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『OneShot』ゲーム制作における「守破離」を体現した作品に求められる、もう一つの「守破離」【インディーゲームレビュー 第27回】
茶道、武道、芸術等における師弟関係のあり方に「守破離」がある。この考え方はゲームデザインにおいても同様だ。RPGツクールでオリジナル版が作られた『OneShot』もまた、ゲームデザインにおける「守破離」を感じさせる内容だった。
ゲーム開発を学ぶ際も同様で、ゲームをまねる段階から、次第にアレンジを加えていき、オリジナルのゲームに到達する流れが一般的だ。その際、アレンジにはシナリオやグラフィックといった「肉」の部分と、ゲームシステムに代表される「骨」の部分がある。『UNDERTAIL』のレビューで解説したとおり、肉と骨は互いに関係性がある。ゲームシステムに留まらず、表現したい内容に即してゲームエンジン自体を拡張したり、ツールを自作したりといった例も見られる。
主人公の「ニコ」を神様であるプレイヤーが導き、太陽が失われた世界に光を取り戻すアドベンチャーゲーム『OneShot』も「守破離」の好例だ。オリジナル版はプログラミング担当のmathew氏とアート担当のNightMargin氏により、RPGツクール上で制作され、フリーソフトとして公開された。その後、日本のパブリッシャーであるデジカのカスタマイズを経て、2016年に再リリースされた経緯がある。2017年には公式日本語版が配信され、手軽にプレイできるようになった。
『RiME』のレビューで解説したとおり、プレイヤーキャラクターはプレイヤーにとって、ゲーム内世界にアクセスするための仮想身体だ。そして、だからこそ、その関係に仕掛けをほどこせる。ただし、そうした発想は単純にRPGツクールの制限内で、シナリオを作るだけでは出てこない。そして、時にはRPGツクールを改造することで、さらなる驚きをプレイヤーに提供し、コンセプトにより磨きをかけられる。この点で本作は、まさに「守破離」を体現したタイトルになったといえる。
その一方で開始直後は画面が暗く、状況がわかりにくい。攻略サイトを見なければ、意味がわからなかったほどだ。チュートリアルを終了すると、旅の目的となるアイテム「太陽」が入手でき、若干周囲が明るくなる。世界は3つのワールドに分かれており、ワールドを越えるにつれて画面が明るくなり、状況が把握しやすくなる。いずれも「間口が広く、奥が深い」ことを理想とする、従来のゲーム文法と正反対だ。実際、筆者はゲーム内にあるパズルのうち、半分以上が攻略サイトなしにはクリアできなかった。
『Rusty Lake: Roots』で論じたように、脱出ゲームの文法を踏襲しながら、パズルの答えが制作者によって開示されているにもかかわらず、高い評価を得ているゲームもある。本作において制作者が本当にプレイヤーに本当に提供したかった体験は、パズルを自力で解くことだろうか。冒頭にも記したとおり、本作のポイントはゲームならではのメタフィクションの提供にある。そのためには、プレイヤーをラストまで到達させる必要がある。従来の常識に囚われないインディゲームこそ、この命題に挑戦すべきだろう。
(※)Wikipedia参照 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%AE%88%E7%A0%B4%E9%9B%A2
■関連リンク
『OneShot』1周目攻略&実績解除方法
https://omoson.com/game/oneshot_kouryaku/
Steam『OneShot』のページ
http://store.steampowered.com/app/420530/OneShot/
ゲームは守破離によって進化する
「守破離」茶道、武道、芸術等における師弟関係のあり方の一つで、個人のスキルを3段階のレベルで表現する概念だ。あらゆる修行は師匠に言われたことや、型を「守る」ところから始まる。その後、型を自分と照らし合わせて研究し、自分に適した型を作ることで、既存の型を「破る」。最終的に師匠の型と自分が創り出した型の双方に立脚した個人は、型と自分自身について良く理解しているため、型から「離れ」て自在に振る舞えるようになる(※)ゲーム開発を学ぶ際も同様で、ゲームをまねる段階から、次第にアレンジを加えていき、オリジナルのゲームに到達する流れが一般的だ。その際、アレンジにはシナリオやグラフィックといった「肉」の部分と、ゲームシステムに代表される「骨」の部分がある。『UNDERTAIL』のレビューで解説したとおり、肉と骨は互いに関係性がある。ゲームシステムに留まらず、表現したい内容に即してゲームエンジン自体を拡張したり、ツールを自作したりといった例も見られる。
