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『Symphonia』フランスの学生チームが作ったゲーム版バンド・デシネ【インディーゲームレビュー 第104回】
フランスの学生チームが制作したアクションゲーム『Symphonia』。バンド・デシネ(フランス・ベルギーなどを中心としたマンガ)の伝統を持つ豊かなアートセンスが織りなす世界観と、一風変わったアクションが織りなすゲーム体験は、学生のゲーム制作のレベル向上を明確に示している。
このジャンプアクションだが、慣れないうちは操作がわかりにくい。アクションゲームのセオリー通り、ステージ冒頭は基本アクションを習得するためのチュートリアルを意識したレベルデザインが行われている。しかし、サクサクとステージを進めすぎてしまい、途中から思うように操作できずにイライラしてしまうプレイヤーもいるのではないだろうか(少なくとも筆者はそうだった)。
もっとも、だからこそ自由自在にステージ上を跳ね回れるようになった時の快感は格別だ。『Expand』のレビューで示したとおり、ゲームは「自分(=アバター)」「世界(ステージ・アイテム・エネミーなど)」「自分と世界の関係性」で構築されている。その上でアクションゲームにおける最大の差別化要因が、ベースとなるアクションのおもしろさとなる。まさに教科書通りの内容だといえるだろう。
この世界観のユニークさは、前回レビューした『Dorfromantik』と比較すると、わかりやすいだろう。『Dorfromantik』はクォータービュー視点の土地拡張型ボードゲームで、『カルカソンヌ』をはじめとしたドイツゲームの影響を感じさせる。これに対して『Symphonia』はマリオをはじめとした国産プラットフォームアクションの影響を受けつつ、アートワークの点でフランスならではのアレンジが施されている。
もっとも、アクションゲームが苦手なプレイヤーにとっては、中盤から次第につらくなっていくかもしれない。難易度の設定が直線的で、クリアするために相応のテクニックが必要になっていくからだ。なお、ゲーム中にステージに設置された太古の機械を作動させることで、主人公が持つバイオリンを奏でるイベントが挿入される。このイベントをもっと掘り下げると、さらにおもしろいものになったかもしれない。
同校はアメリカの格付け機関「GAMEducation」の2021年度世界ランキングで、第2位を獲得した名門校だ。モントリオールに姉妹校があり、こちらはカナダ国内で第3位の評価を受けている。日本の東京工科大学、NCC新潟コンピュータ専門学校とも連携協定を結んでいる。日本のゲーム専門学校やゲーム教育を行う大学にとっても、注目すべき教育機関の一つだろう。
以上のように本作は基本に忠実なアクションゲームのゲームデザインと、地域のコンテキストを十分に生かしたアートワークの融合が特徴であり、すばらしい学生作品だといえる。その上で本作がWeb上で頒布され、国際的なコンテストで受賞をはたしている点がポイントだ。日本では学生作品のレベルはまだしも、社会への情報発信という点で後れをとっている例が多い。ぜひ見習っていきたい点ではないだろうか。
metacriticスコア:なし
主な受賞歴:Best student game finalist at Unity Awards 2020、Best student game finalist at IGF 2021など
『Symphonia』公式サイト
https://www.symphonia-game.com/
ISART Digital公式サイト
https://www.isart.com/
SUNNY PEAK公式サイト
https://www.symphonia-game.com/studio.html
アクションゲームの基本に忠実なゲームデザイン
過去に『TorqueL』のレビューで筆者は『遠藤雅伸のゲームデザイン講義実況中継』(SBクリエイティブ)を引用し、アクションゲームはベースとなるアクションのおもしろさによって差別化されると述べた。マリオならBダッシュとジャンプ、ソニックならスピン&ダッシュといった具合だ。そして本作『Symphonia』では、バイオリンの弓をバネのように使ってジャンプする独特のアクション、ということになる。このジャンプアクションだが、慣れないうちは操作がわかりにくい。アクションゲームのセオリー通り、ステージ冒頭は基本アクションを習得するためのチュートリアルを意識したレベルデザインが行われている。しかし、サクサクとステージを進めすぎてしまい、途中から思うように操作できずにイライラしてしまうプレイヤーもいるのではないだろうか(少なくとも筆者はそうだった)。
もっとも、だからこそ自由自在にステージ上を跳ね回れるようになった時の快感は格別だ。『Expand』のレビューで示したとおり、ゲームは「自分(=アバター)」「世界(ステージ・アイテム・エネミーなど)」「自分と世界の関係性」で構築されている。その上でアクションゲームにおける最大の差別化要因が、ベースとなるアクションのおもしろさとなる。まさに教科書通りの内容だといえるだろう。
仏バンド・デシネと米カートゥーン・アニメの融合
本作のもう一つの特徴は、フランスならではの美しいアート表現に裏打ちされた、豊かな世界観だ。中間色を駆使したアートワークがバンド・デシネの伝統を彷彿とさせる。その一方で、ステージのギミックを駆使したレベルデザインからは、『トムとジェリー』のような、アメリカの漫画映画の1シーンを思わせるようなユーモアも感じさせる。日本からはなかなか出てこないセンスだろう。この世界観のユニークさは、前回レビューした『Dorfromantik』と比較すると、わかりやすいだろう。『Dorfromantik』はクォータービュー視点の土地拡張型ボードゲームで、『カルカソンヌ』をはじめとしたドイツゲームの影響を感じさせる。これに対して『Symphonia』はマリオをはじめとした国産プラットフォームアクションの影響を受けつつ、アートワークの点でフランスならではのアレンジが施されている。
もっとも、アクションゲームが苦手なプレイヤーにとっては、中盤から次第につらくなっていくかもしれない。難易度の設定が直線的で、クリアするために相応のテクニックが必要になっていくからだ。なお、ゲーム中にステージに設置された太古の機械を作動させることで、主人公が持つバイオリンを奏でるイベントが挿入される。このイベントをもっと掘り下げると、さらにおもしろいものになったかもしれない。
日本のゲーム教育のお手本的な内容
最後に、本作がフランスの単科大学「ISART Digital」の学生チームによって作成された点についても補足しておこう。同校はCGとゲームのクリエイター教育に特化した芸術系高等教育機関で、コースはゲーム、3D-FXとシネマアニメーション、サウンドデザインの3つがあり、1年から5年のカリキュラムが組まれている。コースによって詳細は異なるものの、学生は相応の学位や資格が得られる。同校はアメリカの格付け機関「GAMEducation」の2021年度世界ランキングで、第2位を獲得した名門校だ。モントリオールに姉妹校があり、こちらはカナダ国内で第3位の評価を受けている。日本の東京工科大学、NCC新潟コンピュータ専門学校とも連携協定を結んでいる。日本のゲーム専門学校やゲーム教育を行う大学にとっても、注目すべき教育機関の一つだろう。
以上のように本作は基本に忠実なアクションゲームのゲームデザインと、地域のコンテキストを十分に生かしたアートワークの融合が特徴であり、すばらしい学生作品だといえる。その上で本作がWeb上で頒布され、国際的なコンテストで受賞をはたしている点がポイントだ。日本では学生作品のレベルはまだしも、社会への情報発信という点で後れをとっている例が多い。ぜひ見習っていきたい点ではないだろうか。
metacriticスコア:なし
主な受賞歴:Best student game finalist at Unity Awards 2020、Best student game finalist at IGF 2021など
『Symphonia』公式サイト
https://www.symphonia-game.com/
ISART Digital公式サイト
https://www.isart.com/
SUNNY PEAK公式サイト
https://www.symphonia-game.com/studio.html
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