せわしなくも自分の可能性を広げられる都会の仕事に戻るか……プレイヤーの心は揺らぐだろう。

前述したように『Lake』には良いエンディング、悪いエンディングはない。どちらの結末を選んでも、メレディスの次の人生が静かに始まっていくだけだ。大きなカタルシスはないので、物足りないと感じるプレイヤーもいるかもしれない。ただ、自分で自分の人生を選ぶという、地に足の着いた爽やかな充実感を味わえるはずだ。


本作にはキャラクターがはまって動けなくなる、一部の日本語訳がおかしいといった不具合があるものの、プレイに大きな支障はない。動けなくなった場合は、そのまま別の場所へファストトラベルをすれば抜け出せる。忙しい生活にうんざりしている人、のんびりとスローライフを楽しみたい人はぜひプレイしてみてはいかがだろうか。


●タイトル:Lake
●ジャンル:アドベンチャーゲーム
●発売元:Whitethorn Digital
●開発元:Gamious
●プラットフォーム:PC(Steam、Epic Game Store)、Xbox Series X|S、Xbox One
●発売日:2021年9月1日
●価格:2050円[税込]
●必須スペック
OS: Windows 10 64bit
プロセッサー: Intel Core i5-4750 または AMD FX-8350
メモリー: 8GB
グラフィック:NIDIA GeForce GTX760 または AMD Radeon HD7950 (2GB VRAM)
ストレージ: 2GB
●推奨スペック
OS: Windows 10 64bit
プロセッサー: Intel Core i5-7600 または AMD Ryzen 5 1600
メモリー: 16GB
グラフィック: NIDIA GeForce GTX970 または AMD Radeon R9 390 (4GB VRAM)
ストレージ: 2GB
●公式サイトURL:https://whitethorndigital.com/lake
●ダウンロードサイトURL:
https://store.steampowered.com/app/1118240/Lake/
https://www.epicgames.com/store/ja/p/lake
【連載】Alienware Zone PCゲームレビュー<2021年版>

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