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PC版『Halo 4』レビュー!いろいろあった巨大IPの分岐点をあらためて遊んでみたら印象が変わった【オススメPCゲームレビュー】

2020年11月17日、PC版『Halo 4』が発売された。PC版『Halo: The Master Chief Collection』の最後の配信タイトルだ。オリジナル版の『Halo 4』はXbox 360向けに2012年11月に発売された。

本作は名作FPS『Halo』シリーズの8作目。超人兵士マスターチーフとエイリアンの宗教的同盟「コヴナント」の戦いを描くSFだ。『Halo 4』からは新章「リクレイマー・サーガ」が始まり、新しい敵「プロメシアン」との出会いに焦点が当たっている。

『Halo 4』はこの巨大IPのターニングポイントと言えるだろう。1作目の『Halo: Combat Evolved』(2001)から『Halo: Reach』(2010)まで、シリーズ6作品を手がけていたBungieがマイクロソフトから独立。新たな開発元として343 Industriesが本作を手がけた。

巨大IPを継ぎ、さらに進化させる役目を負った343 Industries。いくつかのリスクある決断を行い、『Halo 4』は過去作からの変更が目立つ作品となった。これには賛否両論が渦巻き、当時の筆者は自分の感想より、他のプレイヤーの感想を気にしていたように思う。個人的にはネガティブなイメージが強い作品だった。

オリジナル版の発売から約8年経ち、最新作『Halo Infinite』への期待が高まる今日。『Halo 4』は今どのように見えるのだろうか。このレビューではPC版の新要素に触れるとともに、『Halo 4』で起こった変化についてあらためて考えてみたい。

未知の惑星と未知の敵、再び

『Halo 4』の舞台は過去作に登場した人類の植民星や環状惑星「Halo」ではない。登場する敵もコヴナントとはまったく違う種族になっている。

▲新しい敵「プロメシアン」

『Halo 3』から4年後、コールドスリープから目覚めたマスターチーフは未知の惑星「レクイエム」に降り立つ。そこには古代種族「フォアランナー」の遺跡や、謎の敵「プロメシアン」が息づいていた。マスターチーフはプロメシアンを統べる悪役「ダイダクト」と出会い、彼から人類を守るための戦いに身を投じていく。

おなじみのエイリアン同盟「コヴナント」は引き続き登場するが、新しい舞台に新しい敵という思い切った設定だ。

この設定はシリーズ1作目『Halo: Combat Evolved』をプレイしたときのような感動をもたらしてくれる。プロメシアンの登場によって戦闘面が変わり、戦い方を一から組み立てていく、初めてコヴナントと戦ったときのような感覚を思い出した。コヴナントに慣れてきたところで登場した新しい敵は良い刺激になっている。

▲未知の惑星にたどり着いたマスターチーフはフォアランナーの遺跡を見つける

▲フォアランナーの遺跡は調べることができる

マスターチーフにとって未知の惑星という舞台設定も効いている。序盤のミッションで洞窟を抜けると、天高くそびえるフォアランナーの遺跡を見つけた。そのときの神秘的な感覚は、1作目で初めてHaloリングを見たときのものに近い。冒頭では「フォアランナーの遺跡を調査する」という探検要素もあり、未知の惑星を歩く興奮が蘇った。

ただ、探検要素が少ないために、新しい世界を知る機会があまりなかったのが気になる。フォアランナーやプロメシアンについて知りたくても、ムービーの中に十分な説明はない。新しいキャラクターや専門用語を理解できず、ストーリーに付いていけなかったプレイヤーも多いだろう。筆者は冒頭の遺跡調査のような探検要素でそれを補えると思っていた。しかし手に入れられた情報は1つだけで、ストーリーとの関連性も分かりづらかった。

探検要素として「ターミナル」というストーリーを補完するムービーも落ちている。けれども、キャンペーンと並行してすべて揃えるのは難しい。ミッションに組み込まれた探検要素というよりは、隠しアイテムのようなポジションになってしまっている。

ストーリーを補完できて、かつ自然な流れで見つけられる探検要素がもっと欲しかったところだ。そうすればレクイエムという新しい世界を楽しみつつ、物語を深く理解できただろう。そもそもマップが1本道なので、探検要素を配置する余白がなかった点も惜しい。

