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アクションとノベルのユニークな融合例『1f y0u're a gh0st ca11 me here!』にみる「アイデアのつくり方」【インディーゲームレビュー 第123回】

アイデアは既存の要素の新しい組み合わせである……。アクションゲームとノベルゲームを組み合わせた『1f y0u're a gh0st ca11 me here!(イフ ユーアー ア ゴースト コール ミー ヒアー!)』は好例だ。もっとも、そのためには矛盾点や問題を取り除く必要もある。本作における工夫を検証する。


アイデアとは既存の要素の新しい組み合わせである


世の中にはさまざまな発想法が存在するが、突き詰めればジェームス・W・ヤングが1940年に出版した書籍『A Technique for Producing Ideas(邦題:アイデアのつくり方)』に行き着く。本書ではアイデア作成の基礎となる原理を、次の二点に集約している。パンと餡子であんパン、タッチパネルと携帯ゲーム機でニンテンドーDSなど、さまざまな事例が挙げられるだろう。

  • アイデアとは既存の要素の新しい組み合わせ以外の何ものでもない
  •  既存の要素を新しい組み合わせに導く才能は、物事の関連性を見つけ出す才能に依存するところが大きい

本作『1f y0u're a gh0st ca11 me here!』は、そうした事例の一つだ。2021年の東京ゲームショウなどに出展され注目を集めたタイトルで、本連載でも過去に「ご当地ゲーム」の一つとして紹介している。2021年11月にリリースされ、好評を博した。今回あらためて本作をプレイしてみて、組み合わせの妙について感じさせられた。


コンボを決めて分岐するエンディング


主人公は、「死神」という職業に就くことができず冥界のコールセンターに就職した少女ヴァニタスで、道に迷ったり、除霊されそうになったりと、さまざまな問題を抱えて電話してくる幽霊たちを、適切な機関に取り次いでいくことが目的だ。幽霊たちは5秒間しか通話できないため、自分たちの要望をまくしたてるように説明してくる。しかも人手不足のため、最大5件の電話を同時に聞きながら、瞬時に要件を判断していくことが求められるのだ。

要件は大きく「救助」「地図案内」「警察」に分かれている。幽霊が何らかの事故に巻き込まれた場合は「救助」、冥界への道がわからず地上を彷徨っている場合は「地図」、除霊されそうになっている場合は「警察」を、吹き出しの上に表示されているアイコンから選べばいい。ストーリーが進むと、これに「切断」アイコンが加わる。人間からのイタズラ電話の場合、すみやかに回線を「切断」しよう。


ゲーム『サクラ大戦』の「LIPS(Live&Interactive Picture System)」をはじめ、時間制限を加えた選択肢はこれまでにも存在した。しかし時間制限のある選択肢を複数、同時に処理することが求められるゲームは、おそらく本作が初めてだと思われる。正しい選択を繰り返すとコンボが発生し、スコアがアップする点も特徴だ。ゲームは小一時間で終了するが、スコアによって5つのエンディングに分岐する仕組みで、リプレイバリューも高い。

このように本作はノベルゲームの文法にアクションゲームの要素を組み合わせた点が特徴だ。ディレクターの田平孝太郎氏はインタビューで、「(メッセージを)読むだけでなく、文字を読みながら時間制限内に選択肢を選ぶアクションを取り入れる事により、新しい体験ができるゲームを目指しました」と企画意図を紹介している。前述の「アイデアのつくり方」の実践例であることがわかるだろう。


テーマが結びつけるゲームシステムとストーリー


ただし、複数の要素をただ組み合わせるだけでは、矛盾点や問題が発生する。おいしい鍋料理を作るには、さまざまな具材を鍋に入れるだけでなく、丁寧に灰汁をとる必要がある。本作においてもアクション要素とストーリーをうまく融合させる必要が求められるのはあきらかだ。本作では、これを「イノベーション」というテーマでつなげることで、適切に処理している。

主人公をとりまくのは伝統的な職業観がテクノロジーの進化で大きな変化を遂げる、19世紀後半から20世紀初頭のイギリスにも似た世界観だ。コールセンターという新しいテクノロジーの出現で、それまでの「死神」という職業が脅かされる一方、社会に新たな雇用も生まれる。そして職業こそが人と社会を結びつけ、生活に生きがいを与える……。こうした社会的なメッセージが盛り込まれているのだ。

また、ストーリーは映画の三幕構成をベースとしており、序章+全6章の7パートから構成されている。メインキャラクターは4名で、それぞれに固有の悩みを抱えており、ストーリーの進展と共に解消されていく。映画脚本におけるキャラクターアーク(登場人物の精神的な成長・変化)が丁寧に織り込まれているのだ。サイドストーリー的なエピソードも存在し、キャラクターの背景事情や心理描写の掘り下げもみられる。

このように本作のストーリーはゲームと独立して存在しているのではなく、「時間制限のある複数の選択肢の中から正しい答えを適切に選ぶ」という、ゲームメカニクスに即して設定されている。コールセンターという題材も、そこからの逆算だろう。だからこそ、ストーリーの続きを知りたい、全エピソードを読みたい、というモチベーションが生まれてくる。ここが本作において重要なポイントだ。

他にも、モノクロを基調とした、落ち着いた印象を与えるビジュアルイメージや、日本のマンガやアニメ文化をベースとしたキャラクターデザイン、ネットミームが多用されたメッセージなど、見どころの多いタイトルだ。このゲームメカニクスを応用する、または発展させるなどして、新しい「アクションノベルゲーム」がプレイできることを期待したい。



主な受賞歴:なし
Metacriticスコア:なし

Steam『1f y0u're a gh0st ca11 me here!』販売ページ
https://store.steampowered.com/app/1647740/1f_y0ure_a_gh0st_ca11_me_here/
ディベロッパー「フロシキラボ」公式サイト
https://furoshikilab.wixsite.com/furoshikilab
「お前のアイデアは面白くない」と言われ喧嘩し、10分で考えたアイデアをゲーム化―アクションノベルADV『1f y0u're a gh0st ca11 me here!』【開発者インタビュー】
https://www.gamespark.jp/article/2021/11/10/113426.html
【コラム】小野憲史のインディーゲームレビュー

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