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『The Gardens Between』スマホゲーム会社ならではの操作デザインがもたらす、ユニークなゲーム体験【インディーゲームレビュー 第39回】

プレイヤーはプレイヤーキャラクターという仮想身体を得てゲーム世界に介在する。では、その仮想身体が世界自身だとしたら……。

『The Gardens Between』はスマホゲーム会社ならではの知見が光る挑戦的なタイトルだった。


「SOWN2018」で注目を浴びたオーストラリア産ゲーム

東京ゲームショウの名物企画「センス・オブ・ワンダーナイト(SOWN)」。独創的なゲームのアイディアを表彰するイベントで、今や世界中から良質なインディーゲームが集まるまでに成長した。今回取り上げる『The Gardens Between』もまた、「SOWN2018」でBest Technological Game Awardに輝いたタイトルだ。

開発は『Train Conductor』シリーズでスマッシュヒットを記録した、オーストラリアのThe Voxel Agents。これまでスマートフォンを主戦場にしていた同社が、はじめてリリースした据え置き機向けタイトルで、PC・PlayStation4・Nintendo Switchのマルチプラットフォームタイトルとなる。

主人公は異世界に迷い込んだ幼なじみのアリーナとフレントだ。樹木の上に作り上げた秘密基地ごと異世界に飛ばされた2人は、時間の流れを操作できる不思議な島々を巡りながら、思い出の品々を星座に変えて進んでいく。

ゲームジャンルはパズルアドベンチャーで、ファンタジックなビジュアルや、言語に頼らないナラティブデザイン、左右キーとスペースキーのみというシンプルな操作などが印象的だ。スタジオジブリをはじめ、日本のアニメや漫画に影響を受けたと思われる世界観もユニークで、プレイ時間が実質数時間というボリュームながら、クリア後に忘れがたいゲーム体験を刻んでくれるだろう。




プレイヤーと仮想身体、そしてRPGとAVG

本作を最も特徴付けているのが、プレイヤーと仮想身体の関係性だ。『Expand』レビューで論じたとおり、ゲームは「操作できるもの」と「操作できないもの」、そして両者の関係性によってデザインされる。プレイヤーは操作できるもの(=プレイヤーキャラクター)を介してゲーム世界に降り立ち、さまざまな冒険やアクションを繰り広げる。そのため、本作においても、アリーナとフレントを操作して、さまざまなパズルをクリアしていく……というデザインが一般的だろう。

しかし、本作はこの常識を軽やかに打ち破っている。本作でプレイヤーが操作するのは舞台となる島であり、時間という抽象概念だからだ。

本作でプレイヤーは左右キーで島を回転させられる。そして、回転方向に従って時間が未来に進んだり、過去に戻ったりする。アリーナとフレントも、その時間軸の中で決められたルートを移動するのみだ。もっとも、そのままではゴールである島の頂上にたどり着くことはできない。そこでプレイヤーは時間を操作しながら、クリアに必要な仕掛けを探していく。適切な場所でスペースキーを押すと、アリーナとフレントがパズルのスイッチを入れ、先に進めるようになるのだ。

このように本作は、回転という操作と時間の流れを組み合わせた点に最大の特徴がある。実際、ゲームを遊んでいると、ビデオデッキを操作しながら、録画内容をチェックしている感覚にとらわれる。

通常、プレイヤーは仮想身体を操作しながら一体感を感じとる。しかし本作では世界そのものを操作するため、良くも悪くもキャラクターとの一体感に乏しい。そのためプレイ感覚がどこか客観的で、舞台演劇を見ているような感覚に襲われるのだ。

本作は「他人の冒険を第三者視点で眺めている」という点で、きわめてアドベンチャーゲーム的だ。登場人物になりきって冒険を楽しむことがロールプレイングゲームの本質だとしたら、その対局に存在するといえるだろう。そして、この違いを生んでいるのが、ゲームにおける仮想身体、すなわちプレイヤーの操作対象なのだ(ちなみに、同じことはマウスカーソルでゲームを進めるPCゲームにも言える)。



ゲームとデバイスの関係性

それにしても、こうしたゲームデザインはどこから来たのだろうか。ヒントはスマホゲーム出身という同社の経歴だ。

スマホゲームでは通常、プレイヤーは自分自身の指を使用し、画面をタップしてゲームを進めていく。つまりスマホゲームでプレイヤーは、コントローラーやプレイヤーキャラクターといった要素を経由せずに、世界に直接介入できる。実際、左右キーで島を回転させる操作は、そのまま画面を指でスワイプし、回転させる操作を連想させる。こうした経緯から本作においても、キャラクターではなく世界を操作するという方法論が、素直に導かれたのではないかと考えられる。実際、スマホゲームでプレイした方が、より自然に遊べるのではないだろうか。

他に本作はVRゲームへの展開も期待できるだろう。本作のような箱庭型ゲームをVR化すると、眼前で島を実際に見下ろしている感覚が表現できるからだ。「視線を激しく移動させないため、VR酔いになりにくい」「十数分ずつ、島ごとに区切ってプレイできる」など、VRゲームに向く特性も兼ね備えている。その上で個人的には、ぜひ島を直接、手で回すような感覚で遊んでみたいところだ(実際には両手にもった専用コントローラーで回転させるわけだが)。

このようにゲームの仮想身体は操作デバイスと大きな関係を持ち、ゲーム体験を大きく左右する。これらの意味を改めて示してくれたタイトルだといえる。

The Gardens Between © The Voxel Agents 2018

■関連リンク
Steam『The Gardens Between』のページ
https://store.steampowered.com/app/600990/The_Gardens_Between/
『The Gardens Between』 公式サイト
http://thegardensbetween.com/
開発・販売元「The Voxel Agents」公式サイト
http://www.thevoxelagents.com/
【コラム】小野憲史のインディーゲームレビュー

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