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『Life Goes On: Done to Death』インディーゲームが切り開くゲームデザインの彼岸【インディーゲームレビュー 第35回】

ミスはプレイヤーがゲームを離脱する最大のポイントだ。では、ゲームオーバーをゲームのメカニクスに組み込めないだろうか……。『Life Goes On: Done to Death』はこの課題に意欲的に取り組んだパズルゲームの一つだ。そして、この問題をスマートに解決している。


ミスによる離脱をどのように防ぐか

ゲームクリエイターにとって、手塩にかけて作り上げたゲームを、プレイヤーが途中で止めてしまうことほど、悲しいことはない。一方でミス(自機の死)がある限り、プレイヤーがゲームを離脱するリスクはゼロにならない。では、ミスをメカニクスに組み込むことはできないだろうか。これまで多くのゲームクリエイターがこの課題に挑戦してきた。

『バザールでござーるのゲームでござーる』(NECホームエレクトロニクス、PCエンジン、1996年)は、そうしたゲームの一つだ。NECの販促促進キャンペーンCM『バザールでござーる』を元にしたパズルゲームで、さまざまなアクションをプリセットして主人公のバザール・デ・ゴザールをゴールに導くことが目的。失敗したときにCMと同じ「バザールでござ~る♪」というジングルが流れる仕組みだ。

本作を制作したのは『ポケットモンスター』シリーズの製作元として知られるゲームフリークだ。ディレクターをつとめた田尻聡は「元のCMはお店に行こうとするが、いつも何かの障害に遭い、失敗するというコンセプト。それに対してゲームは障害を乗り越えさせなければいけない。そこでプレイヤーが失敗したときに、CMと同じタイミングでジングルを流して、クスリと笑えるようにした。また、それによってプレイヤーの離脱を防ぎたかった」という趣旨のコメントを残している。

NEC『バザールでござーる』CM

『バザールでござーるのゲームでござーる』


戦略的なミスの連続でクリアに導く

今回取り上げる『Life Goes On: Done to Death』もまた、ミスによる離脱を巧みに乗り越えたタイトルの一つだ。ゲームは騎士を操作してステージ上の仕掛けをクリアしつつ、聖杯(=ゴール地点)にたどり着くパズルアクション。ただし、一定数の騎士が死ななければゴールまで到達できない作りになっている。針山に投身自殺して、その死体を足場に先に進むといった具合だ。ステージ数は50以上で、火炎放射器・ベルトコンベア、氷結など、さまざまな仕掛けが騎士たちの行く手を待ち受けている。

このように本作は「戦略的なミスの連続でレベルデザインを変化させ、主人公をゴールまで導く」点に特徴がある。プレイヤーをゴールまで誘導するゲームは数多いが、そこにミスを組み合わせた点がポイントで、死の概念が斜め上にアップデートされた。開発はカナダ・アルバータ州エドモントのInfinite Monkeys Entertainmentで、メンバーは3人。ゲームジャムでプロトタイプが開発され、2014年に初リリースされている。ゲームジャムがこのアイディアの源泉となったわけだ。

ステージ攻略例

(1)ステージ右下にある聖杯がゴール地点だ

(2)まず目の前のスパイク付きベルトコンベアに投身自殺する

(3)左下のスイッチに乗り、ベルトコンベアを回して死体を動かす

(4)火炎放射器の通過を待って中央のボタンを押し、死体を落下させる

(5)死体を足場にして聖杯までジャンプ

(6)ステージをクリアすると犠牲者数とタイムが表示される。皮肉めいたメッセージも本作ならでは。ローカライゼーションは架け橋ゲームズが担当している。


ゲームデザインという大河の中で

本作においてもプレイヤーの離脱を完全に防ぐことはできない。パズルゲームだけに「クリア方法がわからない」ことが離脱理由になるからだ。もっとも、近年ではそのための解決手段も提示されつつある。動画による解答とセットで配信する脱出ゲーム『Rusty Lake』シリーズは好例だ。「おてほんプレイ」によって難所が越えられる『NewスーパーマリオブラザーズWii』のように、「ミスによる離脱を防ぐ」試みはメジャータイトルでも広がりつつある。

NewスーパーマリオブラザーズWii

前回『State of Anarchy Master of Mayhem』のレビューで、「インディゲームにしろ、AAAゲームにしろ、革新的なゲームはほとんど生まれない」と書いたが、実際には「革新的なゲームデザインは、さまざまなゲームの蓄積をもとに、連続的に生み出される」という言い方が正しい。『Life Goes On: Done to Death』もまた、そうした流れの中にある一作だ。本作が提示した「死の超越」が、今後どのようなタイトルに影響を与えていくのか楽しみだ。

© 2016 Infinite Monkeys Entertainment Ltd. All Rights Reserved.

■関連サイト
Steam『Life Goes On: Done to Death』販売ページ
https://store.steampowered.com/app/250050/Life_Goes_On_Done_to_Death/
開発元「Infinite Monkeys Entertainment」公式サイト
http://www.lifegoesongame.com/
【コラム】小野憲史のインディーゲームレビュー

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