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『Brothers: A Tale of Two Sons』1つのコントローラーで兄弟を操作、ゲームならではの物語体験【インディーゲームレビュー 第13回】

 
日本ゲーム大賞2014「ゲームデザイナーズ大賞」を受賞した本作。1つのコントローラーで兄弟を操作する独特の操作系が特徴。今なお色あせることがないその魅力は、「ルール・インタラクティブ・ジレンマ」の関係性にあった。

ゲームの本質は「ルイージ主義」

ぷよぷよ』の生みの親として有名なゲームデザイナーの米光一成氏は、ゲームの本質として「ルイージ主義」を提唱している。世界一有名な配管工の弟のことではなく、「ルール・インタラクティブ・ジレンマ」の略だ。

ここでのルールとは、『Expand』で解説した「操作できるものと、操作できないもの、両者の関連性(注)」、ジレンマとは『スキタイのムスメ』における「ストレス・キーファクター・解消」の構造だと言い換えられる。そこで本稿では、この「ルイージ主義」に則って、最後に残ったインタラクティブ要素について、『Brothers: A Tale of Two Sons』をもとに解説してみたい。

道中で心強い味方になってくれるNPCのトロール

2013年発売ながら色あせぬ内容

本作は2013年にスウェーデンのStarbreeze Studiosが開発し、イタリアの505 Gamesによって発売されたアドベンチャーゲームだ。ゲームの主人公は病に倒れた父親を救うため、万病に効く「命の水」を求めて旅立つ兄弟。コントローラーの左右のアナログスティックとLRボタンを用いて(キーボードでも操作可能)、二人の兄弟を同時に操作しながらパズルを解いていく点が最大の特徴になっている。

ゲームエンジンはUnreal Engine 3を使用しており、開発はスウェーデンの映画監督、ジョセフ・ファレス氏とのコラボレーションで進められた。Xbox 360向けダウンロードゲームとしてリリースされると、全世界で高い評価を受け、さまざまなプラットフォームで移植展開。日本でもスパイク・チュンソフトから『ブラザーズ 2人の息子の物語』としてPlayStation 3で発売され、日本ゲーム大賞2014「ゲームデザイナーズ大賞」を受賞している。

演出のみで物語が進むため、ワールドワイドで楽しめる内容になっている

ゲーム体験を特徴づける独特の操作系

「1人では解決できない問題も兄弟が力を合わせれば解決できる」。これが本作の中核テーマだ。ステージにはさまざまなパズルが散りばめられており、兄弟がそれぞれの特徴を生かして仕掛けを解き、先に進んでいく。兄は通り抜けられない柵でも、体の小さい弟ならすり抜けられる。そこで弟が先行してスイッチを押し、柵を上げて兄を向かい入れる……といった具合だ。

このように本作は「ストレス:先に進めない」→「キーファクター:パズルを解く」→「解消:先に進める」というループ構造の連続で構成されている。また「操作できるもの」として兄弟とスイッチ、「操作できないもの」に背景やNPCが存在する。両者の関係性は「仕掛けを操作してパズルを解く」点に集約されており、時にはNPCの存在が進行を妨げるストレスや、ストレスを解消するキーファクターになることもある。

もっとも、左右のアナログスティックで各々のキャラクターを動かす操作系は、ただでさえ混乱しやすく、プレイヤーに対して無用なストレスを発生させている。そのためパズル自体は難易度がゆるめで、兄弟の移動を妨げる敵キャラクターなどもほとんど存在しない。クリアに要する時間も5-6時間と短めだ。そのため1周目をクリアしたら友達を誘い、1つのコントローラーを二人で握って2周目を楽しむのもオススメだ。

手前から奧に動線が設計されており、明暗も手伝って迷いにくいステージデザイン

ルイージ主義で本作を読み解く

本作が世界中で絶賛されたのは、この操作系のデザインとゲーム内容、特にナラティブ(ゲームの物語体験)デザインが巧みに融合している点にある。パズルを解くだけなら、操作キャラクターをボタンで入れ替え、非操作時はCOMキャラクターにするアイディアも考えられる。しかし、それではラストシーンの感動は半減するだろう。兄弟の絆を描くことと、左右のアナログスティックでの操作が不可分に結びついているからだ。

このように本作は「操作できるもの」と「操作できないもの」の関連性が明確で(ルール)、「ストレス→キーファクター→解消」の構造がわかりやすく(ジレンマ)、そしてテーマに沿った適切な操作系(インタラクティブ)が選択されている。だからこそ大ヒットに繋がったと分析できるだろう。この「ルイージ主義」は多くのゲームを分析する上で便利なフレームワークなので、ぜひ活用してみて欲しい。

死が常に身近にある世界でひとときの休息を得る二人

Developed by Starbreeze Studios. Published by 505 Games. 505 Games and the 505 Games logo are registered trademarks of 505 Games S.r.l. All other marks and trademarks are the property of their respective owners. All rights reserved.

(注)実際には画面に表示されないルールも存在することに注意。

■関連リンク
Steam『Brothers: A Tale of Two Sons』のページ
http://store.steampowered.com/app/225080/Brothers__A_Tale_of_Two_Sons/?l=japanese
ゲームデザイナーズ大賞『ブラザーズ 2人の息子の物語』
http://awards.cesa.or.jp/2014/prize/year/03.html
ゲームの本質は「ルイージ主義」である | こどものもうそうblog
http://blog.lv99.com/?eid=430089
【コラム】小野憲史のインディーゲームレビュー

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