しかし筆者の期待は最新作『Halo Infinite』で実現されそうだ。『Halo Infinite』ではオープンワールドが採用され、ストーリーと探検要素が密接につながっているという。そういえば『Halo 5: Guardians』にも何かを調査するという探検要素は引き継がれていた。マップ内に点在するキャラクターに話しかけて証拠を集める形で、量は少なかったが『Halo 4』よりはストーリーとの関連性が分かりやすかった。探索とストーリーのつながりは『Halo 4』から徐々に進化している。


本作のグラフィックはXbox 360版の時点で十分に美しかった。PC版ではさらにライティングやシャドウなど細かな項目が追加されている。4Kでも安定して60fpsを出せるので、今までになく滑らかなプレイが可能になった(使用機種:デスクトップPC: インテル Core i7-10700K/ GeForce RTX 2060 SUPER 8GB)。

人間と機械のエモーショナルなストーリー


ダイダクトとマスターチーフの戦いを描く『Halo 4』の物語には、もう一つの軸がある。マスターチーフと高性能AIコルタナの絆に迫るストーリーだ。ラブストーリーとも解釈できる物語は、戦争活劇がメインだった過去作の中では珍しい。

序盤のミッションではコルタナの「寿命」が近づいているという衝撃の事実が告げられる。突然わけの分からないことをしゃべったり、感情の制御が難しくなるなど、稼働して8年経った彼女には不具合が起きはじめていた。コルタナを治せる可能性がある人物は、生みの親のハルゼイ博士だけ。マスターチーフは博士に会うために、惑星レクイエムからの脱出を試みる。

今までマスターチーフは感情を表に出さず、任務を淡々とこなしていく無敵の兵士だった。しかし『Halo 4』での彼はとても人間らしい。コルタナの死が近いことを聞いて動揺したり、返す言葉に詰まったりしながらも、懸命に彼女を救おうとする。

▲マスターチーフはスパルタン計画のために誘拐された子どものうちの一人だった

それもそのはず、コルタナはマスターチーフにとってただのAI以上の存在だ。本作では超人兵士「スパルタン」を作る計画のために、マスターチーフが幼少期に誘拐されていたことが明かされる。彼はその生い立ちから精神的に不安定になってしまった。そこでマスターチーフを支えるために与えられたのがコルタナだったのだ。

感情的な描写とセリフが増えたため、マスターチーフのヒーロー性が弱くなったことにうろたえるプレイヤーも多かっただろう。開発側でも彼の描写については意見が割れていた模様。

個人的にこのエモーショナルなストーリーは好きだ。ずっと無敵だと思っていたマスターチーフの意外な一面には心揺さぶられる。コルタナはプレイヤーにとっても長年の相棒だから、2人の行く末が気になって仕方がなかった。

予想になってしまうが、筆者は最新作『Halo Infinite』でマスターチーフが再びヒーロー性を取り戻すと考えている。『Halo Infinite』が1作目『Halo: Combat Evolved』の精神的リブート、つまり原点回帰を目指しているからだ。また、ディレクターのフランク・オコナー氏は当時のインタビューで、マスターチーフを常に人間らしく描く気はないと語っている。『Halo 4』では彼の人間らしさを少し思い出させたいという意図があったようだ。もし最新作でマスターチーフが無敵のヒーローに返り咲いたら、人間味がある彼を見たからこその感動が生まれるだろう。

ついにクロスプレイが実装!
トレンドと伝統を模索しはじめたマルチプレイ


PC版『Halo 4』の配信と同時に、PCとXbox間のクロスプレイが解禁された。『Halo: The Master Chief Collection』内のマルチプレイヤー・ファイアファイト・フォージが対象となる。キャンペーンと『Halo 4』のスパルタンオプスは対象外だ。プラットフォームベースと入力ベースのマッチメイキングを選択できるので、自分の好みで調整するのが良いだろう。どちらもデフォルトではオフになっている。

『Halo 4』のマルチプレイでは、伝統的な面白さとFPSのトレンドの融合が試みられた。前作の『Halo: Reach』から引き継いでいる傾向だ。

長らくシリーズの魅力とされていたのは、純粋な撃ち合いの技量が試されるストイックさだった。全員が同じ武器でスタートするので、運ではなくフィジカルを頼るしかない。ところが、この伝統は『Halo 4』が取り入れたトレンドによって影を潜めてしまった。


