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『Moonlighter』デジタル流通だからできるアップデートとコミュニティの相乗関係【インディーゲームレビュー 第57回】
デジタル流通の一般化に伴い、リリース後にアップデートを繰り返しながらゲームを成長させていく手法が一般的になってきた。ローグライクなアクションRPG『Moonlighter』もまた、アップデートを続けながら売上を伸ばし続けている。
しかし、今ではゲームを発売後、アップデートやDLC販売などを繰り返しながら、少しずつゲームの完成度を高めていき、長期間にわたってゲームを販売していく手法が一般的だ。発売前からイベントなどで開発中のゲームを展示し、テストプレイと宣伝を兼ねるやり方も(インディーゲームでは)定番になっている。デジタル流通によって「陳列棚の取り合い」問題が解決したことが、さまざまな影響を与えたのだ。
今回レビューする『Moonlighter』もまた、デジタル流通時代の恩恵を十二分に受けているタイトルの一つだ。2018年5月29日にリリース後、精力的なアップデートが続けられ、原稿執筆時(2019年7月)まで6回の無料アップデートが行われている。また、2019年7月23日には初の有償DLC『Moonlighter - Between Dimensions DLC』の配信もはじまり、ファンの間で好評を博している。
(2)ダンジョンでモンスターを倒し、アイテムを収集する
(3)ダンジョンを脱出して村に戻る
(4)アイテムを店で販売する
(5)武具やポーションを購入するなどして装備をととのえ、再びダンジョンへ
アクションパートはトップビュースタイルのアクションRPGで、ドット絵調の温かみのあるグラフィックが懐かしくも新しく、キビキビとしたキャラクターの動きも心地よい。ショップパートでは、収集したアイテムを持ち帰り、ショップで販売することで、アイテム生成や強化の原資にできる。テレポートやポータルなどを利用して、ダンジョンとショップを手軽に行き来することも可能だ。
ただ、ゲームを進めていくうちに、次第に作業感が募っていくのも事実だ。ローグライクといっても、ダンジョンはそれほど変化せず、エネミーのバリエーションもそれほど多くはない。ショップパートはアイテムを値付けして店番をするだけなので、利益を最大化する喜びも薄い。ゲームを進めるうちに、ダンジョン内でアイテムを換金することも(利幅は薄いが)可能になるので、ショップ自体の意味もゆらいでいく。
アイテムを販売して得た資金で村に新しいショップを開くこともできる
Ver.1.9ではダンジョン内で入手した卵を孵化させれば、仲間のモンスターが得られるようになった
有償DLCと違い、無償アップデートは単体では開発費を回収できない。にもかかわらず、企業が無償アップデートを行うのは、新規ユーザー獲得のためだ。有償DLCはクリア済みのユーザーを対象とするため、コミュニティを広げることはできない。ただし現実の店舗では、無償アップデートだけでは棚から商品を外される恐れがある。デジタル流通だからこそ、こうした施策が可能なのだ。
今さら言うまでもないが、世間には3種類のプレイヤーが存在する。自分たちのゲームのファンとヘイト、そして圧倒的多数の無関心層だ。デジタル流通時代を迎えて、この無関心層にいかにリーチできるかが、新たな課題になっている。本作もまた、この点に意欲的なタイトルだ。もっとも、これができるのも、ゲームの土台がしっかりできているから。今後のアップデートに期待したい。
All Rights Reserved © 2009-2018 11 bit studios S.A.