主人公の「ニコ」を神様であるプレイヤーが導き、太陽が失われた世界に光を取り戻すアドベンチャーゲーム『OneShot』も「守破離」の好例だ。オリジナル版はプログラミング担当のmathew氏とアート担当のNightMargin氏により、RPGツクール上で制作され、フリーソフトとして公開された。その後、日本のパブリッシャーであるデジカのカスタマイズを経て、2016年に再リリースされた経緯がある。2017年には公式日本語版が配信され、手軽にプレイできるようになった。
オリジナル版は『Indie Game Maker Contest2014』の応募作として、30日間で開発された
主人公とプレイヤーの関係性、再び
ポイントはゲーム内世界の主人公であるニコと、PCの前に存在するプレイヤーが、二人三脚でゲームを進めていく点だ。これ以外に、世界そのものともいえるワールドマシンが存在し、プレイヤーに対してヒントを提示するなどして、再三ゲームプレイに干渉してくる(時にはゲーム自体がPCに影響を及ぼすこともある。そして、その行為自体がパズルになっていたりもする)。このように、本作はゲームならではのメタフィクションになっている点が特徴だ。『RiME』のレビューで解説したとおり、プレイヤーキャラクターはプレイヤーにとって、ゲーム内世界にアクセスするための仮想身体だ。そして、だからこそ、その関係に仕掛けをほどこせる。ただし、そうした発想は単純にRPGツクールの制限内で、シナリオを作るだけでは出てこない。そして、時にはRPGツクールを改造することで、さらなる驚きをプレイヤーに提供し、コンセプトにより磨きをかけられる。この点で本作は、まさに「守破離」を体現したタイトルになったといえる。
主人公ニコ(左)が持つ「太陽」を塔まで運ぶことがゲームの目的だ
最初が一番暗く、次第に明るくなる矛盾
ただし本作には、本来守られなければいけない作法が、守られていない印象もある。チュートリアルの不備はその一つだ。本作は「部屋を出たいがドアに鍵がかかっている。鍵を見つければドアが開く」という、古典的なアドベンチャーゲームの文法で進行する。また、複数のアイテムを組み合わせることで真のアイテムを創り出すギミックもある。その上で本作は、ニコが部屋の中で目覚めるシーンから始まる。部屋の中がゲームを進める上で基本的なアクションを理解する、チュートリアルの役割を果たしている。その一方で開始直後は画面が暗く、状況がわかりにくい。攻略サイトを見なければ、意味がわからなかったほどだ。チュートリアルを終了すると、旅の目的となるアイテム「太陽」が入手でき、若干周囲が明るくなる。世界は3つのワールドに分かれており、ワールドを越えるにつれて画面が明るくなり、状況が把握しやすくなる。いずれも「間口が広く、奥が深い」ことを理想とする、従来のゲーム文法と正反対だ。実際、筆者はゲーム内にあるパズルのうち、半分以上が攻略サイトなしにはクリアできなかった。
性格が良く、誰からも好かれるニコ。これもまた開発者による仕掛けの一つだ
インディゲームが真に挑戦すべき課題とは
もっとも、パズルの難しさは人によって異なる。にもかかわらず、本作ではパズルに詰まった時の救済手段がない。攻略サイトが前提の作りだ。『RiME』で論じたように、多くのゲームにはプレイヤーが自分で難易度を動的に調整する仕組みが内包されている。しかし、本作はそれを切り捨てている。「アドベンチャーゲームとはそういうもの」と割り切るのは容易だが、それでは守破離の「守」にとらわれてしまう。より多くのプレイヤーに楽しんでもらうために、既存の型からの飛翔が欲しかった。『Rusty Lake: Roots』で論じたように、脱出ゲームの文法を踏襲しながら、パズルの答えが制作者によって開示されているにもかかわらず、高い評価を得ているゲームもある。本作において制作者が本当にプレイヤーに本当に提供したかった体験は、パズルを自力で解くことだろうか。冒頭にも記したとおり、本作のポイントはゲームならではのメタフィクションの提供にある。そのためには、プレイヤーをラストまで到達させる必要がある。従来の常識に囚われないインディゲームこそ、この命題に挑戦すべきだろう。
(※)Wikipedia参照 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%AE%88%E7%A0%B4%E9%9B%A2
■関連リンク
『OneShot』1周目攻略&実績解除方法
https://omoson.com/game/oneshot_kouryaku/
Steam『OneShot』のページ
http://store.steampowered.com/app/420530/OneShot/
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