ロードアウトが導入・拡張されたため、装備自体の強さが試合に大きな影響を与えるようになったのだ。プレイヤーはフィジカルで勝負する前に、ボルトガンのような有利な武器を持つことを重視した。確かに、試合の流れを見ながらロードアウトを考えたり、スキンのカスタマイズを行う楽しさはある。選び方によってはベテランプレイヤーに対して新規プレイヤーが有利になれる可能性さえあった。補給物資についても同じことが言える。ただ、フィジカル重視のストイックさという『Halo』の魅力は弱まってしまった。

また、『Halo 4』ではデフォルトでスプリントが可能になった。ダッシュ中は銃が撃てず、移動速度の上昇によってマップが大きくなったため、過去作ほど試合展開がころころ変わることはない。一部のプレイヤーはスプリントがなかった頃の『Halo』を懐かしんだ。けれども、『Halo』マルチプレイのスピード感が流行のFPSに合わなくなってきたことも明白だった。


新しい試みによって新規プレイヤー向けにシフトしたが、同時に『Halo』らしさが弱まってしまった本作。コミュニティからは厳しい目で見られている。しかし次に発売された『Halo 5: Guardians』(2021年1月現在Xbox One版のみ発売)と比較すると、捉え方は変わるかもしれない。

『Halo 4』とは違い、『Halo 5: Guardians』のマルチプレイはシリーズの伝統とトレンドを高いレベルで両立できている。ロードアウトの廃止によって公平性が保たれ、フィジカル重視のマルチプレイが戻ってきたのだ。一方スプリントはより強化され、新しいアビリティと共にトレンドのFPSに近い操作感を実現している。スプリントの制限時間がなくなり、スライディングやよじ登りなどの追加によってスピード感がかなり上がった。『Halo 4』での反省から生まれた最適解だったと言えるだろう。『Halo 4』はゴールに至るまでの価値ある実験場なのだ。

巨大IPの軌跡が詰まった『Halo: The Master Chief Collection』完結


『Halo 4』の野心的な試みは独自の魅力を持っている。そして、上手く機能していなくても次回作にヒントを残していた。新しい舞台設定はわずかな探検要素のために活かされなかったが、『Halo 5: Guardians』や最新作ではその探検要素が強化されている。特にマルチプレイは『Halo』らしいストイックさを失いながらも、完成形と言える『Halo 5: Guardians』につながった。ヒーロー性の弱くなったマスターチーフも、最新作での描き方によっては良いアクセントになるかもしれない。あらためてPC版を遊んでみて、ネガティブなイメージのあった『Halo 4』の新たな一面を発見できた。

本作をプレイすると、既存ファンが多いフランチャイズを引き継ぐ難しさを感じる。PC版『Halo: The Master Chief Collection』は『Halo 4』の配信をもって完結した。このバンドルはBungieがひとつの巨大IPを進化させ、343 Industriesが引継ぎ、拡大しようとしてきた試行錯誤の記録なのだ。

2020年、343 Industriesは約1年間で6本もの『Halo』をPCへ移植させた。新型コロナウィルスによる自宅勤務、最新作『Halo Infinite』の開発、Xbox Series X|Sの発売と並行する中で大きな苦労があっただろう。そんな状況でもPCというシリーズの新しい可能性を広げてくれたことに感謝したい。

© 2019 Microsoft Corporation. All rights reserved. Halo: The Master Chief Collection is a trademark of Microsoft Corporation.

●タイトル:Halo 4
●ジャンル:FPS
●発売元: Xbox Game Studios(マイクロソフト)
●開発元:343 Industries, Saber Interactive, Bungie
●プラットフォーム:PC(Steam、Microsoft Store)
●発売日:発売中(2020年11月17日)
●価格:1150円(『Halo: The Master Chief Collection』同梱版もあり)
●必須スペック
OS: Windows 7
プロセッサー: Intel Core i7-975 または AMD A12-9800 APU
メモリー: 2GB
グラフィック: NVIDIA GeForce GTS450 または AMD Radeon R7 Graphics
●公式サイト(Halo: The Master Chief Collection)URL:
https://www.xbox.com/ja-jp/games/halo-the-master-chief-collection-pc
●ダウンロードサイトURL:
https://www.microsoft.com/ja-jp/p/halo-4/9p8cfxzh93ck?activetab=pivot:overviewtab
https://store.steampowered.com/app/1064273/Halo_4/

【連載】Alienware Zone PCゲームレビュー<2021年版>

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