Gamers Zone

move to login

GAME PCゲームで勝ち抜くための情報満載!

『Dorfromantik』ドイツの学生チームが開発した癒やしの箱庭空間【インディーゲームレビュー 第103回】

学生は自分たちが遊びたいゲームを作りがちだが、商業ゲームを開発する上では、対象となるペルソナに即した内容にすることが重要だ。ドイツの学生が開発した『Dorfromantik』は中高年のゆったりとゲームを楽しみたいというニーズをうまく捉えている。


ボードゲームのマップにも似たドイツの地形


2006年に独ライプツィヒで開催されたゲームイベント「Games Convention 2006」を取材した際、現地の国内線に搭乗した。窓から広がる風景に「まるでボードゲームのマップのようだ」と実感したのを覚えている。『カタンの開拓者たち』をはじめ、国内でもドイツゲームの人気が出始めた頃で、ゲームデザインがその土地の文化や風土と密接に関係しているのだと腹落ちした。


今回とりあげる『Dorfromantik』もまた、独ボードゲーム文化の影響が感じられるタイトルだ。プレイヤーは六角形のタイルを1枚ずつ配置しながら、村を広げていく。タイルには平地・森・農地・住宅・水路・鉄道などがあり、農地・水路・鉄道のように、隣同士で地形がつながっていなければ、配置できないタイルもある。すべてのタイルがなくなれば終了で、プレイヤーの目的はハイスコアをめざすことだ。

条件に即して地形タイルをつなげながらスコアを重ねていくゲームといえば、同じくドイツゲームの名作『カルカソンヌ』を連想する人も多いだろう。本連載でも過去に取り上げた『Carto』が同様のゲームメカニクスを採用している。もっとも、『Carto』はストーリー要素を含んだパズルアドベンチャーだった。これに対して『Dorfromantik』は純粋なボードゲームである点が異なっている。

本作の特徴は誰でも詰まることなくゲームを進めていける点だ。適当にタイルをつなげても、それなりにおもしろい。それでいて高得点を狙うには、先を見通して戦略的にタイルをつなげていく必要がある。「農地をn枚つなげろ」などの条件をクリアすれば、ボーナス点と共に、タイルが追加されるのだ。もっとも、常に条件に即したタイルが出るとは限らない。このジレンマが本作の大きな魅力になっている。

ゲームの流れ

ゲーム開始時の状況。残りタイルは40枚だ

次第に村が広がってきた。条件を達成したことで、残りタイルが43枚に増加した

水路や鉄道が延び、徐々に村が広がってきた。先を見据えてタイルを配置していくことが重要だ

村が広がるにつれて、提示される条件が厳しくなっていく。その分、達成した際のボーナス点と、追加されるタイルの枚数が増えていく

タイルがなくなればゲーム終了だ。ハイスコアを記録することができた

学内インキュベーション施設を活用して起業

本作を開発したのは独ベルリン技術経済大学の学生チームだ。本作はIGF2021のBest Student Gameにノミネートされるなど、高い評価を受けた。チームは「Toukana Interactive」として起業し、Steamの早期アクセスでリリースを達成。学内のインキュベーション施設に入居し、開発が続けられている。より自由に村を発展させられる「クリエイティブモード」の追加などが予定されている。

本作のユニークなところは、『カルカソンヌ』をベースとしたゲームをデザインするうえで、余計な要素をまったく入れなかったところだ。たとえば「4X ストラテジー(※)」や交易・資源管理・戦闘要素などだ。これによりゆったり、まったりした、癒やし的なゲーム体験を実現している。おそらく意識して中高年のユーザー層をターゲットにしたのだろう。その戦略とクオリティは見事というほかない。

1プレイが20~30分で終了することも含めて、気がついたら何度でも続けてしまっている、奇妙な中毒性のあるゲームだ。学生が作ったとは思えない、大人びた印象を受けるゲームでもある。これがドイツの文化や風土によるものなのか。それとも学生チームの特殊性なのかは不明だが、こうしたゲームが学生から登場してくるところに、驚きを禁じ得ない。今後のアップデートに期待したい。

※ストラテジーゲームの中でも、「eXplore:探検」「eXpand:拡張」「eXploit:開発」「eXterminate:殲滅」の4つの性質を兼ね備えた作品のこと。『シヴィライゼーション』『カタンの開拓者たち』などが好例(Wikipediaより)

metacriticスコア:なし
主な受賞歴:German Computer Game Award 2021 Best Game Design & Best Debut

Steam『Dorfromantik』販売サイト
https://store.steampowered.com/app/1455840/Dorfromantik/
『Dorfromantik』公式サイト
https://toukana.com/dorfromantik/
ベルリン技術経済大学 インキュベーション施設
https://gamedesign.htw-berlin.de/dehive/game-incubator/

【コラム】小野憲史のインディーゲームレビュー

WRITER RANKING プロゲーマーやゲーム業界人などの人気ライターランキング