■関連リンク
Steam『Moonlighter』販売ページ
https://store.steampowered.com/app/606150/Moonlighter/?l=japanese
『Moonlighter』公式サイト
http://moonlighterthegame.com/
DIGITAL SUN公式サイト
http://www.digitalsungames.com
発売後6回の無料アップデートとDLC販売を達成
Steamをはじめとしたデジタル流通の普及前後で、ゲームの販売方法が大きく変化した。パッケージ流通では発売前に大量の宣伝を行い、市場の期待感を限界まで煽って、発売後数週間で一気に売り切ってしまう手法が一般的だった。1990年代は流通各社から「ゲームは生鮮食料品と同じで、どんどん値が下がっていく」という台詞が良く聞かれたものだ。一部のタイトルを除けばリピート商売は現実的ではなかった。しかし、今ではゲームを発売後、アップデートやDLC販売などを繰り返しながら、少しずつゲームの完成度を高めていき、長期間にわたってゲームを販売していく手法が一般的だ。発売前からイベントなどで開発中のゲームを展示し、テストプレイと宣伝を兼ねるやり方も(インディーゲームでは)定番になっている。デジタル流通によって「陳列棚の取り合い」問題が解決したことが、さまざまな影響を与えたのだ。
今回レビューする『Moonlighter』もまた、デジタル流通時代の恩恵を十二分に受けているタイトルの一つだ。2018年5月29日にリリース後、精力的なアップデートが続けられ、原稿執筆時(2019年7月)まで6回の無料アップデートが行われている。また、2019年7月23日には初の有償DLC『Moonlighter - Between Dimensions DLC』の配信もはじまり、ファンの間で好評を博している。
ゲームの流れ
(1)ダンジョンに移動する(2)ダンジョンでモンスターを倒し、アイテムを収集する
(3)ダンジョンを脱出して村に戻る
(4)アイテムを店で販売する
(5)武具やポーションを購入するなどして装備をととのえ、再びダンジョンへ
主人公は英雄を夢見るアイテムショップの店長
ゲームはローグライクなアクションRPGとショップ経営シミュレーションのハイブリッドスタイルだ。主人公はリノカ村でアイテムショップを営む青年ウィルで、村に突然、異世界のダンジョンへと続くポータルが開いてしまったことで、運命の歯車が回り始める。冒険者を夢見るウィルはダンジョンを探索し、アイテムを収集してショップで販売しつつ、今では寂れてしまった村の復興を進めていくのだ。アクションパートはトップビュースタイルのアクションRPGで、ドット絵調の温かみのあるグラフィックが懐かしくも新しく、キビキビとしたキャラクターの動きも心地よい。ショップパートでは、収集したアイテムを持ち帰り、ショップで販売することで、アイテム生成や強化の原資にできる。テレポートやポータルなどを利用して、ダンジョンとショップを手軽に行き来することも可能だ。
ただ、ゲームを進めていくうちに、次第に作業感が募っていくのも事実だ。ローグライクといっても、ダンジョンはそれほど変化せず、エネミーのバリエーションもそれほど多くはない。ショップパートはアイテムを値付けして店番をするだけなので、利益を最大化する喜びも薄い。ゲームを進めるうちに、ダンジョン内でアイテムを換金することも(利幅は薄いが)可能になるので、ショップ自体の意味もゆらいでいく。
アイテムを販売して得た資金で村に新しいショップを開くこともできる
Ver.1.9ではダンジョン内で入手した卵を孵化させれば、仲間のモンスターが得られるようになった
アップデートで深まるメカニクスとストーリー
ただ、本作はあくまで発展途上のタイトルなのだ。久しぶりに本作を起動したところ、Ver.1.9の無料アップデートが適用され、驚かされた。エネミーの卵を村で孵化させて、仲間にできるようになるなど、単なるバグフィックスを越えた仕様追加だ。思わせぶりなだけで詳細が不明だったストーリー面も、少女トモとウィルの過去のエピソードなどが追加され、ゲームを続けるモチベーションが強化されている。有償DLCと違い、無償アップデートは単体では開発費を回収できない。にもかかわらず、企業が無償アップデートを行うのは、新規ユーザー獲得のためだ。有償DLCはクリア済みのユーザーを対象とするため、コミュニティを広げることはできない。ただし現実の店舗では、無償アップデートだけでは棚から商品を外される恐れがある。デジタル流通だからこそ、こうした施策が可能なのだ。
今さら言うまでもないが、世間には3種類のプレイヤーが存在する。自分たちのゲームのファンとヘイト、そして圧倒的多数の無関心層だ。デジタル流通時代を迎えて、この無関心層にいかにリーチできるかが、新たな課題になっている。本作もまた、この点に意欲的なタイトルだ。もっとも、これができるのも、ゲームの土台がしっかりできているから。今後のアップデートに期待したい。
All Rights Reserved © 2009-2018 11 bit studios S.A.
■関連リンク
Steam『Moonlighter』販売ページ
https://store.steampowered.com/app/606150/Moonlighter/?l=japanese
『Moonlighter』公式サイト
http://moonlighterthegame.com/
DIGITAL SUN公式サイト
http://www.digitalsungames.com
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