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『RiME』その主人公はいったい誰なのか? ゲームとプレイヤーの関係性に迫る【インディーゲームレビュー 第16回】
ゲームの主人公は「拡張された身体」
ゲームに登場するプレイヤーキャラクターとは、プレイヤーにとってゲーム内世界にアクセスするための「拡張された身体」(※)だ。もっとも、その肢体は常に人間型とは限らない。『パックマン』のようなアイコンの場合もあるし、PCゲームでは『シムシティ』のようにカーソルの場合もある。『ポートピア連続殺人事件』のように、プレイヤーと拡張された身体の関係性に対してトリックが仕掛けられる場合もある。スペインのゲームディベロッパー、Tequila Worksが制作したアクションアドベンチャー『RiME』もまた、この関係性について問いかけを行ったタイトルの一つだ。プレイヤーは無人島の海岸で眼を覚ました少年を操作しながら、森や遺跡などを探索していく。道中で道案内をしてくれる狐や、自分と同じように赤いマントを着用する男性を追いかけていくうちに、少年は次第に自分の秘められた過去に向き合っていく。
道中で道案内をしてくれる狐。オープンワールド的な世界で迷わせないための工夫だ
UE4の大域照明を十二分に活用
本作はゲームプレイを通して濃密な物語体験が得られる「ナラティブゲーム」の一種で、画面上に一切テキストが表示されないまま、思わせぶりな展開でゲームが進んでいく。本稿で過去に取り上げた『INSIDE』、『ABZÛ』に連なるタイトルだ。終盤につれてメッセージ性の強いシーンが増えていくが、最後まで一つの解釈を押し付けるわけではない。プレイヤーの数だけ解釈が存在し、それが魅力となっている。これを担保しているのがゲーム全編を通して表現される光と影の演出だ。特に遺跡の内部では現実世界と同じように、光源から発せられる光の乱反射で周囲を照らす「大域照明」が巧みに使用されており、世界観を盛り上げると共に、パズルにも一役買っている。そのため相応のマシンパワーを必要とするが、グラフィックカードに投資する価値はあるだろう。壮大で扇情的なサウンドも大きな効果を上げている。
もっとも、アートのように美しいビジュアルと、バイオリンとピアノの抑揚によって刻まれるサウンドをのぞけば、本作のゲームプレイは驚くほど単純だ。壁をよじ登り、スイッチを押し、仕掛けをクリアするという、古典的なパズルに留まっている。プレイ時間も6~10時間と長めなため、人によっては単調に感じられるかもしれない。個人的には2時間程度に内容を凝縮しても良かったのではないかと思う。
最初の島では昼と夜が交互に訪れる。日中の日差しの強さや、夜間の満点の星空は、スペインのディベロッパーならではだ
「拡張された身体」は自分自身ではない
なぜグラフィックやサウンドに比べてゲームプレイが良く言えばシンプル、悪く言えば単調なのか。それは本作がUnrealEngine(UE)4上で開発されていることと、開発メンバーが限定されたインディータイトルだからだ。UE4には優れたグラフィックやサウンドの機能があるが、AIやゲームプレイに関する機能は限定的だ。そこを作り込むには少々、荷が勝ちすぎたというところだろう。それでも本作を忘れがたいものにしているのは、ゲームのラストで提示される「少年の過去」や、そこから憶測される「島での冒険の意味」がプレイヤーを揺さぶるからだ。映画や小説と異なり、ゲームはプレイヤーが「拡張された身体」を介してゲーム内世界に入り込み、自らが主体となって楽しむメディアだ。しかし、だからこそ、そこに仕掛けを滑り込ませる余地が生まれる。
まとめると本作は「主人公=プレイヤー」というお約束に果敢に切り込み、新たな提案を行っている点が秀逸だと言える。それゆえに、ゲームのエンディングも手放しのハッピーエンドとはいかず、一抹の余韻を残すものとなった。それはゲームというメディアが成熟してきた証拠だともいえる。なにより、そうした挑戦ができる点がインディーゲームの魅力だろう。
少年は赤いマントの男性を追いかける。両者の関係性とは?
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※<参考・参照元>
『なぜ人はゲームにハマるのか 開発現場から得た「ゲーム性」の本質』渡辺修司・中村彰憲著(SBクリエイティブ)
■関連リンク
TEQUILA WORKS
http://www.tequilaworks.com/en/
『RiME』
https://www.greybox.com/rime/en/
Steam『RiME』のページ
http://store.steampowered.com/app/493200/RiME/
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