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『エース・オブ・シーフード』にみる国産インディーゲームと日本らしさ【インディーゲームレビュー 第28回】

国産インディーズゲームには、「人間でないもの」をプレイヤーキャラクターに据えた、ユニークなゲームの潮流がある。海産物になって仲間を従え、海の王者になる『エース・オブ・シーフード』も、きわめて日本的なインディーズゲームだった。


ユニークさが心情のインディーゲームで、もっともユニークであることが期待されるコンテスト。それが東京ゲームショウで毎年開催される「センス・オブ・ワンダーナイト」だ。中でもここ数年、際だっているのが国産インディーゲームの奇妙な傾向で、シャンプーボトルの形状をした鳥(『シュココーココ』)や、地球(『Earth Defense Satellite』)など、およそ「自機」とは思えないようなキャラクターを操作するゲームが増加している。

海洋生物を操作する3Dシューティングゲーム『エース・オブ・シーフード』は、その先駆け的なゲームだと言えるだろう。前作にあたる『ネオアクアリウムー甲殻王ー』はイセエビ・ズワイガニといった甲殻類が中心だったが、本作では魚類だけに留まらず、アザラシやダイオウイカ、さらには軍艦まで操作可能になった。しかし、単に奇をてらっただけではない、骨太なゲーム内容に仕上がっている。

ハリセンボン主体のパーティで深海に住むダイオウイカと激突。当然、ダイオウイカもパーティに加えられる

ゲームは簡単な成長要素が加わったTPS(サードパーソンシューティング)だ。プレイヤーは魚や蟹などを操作して海中を探索し、拠点となる魚礁を増やしながら、マップの未踏地域を制覇していく。魚礁の多くは、そこを縄張りとする魚に守られているため、彼らと戦って撃破していく必要がある。バトルに勝てば仲間にでき、合計6匹のパーティを組むことができる。最強のパーティを率いる「海産物のエース」になることが目的だ。

このように本作は「探索する」→「敵を倒す」→「魚礁を増やす」→「仲間を増やす/パーティを強化する」→「探索範囲が広がる」というループ構造で進んでいく。ワールドはすべてが一つに統合されており、どのように制覇しても良く、オープンワールドなゲーム体験が楽しめる。海中を自由自在に移動しながら、他の魚を任意に攻撃できるため、気分的には宇宙空間を舞台としたフライトシューティングゲームに近いといえるだろう。
制覇した魚礁は青色、未制覇の魚礁は黃色で表示される。魚礁は体力回復やパーティの入れ替えなどができる戦略拠点で、魚礁間での移動もできる。魚にはそれぞれ容量があり、制覇した魚礁の総容量以下のパーティしか組めない。魚礁の数が増えるにつれて容量が拡大し、より強力なパーティが編成できるようになる。

なぜ本作は海洋生物がモチーフなのだろうか。手がかりとなるのがSteamの販売ページだ。「広大で豊かな世界をどこまでも漂っていきたい。前後左右天地、自由に高速に飛び回り素晴らしいフォーメーションをきめたい。穴を掘って地底世界を探検したい。自分より何倍も巨大なモンスターに立ち向かいたい。口からビームを撃ってみたい…etc。そういった夢の数々…。実はそれらは海産物になればすべて解決することであった」と記されている。

このように本作は、単に世界観とキャラクターを変更しただけに留まらない、コンセプト駆動型のゲームデザインが行われていることがわかる。もちろん、そこにはインディーゲームにはつきものの、予算や開発リソースの制限といった問題もあったと想像される。しかし、それらを優れたアイディアで一気に解決している点が本作のポイントだ。その上で、プレイヤーをしっかり遊ばせるための工夫が随所に見られる。

一例をあげれば、本作に登場する海産物は「海中を泳ぎ、万能型の魚タイプ」「海底を這い、遠距離射撃を行う蟹タイプ」「海上を進み、爆雷などを投下して攻撃する軍艦タイプ」の三種類に大きく分かれている。その上でゲームを進めるうちに、それぞれの長所が自然と理解できるようなレベルデザインが行われている。海産物の特徴がリアルに表現されているのも、高い技術力があってこそだ。いわゆる「バカゲー」との格の違いを見せつけている。
車海老軍団を配下に従え、伊勢海老で華麗に出撃。固い甲羅に覆われており、防御力に富んでいる。敵に回すと厄介な相手だ

アザラシや大ダコに襲われる駆逐艦。サイズも含めてプラモデルのようにしか見えないのはご愛敬

一方で魚も軍艦も、共に倒すとDNAが入手でき、「繁殖」で数が増やせるといった具合に、簡略化できる点は徹底して簡略化している。あえて多数のツッコミどころを残すことで、口コミで広がりやすいように配慮されているのだ。これが通常のSFシューティングゲームであれば、かなり世界観やストーリーを作り込まなければ、凡庸なゲームに留まってしまっただろう。この尖り方が群を抜いている。

「日本のゲームはクレイジー」だと、海外のゲームシーンではしばしば評される。彼らの常識を越えたアイディアがふんだんに盛り込まれるからだ。そこにあるのはクリエイターのコンセプトであり、プレイヤーを喜ばせたいというサービス精神。だからこそ日本のゲームは世界中で一際目立つ存在であり続けてきた。星の数ほどのゲームが存在する中、「いかに目立たせるか」は作り手にとって悩みの種だ。本作に学ぶ点は大いにある。

©︎Nusso

■関連リンク
開発元「Nussoft」のページ
http://www.neoaq.net/
Steam「エース・オブ・シーフード」販売ページ
http://store.steampowered.com/app/450500/Ace_of_Seafood/
Steam「ネオアクアリウムー甲殻王ー」販売ページ
http://store.steampowered.com/app/355240/NEO_AQUARIUM__The_King_of_Crustaceans/


【コラム】小野憲史のインディーゲームレビュー

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