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『Shadow Tactics: Blades of the Shogun』静と動のリズムによって演出されるゲーム体験【インディーゲームレビュー 第24回】

あらゆるエンタテインメントには感情をゆさぶるリズムがある。操作を通して、プレイヤーが自分でリズムを演出できるのがゲームの特徴だ。ドイツのディベロッパーが開発した和風ステルスゲーム『Shadow Tactics: Blades of the Shogun』は、このゲームの特性を十二分に生かした快作だった。

1人では不可能なことも、5人の力を合わせれば可能になる

「5人揃ってゴレンジャー」・・・とでも見得が切られそうなタイトル画面

アーケードゲームはプレイヤーが操作をしないとゲームオーバーになる、コンピュータ主導のゲームデザインだ。これがPCや家庭用ゲームでは、プレイヤーの操作に応じてゲームが進む、プレイヤー主導のゲームデザインが可能になる。両者の長所を生かしたゲームが『Shadow Tactics: Blades of the Shogun』だ。開発はドイツのMimimi Productionsで、タイトルからわかるように、江戸時代の日本を舞台とした、他に類を見ない内容になっている。

ゲームの舞台は1615年で、史実では大坂夏の陣で江戸幕府の支配基盤が固まりつつも、まだまだ全国で不穏な空気が見られた時期だ。プレイヤーは能力が異なる5人のスペシャリストを操作して、十重二十重に守られた城や寺院などに潜入し、さまざまなミッションをこなしていく。すぐに侍が切腹したがったり、固有名詞が変だったりと、そこかしこでコレジャナイ感も受けるが、日本の自然風景を美しく描いたグラフィックと相まって、日本文化に対するリスペクトは伝わってくる。
大勢の侍で厳重に警護されている屋敷。雪原を歩くと足跡が残るが、これを活用して敵をおびき寄せることもできる。牛車の荷台に隠れて潜入することも可能だ。

複雑に絡まった糸を丹念にほぐしていくパズル体験

本作のポイントはチームワークを駆使して行動し「敵Aを倒すには視界に入っている敵Bを先に倒す必要があり、その敵Bを倒すには・・・」といった具合に、複雑に絡まったパズルを解き明かしていく点だ。そのため、プレイ感覚はスピーディな忍者アクションというよりも、何度も失敗を重ねながら、絡まった糸をほぐしていく感覚に近い。実際、NPCの思考ルーチンをかいくぐり、針の穴を通すようなルートを発見するためには、相当の試行錯誤が求められる。もっとも解法は一つではなく、さまざまな攻略ルートが存在する。

プレイヤーが操作できるのは「俊足の忍者で手裏剣も使うハヤテ」「剣術の達人で侍のムゲン」「変装の達人でくノ一のアイコ」「罠や囮を仕掛けられる孤児のユキ」「狙撃銃で遠方から敵を倒す老人のタクマ」で、任務の合間には互いの掛け合いも楽しめる。通常は操作キャラクターを切り替えながら進めていくが、各々の行動をプリセットしておき、タイミングをあわせて同時アクションを繰り出す「Shadowモード」も選べる。使い処が難しいが、華麗に技が決まったときの爽快感は抜群だ。

本作をプレイしながら、筆者は『大江戸捜査網』や『スパイ大作戦』などの映像作品を思い出し、ニヤニヤしてしまった。いずれもスペシャリストの集団がチームワークを生かして任務を遂行していく点が特徴だ。5人組という点では『戦隊ヒーロー』や、海外版の『パワーレンジャー』シリーズとの相似性も感じられる(男性3人+女性2人のチーム構成など)。海外ディベロッパーによる日本コンテンツの文化翻案事例としても興味深く読み解けるだろう。
開発チームによるイメージボード。奧に大仏が鎮座しており、多くの町人で賑わっている。イメージボードを元に制作された実際のゲーム画面。町人以外に多くの侍や役人が配置されている。

あえて死中に活を求める独特のリスク&リターン

このように本作は「リアルタイム・タクティカル・ステルス・ストラテジー」とでもいった、硬派なゲーム体験を提供している。その土台となるのが冒頭で示した、ゲームを通してプレイヤーが演出できる独特のリズム感だ。本作ではゲーム中、キャラクターのまわりをNPCが取り囲み、身動きが取れなくなる状況が多発する。キャラクターは安全に潜んでいるが、何か行動をおこそうとすると袋だたきにあうシチュエーション。プレイヤーが行動をしない限り状況は何も変わらない、静の状況だ。

ところが、この均衡関係も「別のキャラクターが騒ぎを起こす」「あえて敵の視界に身をさらす」などのリスクを冒すと一変する。水面に石を投げると、波紋が周りに広がるように、プレイヤーが行動をおこすことで相手側に隙が生まれ、そこから突破口が開くといった具合だ。自ら危険を演出し、その中で巧みに立ち回ることで活路が見いだせる、動の状況。この静と動の状況をプレイヤー自らが演出できることが、本作ならではの魅力につながっている。
マウスとコントローラでの操作に対応しており、UIが変化する(画面はマウス使用時)。RTSの文法でUIがデザインされており、慣れないうちは操作がわかりにくい。

もっとも、今ひとつ惜しいと思われるのが、せっかくのShadowモードを生かし切れていないように感じられる点だ。前述のようにShadowモードは本作で最も盛り上がる場面。にもかかわらず「煮詰まった状況を力業で変化させる」ための、緊急避難的に導入された仕様のようにも感じられる。Shadowモードを中核に据えたレベルデザインにすることで、よりパズルに一般性を持たせられたのではないだろうか。UIが複雑で、操作がわかりにくい点も改善ポイントだろう。

ただし、これらの点も「国産で類似ゲームが存在しない」現状に比べれば、枝葉末節にすぎない。本作を糧に日本のインディーゲーム開発者も、ぜひユニークなゲームを作って欲しいと感じるところだ。その際はやはり「剣と魔法のファンタジー」が世界観に選ばれるのだろうか。それは日本人による西洋コンテンツの文化翻案だともいえる。日本と海外のインディーゲーム開発者が、お互いの文化に刺激を受けつつ、優れたタイトルを発信していく。それこそがインディーゲームの魅力だろう。


Copyright (C) 2016 Mimimi Productions. All rights reserved.


◆関連リンク
『Shadow Tactics: Blades of the Shogun』公式ページ
https://www.mimimi-productions.de/shadow_tactics_micro/
Daedalic Entertainment(パブリッシャー)
http://www.daedalic.de/
Steam『Shadow Tactics: Blades of the Shogun』のページ
http://store.steampowered.com/app/418240/Shadow_Tactics_Blades_of_the_Shogun/

【コラム】小野憲史のインディーゲームレビュー

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