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大ヒットタイトルの登場とゲーム文化の成熟~インディーゲーム行く年来る年2020【インディーゲームレビュー 第88回】

コロナ禍によって大きな社会変化がもたらされた2020年。インディーゲームにとって、この1年はどんな年だったのか。開発・宣伝・海外その他という3つの視点から振り返る。

試練と飛躍、記念すべき年となった2020年

コロナ禍に見舞われた2020年は、日本のインディーゲームにとって試練と飛躍の両方をもたらした。

最大のポイントは『天穂のサクナヒメ』と『Craftopia / クラフトピア』の大ヒットだろう。前者は鬼が支配する「ヒノエ島」を舞台に、アクションと稲作を繰り返しながらストーリーを進めていく和風アクションRPGで、PC・PlayStation 4、Nintendo Switchで発売。世界累計出荷本数で50万本の偉業を達成した。

『天穂のサクナヒメ』

本作は座組の点でも注目される。開発が『アスタブリード』シリーズで知られるインディーゲームサークルのえーでるわいすで、販売がマーベラスおよび海外グループ会社。インディーゲームと大手パブリッシャーがタッグを組んだ形だ。海外では一般的な座組だが、国内ではまだ珍しく、インディーゲームが大手企業にとっても挑戦しがいのある市場であることが示された。

『Craftopia / クラフトピア』

これに対して後者は狩り・建築・自動化など、さまざまな要素を盛り込んだオープンワールドサバイバルアクションゲームだ。Steamの早期アクセスゲームにもかかわらず、こちらも累計販売数が50万本を突破している。日本語・英語・中国語(簡体字・繁体字)に対応している点も画期的で、海外製がひしめくSteamで、数少ない国産タイトルとして気を吐いている。

余談だが2020年はインディーゲームに限らず、国内でパッケージゲーム市場が再活性化した点にも注目したい。Nintendo Switchで発売された『桃太郎電鉄 ~昭和 平成 令和も定番!~』の累計出荷本数が100万本を突破し、IP復活を印象づけたのは好例だ。『サクナ』『桃鉄』のヒットにともない、2021年度は大手企業とインディーゲームの提携が進む可能性が高い。

他に国産インディーゲームの注目作では本連載でもとりあげた、ソーシャルゲーム会社が手がけたローグライクカードRPG『DIMENSION REIGN』などが記憶に新しい。

こちらも早期アクセスゲームで、開発と宣伝が並行して行われている。AAAゲームのブロックバスター方式とも、ソーシャルゲームの運営方式とも異なる、最先端のスタイルだ。

なお、近年ではインディーゲームの多くがNintendo Switchでリリースされており、家庭用ゲームのユーザーが気軽に楽しめる環境が整備されている点にも注目したい。今、インディーゲームをNintendo Switchで楽しんでいる中高生は、これまで『Minecraft』や『Fortnite』に親しんできた世代でもある。この世代の嗜好が2020年代のゲーム市場に影響を及ぼすと考えられる。

リアルイベントから配信番組への移行

プロモーション面では東京ゲームショウやビットサミットをはじめ、コロナ禍でリアルイベントが軒並みオンラインに移行した。これにより、インディーゲームの特徴であるイベント出展をマイルストーンとした開発&対面マーケティングが困難になった。宣伝力に欠けるインディーゲームにとって、この変化は致命的なようにも思われた。

INDIE Live Expo III 公式ページ(https://indie.live-expo.games/

その一方で「INDIE Live Expo」「PLAYISM Game Show」「インディコレクションJAPAN」など、インディーゲーム専門のネット配信番組が相次いでスタート。リアルイベントにかわって、大きな影響力を示し始めている。withコロナの時代において、今後もネット配信番組が注目を集めていくことは間違いないだろう。

また、近年のインディーゲームの盛り上がりはYoutuberによるゲーム実況によって支えられている面もある。今やゲーム実況はプロモーション手段の1つとして完全に定着した。一方でゲーム実況を禁止する企業やタイトルもあり、一部で摩擦が生じている。PlayStation 5とXbox Series X/Sの発売を受けて、2021年はガイドラインの整備と定着が期待される。

海外そして国内で進むインディーゲームのダイバーシティ

ここで海外を見てみると、インディーゲームの多様性の進行が見られる。本連載で取り上げた『Beyond Blue』のようにドキュメンタリーゲームとしての性質を持つものや、『FULFILLMENT』のようにニュースゲームの文脈で評価されるものなど、単純な娯楽の範疇におさまらない、強いメッセージ性を持つものが増加している。

『Project Wingman』

また、こうした良質な海外インディーゲームが日本むけにローカライズされる例も増加している。アップデートで日本語対応を行うだけでなく、ローンチ時から日本語対応済みのタイトルも珍しくなくなってきた。インディー版『エースコンバット』として評価の高いフライトシューティング『Project Wingman』は好例で、国産タイトルと見間違うほどだ。

もっとも、注目すべきはインディーゲームだけではない。日本では同人ゲーム、フリーゲーム、ブラウザゲームなど多様なゲーム文化が存在する。本連載でもとりあげた『公衆電話』のようにノベルゲーム由来のもの、RPGツクール由来のもの、ゲームジャム由来のものなどがあり、互いに影響し合い、独特な文化圏を作り上げている。

1つだけ共通しているのは、これらが創作活動に支えられていることだ。ほんの10年前までゲーム制作者になることと、ゲーム会社に就職することは同義語だった。しかし、今ではそれ以外にも、さまざまな選択肢がある。一般的に豊かな社会には多様な選択肢が存在するという。2021年は作り手にとっても、遊び手にとっても、より選択肢が増えることを期待している。

『天穂のサクナヒメ』
https://www.marv.jp/special/game/sakuna/
『Craftopia / クラフトピア』
https://store.steampowered.com/app/1307550/Craftopia/?l=japanese
『Project Wingman』
https://store.steampowered.com/app/895870/Project_Wingman/?l=japanese
【コラム】小野憲史のインディーゲームレビュー

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