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『Rusty Lake: Roots』海外TVドラマからヒントを得たアドベンチャーゲーム【インディーゲームレビュー 第4回】
80年代アドベンチャーゲームのアキレス腱
『ドラゴンクエスト』シリーズで有名な堀井雄二氏は、『ポートピア連続殺人事件』を皮切りにアドベンチャーゲームを三作上梓し、限界を感じてロールプレイングゲームに転向した。ゲームの途中でプレイヤーが謎に詰まった時の打開策に乏しかったからだ。謎を解くことがゲームのおもしろさに直結していたため、安易にヒントを連発しては魅力を削いでしまうし、ゲームの商品性も下げてしまう。ゲーム内の「謎解き」を主眼とする限り、避けては通れない問題だったといえる。では「謎の答え」を作り手側が明かしてしまうと、本当にゲームの価値はなくなるのだろうか。この問題に果敢に挑んでいる作品が、今回紹介する『Rusty Lake: Roots』だ。ゲームはポイント&クリック型のアドベンチャーゲームで、プレイヤーはVanderboom家の一族にまつわる、時に風変わりで時に残酷な運命を追体験していく。画面上の怪しそうな地点をマウスでクリックし、謎や仕掛けを解きながら進めていく内容で、いわゆる「脱出ゲーム」の一つに数えられるだろう。
井戸・鞄・ポケットのメモ……クリックしていくことで道は開ける
動画サイトを効果的に使うゲームデザイン
もっとも、多くの脱出ゲームはストーリー(ゲームの目的といってもいいだろう)が「屋敷から出る」というシンプルな反面、謎や仕掛けが時に理不尽なまでに複雑なのに対して、本作の謎解きは比較的シンプルで、道理にかなっている。室内の温度を上げるため、板を動かして窓の割れ目をふさぐといった具合だ。その一方で、ストーリーは一族の盛衰という抽象的なテーマを扱っており、短いエピソードの連続でプレイヤーに推測させる作りになっている。この違いが本作ならではの特徴となっている。ただし、黎明期のアドベンチャーゲームと同様に、この手のゲームでは謎に詰まったら最後、ゲームを先に進めることができない。この問題を本作では、ゲームのクリア動画を公式サイトにアップしておき、いつでも現在のシーンからブラウザ経由で参照可能にするという、かつてない力業で解決している。いわば作者自身が解答集こみでゲームを販売しているのだ。なるほど、これなら全プレイヤーをエンディングまで導けるだろう。大手ゲーム会社には決してできない、インディーならではの解決策だ。
各エピソードは10~15分程度で終了し、一族の歴史となって進行する
海外TVドラマ的な物語体験を提供
答えがすべて明らかになっているにもかかわらず、本作がプレイヤーを惹きつけてやまない理由は何か。それはデビッド・リンチを彷彿とさせる、風変わりで少々ブラックな世界観と、個性的なビジュアル。そして作者自らが『ツイン・ピークス』に影響を受けたという、謎が謎を呼ぶ展開だ。本作は前作『Rusty Lake Hotel』、そして過去作『Cube Escape』シリーズにつらなる構成になっており、すべてをクリアしても、全容がぼんやりとしかイメージできない……。答えはプレイヤーごとの想像力にゆだねられているのだ。このようにシリーズの中心に謎を配置し、その周りに数多くのエピソードを注意深く配置しながら、プレイヤーを物語に引き込んでいくスタイルは、『ツイン・ピークス』『ロスト』といった海外TVドラマでおなじみの手法だ。開発陣はこの手法をゲームというメディアに応用し、欧州らしい(同社はオランダのディベロッパーだ)大人向けの世界観とシニカルな作風でラッピングしたといえる。インディーゲームならではの、お国柄が色濃く出たタイトルだといえる。
攻略動画がすべて公式サイトで掲載されており、自由に参照できる
もっとも、本シリーズのような連作スタイルをとり、そのうえでプレイヤーを飽きさせないためには、できるだけ短期間で続編を重ねていくことが必要だ。また、リスクを低減させると共に、作家性を保つためにも、少人数での開発がのぞましい。それを可能にしたのが、デジタル流通プラットフォームと平易な開発ツール(本作はAdobe AIR上で、Flashを用いて制作されている)の存在だが、まだまだ開発期間が短いとは言えない。ゲームがゲームならではの文学性を持つためにも、さらなる環境の変化を望みたい。
© RUSTY LAKE
■関連リンク
RUSTY LAKE
http://www.rustylake.com/
『Rusty Lake: Roots』
http://www.rustylake.com/adventure-games/rusty-lake-roots.html
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